2016-06-09

前田朗編著 『「慰安婦」問題・日韓「合意」を考える』


正義なき政治取引

リベラル派も称賛する2015年12月の日韓合意。歴史的事実と法的正義をあいまいにし、両国政府が被害者の頭越しに行った政治取引。吉見義明のインタビューが簡潔でわかりやすい。

<抜粋>
最も大きいのはやはり、(慰安婦制度を作り)女性に対する重大な人権侵害をした主体は誰か、という点だ。責任の主体が相変わらず曖昧だ。…『軍の関与』ではなく『軍が』として主語を明確にしなければならない…業者が介入した場合も軍が主体で業者は従属的な役割をした。(p.65)

韓国政府は少女像の撤去のために努力するという義務を負うことになったし、国際社会でこの問題を再び取り上げないという約束までした。岸田外相は、韓国政府が慰安婦関連証言と記録をユネスコ世界記録遺産として登録しないと話している。こうして見ると、韓国政府が外交的に失敗したのではないかと考える。(p.65)

戦後70年が過ぎたが、日本は依然として植民地支配や戦争責任問題にまともに向き合えずにいる。…米国もフィリピン支配やベトナム戦争に対してきちんと謝罪しないように、日本もなかなかそれが容易ではない。しかし、このような状態が続くならば日本は東アジアや国際社会でまともに生きていけないだろうと考える。(p.66)

結局、韓日両国政府が手を組んで被害者に『もうこれ以上は言うな』と押さえ込む構図を作った。今回の合意は常識的に考えればありえない内容が含まれており、白紙に戻してもう一度考えなければならない。時間がかかっても、困難に陥った時は根本に戻るしかない。(p.67)

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