第6代米大統領ジョン・クインシー・アダムズは「アメリカは倒すべき怪物を探しに海外へ行ったりしない」と述べ、国外での軍事介入を強く戒めた。戦乱に明け暮れる欧州の教訓からだ。しかし戒めを忘れた米国は自業自得の苦境に陥る。
本書は、米国の介入が海外の政治情勢を悪化させ、自身を泥沼に陥れた諸事実を描く。中東では、イランの石油産業を国有化したモサッデグ政権を、1953年に米中央情報局(CIA)が中心になり打倒したが、誕生したのはパフラヴィー独裁体制だった。
南米のチリでも米国は、1973年にアジェンデ政権を倒したが、ここでもピノチェトの軍部独裁政権をもたらす。1980年以降、2014年のシリアまで14のイスラムの国を軍事攻撃するが、いずれも著しく安定を失うだけに終わる。
自分で自分の首を絞めるような行為も少なくない。米国は1980年代のアフガニスタンでの対ソ戦の際、イスラム教徒ゲリラのムジャヒディンに武器や資金を与え、軍事訓練を施したところ、それがのちに国際テロ組織アルカイダとなる。
こうした失敗にもかかわらず、2014年にはシリアの「穏健な武装勢力」に5億ドルの資金協力を決定する。「何も教訓を学んでいない」という著者の批判はもっともだ。財政が破綻するまで、米政府の愚行は終わらないのかもしれない。
3 件のコメント:
主様、どこかで読んだのですが、現在の基軸通貨を発行するアメリカは、財政破綻しないとのこと。基軸通貨がユーロに変わると、アメリカは財政破綻に追い込まれるとか。その辺りご存知でしたらご教示頂けませんか?宜しくお願いします。
基軸通貨は国際取引の中心になる通貨ですから、多くの人が欲しがります。アメリカ政府がドルをじゃんじゃん刷っても、多くの人が欲しがれば、ドルの価値が暴落せずに済みます。なのでアメリカ政府はドルをじゃんじゃん刷って借金を返すことができ、財政破綻しないで済みます。
しかしドルをじゃんじゃん刷り続けると、その価値は急に暴落しないまでも、しだいに下がっていきます。すると世界の人々はだんだんドルを持つのがいやになり、ユーロなどに乗り換えます。その動きが強まれば、ユーロなど他の通貨がドルに代わる基軸通貨になるかもしれません。
それでもアメリカ政府がドルを刷り続ければ、欲しがる人が減っているので価値が一気に暴落するかもしれません。それを避けるためドルを刷るのをやめれば、借金が返せなくなり、財政破綻します。
主様、ご教示有難うございます。
なるほど、アメリカが財政破綻していない理由は基軸通貨だからなのですね。基軸通貨であり続けないと困ると。グローバル化を推進していたのはそこに理由の一つがありそうですね。
トランプがグローバル化を進めないとなると、基軸通貨の座が揺らぎそうですね。他国にとってドルの価値が下がる訳ですから、ドルの価値もまた市場が決めることになると。ダボス会議で習近平が発言した内容は国際金融資本を呼び込み、基軸通貨の座を奪うことを考えているのかもしれませんね。基軸通貨になればじゃんじゃんお金を発行しても財政破綻しない訳ですから。基軸通貨を巡って、アメリカ対ユーロ中国の構図になりそうですね。アメリカがロシアを引き入れようとしているのが解る気がします。
今後も書評楽しませて頂きます。有難うございました。
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