*Yuri N. Maltsev, ed., Requiem for Marx(『マルクスへの鎮魂歌』)より抜粋。
マルクスによれば、資本家は労働者を搾取する。普通の言葉(ordinary language)なら、搾取とは資本家が労働者に対し道徳的に好ましくない行動を取ることを意味する。搾取の対象を「利用する」ということだ。だがマルクスのいう搾取は意味がまったく違う。
マルクスが搾取という言葉で表そうとしたのは、労働者が労働で作った製品の価値を全額(full value)受け取れない状況である。受け取れない差額は地代、利息、利潤の源泉となる。
(搾取とは労働者が製品の価値を全額受け取れないことだという)マルクスの主張からは、資本主義に問題があるとはいえない。搾取に何か腹立たしいところ(something objectionable)がない限り、労働者は自分の置かれた環境を理由に変革を起こそうとは思うまい。
なぜ労働者は、(マルクスが主張するように)生産を手伝った製品の価値を全額受け取らなければならないのか。労働者は収入を増やしたいだろう。だからといって、資本主義の賃金制度(capitalist wage system )は許せないということにはなるまい。
マルクスは、賃金が市場で決定されると労働者が搾取に苦しむことを示そうとした。この議論は誤っているし、かりに正しいと仮定しても、資本主義に何か問題がある(anything wrong)ことを意味しない。
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