*Ludwig von Mises, The Myth of "Macroeconomics"(「マクロ経済学」の神話)より抜粋。
マクロ経済学の方法(macroeconomic approach)では、市場経済のうち恣意的に選んだ部分(たいていは国家)があたかも統合された単位であるかのようにみなす。
国民所得の考え方(concept of national income)は、市場経済における真の生産条件を完全に消し去る。それによると、入手可能な商品の量を増減させるのは個人の活動ではなく、その活動を外部から見下ろす何物かである。
個人の活動を外部から見下ろす不思議な何物か(mysterious something)が「国民所得」という量を生み出し、それをさまざまな個人に「分配」する。この方法の政治的意味は明らかだ。国民所得の「分配」における「不平等」は批判される。
「国民所得」の方法は、マルクス主義の考え(Marxian idea)を正当化する不毛な試みである。マルクスによれば、資本主義で商品は「社会的」に生産され、個人が私物化する。これはあべこべだ。実際には、生産過程とは個人が互いに協力する活動である。
「国民」より大きい集団でも小さい集団でもなく、「国民」の所得をすべて足し合わせる(summing up)ことに、政治以外の理由はない。なぜ「州民所得」でも「郡民所得」でも「町民所得」でもなく、「国民所得」なのか。
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