2016年12月13日火曜日

橋本卓典『捨てられる銀行』

捨てられる銀行 (講談社現代新書)
捨てられる銀行 (講談社現代新書)

金融庁を捨てよう

自由な市場では、企業は顧客を満足させるよう努める。さもなければ顧客から見放され、淘汰されるからだ。しかし政府が経済に介入すると、顧客より政府の顔色をうかがって仕事をするようになる。その場合、企業を責めるのは的外れだ。

著者は、ほとんどの地方銀行が顧客本意の経営をしておらず、このままでは見捨てられるだろうと批判する。しかし著者自身の記述を読むだけで、銀行の経営姿勢をゆがめたのは、金融庁をはじめとする政府の介入政策であることがわかる。

特に問題な政策は二つある。一つは金融検査マニュアル。無担保の短期継続融資(短コロ)はかつてごく一般的な貸し出しの手法だったが、正常運転資金を超えれば不良債権とマニュアルでみなされたため、銀行は震え上がって正常範囲内でも担保付き長期融資に変更。取引先の業況に無関心になった。

もう一つは信用保証制度。中小企業が倒産などで銀行からの借金を返済できない場合、信用保証協会が100%肩代わりする。小渕、麻生政権下で拡大。銀行は貸し倒れのリスクから解放される代わりに、企業の事業価値を見る力を失った。

著者は金融庁を変えようとする森信親長官に期待する。しかし森長官の方針は安倍政権が唱える「地方創生」に沿ったもので、経済の道理より政治の都合を優先する過ちを繰り返している。見捨てられるべきなのは銀行ではなく、金融庁だ。

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