エコノミスト、ダニエル・ラカール
(2022年6月18日)
アルゼンチンの消費者物価指数は2022年4月に前年比58%の上昇となった。昨年3月に記録した上昇を2.9ポイント上回ったことになる。アルゼンチンのインフレ率は、同じグローバルな問題にさらされている隣国ウルグアイの6倍以上、チリの5倍以上、ブラジルやパラグアイの4倍以上である。
Inflation in Argentina is far worse than neighboring countries. It has only one cause: an extractive and confiscatory monetary policy—printing pesos without control and without demand. | @dlacalle_IAhttps://t.co/L4NUuVMYEc
— Mises Institute (@mises) June 20, 2022
アルゼンチンのインフレの原因はただ一つ。人々を搾取し、財産を没収するに等しい金融政策である。制御がきかず、需要もないのにペソを印刷している。過剰で膨張した有害な公共支出を賄うために、マネタリーベース(資金供給量)を膨れ上がらせている。
今年はこれまでのところ、マネタリーベースは43.83%増加しており、まったくの狂気の沙汰である。物価上昇率は58.2%だ。
マネタリーベースは過去3年間で179.73%、10年間では1543.8%以上増加している。
この10年間で、アルゼンチン・ペソは米ドルに対し99%の価値を失った。無駄なペソを刷って国の富を収奪している。
与党・正義党(ペロン党)の支持者の多くは、米国も通貨供給を大量に増やしているがインフレにならないと言う。この議論は成り立たない。米国のマネタリーベースの増加率は9.9%とアルゼンチンの6分の1であり、米国も8.5%のインフレに見舞われている。
通貨供給の総量は、アルゼンチンでは10年間で2328.09%に膨張し、米国では2倍に増えた。つまり、この10年間でアルゼンチンの通貨供給の総量は米国の11倍以上のペースで増えている。このような狂気の沙汰を行ったのは、他にベネズエラだけだ。
ペソを欲しがらず、国際取引でペソを受け入れないのは、外国人だけではない。アルゼンチンの市民はほとんどの場合、自国の通貨を価値の保存手段、価格の尺度、支払い方法として受け入れていない。
米国が比較的インフレに苦しんでいないのは、他の国がもっとひどいからだ。他の国はさらに積極的に通貨を印刷するか、資本規制を行い、投資と法の安全が確保されていない。しかし、米FRB(連邦準備理事会)はその地位に甘んじてはならない。通貨に対する信頼は政策当局が想像するよりも早く失われる恐れがある。
現在の米経済は、権力分立と開かれた金融システムによってドルを世界の基軸通貨として維持しているが、雲行きが怪しくなってきている。米国の政治家は膨張する政府予算を賄うために、積極的な金融政策を擁護している。一部の国は、商品販売の対価として米ドルに代わる手段を模索し始めている。
政府が予算を大幅に増やし、不人気な通貨で資金を調達してきた歴史を見れば、ユーロやドルのリスクは明白だ。先進国の国民がそんなことを許すはずがないと思うかもしれないが、アルゼンチンも数十年前は豊かに繁栄した国だった。20世紀初頭には世界で最も豊かな経済大国の一つだった。保護主義、ポピュリストの介入政策、非常識な金融政策の組み合わせがアルゼンチンの経済を破壊し、いまだに回復していない。
(次より抄訳)
How Money Printing Destroyed Argentina and Can Destroy Others | Mises Wire [LINK]
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