2023-04-22

ペトロダラーの終わり、アメリカ帝国の終わり

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年4月17日)

2023年の最も重要な出来事は、ドナルド・トランプ氏らの2024年大統領選立候補やウクライナ戦争とは関係なかったと、未来の歴史家は言うかもしれない。むしろ最も長期の意味を持つ出来事は、主要メディアではほとんど注目されていない、サウジアラビアが石油の支払いに米ドル以外の通貨を受け入れるという動きかもしれない。
ニクソン米大統領は、ドルと金の最後の結びつきを断ち切った後、サウジ政府と交渉した。米国は武器を提供するなどして、サウジ政権を支援する。その代わり、サウジは石油取引をすべてドルで行う。サウジはまた、余ったドルで米国債を購入することにも合意した。この「ペトロダラー」が、ドルが世界の基軸通貨としての地位を維持する大きな理由である。

また今年、中国とブラジルは、今後の貿易をドルではなく自国の通貨で行うことで合意した。ブラジルのルラ大統領は、より多くの国々にドル離れを呼びかけている。

このような脱ドル化の動きは、米国の外交政策、とくに米政府による経済制裁の強化に対する憤りから生じている。ドルを世界の準備通貨の地位から引き下ろすことで、各国はこうした制裁を無視しやすくなる。

脱ドル化は、米政府の30兆ドルを超える債務の管理能力に悪影響を及ぼすだろう。一部の例外を除き、支出削減に対する議会での真の支持はまだない。共和党の指導層は、歳出削減と結びつかない限り、債務上限引き上げを支持しないと言うかもしれない。しかしバイデン政権が、共和党は社会保障とメディケア(高齢者向け公的医療保険)の削減を望んでいると非難して以降、マッカーシー下院議長は、連邦赤字の大きな要因である社会保障とメディケアへの支出削減を「テーブルから外した」と宣言した。同様に、共和党の間で外国への介入主義に懐疑的な意見が増えているにもかかわらず、軍産複合体は議会の指導部とホワイトハウスを目に見える形で掌握し続けている。したがって軍事費の削減は期待できない。むしろ国防総省の予算は増加する可能性が高い。

連邦準備理事会(FRB)は、増え続ける連邦債務を貨幣化し、金利(ひいては連邦政府の借入コスト)を低く維持する圧力に直面し続けるだろう。その結果生じるインフレは、ドルの世界の準備通貨としての地位を終わらせることへの支持を高めるだろう。ドルを放棄する国が増えれば、FRBはハイパーインフレを起こさずに連邦政府の負債を貨幣化することができなくなる。その結果、ドル危機が起こり、世界恐慌よりもひどい経済破綻が起こるだろう。

この危機は、福祉・戦争・不換通貨制度の終焉につながるだろう。歴史的にみると、これはさらに権威主義的な政治運動の台頭につながるが、自由主義思想の人気が高まっていることから、この崩壊は自由主義運動のさらなる成長を促すことにもなる。つまりこの危機は、小さな政府の回復と自由の進展につながる可能性がある。この危機がもたらす機会を最大限に生かすには、私たち(自由主義者)の考えを広め続けることが重要だ。幸いなことに、私たちは多数派である必要はない。自由を取り戻すという大義にこだわる、疲れ知らずで怒りに満ちた少数派がいればそれでよいのである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Will the End of the Petrodollar End the US Empire? [LINK]

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