2022-07-04

米国人は自国の戦史を理解していない

元米中央情報局(CIA)アナリスト、ラリー・ジョンソン
(2022年6月30日)

米国人が騙され、米国の対外的な冒険のほとんどを支持してきた理由の一つは、米軍の死傷者に関する根本的な無知にある。米国は日本を破り、ナチスドイツを終わらせるために多大な犠牲を払ったと信じているようだ。それどころか、ロシアがナチスを打ち負かすのに果たした役割はほんのわずかだと考えている。

ハリウッドは、お粗末な公教育とは別に、第二次世界大戦における米国の武勇という神話を永続させた主犯である。ソ連の役割に言及する少数の映画はたいてい、連合国がドイツ軍に対し西部戦線を開くことを切望する(ソ連の最高指導者)スターリンの姿を描いている。

そこで意外な事実を紹介しよう。第二次世界大戦で、米国が最も多くの死者を出した五つの血生臭い作戦は下記のとおりだ。

  • ノルマンディーの戦い(1944年6月6日〜8月25日)米国は2万9204名の戦死者
  • バルジの戦い(1944年12月16日〜1945年1月28日)戦死者、19,276人
  • 中央ヨーロッパ作戦(1945年3月22日〜5月8日)戦死者、合計1万5009人
  • 沖縄戦(1945年4月1日〜6月22日)死亡者数は推定1万4000〜2万人
  • フィリピン作戦(1941年12月8日〜1942年5月6日)約1万3000人が戦死

ロシアの作戦トップ五を紹介しよう。ロシアはドイツ軍としか戦わなかった。しかし、血の代償はとてつもないものだ。

  • レニングラードの戦い(1941年9月8日〜1944年1月27日)総死亡者数101万7881人
  • モスクワの戦い(1941年10月2日〜1942年1月7日)ロシアは65万3924人の死者と行方不明者
  • バルバロッサ作戦(1941年6月22日〜1941年12月5日)ロシアは56万6852人の戦死者
  • スターリングラードの戦い(1942年8月23日〜1943年2月2日)ロシアは47万8741人の死者・行方不明者
  • クルスクの戦い(1943年7月5日〜1943年8月23日)死者・行方不明者総数43万2317人

この違いを別の言葉で表現しよう。第二次世界大戦における米国の戦死者は、欧州、北アフリカ、太平洋の両地域で合計47万2千人である。ロシアは4回の戦闘でそれぞれ、米国が全戦争で失ったよりも多くの兵力を失った。

ロシア国民はスターリンに銃で脅されて戦ったのではない。ナチスの侵攻に対し、驚くべき方法で立ち向かったのである。当時ほとんどの軍事アナリストは、ソ連はナチスの圧勝で崩壊すると予測していた。しかしロシア国民はその予想を裏切り、最強のドイツ軍を打ち負かすために結集した。

この膨大な死は、ロシアのほとんどすべての家族に影響を及ぼした。だからロシア人は毎年5月になると、その犠牲を思い出し、記念する。それは共産主義とは何の関係もない。第二次世界大戦は、ロシア人を骨の髄まで傷つけた。それが、ウクライナの脅威に対抗するプーチン(露大統領)が国民の幅広い支持を得ている最大の理由である。ウクライナは2014年以来、事実上の北大西洋条約機構(NATO)同盟国であり、米英は民主的に選ばれた大統領を追放するクーデターの指揮を手伝った。

米国とNATOが、ロシアの国境に軍隊を配備して軍事力を強化すればロシア国民をひるませることができると考えているならば、大きな誤りである。脅威を認識しているのは、プーチンだけではない。ほとんどのロシア人が理解し、恐れている。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Americans Do Not Understand Their Own Military History [LINK]

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