2022-07-18

マルクス主義階級意識の皮肉

ポッドキャスター、アントニー・サメロフ
(2020年6月27日)

マルクス主義によれば、人の社会的地位がその信念を決定する。人々は自分の階級的な利害関係の目を通してでなければ世界を認識する能力がなく、それが人々の表現する見解を決定する。したがって、利害関係のない真理の探求などありえない。自由主義を唱えた初期の経済学者たちは、意図してか無意識にか、市場経済を支持するような偏見があったという。

マルクスによれば、真理は社会主義にのみ存在し、したがって思想上の対立者に反論する必要はない。単に相手の正体はブルジョアだと言うだけでよかった(もっともマルクス自身、裕福な弁護士の息子であり、妻も貴族の娘だったことから、かなり金持ちだった)。

しかし、誤った見解が真理よりも階級の利益を高めると信じる正当な理由はない。間違った信念は、人を現実と衝突させる。本来、真理は役に立つ。

家を建てたいなら、重力の法則に従ったほうがいい。植物を育てたいなら、水をやり、窓際に置いて、太陽の光を浴びさせたほうがいい。人々が力学を学ぶようになったのは、実用的な理由からだ。工学的な問題を解決したかったのだ。誤った考えに従えば早晩行き詰まる。間違った前提で発明された蒸気機関は一つもない。「どう考えても、誤った理論が正しい理論よりも人間・階級・全人類に役立つことはない」と経済学者ミーゼスは書く。

階級が信念を決定するという哲学をマルクスが広めたのは、社会主義実現のために戦う情熱からだった。マルクスは、社会主義に対する経済学者たちの厳しい批判を論破できないと、十分に承知していたのである。

しかし皮肉にも、マルクス主義者は自分の教義にその哲学を適用しなかった。マルクス主義の教義は偏ったものではないし、イデオロギーでもない。「階級闘争の束縛から解放され、イデオロギーの傷に染まらない純粋な知を構想する立場にある、未来の階級なき社会の知の前触れ」だという。

マルクスは資本主義を支持する議論をイデオロギーとして攻撃するが、マルクス自身の理論によれば、あらゆる階級が「自己の階級利益の追求に無反省」なのに、なぜ資本家は資本主義を正当化する必要があるのだろうか。もし資本家が自分の役割を恥じているなら、自分の行為を正当化するために優れたイデオロギーが必要だろう。しかしマルクスによれば、ブルジョアジー(資本家)は労働者を理解することすらできない。

マルクス自身の理論によれば、資本主義は人類の進化に必要な段階である。資本家は歴史の法則を実現するために、受動的に動かされている。何も悪いことはしていないはずだ。むしろ階級なき社会への架け橋として、必要な役割を演じているのだ。資本家は歴史の道具であり、自分の意志とは無関係に、人類の進化のためにあらかじめ決められた計画に従って働いている。何かしようと思っても、どうしようもないのだ。だとすれば、自分の行為が正しいと教えてくれるイデオロギーは必要ないだろう。

ミーゼスが言うように、もしマルクスが首尾一貫していたなら、労働者にこう忠告しただろう。「資本家を責めるな。資本家はお前たちを『搾取』することで、お前たち自身にとって最善のことをしているのだ」

(次より抄訳)
The Irony of Marxist Class Consciousness | Mises Wire [LINK]

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