2017年2月3日金曜日

鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』



人口増のカギは市場経済

人口減を食い止めようと、政府は結婚・妊娠・出産・育児の支援策を次々に打ち出す。しかし効果は疑問だし、私生活への干渉になりかねない。歴史を振り返ると、もっとスマートな人口増加策が見えてくる。それは市場経済の拡大である。

本書によれば、日本は過去1万年に人口の波が4つある。(1)縄文時代(2)弥生時代以降(3)14~15世紀以降(4)19世紀~現代――である。(1)(2)(4)はそれぞれ気温上昇、水稲農耕、工業化を支えに人口が増えた。

興味深いのは、室町時代に始まる(3)の波だ。人口成長を支えた原動力は「市場経済の展開」だと著者は指摘する。具体的には、隷属農民の労働力に依存する名主経営が解体し、家族労働力を主体とする小農経営への移行が進んだことだ。

室町時代には貨幣の普及とともに利潤獲得の機運が高まり、農民はよりよい生産方法を求めて選択的に行動するようになる。衣食住などの費用がかさむうえ、勤勉な労働が期待できない隷属農民に依存する名主経営は、生産効率が悪かった。

晩婚や生涯独身の多かった隷属農民が自立することで、社会全体の有配偶率が高まり、出生率が上昇した。一方で食生活の充実や住生活の向上により死亡率も改善する。この背景にも、生産力向上や流通の拡大など市場経済の発展があった。

現代の隷属農民といえば、さしづめ稼ぎの多くを税金で奪われる企業家や労働者だろう。社会保険料を含む税負担を大きく引き下げ、市場経済を活性化すること。小手先の少子化対策よりはるかに効果が大きいはずだ。

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