ミーゼス研究所編集主任、ライアン・マクメイケン
(2022年12月6日)
米国防総省は11月、またもや監査に引っかかったと発表した。何年もかけて行動を起こしてきたにもかかわらず、何兆ドルもの納税者の資産と収入をどのように使い、どのように維持しているのか、まだわかっていないのである。防衛ニュースサイト、ブレーキング・ディフェンスが先月、こう指摘している。
America's military technocrats (aka "generals") specialize in losing wars and also losing your money. Naturally, Congress wants to give them even more taxpayer cash. | @RyanMcMakenhttps://t.co/n3hmwmxoku
— Mises Institute (@mises) December 6, 2022
国防総省は5年連続で年次監査に不合格となった。予想されたことではあるが、それでも当局が毎年少しずつでも着実に前進していくことを望んでいた取り組みにとっては、ある種の失望を示す結果となった。......ペンタゴン(国防総省)は2018年以降、同省の歴史上、初めて実施された監査でことごとく不合格となった。
このような会計処理ではもちろん、ほとんどの民間企業の経営幹部がさまざまな金融犯罪で刑務所に入ることになる。しかも、これは私たちの銀行取引のほとんどをスパイする特権があると主張し、最近では600ドル以上のベンモ(Venmo)やペイパルの取引をすべて報告するよう要求し始めたのと同じ政府なのである。しかし政府部門はそういうわけにはいかない。国防総省は文字通り何兆ドルもの監査に引っかかることがあるが、その意味は「改善の余地がある」ということだけだ。
実際、議会は今月、納税者のお金がどのように使われたかという正しい情報に資金を結びつけるのではなく、ほとんど国防費をどれだけ増やすかについて議論している。
先週、議会は国防予算の増額について、またもや妥協案を打ち出しはじめた。国防総省のコロナワクチンの義務付けや、ウクライナにあと何個兵器を送るかなどの議論が続いているが、提案された予算は2022年の予算より8%増加することになる。共和党の指導者の中には、3~5%というやや少なめの増加を求めていた人もいたものの、よくあることだが、同党は特定の利益団体に利益をもたらす限り、これまで以上に大きな予算にサインすることに満足している。ホワイトハウスは8020億ドルを要求していたが、最終的には8400億ドル以上になりそうである。
失敗に費やされる数兆ドル
この規模の予算は、現在のドル換算で史上最高額となる。エネルギー省を通じた核兵器への支出を含む国防機能全体を見ると、行政管理予算局(OMB)の2023年の試算は現在8270億ドルである。これは2022年に比べて7.8%の増加であり、米政府がアフガニスタンへの「増派」とイラクでのさまざまな占領・反乱作戦に忙殺されていた2009年に比べて14%の増加である。米国は2兆ドル以上を費やした後、結局この二つの戦争に負けた。さらに、これらの戦争は多額の借金で賄われており、米国の納税者は現在、6兆ドル以上の利払いを強いられているかもしれない。
現在アフガニスタンの政権は、2001年の米国の侵攻前と同じようにタリバンの手中にある。一方、イラクでは米国の侵攻で国家が破壊されたことにより、「イスラム国」(IS)が埋める権力の空白が生まれた。現在、サダム・フセインの世俗的な国家は、親イランのシーア派政権に取って代わられている。米政権がイランを不倶戴天の敵として扱っていることを考えると、米政権とその将兵がこれらの戦争でいかに有能でなかったかは想像に難くない。
戦争がもたらしたもう一つの副作用は、退役軍人関係の費用を増大させたことである。退役軍人関業務は、もちろん兵士の募集と維持に不可欠である。これらの費用は国防費と切り離して考えるべきではない。退役軍人費用は兵役時に兵士に約束される繰延報酬にすぎない。したがって退役軍人費用を当然のように含めると、防衛費はさらに膨れ上がっていることがわかる。2023年度には、退役軍人費用を含む国防費の総額は1兆2000億ドル以上に高騰すると試算されている。これは2022年会計年度から10%増、2009年からは42%増となる。
しかし、インフレはどうか?
しかし軍事費増加の支持者は、インフレが国防費を圧迫している、だからインフレ調整後のドルだけで支出を測るべきだ、と文句を言いそうである。もちろん、インフレの原因は政府そのものにあるのだから、道義的な意味はないはずだ。
民間の実質賃金は19カ月連続で低下しているが、軍事費のためにさらに税金を投入すべきだと主張されている。この考え方は、政府機関には政府が作り出したインフレによって支出力を奪われない「権利」があるはずだ、というものだ。
しかし議論の都合上、インフレ調整された軍事費を見てみよう。当然ながら、この指標では支出はほとんど増えていないことがわかる。しかし退役軍人の支出を含めると、2023年の国防費はこの指標でも過去最高となる。
OMBによると、2020年のドルの価値を基準にすると、2023年の支出は1兆300億ドルに達すると推定されている。これは2022年に比べて8%の増加だが、同じく支出が1兆ドル前後で推移した2010年と2020年の過去のピークからは「わずか」にしか増加していない。
この税金は何に使われるのだろうか。国防総省はその行き当たりばったりの会計処理からしてわかっていないが、少なくとも数十億ドルは、ウクライナ政権への援助にすでに費やされた650億ドルや、北大西洋条約機構(NATO)にただ乗りする欧州の加盟国に「保証」を続けるため、さらに数千億ドルを補うよう使われるとみて間違いないだろう。結局のところ、ドイツは最近、自国の軍事費を国内総生産(GDP)の2%という合意された基準まで引き上げる約束を履行しないことを発表した。NATOの連帯と欧州の防衛について、欧州の政治家たちがたくさんの美辞麗句を並べることが予想される。しかし欧州の人々が、米国の納税者がほぼすべての費用を負担することに満足していることは明らかだ。これに対し、NATOの大物であることを楽しんでいる米国は何もしない。言い換えれば、米国防総省が把握しきれないほどの何兆ドルもの金を納税者から騙し取ることに、米政府は何の問題も感じていないのである。しかし米政府は、米国が欧州のツケも払えという欧州の主張にも喜んで加担している。
(次を全訳)
As the Pentagon Fails Another Audit, Congress Wants to Spend Even More on "Defense" | Mises Wire [LINK]
2 件のコメント:
スゴイですね
スゴイです😨
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