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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2020-05-10

政府への幻想

コロナ下でわかったのは、政府に対する人々の幻想だ。政府は神のような、人間を超える存在だと信じている。現実は違う。政府を構成するのは人間で、他の人間と同じく誤る可能性があり、実際に誤りやすいし、利己的だ。またコロナウイルスの特質についてほとんど何も知らない。
Public Choice and the Lockdowns – AIER

人を殺すのは無知ではなく、傲慢である。ハイエクの言う「致命的な思い上がり」である。それは現代の社会科学と政治に浸みこんでいる。十把一絡げの政策、気ままな権力、白か黒かで割り切る思考……。全員に何が最善か、わかる人はいない。社会問題に万人向けの解決策はない。
It Is Not Our Ignorance that Will Kill Us, But Our Arrogance – AIER

車で移動すると、死傷する機会は増える。それでも車を選ぶのは、それによって生じる命の危険よりも、利便やスピードを重んじている証拠だ。だからといって科学を拒否しているわけでも、不合理なわけでもない。人間が重んじるのは健康や安全だけではないということにすぎない。
Science and the Pandemic – AIER

1968-69年に流行した香港風邪は米国で10万人、世界で100万人もの死者を出した。しかし今ではほぼ忘れられている。学校や企業はほとんど休みにならず、バーやレストランにも行けた。株は暴落せず、政府の経済対策もなかった。伝説のウッドストック音楽祭はその最中に開かれた。
Woodstock Occurred in the Middle of a Pandemic – AIER

『華氏119』〜政治への幻想

私たちは何か社会問題が起こると、政治に期待しがちです。「政府が何とかするべきだ」「政治の力で解決してほしい」と声を上げます。政府はそうした声を受け、待ってましたとばかりに法律を作ったり規制を強化したりします。けれどもそれは正しくありません。世の中に政治の力で解決できる問題はほとんどないし、政府の介入はむしろ問題を悪化させます。


ドキュメンタリー映画『華氏119』(マイケル・ムーア監督)で、ムーア監督は怒りを込めて、ミシガン州フリントで起こった水道鉛汚染やフロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射をはじめとする、現代米国の社会問題を告発します。何がそれらの問題の正しい原因かはともかく、ムーア監督の怒りは理解できます。理解できないのは、問題を解決する方法として、ムーア監督の頭の中に政治しか存在しないことです。

ムーア監督は共和党のトランプ大統領を批判する一方で、大統領選の対抗馬だった民主党のクリントン元国務長官やオバマ前大統領も大手金融機関から多額の献金を受け、癒着していると正しく指摘します。そこまでわかっていながら、ムーア監督が次に期待するのは、結局は政治です。国民皆保険や労働組合との連携強化など、より社会主義的な政策を唱える民主党の新人候補たちにエールを送るのです。

米国で医療費が高騰し庶民を苦しめるのは、医療が政府の規制でがんじがらめになり、十分な供給がないからです。国民皆保険にしても解決しないのは、社会保障の財政悪化にあえぐ日本を見れば明らかでしょう。真に必要なのは規制をかいくぐって優れた医療サービスを提供する起業家ですが、この映画に登場するのは政治運動家ばかりで、自ら価値を生み出す起業家は見事なくらい一人も出てきません。社会問題を解決する第一歩は、政治への幻想から覚めることです。

<東京・TOHOシネマズ シャンテ>
(note 2018/11/25)

2020-05-09

経済危機の真因

コロナウイルスは経済危機の原因ではない。引金を引いたにすぎない。米国経済はもとから弱かった。世帯の3分の1は貯蓄がゼロで、60%は1000ドルに満たない。その主因はインフレ政策と利息収入への課税だ。連邦準備理事会と財務省は必要もないのに、家計を危機にさらしている。
This Bust Wasn't Caused by a Virus | Mises Wire

2020年の株暴落はウイルスが原因ではない。ウイルスは暴落の到来を早め、事業・移動の禁止という狂った政策が拍車をかけた。本当の原因はもろい経済だ。米国史上最も偉大な経済とやらは実は病人で、薬で痛みを感じず、元気に見えた。パンデミックは経済の病を暴き出したのだ。
How to Think About the Fed Now | Mises Wire

自由な社会は個人と地域の協力ネットワークだ。感染症が発生した地域は周辺地域と連携し、ウイルスをすばやく封じ込めるだろう。別の地域では一時的な隔離を選ぶかもしれない。情報共有も進むだろう。一方、政府は失敗しても責任を取らない。それどころか予算と権限が増える。
The Benefits of a Free Society during Pandemics | Mises Wire

ホワイトカラーの「クリエイティブ」階級は在宅勤務をしながら、うれしそうに「おうちにいよう」とお説教。現場で人と接しなくてはならない労働者階級は、ついてない。収入がなくてはやっていけず、政府のわずかな給付金を待って何週間もいらいら。それもそのうち来なくなる。
COVID Panic: The New War on Human Rights | Mises Institute

『日日是好日』〜 かけがえのない時間

時間のとらえ方には二種類あるといわれます。直線の時間と円環の時間です。西洋ではキリスト教の影響から、時間が世界の始まりから終わりまで一直線に進むと考えるのに対し、日本では一日や四季が繰り返すように、時間は円を描くように繰り返すと考えられてきたといいます。けれども時間は繰り返すと考える文化の下にあろうと、一人一人の人生にとって、時間はかけがえのないものです。


『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』(大森立嗣監督)の主人公、典子(黒木華)は二十歳の春、母に勧められてお茶を習うことになります。興味のなかったお茶の魅力に気づき、惹かれていく典子。それからの人生でさまざまな悲しみに出会ったとき、お茶が心の支えとなります。何か大切なものを失った日であろうと、ありのまま受け止め、ひたすら生きれば、どんな日もかけがえのない絶好の一日——。稽古場に掲げられた「日日是好日」という言葉を、年齢を重ねた典子は噛みしめます。

映画ではお茶の道具がいろいろと登場しますが、印象深いのは、初釜で使われる、その年の干支にちなんだ茶碗です。十二年に一度しか使われません。習い始めの頃それを聞いた典子は、戌(いぬ)の絵のついた茶碗を手にしながら驚きます。それから十二年後、典子は昔と同じ戌の茶碗を見つめます。十二年周期のサイクルを永遠に繰り返す時間に比べ、限りある人の一生。だからこそ大切に味わう価値があります。

季節は毎年同じように巡ってきても、去年の人はもうそこにいないかもしれません。典子が父を亡くしたとき、お茶の先生が一緒に縁側に座り、散る桜を見つめながら言葉少なに慰めます。このシーンをはじめ、見事な演技を見せる先生役の樹木希林さんも先日、惜しくも世を去りました。その所作、表情は、人生という時間を大切に生きなさいと語りかけるようです。

<東京・シネスイッチ銀座>
(note 2018/11/10) 

2020-05-08

緊急事態の利用

ナチスはなぜ、テロリストの仕業とされる国会議事堂への放火を見逃し、手助けまでしたのか。国家の緊急事態の下では国民がおびえ、安全と引き換えに自由を差し出すことを知っていたからだ。ヒトラーは国家防衛の名目で大統領令を出させ、市民の自由を保障する憲法を停止した。
How Hitler Became a Dictator – The Future of Freedom Foundation

ソ連は大量虐殺を行った点で、ナチスドイツと変わらない。スターリンはウクライナでの飢饉、粛清、強制収容所で少なくとも2000万人を殺害。米国はソ連の同盟国となることで、スターリンを立派に見せ、軍事支援を行い、ソ連軍が欧州の半分を45年間も占領することを可能にした。
The Consequences of World War II – The Future of Freedom Foundation

第2次大戦中、米国の主な同盟国は大英帝国とソ連で、民主主義国のお手本とは言えない。英国はピーク時で世界の陸地の25%近くを統治。ドイツや日本ほど苛酷ではなかったかもしれないが、暴力で支配していた。最強国の座を失うまいとする英国の無益な試みが大戦の一因となった。
Was the “Good War” Really Good? – The Future of Freedom Foundation

政府の悪事を非難したからといって、愛国心がないとは言えない。もし自分の国を愛していなければ、沈黙はたやすい。国を愛し、ここで自由が失われたらどこにも行く場所はないと思うからこそ、声を上げる。私たちは市民であり、臣民ではない。政府を恐れず批判する権利がある。
Protect the Right to Criticize the Government – The Future of Freedom Foundation

『search/サーチ』〜ネット社会は悪くない

インターネットの普及した、いわゆるネット社会は、しばしば批判の槍玉に上がります。ネットで他人の暮らしを見て劣等感を抱いたり、ネットでのつながりの薄さに孤独を感じたりするからよくないというのです。けれども人間心理のそうした側面は、ネット社会以前からある話でしょう。むしろ私たちは、ネット社会のありがたみをもっと噛みしめるべきです。

著者 :
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日 :

『search/サーチ』(アニーシュ・チャガンティ監督)の主人公、デビッド・キム(ジョン・チョー)は3年前に妻を亡くし、高校生の娘と二人暮らし。ある日、娘が忽然と姿を消し、行方不明事件として捜査が始まります。残されたパソコンから娘が利用していた交流サイト(SNS)にアクセスを試み、懸命に手がかりを探るデビッド。やがて事件は思わぬ展開に向かいます。

デビッドがSNSの調査を進めるうち、娘には本当に親しい友人がいないことが明らかになったり、行方不明事件がマスコミで話題になったとたん、冷淡だった同級生たちがにわかに親友ぶったりと、ありがちなエピソードが語られます。しかしこの映画はそこで安易なネット社会批判に走ったりしません。絶望しかけるデビッドに希望をもたらすのは、警察の捜索(search)という行政サービスではなく、グーグルの検索(search)サービスです。

最近、巨大ネット企業を政府が規制すべきだという意見が強まっています。けれどもいくら巨大でも、市場競争にさらされる民間企業である限り、利用者にそっぽを向かれればそれまで。劣悪なサービスでも国民に押しつける政府のほうが、よほど厄介で危険な存在です。27歳のインド系米国人で、ユーチューブに公開した短編映画で頭角を現したというネット時代の申し子チャガンティ監督は、その道理を理解しています。

<東京・TOHOシネマズ日本橋>
(note 2018/11/07)

2020-05-07

ウイルスによる死、失業による死

失業による貧困や社会的地位の喪失は、健康を損ねる大きな要因だ。この事実は、あらゆる犠牲を払ってもウイルスと戦うという近視眼的な運動に不都合なため、政治家や専門家の多くは耳を貸さない。ウイルスは失業より多くの死をもたらすというなら、立証責任は政府の側にある。
Unemployment Kills: The Longer Lockdowns Last, the Worse It Will Get | Mises Wire

科学者はたいてい社会問題に関する訓練を受けていない。市場の自然発生的な秩序という考えを理解できない。アインシュタインがあけすけに社会主義を支持したのはその一例だ。政治家が少なくともさまざまな利害のバランスを承知しているのに対し、科学者には白か黒かしかない。
Politicians Have Destroyed Markets and Ignored Human Rights with Alarming Enthusiasm | Mises Wire

保護主義で自給自足経済は可能になるかもしれないが、それは生活水準の低下というコストを伴う。国際分業が妨げられると生産性が低下するからだ。インフレ政策の助けも借りて失業は減り、名目賃金は上昇するかもしれない。だが物価も上昇し、実質賃金は急激に低下するだろう。
Facing Economic Disaster, France Turns against Globalism | Mises Wire

労働者は搾取されてはいない。製品が売られるまでには、時間がかかる。労働者が資本家と取引に応じるのは、製品の代金が入るまでの間、生活する手段がないからだ。資本家にはその手段がある。資本家は不確実性に耐え、製品が売られるまでの間、労働者に賃金を払う手段がある。
In Defense of Landlords | Mises Wire

『恋のしずく』〜日本文化を守るには

日本の文化を守るには補助金を出したり輸入品を規制したりして国産品を保護しなければならない、という意見をよく聞きます。短い間なら、いや、もしかするとかなり長い間、そのもくろみは成功するかもしれません。けれどもそのとき、その文化は死んでいるでしょう。文化とは人々の自発的な選択に支えられて初めて、血が通うものだからです。


『恋のしずく』(瀬木直貴監督)の題材は日本酒です。東京の農大でワインソムリエを目指すリケジョ(理系女子)の詩織(川栄李奈)は、日本酒嫌いにもかかわらず、単位取得に必要な研修先が広島にある日本酒の酒蔵に決まってしまいます。詩織は当初とまどいながらも、酒造りに人生を捧げる地元の人々との出会いを通じ、かけがえのない喜びを見出していきます。

海外では日本酒ブームといわれますが、国内では消費量が年々減り、酒蔵や酒販店の経営は楽ではありません。政府に酒の安売りを規制してもらい、消費者を犠牲に息をつこうという情けない動きもあります。けれどもこの映画では、誰も政治家や官庁に泣きつこうとはしません。迷い、悩みながらも、あくまでも良い酒を造るという正攻法で老舗を守ろうとします。

もちろんいくら良い酒を造っても、コストを度外視しては経営は成り立ちません。それに対する回答は映画の中では与えられませんが、もしかするとリケジョの詩織は蔵元を継いだ息子の莞爾と将来結ばれ、持ち前の合理精神を発揮して、経営を見事再建してくれるかもしれない。詩織役の川栄李奈さんによるラストシーンのすばらしい演技に続いて映し出される、瀬戸内の美しい空と海はそんな希望を抱かせます。

<東京・丸の内TOEI>
(note 2018/11/04)

2020-05-06

命とリスク

生活にたった一つの目標しかないことはありえない。目標は多様だ。問題はバランスにある。多くの人にとって自分と家族の命を守ることはとても大切だ。それでも完璧には達成できない。命を守るには食がいる。食を得るには働かなければならず、それにはさまざまなリスクが伴う。
A Protest from France | Mises Wire

政府が経済を封鎖すれば、ウイルスで死ぬ人は減るかもしれない。これは目に見える。経済封鎖がなければ、商業設備メーカーや関連企業は売上が増えたかもしれない。養護施設でもっと多くの子供を支援できたかもしれない。失業者が職に就けたかもしれない。これは目に見えない。
The Unseen Costs of Government-Forced Lockdowns | Mises Wire

米政府の税収が2019年で3.462兆ドルしかないことを考えれば、1.2兆ドルもの経済対策をすべて税金でまかなうのはほぼ不可能だ。しかし連邦準備理事会(FRB)があるおかげで、議会は納税者にお金を頼らなくて済む。FRBを頼ればいい。それこそがFRBの創設された理由そのものだ。
The Fed Doesn't Make Grants. But It Makes Federal Giveaway Programs Possible. | Mises Institute

1949〜76年に毛沢東率いる共産党支配下の中国で起こった血生臭い現実は、欧米ではほとんど知られてさえいない。死亡者は4000万人とも1億人以上ともいわれる。1959〜61年の「大躍進」の時期だけで2000万〜7500万人、それ以前に2000万人、それ以降に数千万人と推定されている。
The Horrors of Communist China | Mises Wire

過酷ノルマは民営化のせい?~経済合理性を無視する真の理由とは~

日本郵政グループのかんぽ生命保険で、新旧の保険料の二重払いなど顧客の不利益になる保険の乗り換えを繰り返していたことが相次ぎ発覚し、問題となっています。不正の背景には、販売を担う郵便局や郵便局職員に課された過剰な営業目標、いわゆるノルマがあると言われます。

販売実績に応じて営業手当が付く一方、ノルマを達成できないと、「何だこの数字は」「契約を取るまで帰ってくるな」「平日に時間がなければ土日に営業しろ」と上司から怒号が飛んだと言います。ノルマ達成が職員の重圧となり、不正につながったことは容易に想像できます。

日本郵便はかんぽ生命の保険商品について、2019年度の営業目標や販売員のノルマを廃止することにしました。しかし、この問題に対するメディアや識者の反応には、気になる点があります。それは、過酷なノルマは郵政民営化のせいだという考えが当然のように語られていることです。


ある新聞の記事では「利益至上主義に陥るのではないかという、民営化当初に懸念していた事態が現実に起きている」という大学教授のコメントが紹介されていました。民営化は利益至上主義をもたらし、過剰なノルマにつながるとの見方です。けれども、それは本当でしょうか。

ここでまず知っておきたいのは、「ノルマ」という言葉の由来です。もともとロシア語で、社会主義国家だったソ連時代、個人や工場に割り当てられた、一定時間内・期間内になすべき生産責任量を意味します。経済活動の民営を原則とする資本主義ではなく、民営を認めない社会主義に由来する言葉なのです。

この言葉を日本に伝えたのは、第二次世界大戦の敗戦直後、ソ連の捕虜となってシベリアに連行・抑留され、長期間の収容所生活を送った末、命からがら帰国した日本軍兵士らです。シベリア抑留では約6万人もが死亡したとされますが、その生命を奪ったのは、極寒、飢餓のほか、ノルマを課す過酷な重労働でした。

シベリア抑留におけるノルマの実態を少し詳しく見てみましょう。それが資本主義に由来するものでないことがよくわかるはずです。

重労働で特に厳しかったのは、炭鉱・鉱山での作業と伐採、貨物の積み下ろしです。極寒の中、斧やハンマー、のこぎり、一輪車などしか使えない、過酷な肉体労働でした。

労働は1日8時間、月4回の休日と定められましたが、それはノルマの達成が条件です。達成できなければ罰として超過労働が要求され、給食が減らされ、休日が減らされました。労働報酬の支払いはノルマの100%以上の遂行が条件だったので、未遂行の場合は支払われませんでした。

抑留者の中には、作業を免れるためみずからの手足の指をわざと切断したり、体温をごまかしたりする人もいました。ある意味で「不正」ですが、命にかかわる状況下でのぎりぎりの自衛行為だったと言えます(長勢了治『シベリア抑留』)。

収容所は独立採算制で、捕虜たちが働いた賃金によって運営されていました。所長の給与も、収容所の収入に比例します。だから捕虜たちが働けば働くほど、収容所長は豊かになりました。資本家による搾取がなくなったソ連にも搾取はあったのです。その所長にもノルマが課されていました。こうして捕虜たちは過酷なノルマ、労働を強いられたのです(栗原敏雄『シベリア抑留』)。

厳しいノルマ、達成できなければ超過労働や休日減、収入増しか頭にない上司……。数万人が命を落とした悲劇と同一視することはできませんが、かんぽ生命の批判されている営業現場とそっくりです。しかし、これらは社会主義の下で起こったことです。

過重なノルマが横行しているからといって、その原因をただちに民営化に求めるのは乱暴な議論だとわかるでしょう。

そもそも、もし民営化が過酷なノルマの原因なら、世間に多数ある普通の民間企業すべてで同じように非人間的なノルマが課され、不正営業や労働災害を招いているはずです。けれども現実は違います。もちろん会社によってノルマはありますし、中には不正や労災につながるケースもあるかもしれません。しかし、それはあくまで例外であり、大半の会社はまっとうに商売しています。

2020-05-05

同意に基づく国家

あらゆる集団・民族は、ある国家から分離し、受け入れを認める他の国家に加わることができなければならない。この単純な改革が実現できれば、同意に基づく国家ができていくだろう。もしスコットランド人が望むなら、英国からの分離や他国との連合が認められなければならない。
Nations by Consent | Mises Institute

自決権とは国家のものではなく、独立した行政単位を形成しうる規模を備えた、あらゆる領域の住民のものだ。もしどうにかして自決権をすべての個人に与えることができるなら、そうしなければならない。それが実行できないのは、やむをえない技術的な理由によるものにすぎない。
Books / Digital Text

中世欧州のハンザ同盟に都市が自発的に加入して得た利益は、外国や海賊の攻撃に対する防衛と貿易面の利便だった。同盟には明確な上下関係も公式な領域もなかった。軍事に優れ、周囲の国家に十分対抗できた。13世紀から17世紀まで存続し、競合する多くの国家よりも長続きした。
Anarchism and Radical Decentralization Are the Same Thing | Mises Wire

同じ連邦制でも、スイスは州の規模が米国よりずっと小さい。米国の小都市程度だ。もし米国がスイスと同じ人口規模の州でできたとしたら、州の数は1300以上になっただろう。もしそうなれば、納税者が重い税金を嫌って引っ越す「足による投票」は、今よりずっとやりやすくなる。
If American Federalism Were like Swiss Federalism, There Would be 1,300 States | Mises Wire

交通事故をなくすには~一般道の民営化という選択肢~

福岡市や東京・池袋で高齢ドライバーによる死亡事故が相次ぎ、議論を呼んでいます。政府は高齢ドライバー専用の新しい運転免許をつくる方針を決めました。メディアでは運転免許の定年制や強制返納制度を求める声も見られます。東京都は、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置の取り付け費用を補助する方針を表明しました。

しかし、これらの対策はドライバーの責任や車の安全対策だけをクローズアップし、問題の本質のもう一つ重要な部分を見落としています。

もし死亡事故が起こったのが、民間の娯楽施設内にあるカートコースだったら、どうなるでしょう。カートがコースを飛び出し、見物していた親子が死亡したとします。たちまち行政が立ち入り調査に踏み込み、コースの設計や安全対策に問題があったなどとして、処分を下すでしょう。運営企業は賠償責任を負い、経営者は辞任するでしょう。刑事責任を問われるかもしれません。


ところが行政自身が管理する国道や県道だと、ドライバーの責任ばかりがあげつらわれ、交通事故に対する道路行政の責任が問われることはまずありません。国土交通大臣が事故の責任を取って辞めたなどという話は、聞いたことがありません。

もちろんドライバーには前方不注意や運転ミスなどの責任はあります。車を運転する限り、不注意やミスは決してあってはならないものですが、人間の限界を前提に、運転に万一の問題があっても大事故につながらないよう気を配るのが、道路というサービスを提供する者の本来の義務の一つであるはずです。

しかし実際には、道路の安全確保に対する行政の努力は、十分とは言えません。5月に滋賀県大津市の県道交差点で起こった事故では、ガードレールや車止めのポールがあれば、事故は防げたかもしれないと言われています。保育士と園児らが歩道上の車道から離れた場所で信号を待つなど用心していたそうなので、道路の安全対策をもう一段進めていたらと考えると残念です。

大津市の事故の場合、歩道はありましたが、日本では国道ですら、歩道のない道路が珍しくありません。高度成長時代、次々に自動車道が建設された際、歩道や自転車道が併せて整備されなかったためです。1964年の東京五輪に間に合わせるため、急ごしらえで道路を作ったことも一因といわれます。このため欧米諸国と比べ、歩行中や自転車乗車中の交通事故による死者数が多くなっています(所正文ほか『高齢ドライバー』)。

来年、56年ぶりに開催される東京五輪には、欧米などから多数の外国人が訪れます。政府はこの機会に日本の魅力をアピールしようと躍起になっていますが、華やかな五輪会場の外にある危険な道路の実情が知れ渡れば、逆に日本のイメージダウンにつながりかねません。

それでは一体、道路の安全性を高めるにはどうしたらよいでしょうか。最近のように悲惨な事故が立て続けに起こり、世間の関心が高まれば、政治の力によって安全対策が一時強化される可能性はあります。けれどもそれは長続きしないでしょう。政府には道路の安全を確保する「動機」が乏しいからです。経済学で「インセンティブ」と呼びます。

2020-05-04

専門家の支配

政治家は、選挙で選ばれていない専門家に政策立案を任せたがる。不人気な政策を実施した責任は自分にないと言えるからだ。政治と無関係な判断を尊重したとも主張できる。政治家はこう言うだろう。「私を責めないでください。科学やデータを尊重しようとしただけなんですから」
America Is a Technocracy, Not a Democracy | Mises Wire

米国は地方分権のおかげで国中に政策の実験室がたくさんある。州の競争で、どの政策が役立つかわかる。ある程度の自由に恵まれる州と、自由がほとんどない州が出てくるだろう。それでいい。最大の脅威は、異なる政策をもつ州ではなく、首都に権限が集中する巨大な行政国家だ。
COVID-19 Is Teaching Us Decentralization Is Needed More Now Than Ever | Mises Wire

企業への資金支援策は、短期で不況を和らげても、長期では経済をさらに悪化させる。非常時に備えた貯蓄を怠り、借金でリスクの高い事業をしてきた企業が救われる一方で、堅実な経営をしてきた企業が他人のツケを払わされる。その結果、不健全な事業にますます資金が流れ込む。
What the COVID-19 Crisis Means for Europe and the Eurozone | Mises Wire

「誰かが貯蓄(金融資産)を増やすと他の誰かの収入が減る」というのは間違いだ。アリスが年1万ドル節約し、ボブの会社が新たに発行した株式を買う。ボブはその資金で労働者を雇う。このとき、関係者全体の収入は減らない。アリスが節約したお金は結局、労働者の収入になる。
Keynesian Fallacies Are Not Just Wrong, but Dangerous | Mises Wire

資本主義は人の絆を弱めるというウソ~偏見を和らげ、他人との協力を可能に~

「資本主義」という言葉がよくメディアをにぎわせます。「市場主義」「商業主義」などと表現されることもあります。いずれにしても、ほめられることはめったにありません。たいていは厳しく批判されるか、さもなければ、あれこれ注文をつけられるかです。

平成元年にあたる1989年11月、ベルリンの壁が崩壊して旧社会主義諸国の悲惨な実態が明らかになり、世界の人々は資本主義の正しさに確信を抱いたはずでした。あれから30年も経っていないのに、早くも資本主義に対する懐疑論がもてはやされるとは、なんともやりきれない心持ちです。

最近話題の書籍、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳、ダイヤモンド社)も、プロローグで書かれた「資本主義という怪物」という言葉が示すように、そのメインテーマは資本主義に対する懐疑論です。


著者は革ジャン姿で有名だったギリシャの元財務相で、経済学者。本書は世界中でベストセラーになっており、日本語版のカバーには「経済をこれほど詩的に語れる書き手が、いまほかにいるだろうか」と絶賛するライターの言葉が踊ります。

「詩的」に書かれているのは、表面的には事実です。ギリシャ悲劇や小説、映画などさまざまな文学・映像作品を引用し、読者の興味を引きつけるからです。けれども、詩が人間の真実を語るものだとすれば、著者の主張が真の意味で「詩的」と言えるかどうかは疑問です。

具体的に見てみましょう。家族や友人、コミュニティーの仲間はお互いに助け合います。家事を分担したり、クリスマスにプレゼントを交換したり、困ったときにご近所同士で助け合ったりです。

バルファキス氏によれば、こうしたやり取りは、ある意味で「交換」ではあるけれども、商業的な意味はなく、市場での取引とはまったく違うそうです。親密さのあかしであり、家族や地域の中で昔から培われてきた深い絆の表れと言います。

一方、市場の取引はその対極にあると言います。バルファキス氏は「一時的で、冷淡で、機械的でもある。クリックひとつでアマゾンから本を注文するときがそうだ」と述べます。

本当でしょうか。少し考えるだけで、人間どうしのやり取りは、商取引とそれ以外でそう単純に割り切れないことに気づくはずです。

インターネット書店アマゾンで子供の欲しがっている本を見つけて買い、プレゼントしたら、そんなプレゼントは「冷淡で、機械的」だと言って、子供は悲しむでしょうか。そんなことはありません。心から喜び、親子の絆はきっと深まることでしょう。

なるほど、もし売られている本ではなく、手作りの本をプレゼントしたら、子供はもっと喜ぶかもしれません。だからといって、売られている本が「冷淡で、機械的」だということにはなりません。

そもそもバルファキス氏のこの本自体、原書も日本語版もアマゾンで売られています。もしバルファキス氏が本当に、アマゾンで本を買う行為が「冷淡で、機械的」で、人の心を荒廃させると思うのなら、なぜアマゾンで自分の本を売るのでしょうか。売り物が良くないと考えるのなら、なぜ無料で配らないのでしょうか。

バルファキス氏はショッピングモールも気に入りません。「その構造、内装、音楽など、すべてが人の心を麻痺させて、最適なスピードで店を回らせ、自発性と創造性を腐らせ……」とさんざんです。

ショッピングモールが購買意欲をそそるような工夫を凝らすのは事実でしょう。そうだとしても、そこで買い物や食事を楽しむ家族の笑顔が、偽物だということにはなりません。商業的な場だから人と人とが親密になれない理由はありません。

2020-05-03

中国の世界征服

今や多くの国で政策は同じ。外出するな(政府が必要と認めた以外)、買物に出るな(政府や専門家が必要と認めた以外)、政府が命じるこれら苛酷な方法に疑いを挟むな—。これは中国による世界征服だ。コロナウイルスに勝つ唯一の方法は政府による統制だと確信させたのだから。
The Conquest of America by Communist China – The Future of Freedom Foundation

1930年代初め、ドイツ人の多くはヒトラーとナチスを支持しなかった。支持した要因の一つは、世界大恐慌として知られる経済危機だった。多くのドイツ人は大恐慌に対応し、何をしたか。それは米国人と同じことだった。経済危機から救い出してくれる、強いリーダーを求めたのだ。
Why Germans Supported Hitler, Part 1 – The Future of Freedom Foundation

「愛国心の直接の源泉は古代ローマにある。それは異教徒の美徳である。自身を偶像として崇める態度が、愛国心という形で今に遺された」「戦争は人間を野蛮な奴隷制の水準におとしめる。暴力はそれに服従する者すべてを物に変えてしまう」。仏哲学者シモーヌ・ヴェイユの言葉。
American Exceptionalism Scars Both Victim and Victimizer – The Future of Freedom Foundation

18〜19世紀英国で行われた囲い込みは、土地を失った農民が工場労働者となり、産業革命を促進したといわれる。これは大地主の政治支配によるものだった。大地主は中央の議会を通じ、あるいは地方の治安判事として権力を行使し、自分たちの有利に土地を再配分することができた。
The Enclosure Acts and the Industrial Revolution – The Future of Freedom Foundation

「新自由主義」という謎の言葉~「小さな政府」という意味ではないの?~

「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉がニュースや論説によく登場します。最近では、フランスで反政府運動「黄色いベスト」の抗議デモにさらされるマクロン政権の政策路線が新自由主義的だと言われます。

けれどもこの新自由主義という言葉、なんとも正体不明です。いちおうの定義はあるものの、実際には、どう考えても定義と正反対の意味で使われることが少なくありません。たとえるなら、赤は「血のような色」と説明された後で、青空を指差して「ほら、赤いでしょう」と言われるようなものです。これでは頭が混乱します。

たとえだけではわからないでしょうから、新自由主義がどのように正体不明で、人を混乱させるのか、具体的に見ていきましょう。


まず、新自由主義の定義を確認しましょう。辞典では「政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方」(デジタル大辞泉)、「20世紀の小さな政府論」(知恵蔵)などと説明されています。これらの定義は明確です。言い換えれば、経済に対する政府の介入を否定する考えです。

ところが実際には、この定義に当てはまらない政策や考えを新自由主義と呼び、批判するケースをしばしば目にします。

2020-05-02

恵方巻き、ロス削減要請が正しくない理由~見えない別のムダが発生~

節分の時期に店頭に並ぶ恵方巻きについて、農林水産省が作りすぎを控えるよう流通業界に要請し、話題となっています。コンビニエンスストアなどで大量の売れ残りを廃棄する様子が交流サイト(SNS)に投稿され議論を呼んだこともあるだけに、インターネット上では「いい取り組み」「当然のこと」などと好意的な反応が目立ちます。

恵方巻きに限らず、食べ残しなどで捨てられる「食品ロス」への批判が強まっています。恵方巻きについて、農水省は食品資源を有効に活用する観点から、需要に見合った販売をするよう要請したそうです。

今年2月3日の節分に向けた生産準備はほぼ終わっているとみられ、要請にどれほど効果があるか疑問もありますが、少なくとも来年以降は農水省の意向を無視できないでしょう。形式上は要請でも、政府の言うことである以上、企業側は事実上の義務と受け止めるはずです。


けれども政府主導による食品ロス削減は、本当の意味で無駄減らしにつながるのでしょうか。残念ながら、答えはノーです。

恵方巻きなど大量の食料が廃棄される様子は、視覚を通じて私たちに強烈な印象を与えます。ですが経済問題について正しく判断するには、目に見えるものだけにとらわれてはいけません。目に見えないものも考慮に入れる必要があります。

19世紀フランスの経済学者フレデリック・バスティアは「見えるものと見えないもの」と題するエッセーで、次のようなたとえ話をします。

パン屋の小さな息子がうっかり、店の窓ガラスを割ってしまいます。父親の店主はカンカンですが、見ていた人がこうなだめます。「まあまあ、悪いことばかりではないよ。たとえば、そら、ガラス屋が仕事にありつくじゃあないか」

一見、もっともらしく思えます。ガラス屋がやって来て、壊れた窓ガラスを取り替え、代金を受け取り、にっこり笑います。窓には新品でピカピカのガラス。ガラスを割ってくれたおかげで、パン屋や町内が豊かになったようにすら思えてきます。でもそれは、ガラス屋の笑顔や真新しいガラスなど、目に見えるものだけに注意を奪われているからです。

本当に豊かになったかどうかを判断するには、目に見えないものについても考えなければなりません。ガラス交換の代金が2万5000円だったとしましょう。もし窓ガラスが割れなかったら、パン屋の主人はそのお金で新しい靴を買うつもりでした。そうなれば、窓ガラスと靴の両方を持っていたはずです。

ところが実際には窓ガラスが割れ、その交換にお金を使ってしまったので、靴をあきらめ、窓ガラスだけで満足するしかありません。豊かになるどころか、手に入るはずだった靴を失い、貧しくなってしまったのです。

しかし多くの人は、それを理解しません。買いたかった靴という、目に見えないものの存在に思い至らないからです。米国の経済ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットは著書『世界一シンプルな経済学』(邦訳は日経BP社)でバスティアのこのたとえ話を紹介し、経済について正しく考えるには、目に見えないものを見る想像力が必要だと強調します。

2020-05-01

アフリカの繁栄と自由貿易

2020年7月、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用がスタートする。AfCFTAは、アフリカ連合(AU)に加盟する55カ国・地域による自由貿易圏構想。アフリカ大陸全域での単一市場創設や、資本と人の移動の自由確立を目指している。2019年5月に設立協定が発効した。実現により、人口約12億人を抱える巨大市場が生まれる。

アフリカ経済の将来に対する世界の期待は大きい。アフリカは長らく経済の停滞が続いたため、経済成長の可能性には懐疑的な見方が少なくなかった。しかし経済停滞の原因は、かつては欧州による植民地支配、近年は社会主義政策の採用によって、自由な貿易が阻害されたことにある。

歴史をさかのぼれば、アフリカには自由貿易によって繁栄した時代があった。そこで重要な役割を果たしたのは、イスラム教徒(ムスリム)商人である。

歴史上、アフリカの繁栄に寄与した重要な交易路は大きく二つある。一つはサハラ砂漠を越えるルート、もう一つはインド洋を渡るルートである。


サハラ砂漠は古くから、アフリカが外的世界と交流するうえで重要な役割を果たした。北アフリカの地中海沿岸からサハラ砂漠を越えて西アフリカのニジェール川中流域に至る交易路は、4世紀ごろにラクダを利用するようになってから発展する。

サハラを越えた南北の交渉が活発になるのは、8世紀初め、サハラ以南の西アフリカへイスラム教が浸透してからである。7世紀に興ったイスラム教はまもなく、軍事的制服によって北アフリカに進出するが、西アフリカへの浸透は商業活動を通じた平和的なものだった。また、アラブ人ムスリムの入植によってではなく、イスラム化した西アフリカの黒人諸族を通じて、間接的に浸透していった。

おもな交易品目として北から運ばれたものは岩塩、馬、装身具などの奢侈品、南から運ばれたものは金、奴隷だった。このような交易の保護と取引に対する課税の上に、ガーナ王国など広域支配の国家が形成された。

ガーナ王国は、現在までに知られているアフリカ最古の黒人王国である。現在のモーリタニア東南部を中心として、8世紀初めから11世紀末まで栄えたとみられる。都は王の町と少し離れた商人の町からなり、商人の町はすなわちイスラム教徒の町だった。商人とともに、北アフリカからイスラムの導師などの宗教家や学者も来往し、ガーナの黒人王(王自身はイスラム教徒ではなかった)に厚遇された。

2020-04-30

不要な産業?

米国でコロナを理由にスーパーに営業を認め、ホームセンターに認めないのはおかしい。どの企業だってコロナに配慮した営業はできるはずだ。政府は経済が複雑だということを理解しない。あらゆる産業は互いにつながっているから、営業できる「不可欠」な産業にも悪影響は及ぶ。
The Essentialness of "Non-Essential" Businesses - Foundation for Economic Education

米国では年に5000人が固形食をのどに詰まらせ亡くなる。法律ですべての食事を流動食にすれば、命を守れる。まずいけど我慢しよう! 普通車の事故で死亡する確率は大型四輪駆動車の2倍だ。法律で大型四駆の購入を義務付ければ、命を守れる。高くて環境にも悪いけど我慢しよう!
No Policy Can Save Lives; It Can Only Trade Lives - Foundation for Economic Education

十年以上もの超低金利で誰もが貯蓄する気を失い、借金漬けになった。世界は貯蓄という緩衝材がない中で、コロナ危機に突入した。経済はショックからの回復力がない。企業は給与を払えず、テナントは家賃を払えず、銀行は預金を払い戻せない。もちろん政府も助ける余力はない。
Generations of Keynesian Policies Have Made Us Extremely Vulnerable to the COVID-19 Economic Crisis - Foundation for Economic Education

政府の規制はしばしば逆効果になる。絶滅危惧種法により、野生動物が見つかるとその土地の用途は制限される。地主がある日、売るつもりの土地に保護対象のキツツキを見つけたらどうするか? 政府に知らせる? ノー。銃を持ってきて、ズドンと一発。密かに葬り、あとは知らん顔。
5 Unintended Consequences of Regulation and Government Meddling - Foundation for Economic Education

守銭奴は悪くない~『クリスマス・キャロル』の正しい読み方~

英文豪チャールズ・ディケンズの中編小説『クリスマス・キャロル』は、ご存じの方も多いでしょう。欲深い商人のスクルージは、クリスマスイブの夜、相棒だったマーレイの亡霊と対面し、翌日から第一、第二、第三の幽霊に伴われて知人の家を訪問します。炉辺でクリスマスを祝う、貧しいけれど心暖かい人々や、自分の寂しい将来の姿を見せられ、心を入れ替えます。

クリスマスが近づくと、この物語がよく映画やドラマになります。今年はディケンズを主人公に、物語が生まれた経緯を描く映画『Merry Christmas!~ロンドンに奇跡を起こした男~』(バハラット・ナルルーリ監督)が公開されています。

けれども残念なことがあります。どの映画やドラマも、いや実は原作も、スクルージをカネのことしか考えない非情な人物として描くことです。たしかにスクルージはカネに執着する守銭奴かもしれませんが、見えない形で、社会に恩恵をもたらしています。


まず、スクルージが長年商売を続けられているということは、多くの取引相手を満足させていることを意味します。取引相手はスクルージの性格を嫌っているかもしれませんが、それでも取引を続けるのは、商売相手として信頼できるからです。

光文社古典新訳文庫版の訳者あとがきで、池央耿さんは、スクルージについて「付き合いにくいのは事実としても、ずるはせず、人に迷惑をかけないから、信用があって商売は成り立っていたはずである」と正しく指摘しています。

スクルージは取引相手を満足させることで、間接的に取引相手の顧客も満足させます。つまり、社会全体の満足向上に貢献しています。

次にスクルージは、争いを好まない平和的な人物です。暴力は振るわないし、他人の物を奪うこともありません。カッとなって他人に「死ねばいい」と口走ることはあっても、行動に移しはしません。死者から物を奪い手柄を誇る盗人には、怒りを燃やす正義感もあります。

これはディケンズが正直な作家だったあかしでもあるでしょう。商人というものの姿を、不自然な嘘を交えず生き生きと描いた結果、暴力を振るわず、略奪もせず、争いを好まない平和的な人物にしかならなかったのです。政治家ではこうはならないでしょう。

社会に平和的な人物が一人でも増えれば、社会はそれだけ平和になります。スクルージはその意味で、社会に貢献しています。

2020-04-29

目的と手段

命と金(経済)を比較するのは間違っている。ある目的(感染死の減少)を他の目的と比べるのではなく、手段と比べているからだ。その手段によって、他の多くの目的を実現することができるのに。その目的には、別の命を救うことも含まれる。金は手段であり、最終目的ではない。
Ending the Lockdowns Isn't about Saving Money. It's about Saving Lives. | Mises Wire

政府は都市封鎖をやめれば経済がすぐに回復すると誤解している。売上とキャッシュフローの激減、その後予想される増税は、研究開発や技術革新に対し大きな重荷になるだろう。経済危機が長引くにつれ政府は保護主義や介入政策に走り、サプライチェーンをさらに傷つけるだろう。
Central Banks and the Next Crisis: From Deflation to Stagflation | Mises Wire

もし国の失業率が20%超に上昇しなければならないなら、消費者と事業主が自発的な市場行動を通じ、解雇される労働者を決めるのが望ましい。都市封鎖の下、在宅勤務が可能かどうかといった技術的要因や政治判断によって労働者の雇用が左右されると、経済に壊滅的打撃を及ぼす。
Why the Current Unemployment Is Worse Than the Great Depression | Mises Wire

政府と中央銀行による巨額の資金支援策で、人工的な好景気は維持されるかもしれない。バブル経済の破裂を次の好景気へ先送りし、金融制度の崩壊を防ぐかもしれない。一つだけ確かなのはドル、ユーロ、人民元、円など何であれ、政府通貨はその購買力を失っていくということだ。
The Destructive Effects of the Coronavirus Relief Package | Mises Wire

社会主義が破綻する理由~市場価格なしで経営判断はできない~

1917年に社会主義政権を樹立したロシア革命から11月7日で101年を迎えます。この日は旧ソ連時代の最大の祝日「革命記念日」で、赤の広場などで祝典が開かれていましたが、1991年のソ連崩壊後は政府主催の記念行事は開かれなくなりました。現在のロシアではロシア革命について、その後の社会主義政権下での政治弾圧や経済破綻の経験から、批判的な意見が多いといいます。

ところが一方、かつて資本主義陣営としてソ連と対峙(たいじ)した米英では、今になって社会主義が若者を中心に大衆の人気を集めています。

米国では2016年大統領選の民主党予備選で民主社会主義者のバーニー・サンダース上院議員が旋風を巻き起こし、11月の中間選挙に向け今年6月にニューヨークの選挙区で行われた同党予備選では、サンダース氏系で同じく民主社会主義者のアレクサンドリア・オカシオコルテス氏が現職の重鎮議員を破りました。


英国では、ジェレミー・コービン党首の下で社会主義的政策を打ち出す野党・労働党による政権獲得が現実味を帯びています。同党は鉄道を含め一部産業の国有化を目指しているほか、9月に開いた党大会では、大企業の株式の最大10%を基金に割り当て、配当を従業員に支払うよう義務付ける計画を発表しました。

ソ連や東欧の旧社会主義諸国の崩壊と、それによって明らかになった国民のきわめて貧しい生活から、世界は社会主義が劣悪で持続できない経済体制であることを学んだはずです。教訓はどこにいってしまったのでしょうか。

サンダース氏らが標榜する「民主社会主義」とは革命を否定し、議会制民主主義の中で社会主義の理想を実現しようとする考えです。独裁体制だったソ連や東欧の社会主義とは違うと支持者は強調します。けれども社会主義が持続不可能なことは、独裁制であろうと議会制であろうと変わりありません。それには理由があります。

社会主義経済が機能しない理由としてよく指摘されるのは、まじめに働いた人も怠けた人も同じ報酬しか受け取れないのであれば、誰もまじめに働かなくなってしまうというものです。これを経済学で「誘因問題」と呼びます。わかりやすく言えば「やりがい問題」です。

これに対し社会主義者は、その問題は克服できると反論します。人望厚い指導者が生産高、売上高などの目標を設定し、市民のやる気を鼓舞し、一丸となって努力すればよいといいます。要は気の持ちようというわけです。

2020-04-28

現代経済学は「見せかけの知」?~数学の誤った利用~

2018年のノーベル経済学賞は米エール大のウィリアム・ノードハウス、米ニューヨーク大のポール・ローマーの両教授への授与が決まりました。1968年に創設された経済学賞は今回が50回目の授与となります。今の経済学の本質的な問題について考える良い機会です。

今の経済学の本質的な問題とは、一言でいえば「自然科学の模倣」です。

この問題はノーベル経済学賞そのものとも深い関わりがあります。ご存じの方も多いでしょうが、ノーベル経済学賞は厳密な意味ではノーベル賞ではありません。ノーベル賞の公式サイトにも「ノーベル賞ではない(Not a Nobel Prize)」とはっきり書いてあります。


端的に示すのは正式名称です。他の賞の正式名称が「ノーベル物理学賞」「ノーベル化学賞」などであるのに対し、経済学賞は「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」といいます。スウェーデン国立銀行とはスウェーデンの中央銀行で、日本でいえば日本銀行にあたります。

物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の他の5つの賞がアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて創設され、1901年に始まったのに対し、経済学賞のスタートは前述のように、20世紀も後半の1968年。スウェーデン国立銀行が設立300周年を記念してノーベル財団に働きかけ、創設されたのです。

文学、平和賞を除けばもともと自然科学を対象に創設されたノーベル賞。自然科学者の中には、経済学賞の追加を快く思わない人々もいたようです。最初の経済学賞が贈られた同じ年、クォーク理論で物理学賞を受賞することを知らされた米物理学者、マレー・ゲルマン氏は「彼らと一緒に授賞式に並ぶということか?」と不満を鳴らしたとされます。

けれども学生時代、経済学をかじったことのある人はこう思うかもしれません。「経済学は社会科学の中では自然科学に近い学問。だって自然科学と同じように数学を駆使しているから」

たしかに今の経済学の論文や専門書は、同じ社会科学に分類される法学や政治学、社会学などと異なり、まるで物理学のように数式や記号にあふれています。経済学者自身、数学に基づく厳密な学問であるという誇りを込めて、経済学を「社会科学の女王」と呼ぶことがあります。

経済学が数学を多用することには理由があります。自然科学の手法をまねてきたからです。物理学者の長沼伸一郎氏は経済学で用いる数学について「物理や天体力学の世界で成功した数学技法で使えそうなものを寄せ集めて作られた」(『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』)と指摘します。

2020-04-27

世界恐慌を予言した人たち~金融緩和がはらむ反動リスク

2008年秋のリーマン・ショックから10年。世界経済や金融システムは息を吹き返しましたが、新たな危機の予兆も見え隠れします。背景にはこれまで低金利に支えられた世界経済が、米国の利上げで曲がり角を迎えるのではないかとの懸念があります。

リーマン・ショック以降、主要国の大規模な金融緩和が長らく続くなか、新興国には大量のマネーが流入しました。しかし経済が好調な米国が2015年末から7回に及ぶ利上げを実施したことで、緩和マネーが米国に向け逆流しています。一方で、足元の世界景気はなお拡大しています。

こうした現状から連想されるのは、1929年10月のニューヨーク株暴落をきっかけに起こった世界恐慌です。当時、恐慌が襲う直前、世界経済は好景気に沸き、米国は利上げに転じていました。


世界恐慌をほとんどの専門家は事前に予測できませんでしたが、一部には早くから経済危機のリスクを察知し、警鐘を鳴らした人々もいました。その出身国にちなみ「オーストリア学派」と呼ばれる経済学者たちです。

その一人は、のちにノーベル経済学賞を受賞するフリードリヒ・ハイエクです。1929年初め、オーストリア景気研究所の所長を務めていたハイエクは、研究所の月報に発表したいくつかの論文で、米景気は数カ月以内に崩壊するだろうと警告しました。長期の金融緩和で景気を過熱させてしまった米連邦準備理事会(FRB)が、もはや手遅れになってようやく引き締めに転じると決定したからです。

ハイエクは1975年のインタビューで当時をこう振り返ります。「私の確固たる経済理論をもって確信したことは、インフレ景気を維持することは不可能であることである。そういった一過性の景気はいわゆる見せかけの仕事を生み出し、しばらく人は仕事にありつけるが、遅かれ早かれその景気は急落してしまうものだ」(ロバート・P・マーフィー『学校で教えない大恐慌・ニューディール』。表記を一部変更)

恐慌前、FRBは金融緩和の大義名分として、物価の下落を食い止めることを掲げました。今風にいえばデフレとの戦いです。これに対しハイエクは、物価下落を防ぐためのマネー注入こそがバブルとその反動による恐慌をもたらすと批判しました。

2020-04-26

脱現金社会の影~プライバシーや財産保全にリスクも

政府が現金を使わない決済の比率を2025年までに40%に高める目標を掲げ、日本経済のキャッシュレス(脱現金)化を後押ししています。6月に閣議決定した18年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、中小企業を対象に「IT・決済端末の導入やポイント制・キャッシュレス決済普及を促進する」と明記。経済産業省は8月末にまとめる19年度予算案の概算要求までに、制度や予算規模などの詳細を詰める予定です。

主要国でクレジットカードや電子マネーなどで支払う非現金決済の比率が5割を超える中、日本は2割にとどまるそうです。日本は「キャッシュレス後進国」だという表現もメディアで目立ってきました。


先行する北欧諸国などを手本に、キャッシュレス化を推進しようとの声が高まっているのは日本だけではありません。国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストの経験もある米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授は著書『現金の呪い』などで、高額紙幣の廃止を唱えます。

キャッシュレスはたしかに便利です。1枚のカードで電車や地下鉄、バスに乗れるだけでなく、飲食店やコンビニエンスストアで支払いもできるのは重宝しますし、財布が小銭で重くならないのも助かります。市場経済の自然な流れとしてキャッシュレス化が広がるのであれば、大いに歓迎です。

2020-04-25

政府は無駄を減らしたがるか?~「証拠に基づく政策」の限界~

データ分析を活用した「証拠に基づく政策立案」が注目されています。Evidence Based Policy Making(EBPM)の訳で、政策の効果を定量的に把握して合理的な意思決定を行おうとする試みです。欧米では近年この考えが浸透し、日本でも導入する動きがあります。

もし証拠に基づく政策立案で行政の効率が高まり、税金の無駄遣いを減らすことに役立つのであれば、結構なことです。しかし実際の効果には懐疑的にならざるをえません。この手法には、大きく2つの限界があるからです。

統計学を駆使した経済政策の分析には、たしかに興味深いものがあります。2008年、リーマン・ショックに襲われた米国では景気刺激策として、低燃費車を高燃費車に買い替えれば約40万円の補助金を与える「ぽんこつ車買い替え支援プログラム」を行いました。この政策について、ある経済学者は車販売数の推移を分析し「一時的に駆け込み需要を生んだだけで、結果的には需要の総計を増加させはしなかった」と結論づけたそうです。


経済学者の伊藤公一朗氏は著書『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』で、日本のエコポイント政策についても同様のデータを収集し分析を行うことは可能なはずだと指摘します。その結果が行政の効率アップにつながれば、喜ばしいことです。

2020-04-24

政府権力の分散

あらゆる政府は自由を脅かす。合衆国憲法の長所は政府の権力を分散させた点だ。たしかに州政府に多くの権限を認めているし、州政府はそれを濫用できる。しかし米国には50の州がある。これは権力の競争を生む。カリフォルニアの政策が気に食わなければ、テキサスに引っ越せる。
Breaking the Tenth Amendment | | Tenth Amendment Center

合衆国憲法は連邦政府に対し、都市封鎖の是非を判断する権限を与えていない。それは州知事の権限だ。トランプ大統領が州に封鎖をやめさせるのは良いことだといって、それに賛成するのは正しくない。今日トランプに権限を与えれば、将来、社会主義者がそれを使うかもしれない。
Why the Tenth Amendment Should Trump Trump if You Want Liberty | | Tenth Amendment Center

米国でテロや麻薬取締を理由に、連邦政府と州の警察で組織する共同部隊が急増している。合衆国憲法に定める連邦レベルの犯罪は反逆、公海上での海賊及び重罪(殺人等)、通貨偽造、国際法に対する犯罪のみ。それ以外の連邦犯罪の新設は違憲だ。監督者も不明確で自由を脅かす。
Joint Law Enforcement Task Forces are Creating a National Police State | | Tenth Amendment Center

米議会予算局がコロナ前から警告していたのは、政府債務の増大が経済成長の妨げになる恐れだ。債務残高がGDPの90%を超えると成長率を平均30%押し下げるという。債務比率はコロナ前ですでに106.9%。2010年に90%を突破して以来、成長率は1960〜2009年の平均を33%下回っている。
That Didn't Take Long: U.S. National Debt Exceeds $24 Trillion | | Tenth Amendment Center

マルクス『資本論』は何を間違えた?~商品の価値を決めるのは労働量ではない~

この2018年は、共産主義の父といわれる哲学者・経済学者、カール・マルクスの生誕200年にあたります。出生地であるドイツのトリーアで記念式典が開かれ、青年時代を描いた映画が各国で公開されるなど、話題を集めています。

先月創刊した、古典・名著をマンガ化する新シリーズ「講談社まんが学術文庫」の初回刊行分にも、マルクスの主著『資本論』が入りました。近代資本主義が興隆する19世紀英国を舞台に物語が展開し、『資本論』のエッセンスを解説します。若い登場人物たちのドラマは楽しめます。


けれども、原作である『資本論』が不朽の古典として扱われることには抵抗を感じます。今からみれば、経済について完全に誤った考えに基づいているからです。

たとえば「等価交換」という考えです。マンガ版ではパン屋と八百屋が売れ残ったパンと野菜を交換し、その交換が成り立つのは互いの商品が同等の価値を持つからだと解説されます。

何となく納得してしまうかもしれません。しかし人が物を交換するのは、相手の物が自分の物と同じ価値を持つからではありません。もしそうなら、多くの買い物客がスーパーやコンビニを出たとたん店に引き返し、不良品でもないのに、買ったばかりの商品を返し、お金を取り戻そうとするはずです。同等の価値を持つことが交換の理由なら、商品とお金の交換を何度繰り返しても、人は満足するはずだからです。

しかし現実にはそんなことをする人はいません。買い物客は、払ったお金よりも買った商品の価値が大きいと思うからです。一方、店の主が商品を手放すのは、逆に商品よりもお金の価値が大きいと思うからです。

つまり交換が成り立つのは、同じ物(お金も物の一種です)でも人によって価値の大小が違って見えるからなのです。

ここからわかるのは、物の価値とは、それを作るためにかかった労働量などの客観的な基準で決まるのではなく、人それぞれの主観によって決まるということです。この事実は1870年代、オーストリアの経済学者メンガーらによって明らかにされました。経済学の歴史上、革命的な発見といわれます。

しかし、それ以前の世代に属するマルクスは旧来の考えにとらわれたままでした。1867年に全3巻のうち第1巻が出版された『資本論』は誤った古い考えによって書かれたため、つじつまの合わないおかしな主張が多いのです。「等価交換」はその一つです。

2020-04-23

唯一の方法

呼吸器疾患を止める唯一の方法は集団免疫だ。コロナ感染者の多くは、無自覚かきわめて軽い症状で済む。子供は特にそうだ。だから学校は休みにせず、子供たちに早く免疫をつけさせなければならない。曲線平坦化戦略は集団免疫を遅らせるだけでなく、経済生活まで台なしにする。
The Jackboots Of The Virus Patrol – The Future of Freedom Foundation

共和・民主両党の政治家はサンダース氏を総攻撃し、今の米国を分かつのは資本主義と社会主義だと国民に信じさせようとした。だが真に分かつのは国家統制と純粋な市場経済だ。GDPに占める医療費の45%は政府部門、55%は民間部門だが、民間部門は全体が規制の網に覆われている。
Right, Bernie! We Are All (Ersatz) Socialists Now – The Future of Freedom Foundation

イタリアでは高齢者や虚弱な人がコロナ関連の死者の大半を占める。コロナ感染症は人口全体に影響する死病ではない。感染力は高いものの、重篤化するのは隔離可能な一部の人々だ。彼らを手厚く保護し、世話をするには、狂ったような都市封鎖にかかるコストのほんの一部で済む。
Republicans Are Now Good For Exactly ........ Nothing! – The Future of Freedom Foundation

米FRBは昔も今もウォール街の卑屈な召使いで、株暴落を死ぬほど恐れている。米経済は好調だというこれまでの馬鹿げた主張が物笑いになるからだ。何十年にも及ぶケインズ流の金融政策のせいで、米国は価値を生む強靭な企業ではなく、株取引と金融工学の複合施設に成り果てた。
The Money-Printing Gods Have Failed – The Future of Freedom Foundation

政府に財源はない

多くの人は、政府には危機に備えた特別な財源があると信じている。それは夢でしかない。政府には民間から取る以外、財源はない。都市封鎖とは民間活動の停止であり、それは政府がコロナとの戦いを長くは続けられないことを意味する。封鎖から経済を自由にしなければならない。
Bureaucrats Can't Fix This | Mises Wire

官僚には有効なコロナ対策を探し出す動機がない。起業家は利益を得ることさえできれば、特定の市場に参入するのに十分な条件となる。起業家は必要な対策を発見するだろう。危機のさなかに経済を機能させる指針も示すだろう。個人がウイルスと共存する枠組みも提示するだろう。
We Can't Just "Restart" the Economy Where We Left Off | Mises Wire

世間一般の見方とは逆に、物価の下落は何も悪くない。それどころか、自由な市場経済の特徴は、購買力が時とともに高まっていく物をお金として選ぶところにある。自由な市場では、お金の購買力の上昇、つまり物価の下落を通じて、多くの人々がさまざまな商品を買いやすくなる。
Even If the Fed Keeps Pumping Money, We May Still See Deflation | Mises Wire

コスト削減は企業が過去の誤った決定を修正する唯一の方法だ。それによって企業は各種の行き過ぎを清算し、状況を正常化しようとする。だから金融緩和策でこの調整を抑止すれば、経済は一段と低迷し、貧困をもたらす。そもそも中央銀行の金利操作が企業の経営判断を誤らせる。
"Cost Cutting" Is Necessary to Expand Real Investment | Mises Wire

行動経済学の落とし穴~人間は本当に「不合理」か~

「行動経済学」が注目されています。人間は常に合理的に行動するものだという前提で築かれてきた従来の経済学に異を唱え、心理学に基づき、人間の不合理な経済行動を解明するという学問です。

最近人気の本、『ヘンテコノミクス』(原作・佐藤雅彦氏/菅俊一氏、画・高橋秀明氏)は行動経済学をマンガで解説します。全23話のエピソードで紹介される行動経済学のさまざまな知見は読んで楽しく、興味深いものがあります。


けれども一方で、各エピソードで人間の「不合理」さが明らかにされ、「人間とは、かくもヘンテコな生きものなり」という決めぜりふが繰り返されるうち、「本当にそうかな?」と疑問もわいてきます。

2020-04-22

『君たちはどう生きるか』の忘れ物~世界平和のカギは人間の利己心~

漫画『君たちはどう生きるか』(原作・吉野源三郎氏、漫画・羽賀翔一氏)と原作の小説がともにベストセラーとなっています。中学生の「コペル君」とその「叔父さん」の交流を描く物語には、心を打つ言葉がいくつもあります。

ところが一方で、惜しい部分もあります。ところどころに叔父さんの「ノート」が挿入され、コペル君が日常で抱いた疑問に対し、博識な叔父さんが学問上の知識をもとに解説してあげるのですが、首を傾げたくなる記述が散見されるのです。特に経済に関する記述です。

経済というと、技術的でささいな話だと思うかもしれません。しかし決してそうではありません。


原作者のジャーナリスト、吉野源三郎氏は平和運動家としても知られました。もともと戦前の1937年に出版された原作には、言論弾圧を警戒し、ストレートに反戦を訴える表現こそありませんが、言葉の端々に平和への願いが感じ取れます。しかし叔父さんの言葉に表れた吉野氏の経済に対する考えは、皮肉なことに、自身の平和への願いと矛盾しかねないのです。

2020-04-20

経済封鎖と税収

米国で州や市が強制した経済封鎖のおかげで、州・市の税収は急減している。これは知事や市長に圧力となり、封鎖を緩める方向に働くだろう。税収が回復しなければ、職員は解雇され、予算は大幅カットを余儀なくされる。政治家は耐えきれず、経済正常化のきっかけになるだろう。
Thanks to Lockdowns, State and Local Tax Revenues Are Plummeting | Mises Wire

米国で都市封鎖の解除を巡り、連邦政府の権限を制限する合衆国憲法修正第10条がにわかに注目されている。同条を守れば、連邦政府は麻薬撲滅戦争、福祉政策、公有地管理、移民管理、農家支援、食品安全規制、雇用規制、環境規制のどれもできなくなる。それらは州でやればよい。
In Bid to Extend Lockdowns, Leftist Governors Embrace "States' Rights" | Mises Wire

中央銀行がなければ、金融市場は十全に機能する。短期金利が年率15〜20%に上昇すれば、不要不急の借金は減り、真に必要な企業にお金が回る。一方、現金の余っている人は預金する意欲が高まり、貸出に回すお金がさらに増える。中央銀行が金利上昇を妨げると、こうはならない。
What If the Fed Did Nothing? | Mises Wire

もし中央銀行がなければ、世界は急激なデフレに見舞われるだろう。金融機関の多くが損失を被るのはもちろん、株式、不動産など何十年もテコ入れされてきた資産の価格が下落するだろう。その結果、多くの人が資産を買いやすくなり、グローバル経済の構造変化につながるだろう。
Central Banks around the World Embrace Unprecedented "Quantitative Easing" | Mises Wire

金の価格が40年ぶり高値! なぜ人は「金を買う」のか知っている?

金価格が歴史的な高値に上昇している。国内での販売価格は1グラム当たり6000円を突破し、40年ぶりの高値である。金価格は昨年からじりじり上昇しており、今年に入ってからも勢いが衰えない。

金が買われる理由として、経済ニュースではいくつかの要因をあげる。米国の利下げ、米中貿易摩擦の激化、米軍によるイラン革命防衛隊の司令官殺害をきっかけとした中東情勢の緊迫などだ。

けれども、これらの一見バラバラな出来事がなぜ金価格の上昇につながるのか、よくわからない人もいるのではないだろうか。じつは、ニュースでは説明を省いてしまう場合が多いが、金が買われる背景には、共通する根本原因がある。それは「インフレへの恐れ」である。

インフレはお金の価値が下がり、デフレはお金の価値が高まること


私たちは普段、中央銀行が作った紙幣(お札)をお金として使っている。紙幣はその名のとおり、紙でできているので軽く、持ち運びに便利というメリットがある。もちろんデメリットもある。それは、お金としての価値が減る危険にさらされる点だ。


私たちは日頃、物の価値を測るモノサシとしてお金を使っている。1万円のゲームソフト、10万円のスーツといった具合だ。だから、お金そのものの価値と言われると、それが増えたか減ったかをどうやって測るのか、ピンとこないかもしれない。

物の価値をお金で測るのと逆に、お金の価値は物で測る。ネットショッピングで、あるお菓子の10個セットが今日1000円で、1年後に2倍の2000円に値上がりしたとすると、そのお菓子で測ったお金の価値は半分に減ったことを意味する。同じ1000円で半分の5個しか買えないからだ。逆に、同じお菓子セットが半分の500円に値下がりしたとすると、そのお菓子で測ったお金の価値は2倍に増えたことを意味する。同じ1000円で2倍の20個買えるからだ。

ただし、物の値段は特殊な理由で上下することも少なくない。お菓子が値上がりしたのは芸能人に紹介されて人気になったからかもしれないし、値下がりしたのは健康に害があると報道されたからかもしれない。

2020-04-19

失われた権力分立

米国では1937年、ルーズベルト大統領が最高裁裁判官の増員でニューディール政策への違憲判決をやめさせようと脅かして以来、権力の分立が損なわれた。連邦政府の権限を限定する原則が失われ、議会が行政に立法を丸投げしても合憲となる。憲法は何の歯止めにもならなくなった。
We Can Do Worse Than the Framers' Constitution - Law & Liberty

州知事や市長には憲法上、何が不要不急の活動かを決める権限はない。教会の封鎖は合憲ではありえない。コロナ対策はマスク着用、社会的距離、屋外礼拝など、より緩やかな方法で可能だからだ。NY市のデブラシオ市長は憲法遵守の誓約を破り、教会の永久封鎖もありうると脅した。
Do governors have the right to decide which human activities are essential? - Washington Times

自由とは、政府の許可なしに個人としての選択ができること、つまり自由意志の実践である。自由意志の実践は人が生まれながらにして持つ権利だから、政府がそれに合憲的に介入しうるのは、詐欺や暴力で他人の権利を侵したと、公正な裁判によって有罪宣告されたときだけである。
During these dark days, government must protect freedom and not assault it - Washington Times

法学者が米国民3000人を対象に、憲法違反が疑われるコロナ対策8項目について賛否を聞いた。外出禁止、政府施設への患者留置、帰国者の入国禁止、政府による企業買収、医療従事者の徴用、礼拝の停止、ウイルスに関する「偽情報」の拡散禁止。いずれも回答者の多数が賛成した。
Will COVID-19 Kill the Constitution? – Reason.com

最賃引き上げ問題、中小零細企業への補助が招く一喜一憂

安倍晋三首相は1月20日、同日召集された通常国会で施政方針演説を行い、今年の政府方針を述べた。

その中で、安倍政権のこれまでの実績のひとつとして挙げたのが、企業が従業員に支払わなければならない最低賃金の引き上げだ。安倍首相は「史上初めて全国平均900円を超えました」と胸を張った。

政府は昨年6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で「より早期に全国加重平均で1000円を目指す」との目標を掲げている。

これに対し野党はいずれも、1000円以上への引き上げを求め、一部ではさらに大幅な引き上げを主張する。昨年4月、山本太郎前参院議員が設立した新党、れいわ新選組は、公約のひとつとして最低賃金1500円の実現を掲げた。共産党も全国一律で速やかに1500円を目指すとしている。

賃金引き上げを歓迎する日本の世論


大手メディアはおおむね、最低賃金の引き上げに賛同する。さらに踏み込んで、最低賃金の都市と地方の格差を縮めるため、「地方の最低賃金を一層引き上げるべきだ」(毎日新聞社説、2019年8月1日)とする主張もある。要するに、日本の世論は最低賃金引き上げの大合唱である。

この事実には愕然とせざるをえない。日本人の多くは、中学・高校で経済学の初歩くらいは学んだはずだ。そこで必ず教わる法則がある。「需要・供給の法則」である。


競争が自由な市場経済では、供給量(売ろうとする商品・サービスの量)よりも需要量(買おうとする商品・サービスの量)が少ないと、商品が売れ残るので市場価格は下がる。 需要量よりも供給量が少ないと、商品・サービスが足りなくなるので市場価格は上がる。このように市場価格が上下に動くことによって、供給量と需要量が釣り合い、売れ残りも品不足もない状態に近づいていく。

ところが、何かの理由で価格の動きが妨げられると、供給量と需要量の調整ができなくなる。供給量と需要量が釣り合う水準まで価格が下がらないと、商品が売れ残る。釣り合う水準まで価格が上がらないと、品不足が解消されない。

需要・供給の法則は、労働者が提供するサービス、つまり労働にも当てはまる。労働の価格、つまり賃金が自由に上下に動けば、労働者が提供する労働の供給量と、企業などが求める労働の需要量がうまく釣り合う。

2020-04-18

支配者への愛(アダム・スミス)

アダム・スミスによれば、人々が権力者に従順なのは、利益への期待や処罰への恐れからではない。支配者への愛や敬意が身についているからだ。支配者の虐待に対する怒りが暴力に達すると、人々はすぐに後悔し、反対したはずの暴力によって、滅ぼした旧権力を再建しようとする。
Adam Smith on why people obey and defer to their rulers (1759) - Online Library of Liberty

英社会学者スペンサーによれば、自発的な交換が支配する平和な社会では、階級格差は存在しない。階級とはある集団が他の集団を暴力で支配し搾取するものだが、それが生まれるのは戦争が社会の特徴となってからだ。戦闘とそれを支える物資補給を行う必要から、階級は生まれる。
Herbert Spencer observes that class structures emerge in societies as a result of war and violence (1882) - Online Library of Liberty

英経済学者ジェームズ・ミルは、フランス自由主義派に基づく階級理論を発展させ、政治とは相争う二つの集団の闘争だと述べた。すなわち、収奪する「支配する少数」と、収奪される「従属する多数」である。特権を握る少数エリートから権力を奪わない限り、自由は獲得できない。
James Mill on the ruling Few and the subject Many (1835) - Online Library of Liberty

仏経済学者モリナリによれば、戦争で潤う政官軍エリートや軍事産業など支配階級のメンバーがよく組織されているのに対し、戦費を負う被支配階級はばらばらで組織立っていない。この状態が終わるのは、納税者と生産者が、支払いを強いられている多額の出費に気づくときだろう。
Molinari on the elites who benefited from the State of War (1899) - Online Library of Liberty

貿易戦争の敗者は国民〜関税で輸入品値上がり、暮らしを圧迫

「貿易戦争」という言葉をニュースでよく目にする。国と国との間に起こる貿易問題を戦争にたとえた表現だ。

国家間の貿易問題には「貿易摩擦」という言葉も使われる。貿易戦争はさらに事態がエスカレートし、国と国が互いに武器で攻撃し合っているイメージが加わる。

武器に当たるのは、相手国からの輸入品にかける関税だ。

関税がもともとの値段に上乗せされるから、その分、輸入品の値段が高くなり、国産品との競争が不利になる。政府は相手国の製品に対する関税を引き上げたり、それまで関税の対象外だった製品を新たに対象に加えたりすることで、輸入品の競争力を落とし、国産品の競争力を相対的に高めることができるわけだ。

「米中貿易戦争で勝つのはどちらか?」という間違った問い


今注目されているのは、米国と中国の間に起こっている米中貿易戦争だ。

経緯を振り返ると、最初に仕掛けたのは米国だった。米国のトランプ大統領は2018年3月、中国を含む海外製の鉄鋼製品を対象に25%の関税をかける措置を発表した。さらにロボットや半導体、家具、家電などさまざまな製品に関税をかける。


中国も黙ってはいない。米国から買っていた大豆、牛肉、自動車などに関税をかけて報復に出る。これに対し米国がさらに報復し事態がエスカレート。対立は2019年に入っても続いた。12月、両国の貿易交渉で一定の合意に達したことから報復合戦は一時休止しているものの、なお火種はくすぶっている。

さて、貿易問題をめぐる米中の対立は、米中貿易戦争としてマスコミで大きく取り上げられている。たしかに両国が互いに関税措置を発動し、報復し合う姿は戦争を連想させる。

しかし忘れてならないのは、それは表面上、似ているにすぎないということだ。戦争という言葉に引きずられると、貿易問題の本質が見えなくなり、的外れな議論をしてしまうことになる。

2020-04-17

政治家は政治家

政府は平時でさえ、問題が多く無責任で不当な政策を多く支持する。緊急事態とパニックになると、ただでさえ弱いブレーキがさらに利かなくなる。本当のところ、政治家はいつだって政治家のままだし、危機に襲われたからといって、彼らが間違った考えを捨て去ることはまずない。
Beware of Panic Policymaking – AIER

トランプ米政権が決めた2.3兆ドルの経済対策は、政府と癒着した企業・団体への愛があふれる。郵便の利用が減っているのに郵便公社に100億ドルの支援。航空業界は担保になる多額の資産があるにもかかわらず、500億ドル支援。農家は補助金240億ドルに加え、緊急支援で95億ドル。
For the Love of Cronies – AIER

米疾病対策センター(CDC)の総支出は2004〜18年に83億ドルから111億ドルへ30%増えたが、その大半は感染症対策には充てられなかった。多くは喫煙、飲酒、低栄養の防止などだ。環境衛生、労働安全衛生などは他の省庁と重複している。若者の電子タバコ使用への警告にも熱心だ。
The Monumental Failure of the CDC – AIER

政府が株価を上げたければ、あらゆる関税をただちに撤廃しよう。すぐに効果は出なくても、経済回復が始まればそれを加速するだろう。またコロナ感染症に関し民間の実験に対する規制を廃止しよう。面倒でのろい承認手続のせいで民間の研究所は自前の検査をすることができない。
Sorry, But Stimulus Policies Will Not Work – AIER

欧米で広がる社会主義ブーム 過去の破綻は忘れられたのか

今から30年前の1989年11月、東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊した。ソ連や東欧の社会主義諸国が終わりを迎えるきっかけとなった歴史的出来事だ。ところが現在、欧米の若者などの間で社会主義ブームが盛り上がりを見せている。

米調査会社ギャラップが先ごろ公開した最新世論調査では、18〜39歳の世代で資本主義の支持率が大きく低下し、社会主義の支持率がほぼ同程度になった。2020年の米国大統選挙に向けて、民主社会主義を打ち出すバーニー・サンダース上院議員の人気が高まっている。

英国では、ジェレミー・コービン党首の下で水道、電力、鉄道、郵便の再国有化など社会主義的政策を打ち出す野党・労働党が存在感を増している。12月12日に総選挙を控え、世論調査での支持率は与党・保守党にリードを許しているものの、コービン氏に対する草の根の党員票の支持は根強い。

ソ連や東欧諸国の負の歴史


若い世代がソ連や東欧諸国の歴史を知らず、反資本主義のムードに乗って社会主義に漠然とした憧れを抱くのは、無理もないことかもしれない。

けれども、社会主義はかつてソ連や東欧、中国、カンボジアなどで、餓死や強制収容所送り、強制労働、死刑などによって膨大な死者を出した。その数は8500万から1億人に達するとされる。

共産主義黒書〈ソ連篇〉 (ちくま学芸文庫)
共産主義黒書〈ソ連篇〉 (ちくま学芸文庫)

サンダース氏らが標榜する民主社会主義とは革命を否定し、議会制民主主義の中で社会主義の理想を実現しようとする考えである。独裁体制だったソ連や東欧の社会主義とは違うと支持者は強調する。

けれども社会主義が持続不可能なことは、独裁制だろうと議会制だろうと変わりはない。それには経済的な理由がある。

2020-04-16

大恐慌の俗説

フーバー米大統領が不況に対し何も手を打たなかったため大恐慌を招いたという通説は誤りだ。フーバーに対し、大統領選で対抗馬となったルーズベルトは、米国史上「最も課税と出費の大きな政府」と攻撃。副大統領候補のガーナーは「国を社会主義への道に導いている」と断じた。
Media Are Still Peddling One of the Great Myths of the Great Depression - Foundation for Economic Education

ジョージ・ワシントンの栄光の時は米独立戦争のさなかでも、大統領時代でもなかった。権力を拒んだ時だ。戦争に勝利後、独立軍総司令官の職を辞した。大統領を2期務め、永世大統領にとの声もあったが辞退した。自由な人々に、権力の永続と集中を避けるよう身をもって示した。
A Nation’s True Test Comes After the Crisis - Foundation for Economic Education

14世紀の欧州で黒死病(ペスト)が大流行した際、一部ではユダヤ人やジプシーなど少数者のせいにされ、迫害・虐殺を招いた。地方の役人が危機に便乗し、死者の遺産や不動産を盗むこともあった。疫病は4年で終息したが、欧州の人口が以前の水準を取り戻すのには200年かかった。
The Black Death and the Coronavirus: Lessons from the 14th Century - Foundation for Economic Education

独ドレスデンの主婦メリタ・ベンツは1908年、35歳のとき、コーヒーの搾りかすを取り除くペーパードリップシステムを考案した。家族で会社を興し、最初は家庭で製造。1909年のライプツィヒ市で注目され、人気になる。1936年にデザインを変え、現在おなじみのコーン型になった。
How a German Housewife Fed Up With Grounds in Her Coffee Revolutionized the Famous Drink - Foundation for Economic Education

行政任せの防災が命を奪う モラルハザードの危険性

台風19号による豪雨は全国で甚大な被害をもたらした。NHKの報道によると、10月22日までに84人が亡くなり、9人が行方不明となっている。6万2409棟以上の住宅が水につかり、およそ4765棟の住宅が全半壊や一部損壊の被害を受けた。

安倍晋三首相は、福島県や長野県の被災地を視察。「国としてできることはすべてやる」と強調した。

行政の対応について、主要メディアは「住民の救助と生活の再建へ全力を挙げなければならない」(朝日新聞)、「あらゆる手だてを講じてもらいたい」(河北新報)と発破をかけている。被災者や、その苦しむ姿をメディアで目にした国民の多くも、同じく国に期待をかけているようだ。


今回の台風のように、大きな自然災害が発生すると必ず政府が救援や復興の先頭に立つ。その光景をあまりにも見慣れているため、国民もメディアもそれが当然と信じて疑わない。ところが皮肉にも、政府のそうした積極的な災害対策こそが被害拡大の一因になっている可能性がある。

モラルハザードを引き起こす政府の災害対策


経済学に「モラルハザード」という言葉がある。もともとは保険用語で、保険に加入したことによって、加入者が果たすべき注意を怠ったり、故意に事故を起こしたりするリスクのこと。経済学ではより広く、安全対策が逆に引き起こすリスクを意味する。つまり、危険回避の手段や制度を整備することにより、かえって人々の注意が散漫になって規律が失われ、危険が高まることを指す。

政府の災害対策はモラルハザードを引き起こす懸念がある。日本では、災害後の迅速な復旧による生活の安定を目的に、災害復旧制度が設けられている。対象となる施設は河川や道路をはじめ、下水道、農地、港湾、漁港、公立学校など幅広い。この制度の特徴は、国庫補助率の高さだ。

2020-04-15

バブルがはじけない理由

市場原理が働けばバブルはいつかはじける。でも誰もそれを望まない。だからバブル崩壊を避けるために、市場経済は統制経済へと変質させられる。生産手段は形式的に民間が所有するものの、実際は政府と利益団体が価格や金利、賃金を統制する。これはナチスドイツの経済体制だ。
Why This Bubble Economy Keeps Going and Going | Mises Wire

不換紙幣制の下では、金本位制と異なり、中央銀行は商業銀行と連携し、貸出を増やすことで通貨供給量を増やす。所得や物価が低下すると、企業や家計、政府の過剰な借金があらわになる。政府はそれを防ぐために経済に介入を強める。不換紙幣制の行き着く先は政府権力の強化だ。
With Bailouts, Governments Are the Big Winners | Mises Wire

今の経済学によれば、インフレとは消費者物価で年2%以上の上昇をいう。だが通貨供給量の増加は消費財だけでなく、株式、債券、不動産など資産価格にも影響する。資産価格の上昇は消費財の値上がりと同じくお金の購買力を下げる。ドルもユーロも不換紙幣は購買力を失っていく。
Fed-Driven Asset Price Inflation Means You Can Now Buy Less House Than You Could Before | Mises Wire

中央銀行が、自分は健全な経済と金融市場の安定に責任があると人々に知らせると、投資家はこう考える。もし経済や金融市場が崩壊しかけたら、中央銀行が介入し、危機と闘ってくれるだろう、と。この考えは、投資家がさらなるリスクを取り、リスクを過小評価するよう仕向ける。
The Era of Boom and Bust Isn't Over | Mises Wire

『キミのお金はどこに消えるのか』中国人妻のツッコミに学ぶマクロ経済

経済って、なんだか難しい……。そう感じている人は多いと思う。専門用語が多いし、教科書で出てきた需要と供給のグラフを思い出し、無味乾燥でわかりにくいと拒絶反応を示す人もいるだろう。

けれども、経済を専門分野のひとつとするジャーナリストとして言えば、経済は決して難しくない。高校の教科で「政治・経済」としてセットになる政治のほうが日常生活から縁遠いのに対し、経済は私たちの日々の暮らしにとても近い。

経済理解に大切な庶民感覚


だから経済を理解するうえで大切なのは、市民としての日常感覚を忘れないことだ。

そのヒントとして、ちょうど良いマンガがある。井上純一『キミのお金はどこに消えるのか』(KADOKAWA)だ。ネットでの連載が単行本として昨年出版されたのに続き、続編の「令和サバイバル編」が8月の終わりに出た。


著者の井上氏が、妻で中国人の月(ゆえ)サンを相手に、経済の仕組みや経済政策について解説していくエッセイマンガだ。井上氏は専門外ではあるが経済学の知識があり、月サンの主婦感覚に基づく素朴な意見をたしなめ、教え諭していく。

この作品の読みどころは大きく2つある。ひとつは、井上氏がわかりやすく解説する経済政策の考え方だ。これはマクロ経済学と呼ばれ、現在、日米欧をはじめ主要国政府が採用している。井上氏の解説を読めば、今の標準的な経済政策がどのようなものか、大枠でつかむことができる。

もうひとつの読みどころは、その井上氏の解説に対し、月サンが時折入れる鋭いツッコミだ。月サンは夫と違い経済の専門知識はないけれども、素朴な庶民感覚に基づく疑問を遠慮なくぶつける。しかも、あとで詳しく述べるとおり、そのツッコミが的を射ている場合が少なくない。

2020-04-14

この世界を愛する

現実の世界は、やはり良いものだ。私たち自由主義者は反政府かもしれないが、決して反社会ではないし、どれだけ汚されたものであっても、現実の世界に反対するわけではない。私たちが愛する価値・信条・人々を救うために、戦い続けよう。たとえその戦場が泥でぬかるもうとも。
The Fight for Liberty and the Beltway Barbarians | Mises Wire

市場経済では起業家で勝者・敗者が固定することはない。それまでは優れた起業家でも突然ミスを犯せば、損失をこうむる。それまでは劣った起業家でも狙いが当たれば、利益を得る。市場は過去の栄光には無頓着なのだ。利益を保証するのは投資額の大きさではなく、賢明な判断だ。
What Is Entrepreneurship? | Mises Institute

大気や水質の汚染の原因は「強欲な資本家」ではない。政府が大気や河川に私有財産権を認めないからだ。河川が「国有」され、実質的には所有者が誰もいないから、企業や農家、政府自身が川を汚染する。もし河川に完全な私有財産権があれば、川の持ち主は汚染を許さないだろう。
Conservation in the Free Market | Mises Wire

許認可制を支持する主張によれば、政府が消費者を「保護する」ためには、事業者が最高品質の商品・サービスを売るよう保証しなければならないという。だが「品質」はきわめて相対的な言葉だし、消費者が市場での自由な行動を通じ、好みや関心、価格に照らして決定するものだ。
The Deception behind Government Licensing Laws | Mises Wire

政府が支援する「ムーンショット型研究開発制度」への疑問 資金援助により自由を奪われるジレンマはないか

政府が「ムーンショット型研究開発制度」を始める。人類を月に送った米国のアポロ計画にちなみ、大胆な発想に基づく研究開発を支援するという。少子高齢化、環境、科学技術によるフロンティア開拓の3テーマを設定し、5年間で1000億円を投資する。

7月31日に有識者会議を開き、ロボットと人間が融合するサイボーグ化技術や、長期間の宇宙航行を可能にする人工冬眠技術の開発など、候補となる25の目標を決定した。年末までに数個の目標に絞り込み、研究者を公募する。

今回の取り組みの背景には、日本が研究力で米国や中国など海外の主要国に水をあけられ、地盤沈下が続いていることへの危機感があるという。平井卓也IT・加賀育技術担当大臣は同日「柔軟にスピーディーに進めたい」と述べた。


今回の新制度には「目標がハイリスクすぎる」とメディアで一部批判的な声はあるものの、政府が基礎研究など科学技術に対し国家予算で支援を行うこと自体は、世間で当然と見られている。何しろ、政府には科学技術担当の大臣までいて、支援の陣頭指揮をとっているのだから。

けれども、世間の常識がいつも正しいとは限らない。科学技術の発展に、政府の支援は本当に必要なのだろうか。日本の研究力が衰えているのは、政府の支援が足りないせいなのだろうか。

違法ゆえに阻まれるロケット打ち上げの夢 


考える手がかりとなるマンガを読んでみよう。森田るい『我らコンタクティ』(講談社)である。

小学生時代にクラスの中心だったカナエは、今ではさえないOL。ある日、同級生のかずきと再会する。家業の工場で働くかずきは、個人で宇宙ロケットを打ち上げるという大胆な計画をひそかに進めていた。子どものころ感動した映画を宇宙で上映し、宇宙人に見せるという、壮大な目的のためだ。

2020-04-13

社会主義という破壊者

社会主義はより良い世界を切り開くのではなく、文明が数千年かけて築いたものを台なしにする。何も生産せず、生産手段の私有に基づく社会秩序(資本主義)が生み出したものを消費するだけだ。自身では社会秩序を生み出せないから、自身を消耗させながら既存の社会を破壊する。
Socialist Destructionism | Mises Wire

政府のコロナ対策は、感染抑止という一つの目標だけに注目する。だが他の諸目標を考慮しなければ、甚大な害を及ぼす。人間社会のあらゆる目標は市場経済に反映される。生産は消費者の目標の変化に応じ、迅速かつ効率的に調整される。必要なのは起業家の障害を取り払うことだ。
Calls for Central Planning in the COVID-19 Panic Are like the Calls for the "War Socialism" of Old | Mises Wire

国民皆保険の国はコロナ危機にうまく対処できていると、ある左翼の評論家。しかしイタリアでは、医師は高齢者や持病のある患者より、若者や健康な患者を優先して治療するよう強いられている。韓国が感染抑止に成功したのは、政府が緊急時に民間企業の協力を認めていたからだ。
How the Left Is Trying to Blame Capitalism for COVID-19 Deaths | Mises Wire

ケインズは1924年7月、ソ連文化交流協会(SCR)の創立副会長となる。同協会はソ連政府の国際宣伝組織VOXによって設立・運営されていた。この事実は、彼が主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』を出版する10年以上前から、ソ連の宣伝組織と協力関係にあったことを意味する。
Keynes Called Himself a Socialist. He Was Right. | Mises Wire

自由経済の利点

コロナウイルスがどのように広がるか誰にもわからないからこそ、政府とは異なる見方をする人々に、おのおの最善と思う行動をとらせることが重要だ。経済学者ハイエクが言うように、自由な経済の大きな利点は、人々がそれぞれ分散した情報に基づき行動するよう認める点にある。
Capitalism Is Still Working, Thank Goodness – AIER

自給自足経済に逆戻りすれば、伝染病の世界的流行から身を守れるかもしれないが、暴風雨、凶作、山火事といった地域的な災害には弱くなる。グローバル資本主義では、災害や伝染病で特定の商品が一時不足し値上がりしても、起業家が力を発揮し、最も必要とされる物を作りだす。
No, Capitalism Did Not Fail – AIER

経済学はきわめて簡単な洞察に基づく。それは、専門化によって労働の生産性が高まるということだ。自分でランチを作れば、その時間の分、何かの行動を諦めなければならない。コロナウイルス対応で、自宅で焼くパンは、新鮮で温かいけれど、パン屋で買うより安上がりではない。
Do Economists Believe in “Magic”? No, We Believe in Markets – AIER

米国の政治階級は、スウェーデンや韓国と違い、社会を信用せず、コロナ対応で都市封鎖に踏み切った。それでも社会は短期間でみごとに適応した。政治エリートが予想したとおりだ。だが、もし社会が伝染病そのものに取り組んでいたら、政治家よりずっとうまくやれたに違いない。
Our Ten Days that Shook the World – AIER

北朝鮮の闇市 経済制裁を受けても人々が生き抜く理由

2018年の北朝鮮の実質国内総生産(GDP)が前年に比べて4.1%減少したようだ。国際社会による経済制裁が重荷となり、鉱業などの生産が大幅に減った。韓国銀行(中央銀行)が7月26日に発表した。

北朝鮮は経済指標を公表しておらず、韓国銀行は1991年より関連機関からデータを取り寄せ、経済成長率を推計している。2018年のGDP減少率は、30万〜300万人が餓死したといわれる「苦難の行軍」の時期にあたる1997年(6.5%減)以来の大きさとなった。

北朝鮮の経済状況が深刻であるのは間違いない。けれども一方でほとんど指摘されないことだが、GDPの落ち込みが21年ぶりの大きさであっても、現時点の情報では、当時ほど多数の餓死者は出ていない。それはなぜだろうか。

この謎を解くキーワードは「闇市」である。闇市とは、経済統制のもとで公的には禁止された流通経路を経た物資、すなわち闇物資を扱う市場を意味する。

国民の5人に1人が直接・間接に闇市に依存する北朝鮮


社会主義国の北朝鮮では、政府があらゆる経済活動を統制するのが建前だ。しかし、90年代後半の飢饉で政府が国民に十分な食糧を供給できなくなると、国中で「チャンマダン」と呼ばれる闇市が広がり始めた。今では北朝鮮の人々の生存に欠かせない存在となり、国民の5人に1人が直接・間接に闇市に依存すると言われる。


「ニューズウィーク日本版」の記事によれば、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の調査に対し、ある脱北者女性は「政府の指示どおりにしていたら、飢え死にする」と語ったという。

世の中には、自由な市場経済に対し、ある思い込みがある。平和な状態にある豊かな国でしか機能せず、戦争や飢饉といった非常時には、政府による経済の規制や統制が必要という思い込みだ。しかし、それは正しくない。北朝鮮の闇市が示すとおり、政府に縛られない自由な市場経済は、非常時にこそ本領を発揮し、苦しむ庶民を救う。

闇市が非常時に庶民の命綱の役割を果たす例は、現代の北朝鮮にとどまらない。日本人に最も身近な例は、第二次大戦終結直後、各地で急速に発達した闇市だろう。

戦後の焼け野原になった日本を救った闇市


山田参助『あれよ星屑』(KADOKAWA)は、敗戦で焼け野原となった東京のアンダーグラウンドを含む日常を生々しく描く傑作マンガ。この作品の舞台となるのが闇市「明星マーケット」である。

2020-04-12

資本主義が悪なのか?〜『ナニワ金融道』が真に批判したもの

先進国で、資本主義に対する批判が強まっている。米国では、来年の米大統領選に向けて野党・民主党が6月下旬に開いた初の候補者討論会で、資本主義への激しい批判がエリザベス・ウォーレン上院議員ら各候補から飛び出した。

欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)問題に揺れる英国では、最大野党・労働党の党首で、筋金入りの社会主義者として知られるジェレミー・コービン氏が若い世代の支持を集め、首相の座をうかがう。

資本主義悪玉論が強まる背景には、一部の富裕層とそれ以外の市民との間で経済的な格差が拡大していることなどがあるとされる。しかし、それは本当に資本主義のせいだろうか。


この問題を考えるためには、資本主義の現実を生々しく描いた傑作マンガが役に立つ。1990年代に発表され、作者が世を去った今も読者の人気を集める、青木雄二『ナニワ金融道』(講談社)である。

現代日本経済のリアルを描いた名作


舞台は大阪。中小企業や個人を相手とする金融業者「帝国金融」の営業マン、灰原達之を通して、借金によって人生を狂わされる人々の姿を描く。

味わいのあるコテコテの大阪弁、素朴だけれど緻密な線で描かれた猥雑な街並み、カネに翻弄される人々のドラマなど、この作品には多くの魅力が詰まっている。とりわけ、物語を楽しみながら現代日本経済の仕組み、つまり資本主義に関するリアルな知識を学べることは、他の追随を許さないだろう。

さて、作者の故・青木氏は『ナニワ金融道』のヒットを受け、経済・政治に関するエッセイも多く執筆している。その一貫した主張は、資本主義に対する厳しい批判だ。

2020-04-11

命と金

コロナ危機に関し経済の話をすると、命より金が大事なのかと非難される。しかし経済は高い割合で命を救う。経済の繁栄によって、飢餓、負傷、病気、貧困に苦しむ世界の人々を助けることができる。経済が崩壊すれば、コロナの犠牲者を大きく上回る数の人々が命を落とすだろう。
Life and Health Are at Stake as the Economy Grinds to a Halt | Mises Wire

感染症対応は戦争ではない。そのような考えは誤った対応につながる。ウイルスは政治的な勝利や政策の変更を求めない。ウイルスに打ち勝つとは、医師や科学者の工夫でできるだけ多くの人命を救うこと。正しい対策とは、病気にかかりやすい弱い人を守ること。戦争とは全然違う。
A Pandemic Is Not a War | The American Conservative

コロナ対策で韓国、日本、台湾、香港などアジアの一部は欧米と異なり、全面的な都市封鎖を行なっていない。大規模感染を免れ、感染者・死亡者はこれまで少数にとどまる。同時に社会・経済活動はほぼ妨げられず継続している。こうしたなか、中国の勝利宣言は疑問視されている。
While the West Panicked, Some Asian Regimes Took a Different Path | Mises Wire

政府によって値段を抑えられたガソリンを買うために人々がガソリンスタンドで長蛇の列をなしたら、どんなコストを払うだろう。代金だけではなく、機会費用(並んで待たなければ他の行動から得られたはずの利益)も払わなければならない。事前に品切れを調べるコストもかかる。
The Real Cost of Anti-Price-Gouging Laws | Mises Wire

大学等修学支援法可決、教育費の「無償化」という政治的表現で隠された壮大な無駄遣い

大学など高等教育の授業料を減免する大学等修学支援法が10日の参院本会議で与党と国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。2020年4月から始まる。文部科学省が設ける要件を満たした大学、短期大学、高等専門学校、専門学校が対象となる。

この政策を安倍政権やメディアは「大学無償化」と呼んでいるが、授業料減免の原資はあくまでも国民が払う税金である。「無償化」という表現は政策にコストがかかる現実をあいまいにし、メリットだけを強調する政治的な表現と言える。

それにしても日本の教育は、義務教育である小中学校はもちろん、高校、大学に至るまで、税金を投じた「無償化」の大盤振る舞いだ。そもそも大学教育とは、そこまでして受ける価値のあるものだろうか。

貴重な時間を無駄にするだけの学校教育


教育制度について考えさせられるマンガを読んでみよう。東村アキコの自伝的作品『かくかくしかじか』(集英社)である。


南国の宮崎県で生まれ育った林明子(作者の本名)は、子どもの頃から少女マンガが大好き。高校3年生のとき、「美術大学に進学し、在学中にマンガ家としてデビューする」という計画を立て、受験対策のため、友人に教えられた個人経営の絵画教室に通うことにする。

自宅からバスを乗り継いで1時間、教室は市街地を離れた海の近くにある古い家だった。講師であり画家でもある日高健三先生は、芸術家らしからぬジャージ姿で、手にした竹刀で女の子も容赦なくひっぱたくスパルタ体育会系。明子は当初思いもしなかったことに、それから社会人時代を含め足かけ8年も教室に通い続け、日高先生は生涯忘れられない恩師となる。

2020-04-10

専門家の暴走

たくさんのよいことが同時には実現できないこと、あるものを実現するためには他のものが犠牲にされるということは、たくさんの要素を考慮して初めてわかるものであるが、専門家の目にはそういうことはなかなか理解できない。(ハイエク『隷属への道』第4章、西山千秋訳)
Why Central Planning by Medical Experts Will Lead to Disaster | Mises Wire

米国で州政府の多くが好むコロナ対策は都市封鎖、事業所閉鎖、違反者処罰だ。もちろん人々から財産と雇用を奪う政治家や官僚は、誰も職を失わない。税収が途絶えない限り、給与も安泰だ。ところが州の命令で多数の人が失職する中で、自分の給与を返上した州知事は誰もいない。
The COVID-19 "Lockdowns" Are What Twenty-First-Century Mob Rule Looks Like | Mises Wire

メキシコは2009年のエイズ流行の際、学校の休校、さまざまな企業の閉鎖、イベントの中止などを断行し、観光を中心に経済に壊滅的な影響をもたらした。政策実施の直後こそ称賛されたものの、のちに多くの人が過剰反応だったと認めた。国にとっては病気そのものより厄介だった。
Why Mexico Fears Shutting Down Its Economy to Combat COVID-19 | Mises Wire

コロナウイルスに関するデータの質はお粗末だ。各国政府は数量化も正当化も監査もできない政策を推し進めている。政策の多くは経済にぞっとするような影響を及ぼし、自由と繁栄を損なうだろう。人的・物的資源の不足やサプライチェーンの分断のせいで、医療は劣化するだろう。
How Risk-Based Healthcare Could Make Us Healthier | Mises Wire

『赤狩り』〜テロより怖い監視国家の脅威、その源流は冷戦時代にあった

4月11日、内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ容疑者が在英エクアドル大使館で英警察当局に逮捕された。

それを受け、ある男性が「アサンジ氏の批判者は喜んでいるかもしれないが、報道の自由にとっては暗黒の瞬間だ」という見解を示し、注目を集めた。ロシアに亡命中の元米中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者だ。

内部告発者が犯罪者になる恐ろしさ


スノーデン氏といえば、米国家安全保障局(NSA)の極秘監視システムを暴露したことで知られる。映画『スノーデン』(オリバー・ストーン監督)で知る人も多いだろう。2013年6月、同氏からNSAの内部文書を提供された英紙ガーディアンが4日間にわたり、個人のプライバシーを脅かす情報収集の実態を暴いた。米電話会社の通話記録を毎日数百万件集めていたこと、「PRISM(プリズム)」というプログラムを使い、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックなど米インターネット会社のサーバーから同じく毎日数百万件の通信記録を入手していたことなどが明らかになったのだ。

それまでも専門家の間では、米政府が大量のメールや電話を秘密裏に収集、保存している可能性は議論されていた。しかし、スノーデン氏によって動かぬ証拠を突き付けられた情報収集の規模は、想像を超えるものだった。一般市民に与えた衝撃はそれ以上に大きい。


けれども歴史を少しさかのぼってみれば、米政府による不正な監視が今に始まったものではないことがわかる。

ハリウッドを襲った赤狩り旋風


山本おさむの傑作マンガ『赤狩り』(既刊1〜4巻、小学館)を読んでみよう。事実をもとにしたフィクションの手法で、ソ連との冷戦時代に米国に吹き荒れた赤狩りの嵐と、それに翻弄される人々のドラマを克明に描いている。赤狩りとは、共産主義者やその同調者を政府が逮捕したり追放したりする行為を指す。

2020-04-09

トレードオフの思考

経済学的な思考とは、つねにトレードオフを意識することだ。限りある人的物的資源をコロナウイルスとの闘いにすべて注ぎ込んでしまったら、経済的な幸福と将来の経済成長が犠牲になる。人々は相対的に貧しくなり、より多くの命を失うかもしれない。不況は病死や自殺を増やす。
Yes, There Are Tradeoffs between Disease Prevention and Economic Destruction | Mises Wire

隔離や封鎖がコロナウイルス拡大を抑えるのは、目に見えやすい。経済封鎖がもたらすコストと損害に気づくのは重要だが簡単ではない。他の病で苦しみ治療を受けられない人は何人いるか。失業し生活の糧を失う人は。自殺する人は。家をなくし離婚する人は。就職できない若者は。
End the Shutdown | Mises Wire

米サウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事はコロナ対応で都市封鎖と屋内退避を命じる大勢に抵抗し、こう述べた。全国一律の対策を求めるのは群集心理だ。合衆国と州の憲法は市民の権利を保障している。中国や欧州の政府のような、市民の権利を制限する厳しい対策には反対だ。
All Crises Are Local | Mises Wire

イタリアではコロナ拡大を受け医療従事者に対する指針で、助かる可能性が最も高い患者への治療を優先するよう推奨。その結果、高齢者中心に死者が急増した。この差別と治療制限は、同国の国営医療の下では珍しくない。高齢化で医療の需要が大きいのに、供給はきわめて少ない。
Italy's Healthcare Sector Badly Needs Deregulation and More Private Spending | Mises Wire

政府にとって移民は政治的な「安全弁」にすぎない 古今東西、政府主導の移民政策が生む悲劇

日本に在住する外国人が増え続けている。法務省が3月22日に公表した統計によると、2018年末時点の在留外国人数は273万1093人で、5年連続で過去最高を更新した。国籍別では中国が最も多く、次いで韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルとなっている。

政府は4月1日、改正出入国管理法(入管法)を施行し、これまで原則禁止していた単純労働分野について外国人の受け入れに踏み切った。安倍政権は否定しているが、これは移民政策にあたるとの見方が広がっている。

外国人の増加は人手不足の緩和につながる。一方で、宗教、言語、生活習慣の異なる人々との摩擦や軋轢を懸念する声もある。

移民に伴う社会的な摩擦を最小限に抑えながら、日本側と外国人の双方が経済的なメリットを享受したいのであれば、ひとつポイントがある。どのような移民をどれくらい受け入れるかという判断を政府に任せるのは、やめたほうがよい。

ブラジル移民のルーツを辿る『その女、ジルバ』


移民問題を題材とする優れたマンガを読んでみよう。ただし、日本にやって来る外国人移民ではなく、海外に出て行く日本人移民の話だ。昨年完結した人気作、有間しのぶ『その女、ジルバ』(小学館、全5巻)である。


笛吹新(うすい・あらた)は大手スーパーの倉庫で働く40歳独身女性。年齢を理由に最前線の売り場から追われ、結婚するはずだった男からも捨てられ、そのうえ給与は安い。恋人なし、貯金なし、老後のあてもない不安から少しでも逃れようと、夜のアルバイトに飛び込む。そこはホステスたちの平均年齢70歳の高齢バー。新は見習いホステス「アララ」として奮闘するうちに、人生について多くを学んでいく。