事業家、ダニエル・コワルスキー
(2022年3月6日)
マルクスとエンゲルスが執筆した『共産党宣言』は、第二章まで共産主義の明確な要約すら出てこない。「私有財産の廃止」である。共産主義がどのように組織・運営されるかについて、何ら指示はない。ただ起こるべきことなのだ。
Karl Marx was a complainer, not a visionary. https://t.co/stFrjgqKOk
— FEE (Foundation for Economic Education) (@feeonline) July 5, 2022
67頁にわたる『共産党宣言』の中で、共産主義政策の列挙に割かれるのはたった2頁である。その政策とは、土地所有権の廃止、個人の財産を圧迫するほどの重税、相続権の廃止、亡命者・反逆者の財産没収、銀行の国有化、通信・交通の国家への集中、工業・農業の生産手段の国有化、労働者軍隊の編成、都市と農村の対立を徐々に解消(強制移住)、教育の無償化など十項目にわたる。
これらの政策は共産主義革命に成功したソ連と中国で取り入れられた。ソ連は超大国になった後、共産主義の非効率のせいで崩壊した。中国は共産党指導者がマルクス主義の政策をほぼ放棄し、市場改革を支持したおかげで、今日まで存続している。
共産主義の理論が実践されたことによる最も大きな影響は、5500万〜9500万人に及ぶ死者である。
『共産党宣言』の第一章「ブルジョアとプロレタリア」によれば、人間の文明とは階級闘争の歴史であり、支配階級と支配される人々とが互いに争ってきた。マルクスは同時代の階級対立を、ブルジョア(商人、事業主、起業家、資本家ら)とプロレタリアート(労働力を売ることでしかお金を稼げない人々)との争いと定義する。この対立を終わらせる唯一の方法は、すべての人々をプロレタリアートという一つの階級にする革命を起こすことだという。
『共産党宣言』によれば、十九世紀のプロレタリアートの多くは、中世にまともな生計を立てていた職人の子孫だ。かつて職人が作っていたものを、今では工場が大規模に作り、安く売るせいで、労働者の家族は貧困に追いやられている。かつては熟練した労働力が必要だったものが、今では簡単な機械を操作できる人が安い値段で作れるようになり、昔の職人の技術は時代遅れになりつつある。
マルクスが嘆いたのは、今日では「創造的破壊」と呼ばれる過程である。二十世紀になって経済学者シュンペーターがこの言葉を作り出し、正式に認識されるようになった。個人が新しいイノベーションを起こせば、生産工程の効率が高まり、資源が新しい分野に適用され、社会全体に経済成長をもたらす。二十世紀初頭に自動車産業が馬車産業を駆逐したのはその好例である。
イノベーションは、経済に対し大きくプラスに働く。その過程で、スキルが陳腐化し損をする人がいる一方で、新しいスキルとチャンスを得られる新しい仕事が増え、全体の生活水準が向上する。この真実を否定し、過去に失ったものの代わりに将来何が得られるかを考えようとしないのは、「ダメな経済学者」の証拠だ。
マルクスは経済学者として未来を見通す先見性がなく、産業革命によって何が変わるのかを理解することができなかった。ソ連崩壊直前、七十年以上にわたる共産主義にもかかわらず、人口の20%が貧困にあえいでいた。ソ連崩壊後、旧共産圏諸国の多くが自由な市場経済を受け入れた。1990年には世界人口の36%が極貧状態にあったが、2015年には12%に減少した。それを実現したのは共産主義やトップダウンの中央集権政府ではなく、資本主義である。
(次より抄訳)
I Read ‘The Communist Manifesto’ for the First Time. Here’s What I Learned about Karl Marx - Foundation for Economic Education [LINK]
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