衣食住は降ってこない
貧困問題を憂える知識人の多くは、貧困を解決するにはカネを配ればよいと誤解している。しかしカネがあっても衣食住の供給が十分でなければ、それらを手に入れることはできない。再分配政策は供給力を削ぎ、むしろ貧困層を苦しめる。
著者が訴える老人の貧困問題は深刻である。しかし唱える対策は正しくない。「課税対象については、資産や所得を総合的に含めて議論し、取れる層から徴収することで所得の再分配機能を高め、社会保障を手厚くしていくことが不可欠だ」と述べる。
もちろん課税を強化すれば「資産家や高所得者は海外に逃げてしまう」。だから「高所得者の逃げ場である『タックスヘイブン』の対策も含め、グローバルな視点での議論が求められる」と言う。地の果てまでも追いかける、というわけだ。
著者が理解していないのは、貧困層に必要な衣食住は天から降ってはこないという事実だ。それは生産しなければならない。生産には資本がいる。資本を提供するのは資産家である。資産家への課税を強化すれば、資本が減り、生産は減る。
著者は「支出を減らす政策」を求める。具体策は家賃や医療費などの公的補助だ。しかしそれは支払う主体が政府に変わるだけで、支出自体は減らない。支出を減らすには生産を増やし、物価を下げることだ。資産家課税はそれに逆行する。
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