「清算主義」は、「自由放任」と同じく、経済学者やジャーナリストの多くが非難する言葉の一つである。しかし清算主義とは、不況で非効率な企業が淘汰されれば、経済全体がより健全になるという常識にすぎない。それを否定しては資本主義は成り立たない。
本書も清算主義を批判する。著者によると大恐慌時、フーバー政権のメロン財務長官が清算主義を提言したが選挙で支持されず、代わって自由放任主義を否定するルーズベルトが大統領に選ばれたという。だがこの説は事実に反する。
メロンは清算主義を主張したが、フーバー大統領はこれを無視し、公共事業や金融緩和など介入政策を盛んに行った。しかし経済はむしろ悪化。ルーズベルトはこの政策を「もっとも向う見ずで放蕩に満ちたもの」と批判し、当選したのだ(マーフィー『学校で教えない大恐慌・ニューディール』)。
著者は「過食で心臓発作を起こした患者の治療を拒否して、ダイエットをするように勧める医者はいない」と述べ、政府の景気対策を擁護する。だが景気対策は税金が原資だから、実際は治療と称して患者から血液を搾り取るようなものだ。
著者は「民主主義の下では、政府は国民の基本的な安全を守らなければならない」という。しかし経済危機は政府自身の介入がもたらす人災だ。著者が主張する公共投資や公的融資の拡大はむしろ経済を不健全にし、国民の安全を脅かす。
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