日本はどこへ向かうべきか? 日本流ファシズムのススメ。 エンジン01選書
ファシズムとリベラルの通底
「安倍政権はファシズム」と一部のリベラル言論人は批判する。しかし彼らがどこまでその批判を貫けるか、心もとない。なぜならリベラルが信奉する社会民主主義とファシズムには、「反資本主義」という大きな共通点があるからだ。
ルーズベルト米大統領が大恐慌からの脱却を図るとして実施したニューディール政策は、リベラルな経済政策の代表例と一般には信じられている。しかし本書で宮台真司は、ニューディールは全体主義的で、ファシズム的だと指摘する。
ファシズムは市場経済を全否定する社会主義と違い、市場を温存しながら、政府が市場内部のプレイヤーとなる。国民を束ね(ファッショとは束の意味)、統合をもたらそうとする。これはまさにニューディールで行われたことである。
一方、市場を温存しながら、政府が経済を間接的に支配しようとするファシズムの考えは、社会民主主義に共通する。宮台は触れていないが、事実、スウェーデンの社会民主労働党は創設時、ムッソリーニの思想の影響を受けている。
宮台は、政府による市場の制御は正しいという認識の下、「批判を覚悟で、ニューディーラー的なファシストでありたい」と宣言する。佐藤優もファシズムを入口から拒否するのはよくないと同調する。ファシズムの誘惑は甘く忍び寄る。
ファシズム肯定の主張にはまったく同意できないが、リベラルとファシズムが決して縁遠いものではないことを示した点で、ある意味貴重な本といえる。
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