警察を民営化して警備会社にし、利益を目的に経営させよう。生命と財産を守り、警官による人種差別を防止するために大きな効果を発揮するだろう。民間企業には差別を避ける動機が自ずから備わっている。どんな人種であれ顧客を殴ったり殺したりするのは、うまい商売ではない。
Privatize the Government Police Monopoly - LewRockwell
米国で警官はあらゆる年齢層の人を射殺してきた。その多くは丸腰だった。撃たれた理由は、立ち方とか動き方とか、銃に見えるものを持っていたとか、実際には何の危険もないのに警官に恐怖を感じさせたとか…。百万人を超す警官が、すべての個人を武装した脅威とみなしている。
Riots—Not Fun Nor Profit for the Rest of Us - LewRockwell
米国で警官による暴行死の犠牲者は、人種の割合からは黒人が多いけれど、絶対数は白人のほうが多い。だが御用メディアは白人への暴行を報じない。暴行は白人による人種差別だという説明に合わないからだ。白人自身、自分に対する暴行を差別として抗議する教育を受けていない。
All Races Suffer From Police Violence - LewRockwell
昨日まで大人数で集まるなと言っていたコロナウイルスの専門家が、黒人暴動死の抗議デモを支持。トランプ大統領が飲んでいる抗マラリア薬はリスク高めるとの論文を執筆者が取り下げ。政治と医療が結びつくと、ろくなことにはならない。医療は宗教と同様、政府から分離しよう。
Coronavirus Shows Why We Need Separation of Medicine and State! - LewRockwell
注目の投稿
「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ
インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...
2020-06-11
マイナス金利の次は現金廃止?個人預金が実質マイナス金利になる可能性も?
日銀が突然導入を決めたマイナス金利政策が、2月16日から実際に始まった。金利水準を全般に引き下げることで物価を押し上げ、デフレ脱却をめざす。しかし日銀に限らず、マイナス金利の効果を上げたい中央銀行にとって、おそらく目障りでたまらないものがある。それは現金である。
今回日銀が導入したマイナス金利政策は、銀行などが日銀に預ける当座預金を3つに分け、それぞれプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。マイナス金利の幅はとりあえず0.1%だが、これを拡大させていく可能性について日銀は「否定しない」(黒田東彦総裁)としている。
マイナス金利の効果について、日銀は「イールドカーブ(利回り曲線)の起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく」(1月29日発表資料)とだけ述べ、具体的にどのような経路で金利全般の低下につながるかまでは説明していない。だが、いずれにせよ間違いないのは、個人を中心とする現金の使用が、マイナス金利の効果を削ぐことである。
現在、銀行の預金金利はマイナスにはなっていない。日本に先駆けてマイナス金利を導入したスウェーデンやデンマークでも、個人の預金金利はマイナスにはなっていない。企業向け預金に比べ、個人向けは政治的影響が大きいことなどが背景にあるとみられる。
しかし今後、貸出金利や国債利回りの低下で銀行の収益が圧迫されるかもしれない。そうなると苦しくなった銀行は、資金の調達コストを下げるため、個人預金の金利をマイナスにはしないまでも、口座手数料などの名目で事実上のマイナス金利を適用する可能性がある。
今回日銀が導入したマイナス金利政策は、銀行などが日銀に預ける当座預金を3つに分け、それぞれプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。マイナス金利の幅はとりあえず0.1%だが、これを拡大させていく可能性について日銀は「否定しない」(黒田東彦総裁)としている。
マイナス金利の効果について、日銀は「イールドカーブ(利回り曲線)の起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えていく」(1月29日発表資料)とだけ述べ、具体的にどのような経路で金利全般の低下につながるかまでは説明していない。だが、いずれにせよ間違いないのは、個人を中心とする現金の使用が、マイナス金利の効果を削ぐことである。
現在、銀行の預金金利はマイナスにはなっていない。日本に先駆けてマイナス金利を導入したスウェーデンやデンマークでも、個人の預金金利はマイナスにはなっていない。企業向け預金に比べ、個人向けは政治的影響が大きいことなどが背景にあるとみられる。
しかし今後、貸出金利や国債利回りの低下で銀行の収益が圧迫されるかもしれない。そうなると苦しくなった銀行は、資金の調達コストを下げるため、個人預金の金利をマイナスにはしないまでも、口座手数料などの名目で事実上のマイナス金利を適用する可能性がある。
2020-06-10
職の略奪
米オレゴン州ポートランドでは暴徒がショッピングモールに押し入り、ルイヴィトンを略奪。一方、同州のブラウン知事は都市封鎖で40万人近くを失業させた。ミシガン州グランドラピッズでは暴徒が靴などを略奪。一方、同州のウィットマー知事は都市封鎖で失業率を24%に上げた。
The Real Looters are the Politicians – AIER
コロナ感染やそれに伴う経済の痛みはやがて終わる。終わらないかもしれないのは国家主義の勝利だ。国家主義という思想は、通常のやり方よりも国家による強制が常に良いと考える。パリではパン屋が中世以来、規制されている。パリの家賃は第一次世界大戦以来、統制されている。
The Immoral Equivalent of War | Mercatus Center
黒人暴行死で声明を発表し、メディアが好意的に報じたブッシュ(子)元米大統領。だが彼はかつて米国民に嘘をついてイラク戦争に引きずり込んだ。イラクに大量破壊兵器があるといって232回嘘をつき、イラクは国際テロ組織アルカイダにつながりがあるといって28回嘘をついた。
The Media Has Conveniently Forgotten George W. Bush's Many Atrocities | Mises Wire
米FBIがニクソン政権時代、ジョン・エドガー・フーヴァー長官の下で行った過剰なスパイ防止活動のうち、特に卑劣だったのは、コインテルプロである。情報収集や犯罪者逮捕の職分を超え、人を貶める偽情報を盛んに広め、政治的に気に入らない集団を分断・崩壊させようとした。
How the FBI and the L.A. Times destroyed Jean Seberg's life - Los Angeles Times
The Real Looters are the Politicians – AIER
コロナ感染やそれに伴う経済の痛みはやがて終わる。終わらないかもしれないのは国家主義の勝利だ。国家主義という思想は、通常のやり方よりも国家による強制が常に良いと考える。パリではパン屋が中世以来、規制されている。パリの家賃は第一次世界大戦以来、統制されている。
The Immoral Equivalent of War | Mercatus Center
黒人暴行死で声明を発表し、メディアが好意的に報じたブッシュ(子)元米大統領。だが彼はかつて米国民に嘘をついてイラク戦争に引きずり込んだ。イラクに大量破壊兵器があるといって232回嘘をつき、イラクは国際テロ組織アルカイダにつながりがあるといって28回嘘をついた。
The Media Has Conveniently Forgotten George W. Bush's Many Atrocities | Mises Wire
米FBIがニクソン政権時代、ジョン・エドガー・フーヴァー長官の下で行った過剰なスパイ防止活動のうち、特に卑劣だったのは、コインテルプロである。情報収集や犯罪者逮捕の職分を超え、人を貶める偽情報を盛んに広め、政治的に気に入らない集団を分断・崩壊させようとした。
How the FBI and the L.A. Times destroyed Jean Seberg's life - Los Angeles Times
政府、国民の目を欺き「税をかすめ取る」憲法違反行為…人々のお金が目減り、国は利益
1000兆円を超す日本政府の膨大な借金(大部分は国債)がニュースで報じられるたびに、一部のエコノミストや経済学者は「危機感を煽りすぎ」「増税をもくろむ財務省の意図を感じる」などと批判する。
彼らによれば、政府の借金の負担は、増税以外のある方法によって軽くすることが可能だという。それは「インフレ税」である。
仕組みはこうだ。政府はお金を発行する特権を持っているから、お金を大量に発行して国債の利子や元本の返済に充てればよい。
ただし、お金を大量に発行すれば、他の条件が同じなら物価は上昇する。これは国民が保有するお金の価値が、実質目減りすることを意味する。同じ額のお金で買える物が少なくなってしまうからだ。
国民からみれば、インフレ(物価上昇)によって、税金を取られたのと実質同じことになる。だからインフレ税と呼ぶのである。
実はこのインフレ税、すでに始まっている。中央銀行である日本銀行が金融緩和政策の一環として、民間金融機関を通して年間80兆円規模の国債を買い入れているからである。
日銀は自分でお金を発行でき、お金に利子を払う必要はないから、資金調達のコストはゼロだ。一方、国債には利子がつくから、それがまるまる利益になる。日銀はこの利益を「国庫納付金」として政府に納めている。
日銀は政府と別組織になってはいるが、結局は政府の一部である。だから全体でみれば、政府はお金を発行することにより、濡れ手で粟で国債利子分の利益を手に入れたことになる。この利益がインフレ税であり、通貨発行益(シニョリッジ)とも呼ばれる。
インフレ税で国債の利払いは相殺されて実質ゼロになるから、少なくとも短期では一部エコノミストの言うとおり、普通の増税に頼らず借金の負担を軽くできる。
たとえば元財務官僚でエコノミストの髙橋洋一氏は「短期間での猛烈なインフレは困るが、それを生活に支障がないマイルドインフレに直せば、財政再建ができる」とインフレ税を推奨する。お金を刷るだけで済むのだから、やらない手はないと賛同する人も少なくない。
彼らによれば、政府の借金の負担は、増税以外のある方法によって軽くすることが可能だという。それは「インフレ税」である。
仕組みはこうだ。政府はお金を発行する特権を持っているから、お金を大量に発行して国債の利子や元本の返済に充てればよい。
ただし、お金を大量に発行すれば、他の条件が同じなら物価は上昇する。これは国民が保有するお金の価値が、実質目減りすることを意味する。同じ額のお金で買える物が少なくなってしまうからだ。
国民からみれば、インフレ(物価上昇)によって、税金を取られたのと実質同じことになる。だからインフレ税と呼ぶのである。
実はこのインフレ税、すでに始まっている。中央銀行である日本銀行が金融緩和政策の一環として、民間金融機関を通して年間80兆円規模の国債を買い入れているからである。
日銀は自分でお金を発行でき、お金に利子を払う必要はないから、資金調達のコストはゼロだ。一方、国債には利子がつくから、それがまるまる利益になる。日銀はこの利益を「国庫納付金」として政府に納めている。
日銀は政府と別組織になってはいるが、結局は政府の一部である。だから全体でみれば、政府はお金を発行することにより、濡れ手で粟で国債利子分の利益を手に入れたことになる。この利益がインフレ税であり、通貨発行益(シニョリッジ)とも呼ばれる。
インフレ税で国債の利払いは相殺されて実質ゼロになるから、少なくとも短期では一部エコノミストの言うとおり、普通の増税に頼らず借金の負担を軽くできる。
たとえば元財務官僚でエコノミストの髙橋洋一氏は「短期間での猛烈なインフレは困るが、それを生活に支障がないマイルドインフレに直せば、財政再建ができる」とインフレ税を推奨する。お金を刷るだけで済むのだから、やらない手はないと賛同する人も少なくない。
2020-06-09
奴隷と納税者の搾取(セイ)
仏経済学者セイは植民地制度を厳しく批判した。そこで示したのは、古典的自由主義に基づく階級分析だ。一方の階級は搾取される奴隷と、植民地のコストを負担する国内の消費者・納税者。他方の階級は有力な農園主と商人で、彼らは議会を支配し、奴隷貿易などの利益を享受する。
Jean-Baptiste Say argues that home-consumers bear the brunt of the cost of maintaining overseas colonies and that they also help support the lavish lifestyles of the planter and merchant classes (1817) - Online Library of Liberty
仏経済学者セイは、奴隷制を「残酷な生産制度」と非難した。植民地の奴隷制は奴隷主にとって非常に儲かる。奴隷主が奴隷に作らせた本国への輸出品は関税で保護され、コストの多くを本国の消費者と納税者に転嫁できるからだ。奴隷は奴隷主に利益の大半を奪われ、貧困にあえぐ。
J.B. Say argues that colonial slave labor is really quite profitable for the slave owners at the expense of the slaves and the home consumers (1817) - Online Library of Liberty
英哲学者ジョン・ミラーによれば、経済の発展に伴い、前近代社会の柱が土台からぐらつき始める。それは奴隷制だ。奴隷制のような非常に古い制度でさえ、産業・経済の価値観が世界中に否応なく広がるにつれ、崩れていく。諸国が商業で豊かになるにつれ、徐々に廃止されていく。
John Millar argues that as a society becomes wealthier domestic freedom increases, even to the point where slavery is thought to be pernicious and economically inefficient (1771) - Online Library of Liberty
経済学者ミーゼスによれば、欧米の経済発展の要因は、略奪的な軍国主義の精神の抑制にある。軍国主義は伝統的にあらゆる国で富の蓄積を妨げてきた。途上国が経済発展を望むなら、軍国主義の抑制が必要だ。それが植民地支配国のものであれ、自国の左翼・右翼政権のものであれ。
Mises on wealth creation and stopping the spirit of predatory militarism (1949) - Online Library of Liberty
Jean-Baptiste Say argues that home-consumers bear the brunt of the cost of maintaining overseas colonies and that they also help support the lavish lifestyles of the planter and merchant classes (1817) - Online Library of Liberty
仏経済学者セイは、奴隷制を「残酷な生産制度」と非難した。植民地の奴隷制は奴隷主にとって非常に儲かる。奴隷主が奴隷に作らせた本国への輸出品は関税で保護され、コストの多くを本国の消費者と納税者に転嫁できるからだ。奴隷は奴隷主に利益の大半を奪われ、貧困にあえぐ。
J.B. Say argues that colonial slave labor is really quite profitable for the slave owners at the expense of the slaves and the home consumers (1817) - Online Library of Liberty
英哲学者ジョン・ミラーによれば、経済の発展に伴い、前近代社会の柱が土台からぐらつき始める。それは奴隷制だ。奴隷制のような非常に古い制度でさえ、産業・経済の価値観が世界中に否応なく広がるにつれ、崩れていく。諸国が商業で豊かになるにつれ、徐々に廃止されていく。
John Millar argues that as a society becomes wealthier domestic freedom increases, even to the point where slavery is thought to be pernicious and economically inefficient (1771) - Online Library of Liberty
経済学者ミーゼスによれば、欧米の経済発展の要因は、略奪的な軍国主義の精神の抑制にある。軍国主義は伝統的にあらゆる国で富の蓄積を妨げてきた。途上国が経済発展を望むなら、軍国主義の抑制が必要だ。それが植民地支配国のものであれ、自国の左翼・右翼政権のものであれ。
Mises on wealth creation and stopping the spirit of predatory militarism (1949) - Online Library of Liberty
「ベーシックインカム=小さな政府を実現」の虚妄…現実的にデタラメだと証明
本連載前回記事で、「ベーシックインカムが貧困層を救う」という考えは誤りであることを指摘した。ベーシックインカムとは、就労や資産の有無にかかわらず、すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を現金で給付する社会政策のことだが、この利点として流布されている誤った主張はこれだけではない。
それは、ベーシックインカムが政府の規模・権限を小さくして「小さな政府」につながる、という主張である。
これは、ベーシックインカムの原型である「負の所得税」を提唱した米国の経済学者、ミルトン・フリードマンが強調した点でもある。負の所得税とは、一定の収入のない人々は政府に税金を納めず、逆に政府から給付金を受け取るという仕組みである。一定の収入を政府が給付金によって保証するわけで、ベーシックインカムと実質同じといえる。
小さな政府を目指す「新自由主義」の代表的経済学者とされるフリードマンは、1962年に出版した著書『資本主義と自由』(邦訳書は村井章子訳)で、既存の社会保障を負の所得税による最低限の収入保障に置き換えることで、コストが「半分で済む」と推計した。また、社会保障を負の所得税に一本化することにより、「煩雑な行政事務が大幅に簡素化される」とも述べた。
ベーシックインカムが、貧困対策を求める左派勢力だけでなく、小規模で効率的な政府をよしとするエコノミストなどにも受けがいいのは、フリードマンのこれらの主張の影響が大きい。
しかし、ベーシックインカムが小さな政府につながるという考えは、本当に正しいのだろうか。
それは、ベーシックインカムが政府の規模・権限を小さくして「小さな政府」につながる、という主張である。
これは、ベーシックインカムの原型である「負の所得税」を提唱した米国の経済学者、ミルトン・フリードマンが強調した点でもある。負の所得税とは、一定の収入のない人々は政府に税金を納めず、逆に政府から給付金を受け取るという仕組みである。一定の収入を政府が給付金によって保証するわけで、ベーシックインカムと実質同じといえる。
小さな政府を目指す「新自由主義」の代表的経済学者とされるフリードマンは、1962年に出版した著書『資本主義と自由』(邦訳書は村井章子訳)で、既存の社会保障を負の所得税による最低限の収入保障に置き換えることで、コストが「半分で済む」と推計した。また、社会保障を負の所得税に一本化することにより、「煩雑な行政事務が大幅に簡素化される」とも述べた。
ベーシックインカムが、貧困対策を求める左派勢力だけでなく、小規模で効率的な政府をよしとするエコノミストなどにも受けがいいのは、フリードマンのこれらの主張の影響が大きい。
しかし、ベーシックインカムが小さな政府につながるという考えは、本当に正しいのだろうか。
2020-06-08
収穫の犠牲(マディソン)
米建国の父は、国会議員らの利己的な行動をよく知っていた。マディソンは「収穫」のたとえを使い、事情通で政府にコネのある個人が、規制や法律を利用して利権を得る様子を述べた。抜け目ない一握りの金持ちが政治的な収穫を手にするとき、犠牲になるのは勤勉で無知な大衆だ。
James Madison on the “sagacious and monied few” who are able to “harvest” the benefits of government regulations (1787) - Online Library of Liberty
英経済学者ジェームズ・ミルは、権力者の意図をとことん疑った。政治権力者は監視されないと必ず、「邪な関心」を抱く。見識ある有権者によって適切に選ばれ、厳しく監督されない限り、政治権力者は必ずその地位を利用し、普通の納税者を犠牲にして私利私欲を満たそうとする。
James Mill on the “sinister interests” of those who wield political power (1825) - Online Library of Liberty
英哲学者ベンサムは議会を賭博場に例えた。政治家はばくち打ち、市民の財産は賭けの賞品。不誠実、嘘、偽善、詭弁が勝つための戦術だ。現職者は当面有利で、次を狙う連中は順番が早く来るよう願う。公共の利益という問題について、ばくち打ちたちが考慮することは決してない。
Bentham on how “the ins” and “the outs” lie to the people in order to get into power (1843) - Online Library of Liberty
米政治哲学者ジョン・カルフーンによれば、社会は対立する二つの集団(階級)に分かれる。一方は、税金を支払う人々(納税者)。政府のあらゆる活動は最終的にはその税金を頼りにする。もう一方は、税金に生活を頼る人々(税消費者)。マルクスの混乱した階級論とは大違いだ。
John C. Calhoun notes that taxation divides the community into two great antagonistic classes, those who pay the taxes and those who benefit from them (1850) - Online Library of Liberty
James Madison on the “sagacious and monied few” who are able to “harvest” the benefits of government regulations (1787) - Online Library of Liberty
英経済学者ジェームズ・ミルは、権力者の意図をとことん疑った。政治権力者は監視されないと必ず、「邪な関心」を抱く。見識ある有権者によって適切に選ばれ、厳しく監督されない限り、政治権力者は必ずその地位を利用し、普通の納税者を犠牲にして私利私欲を満たそうとする。
James Mill on the “sinister interests” of those who wield political power (1825) - Online Library of Liberty
英哲学者ベンサムは議会を賭博場に例えた。政治家はばくち打ち、市民の財産は賭けの賞品。不誠実、嘘、偽善、詭弁が勝つための戦術だ。現職者は当面有利で、次を狙う連中は順番が早く来るよう願う。公共の利益という問題について、ばくち打ちたちが考慮することは決してない。
Bentham on how “the ins” and “the outs” lie to the people in order to get into power (1843) - Online Library of Liberty
米政治哲学者ジョン・カルフーンによれば、社会は対立する二つの集団(階級)に分かれる。一方は、税金を支払う人々(納税者)。政府のあらゆる活動は最終的にはその税金を頼りにする。もう一方は、税金に生活を頼る人々(税消費者)。マルクスの混乱した階級論とは大違いだ。
John C. Calhoun notes that taxation divides the community into two great antagonistic classes, those who pay the taxes and those who benefit from them (1850) - Online Library of Liberty
全国民に月額11万支給で話題のベーシックインカムの罠…国民をどんどん貧困に
世界一シンプルな経済学 (日経BPクラシックス)
まだ実際に導入が決まったわけではないが、反響は大きい。日本でも今月このニュースが報じられると、インターネット上で「壮大な社会実験が始まった」「日本も導入を検討してもよい」などと称賛する声が上がった。
ベーシックインカムとは、就労や資産の有無にかかわらず、すべての国民に対して生活に最低限必要な収入を現金で給付する社会政策である。社会保険など従来の所得保障がなんらかの受給資格を設けているのに対し、無条件で給付するのが最大の特徴だ。
全国民に漏れなく最低限度の収入を保障することで、「ワーキングプアなど従来の社会保障で救えなかった人々も助けることができる」と期待する声がある。
だが、本当にベーシックインカムで貧困層を救うことはできるのだろうか。
ベーシックインカムを支持する人々が、忘れてしまっていることがある。それは、貧しさを救うために本当に必要なのは、お金ではないということだ。必要なのは食品、衣類、住居をはじめとするモノである。お金を食べたり着たりすることはできないのだから。
ベーシックインカム導入後、支給された金額で必要なモノが必要な量だけ買えるのであれば、問題はない。しかし、もしベーシックインカムを導入した影響で国のモノを生産する力(生産力)が落ちてしまうようだと、話は違う。必要なモノが足りなくなり、手に入りにくくなってしまうからだ。
北欧フィンランドは、約540万人の全国民に月額800ユーロ(約11万円)の「ベーシックインカム」を支給する検討を始めた。2016年11月までに最終決定される見通しで、導入されれば世界初となる。
まだ実際に導入が決まったわけではないが、反響は大きい。日本でも今月このニュースが報じられると、インターネット上で「壮大な社会実験が始まった」「日本も導入を検討してもよい」などと称賛する声が上がった。
全国民に漏れなく最低限度の収入を保障することで、「ワーキングプアなど従来の社会保障で救えなかった人々も助けることができる」と期待する声がある。
だが、本当にベーシックインカムで貧困層を救うことはできるのだろうか。
ベーシックインカムを支持する人々が、忘れてしまっていることがある。それは、貧しさを救うために本当に必要なのは、お金ではないということだ。必要なのは食品、衣類、住居をはじめとするモノである。お金を食べたり着たりすることはできないのだから。
ベーシックインカム導入後、支給された金額で必要なモノが必要な量だけ買えるのであれば、問題はない。しかし、もしベーシックインカムを導入した影響で国のモノを生産する力(生産力)が落ちてしまうようだと、話は違う。必要なモノが足りなくなり、手に入りにくくなってしまうからだ。
2020-06-07
政府が3万人の国民を殺した仏革命がテロの起源…政府による国民へのテロの恐怖
11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件から1カ月。フランスをはじめとする各国政府は、テロ対策を急ピッチで強化している。そのことを当然と受け止める人々も少なくない。しかし政府の権限強化は国民の自由を奪い、暴走すればテロ以上の脅威となりかねない。テロの起源を知れば、それが理解できるだろう。
パリのテロ事件を受けた各国のテロ対策は、どんどんエスカレートしている。事件の舞台となったフランスでは、オランド大統領が非常事態宣言によらなくても強力な治安対策をとれるよう憲法改正に乗り出す方針を示した。事件後に出した現行の非常事態宣言ではすでに、裁判所の捜索令状なしでの家宅捜索、報道規制、人や車の往来の制限、集会開催や夜間外出の禁止、カフェやレストランの閉店――などを命じることができる。
欧米では治安当局が、スマートフォン(スマホ)などによる通信の暗号化技術がテロ組織に悪用されているとして、米アップルと米グーグルに対し、暗号の解読手段を用意するよう改めて要請した。テロの実行犯らは暗号化されていないスマホのショートメールで連絡を取り合っていたにもかかわらず、プライバシーの侵害につながりかねない暗号規制が持ち出されたことで、テロに便乗した規制強化ではないかと議論を呼んでいる。
日本では、共謀罪の新設を求める声が政府・自民党内から出てきた。犯罪を実行せず、準備もしておらず、話し合っただけで処罰の対象にする罪である。戦前、思想の弾圧に使われた治安維持法で、共謀罪に相当する「協議罪」が多用された反省から、戦後日本の刑事法は、ごく一部の例外を除き、犯罪の実行行為があって初めて罰するのを原則としてきた。共謀罪が新設されれば、この原則を根本から崩すことになる。
それでも各国の国民の間には、「テロという非常事態の下では、自由が多少制限されるのはやむを得ない」「政府として当然の対応」といった鷹揚(おうよう)な受け止め方が少なくないようである。国民の安全を守るのは政府の仕事とされているから、多くの人々がそう考えるのも無理はない面はある。
パリのテロ事件を受けた各国のテロ対策は、どんどんエスカレートしている。事件の舞台となったフランスでは、オランド大統領が非常事態宣言によらなくても強力な治安対策をとれるよう憲法改正に乗り出す方針を示した。事件後に出した現行の非常事態宣言ではすでに、裁判所の捜索令状なしでの家宅捜索、報道規制、人や車の往来の制限、集会開催や夜間外出の禁止、カフェやレストランの閉店――などを命じることができる。
欧米では治安当局が、スマートフォン(スマホ)などによる通信の暗号化技術がテロ組織に悪用されているとして、米アップルと米グーグルに対し、暗号の解読手段を用意するよう改めて要請した。テロの実行犯らは暗号化されていないスマホのショートメールで連絡を取り合っていたにもかかわらず、プライバシーの侵害につながりかねない暗号規制が持ち出されたことで、テロに便乗した規制強化ではないかと議論を呼んでいる。
日本では、共謀罪の新設を求める声が政府・自民党内から出てきた。犯罪を実行せず、準備もしておらず、話し合っただけで処罰の対象にする罪である。戦前、思想の弾圧に使われた治安維持法で、共謀罪に相当する「協議罪」が多用された反省から、戦後日本の刑事法は、ごく一部の例外を除き、犯罪の実行行為があって初めて罰するのを原則としてきた。共謀罪が新設されれば、この原則を根本から崩すことになる。
それでも各国の国民の間には、「テロという非常事態の下では、自由が多少制限されるのはやむを得ない」「政府として当然の対応」といった鷹揚(おうよう)な受け止め方が少なくないようである。国民の安全を守るのは政府の仕事とされているから、多くの人々がそう考えるのも無理はない面はある。
2020-06-06
常備軍の脅威
米建国の父マディソンによれば、常備軍が行政府の拡大と結びつくと、自由を脅かす。外敵の脅威に対する防衛手段はつねに、国内における圧政の道具だ。古代ローマでは反乱を抑えるため戦争を仕掛けるのがつねだったし、欧州では国防を口実に維持された軍隊が人々を隷属させた。
Trump and His Standing Army – The Future of Freedom Foundation
女優ジーン・セバーグは黒人解放を掲げた政治組織ブラックパンサーに傾倒し、FBIに目をつけられた。FBIは彼女が身ごもった子の父親はブラックパンサーだと噂を流し、そのためセバーグは早産する。子供は明らかに白人で、生後数日で死亡。セバーグは40歳で遺書を残し死去した。
Police Bigoted Brutality Isn’t New: The Jean Seberg Story – The Future of Freedom Foundation
米政府の薬物規制は黒人差別の道具だ。差別的な警官に対し、人種隔離時代のような黒人差別の口実を与える。薬物を合法化すれば、人種差別がなくなるわけではないが、差別的な警官から合法的な差別の機会を奪える。警官が民間に転職すれば、差別は不買運動などでできなくなる。
Bigoted Cops and the Drug War – The Future of Freedom Foundation
米国民は、中国が国家の新たな敵だとやみくもに信じ込み、トランプ大統領の貿易戦争で国内の経済の自由が破壊されたことに気づかない。政治支配者が国民に一方的に命令し、他国との貿易を禁じ、違反を罰する。それでどうして国民は自由と言えるだろう。まるで中国ではないか。
Trump Punishes China by Hurting Hong Kong – The Future of Freedom Foundation
Trump and His Standing Army – The Future of Freedom Foundation
女優ジーン・セバーグは黒人解放を掲げた政治組織ブラックパンサーに傾倒し、FBIに目をつけられた。FBIは彼女が身ごもった子の父親はブラックパンサーだと噂を流し、そのためセバーグは早産する。子供は明らかに白人で、生後数日で死亡。セバーグは40歳で遺書を残し死去した。
Police Bigoted Brutality Isn’t New: The Jean Seberg Story – The Future of Freedom Foundation
米政府の薬物規制は黒人差別の道具だ。差別的な警官に対し、人種隔離時代のような黒人差別の口実を与える。薬物を合法化すれば、人種差別がなくなるわけではないが、差別的な警官から合法的な差別の機会を奪える。警官が民間に転職すれば、差別は不買運動などでできなくなる。
Bigoted Cops and the Drug War – The Future of Freedom Foundation
米国民は、中国が国家の新たな敵だとやみくもに信じ込み、トランプ大統領の貿易戦争で国内の経済の自由が破壊されたことに気づかない。政治支配者が国民に一方的に命令し、他国との貿易を禁じ、違反を罰する。それでどうして国民は自由と言えるだろう。まるで中国ではないか。
Trump Punishes China by Hurting Hong Kong – The Future of Freedom Foundation
米国、規制で自国企業に巨額利益…「薬価55倍へ引き上げ=市場原理主義」批判のデタラメ
米国の製薬会社が今年、エイズやがんなどで免疫力が低下している人の治療に使われる薬剤の価格を一気に約55倍に値上げし、激しく批判された。米国内でも日本など国外でも、この製薬会社の恥ずべき行為や米国での全般的な薬価高騰は「米国に蔓延する市場原理主義がもたらしたもの」とする見方が多い。
しかし、それは本当だろうか。
批判を受けたのは、元ヘッジファンドマネージャーのマーティン・シュクレリ氏が経営する新興製薬会社、チューリング・ファーマシューティカルズ。同社は8月、「ダラプリム」という62年前に開発された感染症治療薬の権利を買い取り、その価格を1錠13.50ドル(約1600円)から750ドル(約9万円)へとつり上げた。命にかかわる病の薬を突然大幅に値上げしたことで、米国では怒りの声が巻き起こった。まだ30代のシュクレリ氏が動画で値上げの理由を軽い口調で説明したことも、火に油を注いだ。
次期大統領選の民主党本命候補、ヒラリー・クリントン前国務長官はこの騒動に乗じ、高騰する薬価に対応するためとして、医療保険の加入者が処方箋薬に払う薬代の上限を月額250ドル(約3万円)に制限する規制案を9月に発表した。
米国内外では、シュクレリ氏の行為は市場原理主義の象徴であると受け止める向きが多い。また、米国では薬価が全般に高騰しているが、これは政府が薬価を決める日本などと違い、製薬会社が自由に価格を設定することが原因だとして、やはり市場原理主義が批判の的とされている。
しかし、それは本当だろうか。
批判を受けたのは、元ヘッジファンドマネージャーのマーティン・シュクレリ氏が経営する新興製薬会社、チューリング・ファーマシューティカルズ。同社は8月、「ダラプリム」という62年前に開発された感染症治療薬の権利を買い取り、その価格を1錠13.50ドル(約1600円)から750ドル(約9万円)へとつり上げた。命にかかわる病の薬を突然大幅に値上げしたことで、米国では怒りの声が巻き起こった。まだ30代のシュクレリ氏が動画で値上げの理由を軽い口調で説明したことも、火に油を注いだ。
次期大統領選の民主党本命候補、ヒラリー・クリントン前国務長官はこの騒動に乗じ、高騰する薬価に対応するためとして、医療保険の加入者が処方箋薬に払う薬代の上限を月額250ドル(約3万円)に制限する規制案を9月に発表した。
米国内外では、シュクレリ氏の行為は市場原理主義の象徴であると受け止める向きが多い。また、米国では薬価が全般に高騰しているが、これは政府が薬価を決める日本などと違い、製薬会社が自由に価格を設定することが原因だとして、やはり市場原理主義が批判の的とされている。
2020-06-05
新たなゾンビ企業
コロナ後に新たなゾンビ企業となるのはクルーズライン、小売り、航空などだろう。本当に自由な市場なら、これらの業界で多くの企業が淘汰されるはずだが、金融緩和策のおかげでそうはならない。これは実体経済にとって最悪だ。資本が非生産的な企業に割り当てられるのだから。
There's No End in Sight to the Zombie Economy | Mises Wire
過去の経済危機では、景気が悪化する中でも業績好調な企業があったものだ。だがコロナ危機ではほぼあらゆる業種で打撃を受け、未曾有の失業が生じている。短期間での失業急増は経済回復を難しくする。消費者への衝撃が大きく、復職できても以前並みの出費に戻りにくいからだ。
An L-Shaped Recovery Is Not an Anomaly, It Is the Norm. | Mises Wire
社会主義の定義とは、政府による生産手段の支配である。社会主義の支持者ですら、この定義を知らない人は多い。マルクスら創始者はこの定義を堅く信じた。ただし社会主義は資本主義に対抗し、民主的な性格がなければならないと考えた。労働者が集団で生産手段を支配するのだ。
Why Socialists Love the Phrase "It's Not Real Socialism" | Mises Wire
米経済学会会長への就任直前に死去した経済学者マルシャックは、ロシア社民党に入党経験のあるソ連シンパだった。計量経済学の創始者の1人で、エールやUCLAなど米国の大学に影響力を及ぼす。計量経済学は主流経済学のいわば業界標準となるが、人間行動への理解を欠いていた。
Progressives and the Origins of the Economic "Consensus" | Mises Wire
There's No End in Sight to the Zombie Economy | Mises Wire
過去の経済危機では、景気が悪化する中でも業績好調な企業があったものだ。だがコロナ危機ではほぼあらゆる業種で打撃を受け、未曾有の失業が生じている。短期間での失業急増は経済回復を難しくする。消費者への衝撃が大きく、復職できても以前並みの出費に戻りにくいからだ。
An L-Shaped Recovery Is Not an Anomaly, It Is the Norm. | Mises Wire
社会主義の定義とは、政府による生産手段の支配である。社会主義の支持者ですら、この定義を知らない人は多い。マルクスら創始者はこの定義を堅く信じた。ただし社会主義は資本主義に対抗し、民主的な性格がなければならないと考えた。労働者が集団で生産手段を支配するのだ。
Why Socialists Love the Phrase "It's Not Real Socialism" | Mises Wire
米経済学会会長への就任直前に死去した経済学者マルシャックは、ロシア社民党に入党経験のあるソ連シンパだった。計量経済学の創始者の1人で、エールやUCLAなど米国の大学に影響力を及ぼす。計量経済学は主流経済学のいわば業界標準となるが、人間行動への理解を欠いていた。
Progressives and the Origins of the Economic "Consensus" | Mises Wire
TPPは複雑で巨大な管理貿易圏である 一部業界の利益を優先し、国民に高いコスト強いる
今月、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意し、メディアでは「巨大な自由貿易圏が誕生する」と歓迎する論調が目立つ。域内でのモノや人材、サービスのやりとりが盛んになり、経済が大きく活性化することが期待できるという。一方で、TPPを批判する側も「自由貿易で日本の農業は壊滅する」などと指摘している。
しかしTPPとは、ほんとうに自由貿易なのだろうか。
TPPを本来の自由貿易のあり方と比較すると、とてもそうはいえない。そもそも自由貿易をやりたければ、多くの国がわざわざ集まり、多国間交渉で協定をつくる必要などない。それぞれの国が一方的に「わが国では貿易は自由とする」と宣言し、関税や輸入規制を縮小・撤廃すれば済む。
ほかの国が自由貿易に反対で、関税や規制をそのままにしているのに、自分の国だけが関税を引き下げたり規制をなくしたりするのは不利だと考えるのは、間違っている。消費者や輸入品を利用する事業者からみれば、他国がどうしようと関係なく、自国が輸入障壁を低くすれば、海外の商品を安く買えるというメリットを享受できる。
イタリアの経済学者パレートは、「もし自由貿易を正しいとみなすなら、貿易協定をつくる理由はなくなる」と述べている。「なぜなら、協定で解決すべき問題がなくなるからだ。各国が商品を国に自由に出入りさせるのだから」。
ところがTPPは周知のように、多くの政府関係者が税金を費やして集まり、協定案をつくった。その内容も、本来の自由貿易ならば上記のように「貿易は自由とする」とシンプルなもので済むはずなのに、複雑極まるものとなっている。関税の引き下げを何年もかけて小刻みに行う、国別の輸入枠を設ける、これまでの輸入枠と別に「TPP枠」を新設する、そのTPP枠を品目ごとに設定する……。新聞などで解説を読んでも、すんなり理解できる人がどれくらいいるだろうか。
しかしTPPとは、ほんとうに自由貿易なのだろうか。
TPPを本来の自由貿易のあり方と比較すると、とてもそうはいえない。そもそも自由貿易をやりたければ、多くの国がわざわざ集まり、多国間交渉で協定をつくる必要などない。それぞれの国が一方的に「わが国では貿易は自由とする」と宣言し、関税や輸入規制を縮小・撤廃すれば済む。
ほかの国が自由貿易に反対で、関税や規制をそのままにしているのに、自分の国だけが関税を引き下げたり規制をなくしたりするのは不利だと考えるのは、間違っている。消費者や輸入品を利用する事業者からみれば、他国がどうしようと関係なく、自国が輸入障壁を低くすれば、海外の商品を安く買えるというメリットを享受できる。
イタリアの経済学者パレートは、「もし自由貿易を正しいとみなすなら、貿易協定をつくる理由はなくなる」と述べている。「なぜなら、協定で解決すべき問題がなくなるからだ。各国が商品を国に自由に出入りさせるのだから」。
ところがTPPは周知のように、多くの政府関係者が税金を費やして集まり、協定案をつくった。その内容も、本来の自由貿易ならば上記のように「貿易は自由とする」とシンプルなもので済むはずなのに、複雑極まるものとなっている。関税の引き下げを何年もかけて小刻みに行う、国別の輸入枠を設ける、これまでの輸入枠と別に「TPP枠」を新設する、そのTPP枠を品目ごとに設定する……。新聞などで解説を読んでも、すんなり理解できる人がどれくらいいるだろうか。
2020-06-04
都市封鎖と暴動
米国で都市封鎖が暴動をもたらした3つの要因。(1)在宅・休業命令によって3000万人を超す大恐慌以来の大量失業を招いた(2)学校、教会、カフェ、バー、図書館、理髪店など市民交流の場を破壊した(3)都市封鎖に違反するささいな行為が犯罪とみなされ警察と市民の対立が強まった。
Three Ways Lockdowns Paved the Way for These Riots | Mises Wire
黒人暴行死を契機とした暴動では、警官は暴徒の数を大きく上回っていても、市民を暴行や略奪から守らなかった。市民と政府は「社会契約」を結んでいると言われるが、実際には一方通行だ。市民は警察の「サービス」に税金を払うが、警察が見返りをくれるかどうかはわからない。
Minneapolis Riots Are a Reminder That Police Don't Protect You or Your Property | Mises Wire
米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は都市封鎖の緩和に反対していたが、その主張を放棄した。CNBCのインタビューに答え、このまま封鎖を続けると、「取り返しのつかない損害」をもたらすと認めた。彼のような官僚には、富が健康のカギだと理解できない。
The Cost of Lockdowns in Human Health and Human Lives Is Becoming Increasingly Clear | Mises Institute
米国で州や都市が経済封鎖の解除を迫られる理由。(1)失業。多くの州で失業率が過去最高に。石油・ガス産業は市況悪化で深刻(2)税収。多くの州や町で税収が20%以上減。年金財源の不足も(3)学校。秋学期まで休校が続くと、共働き家庭中心に保育所などの出費。税金と二重の負担。
3 reasons states will reopen regardless of what Trump says | TheHill
Three Ways Lockdowns Paved the Way for These Riots | Mises Wire
黒人暴行死を契機とした暴動では、警官は暴徒の数を大きく上回っていても、市民を暴行や略奪から守らなかった。市民と政府は「社会契約」を結んでいると言われるが、実際には一方通行だ。市民は警察の「サービス」に税金を払うが、警察が見返りをくれるかどうかはわからない。
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米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は都市封鎖の緩和に反対していたが、その主張を放棄した。CNBCのインタビューに答え、このまま封鎖を続けると、「取り返しのつかない損害」をもたらすと認めた。彼のような官僚には、富が健康のカギだと理解できない。
The Cost of Lockdowns in Human Health and Human Lives Is Becoming Increasingly Clear | Mises Institute
米国で州や都市が経済封鎖の解除を迫られる理由。(1)失業。多くの州で失業率が過去最高に。石油・ガス産業は市況悪化で深刻(2)税収。多くの州や町で税収が20%以上減。年金財源の不足も(3)学校。秋学期まで休校が続くと、共働き家庭中心に保育所などの出費。税金と二重の負担。
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GDPは経済の実力を反映しない 膨大な防衛費と無駄な公共事業でかさ上げし放題
代表的な経済指標である国内総生産(GDP)が、あらためて関心を集めている。安倍晋三首相が9月24日の記者会見で、アベノミクス第2ステージの目標として、「GDP600兆円の達成」を掲げたからである。
GDPとは、国内で1年間に新たに加わった物やサービスの価値の総和を計算したもの。GDPが1年間で伸びた率は、経済成長率と呼ばれる。政府やメディアはいつも、GDPが増えれば日本の経済は明るいとはしゃぎ、GDPが減れば深刻な顔をして景気対策を打つべきだと叫ぶ。
しかし、そもそもGDPとは、どれほど信頼できるものなのだろうか。本当に経済の豊かさを測る物差しとしてふさわしいのだろうか。
GDPとは、国内で1年間に新たに加わった物やサービスの価値の総和を計算したもの。GDPが1年間で伸びた率は、経済成長率と呼ばれる。政府やメディアはいつも、GDPが増えれば日本の経済は明るいとはしゃぎ、GDPが減れば深刻な顔をして景気対策を打つべきだと叫ぶ。
しかし、そもそもGDPとは、どれほど信頼できるものなのだろうか。本当に経済の豊かさを測る物差しとしてふさわしいのだろうか。
2020-06-03
警察の軍隊化
米国では伝統的に軍隊による法執行が禁じられてきた。だから欧州のような憲兵が存在しない。1878年の民警団法で、国内の治安維持に陸軍・空軍を動員することを禁止。しかし1920年代の禁酒法以降、伝統は崩れていく。酒密売で成長した暴力団に対抗し、警察の軍隊化が始まった。
Weapons of War on our Streets: A Guide to the Militarization of Police | | Tenth Amendment Center
1967年、米連邦最高裁は「適格免責」の考えを初めて示した。ミシシッピ州での公民権運動のデモに警察が暴力を振るったことについて、警官が「誠意と相当な理由」をもって法を執行したのであれば、法的責任に問われるべきではないとの判断を示した。今では殺人さえ免責される。
Opinion | George Floyd, Police Accountability and the Supreme Court - The New York Times
白人警察官による米ミネソタ州の黒人暴行死事件に抗議する人々は、放火や略奪をやめ、警官の免責を促進してきた議員や裁判官に怒りを向けるべきだ。1982年、連邦最高裁は公務員に対し、はっきりと確立された憲法・法令上の権利を侵害しない限り、免責されるとの判断を示した。
Cops Kill Because We Gave Them The Legal Framework to Do It | The American Conservative
米国防総省が余った軍備を国内各地の警察に譲渡する1033計画によって、手榴弾発射器、装甲兵員輸送車、M16自動小銃、ヘリコプターなどが警察に渡った。警察はしだいに軍隊化が進んだ。警官が黒人男性の首を膝で押さえただけで死に至らしめたのなら、手榴弾など必要だろうか。
Maybe We Should Stop Giving the Minneapolis Police Military Equipment | The American Conservative
Weapons of War on our Streets: A Guide to the Militarization of Police | | Tenth Amendment Center
1967年、米連邦最高裁は「適格免責」の考えを初めて示した。ミシシッピ州での公民権運動のデモに警察が暴力を振るったことについて、警官が「誠意と相当な理由」をもって法を執行したのであれば、法的責任に問われるべきではないとの判断を示した。今では殺人さえ免責される。
Opinion | George Floyd, Police Accountability and the Supreme Court - The New York Times
白人警察官による米ミネソタ州の黒人暴行死事件に抗議する人々は、放火や略奪をやめ、警官の免責を促進してきた議員や裁判官に怒りを向けるべきだ。1982年、連邦最高裁は公務員に対し、はっきりと確立された憲法・法令上の権利を侵害しない限り、免責されるとの判断を示した。
Cops Kill Because We Gave Them The Legal Framework to Do It | The American Conservative
米国防総省が余った軍備を国内各地の警察に譲渡する1033計画によって、手榴弾発射器、装甲兵員輸送車、M16自動小銃、ヘリコプターなどが警察に渡った。警察はしだいに軍隊化が進んだ。警官が黒人男性の首を膝で押さえただけで死に至らしめたのなら、手榴弾など必要だろうか。
Maybe We Should Stop Giving the Minneapolis Police Military Equipment | The American Conservative
短期利益志向と株主優先主義が企業を滅ぼす、はデタラメである 真犯人とは?
資本主義の下では企業の短期志向(ショートターミズム)が強まる。目先の株価上昇や配当増加のことしか考えない株主が、四半期ごとに多くの利益をあげるよう経営者に求めるからである。これでは長期の判断にもとづく投資ができず、国の経済は衰退してしまう――。
こんな意見をよく耳にする。しかし、短期志向の「犯人」はほんとうに資本主義なのだろうか。
ショートターミズムに対する批判で最近注目を集めたのは、米民主党の次期有力大統領候補、ヒラリー・クリントン氏の発言である。同氏は7月、ニューヨーク大学での講演で、企業経営者が株主からの圧力によって短期的な好業績を求められる傾向を「四半期資本主義」と批判。上場企業は技術革新、資本、労働者の訓練、賃金などにお金を回さず、自社株買いや配当に費やしていると指摘した。同氏は「資本主義はバランスを失っている。修復が必要」と強調。長期的な成長を促すため、株式のキャピタルゲイン(譲渡益)課税を見直し、税率が安くなる長期保有の期間を現行の1年以上から、2年以上に厳格化するなどの提案を行った。
課税強化で実際に短期志向が是正されるかどうかはともかく、クリントン氏によるショートターミズム批判そのものには、共感する人が多いかもしれない。しかし、短期志向が資本主義の行きすぎのせいだという同氏の主張は、ほんとうに正しいだろうか。
こんな意見をよく耳にする。しかし、短期志向の「犯人」はほんとうに資本主義なのだろうか。
ショートターミズムに対する批判で最近注目を集めたのは、米民主党の次期有力大統領候補、ヒラリー・クリントン氏の発言である。同氏は7月、ニューヨーク大学での講演で、企業経営者が株主からの圧力によって短期的な好業績を求められる傾向を「四半期資本主義」と批判。上場企業は技術革新、資本、労働者の訓練、賃金などにお金を回さず、自社株買いや配当に費やしていると指摘した。同氏は「資本主義はバランスを失っている。修復が必要」と強調。長期的な成長を促すため、株式のキャピタルゲイン(譲渡益)課税を見直し、税率が安くなる長期保有の期間を現行の1年以上から、2年以上に厳格化するなどの提案を行った。
課税強化で実際に短期志向が是正されるかどうかはともかく、クリントン氏によるショートターミズム批判そのものには、共感する人が多いかもしれない。しかし、短期志向が資本主義の行きすぎのせいだという同氏の主張は、ほんとうに正しいだろうか。
2020-06-02
ステイホームの前提
コロナ流行が20年前だったら「ステイホーム」はどんな様子だったろう。アイフォーンもウーバーイーツもネットフリックスもズームもなく、アマゾンには本、CD、DVDしかなかった。都市封鎖は富豪が生んだこれらサービスの存在を前提としている。富の格差を非難してはいけない。
Dear Nail-Biting Lockdown Lovers, You Can't Love the Lockdowns and Hate the Rich | RealClearMarkets
どんなレストランにもお構いなしに持ち帰り対応を求めるコロナ対策は、料理人たちの才能に対する侮辱だ。彼らの仕事への愛は、金の問題ではない。政治家は、自分だけのやり方でお客に尽くすことに命をかけてきた人々に対し、才能をプラスチックに包んで売れと言っているのだ。
Politicians Have Forced Chefs to Wrap Their Genius In Plastic | RealClearMarkets
1957-58年に流行したアジアインフルエンザで、米国人は100万人あたり660人超が死亡した。新型コロナによるこれまでの死者の2倍以上だ。ところが経済への影響は非常に小さかった。現在の経済への打撃は、ウイルスそのものよりウイルス対策によるものであることを物語っている。
Why Didn't the 1958 and 1918 Pandemics Destroy the Economy? Hint: It's the Lockdowns | Mises Wire
新型コロナウイルスに対する政府の対応は、南北戦争時の素人軍医に似ている。5万人以上の兵士が戦闘後に手術で手足を切除された。手足はしばしば銃弾で打ち砕かれ、間に合わせの軍医が知っている唯一の手当てが、切除だった。衛生管理はずさんで多くの不要の死をもたらした。
Hacksawing the Economy: How Lockdowns Are in the Tradition of Civil War Surgeons | Mises Wire
Dear Nail-Biting Lockdown Lovers, You Can't Love the Lockdowns and Hate the Rich | RealClearMarkets
どんなレストランにもお構いなしに持ち帰り対応を求めるコロナ対策は、料理人たちの才能に対する侮辱だ。彼らの仕事への愛は、金の問題ではない。政治家は、自分だけのやり方でお客に尽くすことに命をかけてきた人々に対し、才能をプラスチックに包んで売れと言っているのだ。
Politicians Have Forced Chefs to Wrap Their Genius In Plastic | RealClearMarkets
1957-58年に流行したアジアインフルエンザで、米国人は100万人あたり660人超が死亡した。新型コロナによるこれまでの死者の2倍以上だ。ところが経済への影響は非常に小さかった。現在の経済への打撃は、ウイルスそのものよりウイルス対策によるものであることを物語っている。
Why Didn't the 1958 and 1918 Pandemics Destroy the Economy? Hint: It's the Lockdowns | Mises Wire
新型コロナウイルスに対する政府の対応は、南北戦争時の素人軍医に似ている。5万人以上の兵士が戦闘後に手術で手足を切除された。手足はしばしば銃弾で打ち砕かれ、間に合わせの軍医が知っている唯一の手当てが、切除だった。衛生管理はずさんで多くの不要の死をもたらした。
Hacksawing the Economy: How Lockdowns Are in the Tradition of Civil War Surgeons | Mises Wire
「戦争は経済を活性化させる」は、デタラメである なぜ戦争が終わると不況になる?
今月16日、安全保障関連法案が衆議院で可決された。これは、自衛隊法などの改正を一括して行う「平和安全法制整備法案」と、自衛隊による米軍などの後方支援を可能とする「国際平和支援法案」の2本立てである。法案成立をめぐっては、国会周辺で人々が「戦争反対」のプラカードを掲げて演説を行ったり、一部のメディアや識者から「日本が戦争をしやすくなる環境が整いつつある」といった指摘もなされるなど、国民的な議論が起こっている。
このように「戦争」という言葉がにわかにクローズアップされつつある中で、「戦争は経済に利益をもたらす」という主張をよく耳にする。戦時には武器や弾薬、兵士の食糧などが大量に必要になり、それらを扱う企業が儲かる。さまざまな技術が戦争をきっかけに開発される。戦争が終わると、戦時中に破壊された多くの住宅やビルが建て直され、経済活動を刺激する――。だから戦争は悲惨であっても、国を経済的に豊かにする、というのである。
しかし、これは本当だろうか。
米国の経済ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットは、第二次世界大戦終結直後の1946年に出版して以来ロングセラーとなっている著書『世界一シンプルな経済学』(村井章子訳/日経BP社)で、戦争が経済にプラスに働くというこの説を取り上げ、それが間違っていることを明らかにしている。
ハズリットはまず、「割れた窓ガラス」という寓話を紹介する。悪童がパン屋の窓ガラスを割る。それを見た近所の人が「窓を割られたのは不運だったが、悪いことばかりでもない」と言い合う。「例えば、そら、ガラス屋が仕事にありつくじゃあないか」。代金を得たガラス屋は、その分かそれ以上を別の店で使うだろう。その店の主人はまたその分を……という具合で、割れた窓ガラスは、次第に大きな範囲で収益と雇用を生むことになる。すると、この寓話の結論はこうなる。「ガラスを割った悪童は、町に損害を与えるどころか、利益をもたらしたのだ」
さて、この結論は正しいだろうか。ハズリットは次のように異を唱える。たしかに悪童のいたずらは、とりあえずガラス屋の仕事を増やす。だが実はパン屋の主人は、窓ガラスの修理代金で礼服を買うつもりだった。それが250ドルだとすると、パン屋の主人は、以前は窓ガラスと250ドルの両方を持っていたのに、今では窓ガラスしかない。窓ガラスと礼服の両方を手にする代わりに、窓ガラスのみで満足し、礼服は諦めざるを得なくなったのである。
「パン屋の主人を地域共同体の一員と考えれば、この共同体は仕立てられるはずだった礼服を失い、貧しくなったことになる」
つまり窓ガラスを割ったことで共同体が豊かになるという考えは間違いなのだ。しかし世間の人々の多くは、寓話に登場した近所の人のように、破壊が社会を豊かにするという錯覚に陥りがちである。
なぜか。
それは「人は、直接目に映るものしか見ない」からだとハズリットは指摘する。「人々は、翌日か翌々日にもパン屋に真新しい窓ガラスが輝くのを見るだろう。だが注文されずに終わった礼服を見ることはない」。だから目の前の新しい窓ガラスだけに気を取られて、手に入るはずだった礼服を失ったことに気づかない。パン屋の主人は、やむを得ず窓ガラスを修理するという選択をしたために、礼服で得られる満足を失った。
このように「戦争」という言葉がにわかにクローズアップされつつある中で、「戦争は経済に利益をもたらす」という主張をよく耳にする。戦時には武器や弾薬、兵士の食糧などが大量に必要になり、それらを扱う企業が儲かる。さまざまな技術が戦争をきっかけに開発される。戦争が終わると、戦時中に破壊された多くの住宅やビルが建て直され、経済活動を刺激する――。だから戦争は悲惨であっても、国を経済的に豊かにする、というのである。
しかし、これは本当だろうか。
米国の経済ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットは、第二次世界大戦終結直後の1946年に出版して以来ロングセラーとなっている著書『世界一シンプルな経済学』(村井章子訳/日経BP社)で、戦争が経済にプラスに働くというこの説を取り上げ、それが間違っていることを明らかにしている。
ハズリットはまず、「割れた窓ガラス」という寓話を紹介する。悪童がパン屋の窓ガラスを割る。それを見た近所の人が「窓を割られたのは不運だったが、悪いことばかりでもない」と言い合う。「例えば、そら、ガラス屋が仕事にありつくじゃあないか」。代金を得たガラス屋は、その分かそれ以上を別の店で使うだろう。その店の主人はまたその分を……という具合で、割れた窓ガラスは、次第に大きな範囲で収益と雇用を生むことになる。すると、この寓話の結論はこうなる。「ガラスを割った悪童は、町に損害を与えるどころか、利益をもたらしたのだ」
さて、この結論は正しいだろうか。ハズリットは次のように異を唱える。たしかに悪童のいたずらは、とりあえずガラス屋の仕事を増やす。だが実はパン屋の主人は、窓ガラスの修理代金で礼服を買うつもりだった。それが250ドルだとすると、パン屋の主人は、以前は窓ガラスと250ドルの両方を持っていたのに、今では窓ガラスしかない。窓ガラスと礼服の両方を手にする代わりに、窓ガラスのみで満足し、礼服は諦めざるを得なくなったのである。
「パン屋の主人を地域共同体の一員と考えれば、この共同体は仕立てられるはずだった礼服を失い、貧しくなったことになる」
つまり窓ガラスを割ったことで共同体が豊かになるという考えは間違いなのだ。しかし世間の人々の多くは、寓話に登場した近所の人のように、破壊が社会を豊かにするという錯覚に陥りがちである。
なぜか。
それは「人は、直接目に映るものしか見ない」からだとハズリットは指摘する。「人々は、翌日か翌々日にもパン屋に真新しい窓ガラスが輝くのを見るだろう。だが注文されずに終わった礼服を見ることはない」。だから目の前の新しい窓ガラスだけに気を取られて、手に入るはずだった礼服を失ったことに気づかない。パン屋の主人は、やむを得ず窓ガラスを修理するという選択をしたために、礼服で得られる満足を失った。
2020-06-01
ビザンツ帝国と「中世のドル」
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、米ドル相場の下落が加速している。3月9日の東京外国為替市場では約3年4か月ぶりに1ドル=101円台まで円高ドル安が進んだ。ドルはユーロなど他の通貨に対しても下落し、全面安の様相を示している。
金融市場では、コロナウイルスの感染拡大によって米国が景気後退局面に突入する可能性が高まり、ドル安を招いたとの見方が多い。けれども、より根の深い問題を無視できない。それはドルの信認を揺るがしかねない、巨額の政府債務である。
米国の連邦政府債務は23兆ドルを突破している。同国の中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2月、議会上院銀行委員会での証言で、債務残高の増加ペースが経済成長率を上回れば返済が困難になる恐れがあると憂慮を示した。
ところで、米ドルの略号「$」は、ソリドゥス金貨(Solidus)のSに由来するといわれる。ソリドゥス金貨はローマ皇帝のコンスタンティヌス帝によって創設され、その後長い間、信頼の高い通貨として広範な地域で用いられた。このため「中世のドル」とも呼ばれる。流通の中心地となったのはビザンツ帝国(東ローマ帝国)である。
コンスタンティヌス帝は330年、ビザンティウムに遷都し、コンスタンティノープル(現イスタンブール)と改称した。コンスタンティノープルは、アジアと欧州を結ぶ陸の交易路と、国会と地中海を結ぶ海の交易路との交点に位置したために、繁栄の条件を備えていた。
首都をはじめとして、都市は交易活動でにぎわった。ソリドゥス金貨は地中海周辺で使われるだけでなく、イランやエチオピアの商人によって、遠くインドにまで運ばれた。
現代のドルは米政府が発行している点を除けばただの紙切れだが、ソリドゥス金貨の場合、その信用は貨幣自体が含有する黄金にあった。4世紀の創設以来、11世紀頃までほぼ純金という高品位を保った。ソリドゥスとは「完全な純度をもつ」という意味だが、その名にふさわしい。
ソリドゥス金貨が高い品質を保ったのは、ビザンツ帝国の政府が無駄な支出を抑え、健全な財政を維持したことの反映である。
ビザンツ帝国の政府は「小さな政府」だった。たとえば官僚制である。ビザンツの官僚制と言えば、膨大な数の役人がおり、手続きやしきたりにうるさく、非能率で、賄賂やコネがまかりとおり、国の富を食いつぶす魔物のような存在、というイメージが流布されてきた。
しかし「このイメージは、少なくとも8世紀から10世紀の発展期に関する限りあてはまらない。まったく逆である」と、歴史学者の井上浩一氏は指摘する。9~10世紀の中央各官庁の定員を調べると、その数は想像されるよりはるかに少なく、下級の書吏を除けば、わずか600人余りだという。井上氏によれば、今日「小さな政府」とか「安上がりの政府」などと呼ばれるものを、発展期のビザンツ帝国はもっていた(『生き残った帝国ビザンティン』)。
たしかに高級官僚は驚くほどの高給をもらっていた。だが、その人数は限られていたから、官僚に支払われる給料の総額もたかが知れていた。井上氏の別の著書によれば、下級の書吏や使い走りは定められた手数料を受け取るか、高級官僚によって私的に雇われていたので、国家財政の負担とはならなかった(『ビザンツとスラヴ』)。
金融市場では、コロナウイルスの感染拡大によって米国が景気後退局面に突入する可能性が高まり、ドル安を招いたとの見方が多い。けれども、より根の深い問題を無視できない。それはドルの信認を揺るがしかねない、巨額の政府債務である。
米国の連邦政府債務は23兆ドルを突破している。同国の中央銀行に当たる連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は2月、議会上院銀行委員会での証言で、債務残高の増加ペースが経済成長率を上回れば返済が困難になる恐れがあると憂慮を示した。
ところで、米ドルの略号「$」は、ソリドゥス金貨(Solidus)のSに由来するといわれる。ソリドゥス金貨はローマ皇帝のコンスタンティヌス帝によって創設され、その後長い間、信頼の高い通貨として広範な地域で用いられた。このため「中世のドル」とも呼ばれる。流通の中心地となったのはビザンツ帝国(東ローマ帝国)である。
コンスタンティヌス帝は330年、ビザンティウムに遷都し、コンスタンティノープル(現イスタンブール)と改称した。コンスタンティノープルは、アジアと欧州を結ぶ陸の交易路と、国会と地中海を結ぶ海の交易路との交点に位置したために、繁栄の条件を備えていた。
首都をはじめとして、都市は交易活動でにぎわった。ソリドゥス金貨は地中海周辺で使われるだけでなく、イランやエチオピアの商人によって、遠くインドにまで運ばれた。
現代のドルは米政府が発行している点を除けばただの紙切れだが、ソリドゥス金貨の場合、その信用は貨幣自体が含有する黄金にあった。4世紀の創設以来、11世紀頃までほぼ純金という高品位を保った。ソリドゥスとは「完全な純度をもつ」という意味だが、その名にふさわしい。
ソリドゥス金貨が高い品質を保ったのは、ビザンツ帝国の政府が無駄な支出を抑え、健全な財政を維持したことの反映である。
ビザンツ帝国の政府は「小さな政府」だった。たとえば官僚制である。ビザンツの官僚制と言えば、膨大な数の役人がおり、手続きやしきたりにうるさく、非能率で、賄賂やコネがまかりとおり、国の富を食いつぶす魔物のような存在、というイメージが流布されてきた。
しかし「このイメージは、少なくとも8世紀から10世紀の発展期に関する限りあてはまらない。まったく逆である」と、歴史学者の井上浩一氏は指摘する。9~10世紀の中央各官庁の定員を調べると、その数は想像されるよりはるかに少なく、下級の書吏を除けば、わずか600人余りだという。井上氏によれば、今日「小さな政府」とか「安上がりの政府」などと呼ばれるものを、発展期のビザンツ帝国はもっていた(『生き残った帝国ビザンティン』)。
たしかに高級官僚は驚くほどの高給をもらっていた。だが、その人数は限られていたから、官僚に支払われる給料の総額もたかが知れていた。井上氏の別の著書によれば、下級の書吏や使い走りは定められた手数料を受け取るか、高級官僚によって私的に雇われていたので、国家財政の負担とはならなかった(『ビザンツとスラヴ』)。
2020-05-28
マスクが語るグローバル経済の底力
- マスク生産の背景にグローバル経済の巨大なネットワーク
- 政府の命令なしに多数の人々が動き商品を作りあげる不思議
- グローバル経済は国籍・文化の異なる人々による協力を可能に
最近、資本主義への風当たりが強い。富の格差を拡大させる、自然環境を破壊する、拝金主義がはびこる――などなど、さんざんだ。
そのうえ、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、また批判の種が増えてしまった。グローバル資本主義のせいで、ウイルスが世界中にあっという間に広がってしまったという。
たしかに、グローバル経済のもとでは人やモノが国境を越えて自由に移動し、それにつれて感染症も広がりやすくなるのは事実だ。その一方で、グローバル経済は人々に恩恵を与え、命を救いもする。しかも、とても不思議なやり方で。
■マスクの背後に広がる巨大なネットワーク
たとえば、ここに1枚のマスクがある。コロナ危機以来、手に入りにくくなった家庭用マスクだ。たいていの人は、この小さなマスクの背後に巨大なグローバル経済のネットワークが広がることを知らないか、忘れている。
よくある使い捨てマスクの場合、原料は原油だ。原油は中東やロシアなどの産油国から輸出され、タンカーやパイプラインによって、日本や中国の石油化学工場まで運ばれる。加熱してナフサという油を取り出し、そこからプロピレンという素材を得て、プラスチックの一種であるポリプロピレンを製造する。
ポリプロピレンは別の工場に運ばれ、不織布という布に加工。いよいよマスク工場に材料として納品される。1枚のマスクを作るのに必要な不織布は、通気性のいい表用、肌触りのいい裏用、その間で飛沫をカットするフィルター用の3種類だ。
不織布からマスク本体を作り、鼻の形に合わせて曲げることのできるプラスチック製のノーズフィッターを組み合わせる。さらに耳ひもを取り付け、完成だ。
ここまででも、すでに相当な数の人たちがマスクの製造に携わっていることがわかるだろう。けれども、それだけではない。
2020-05-27
金融緩和による幻想
消費と生産は人々の究極の目的、つまり生命と幸福の維持にとって、同じくらい重要である。消費は生産に依存し、その一方で生産は消費に依存する。中央銀行による金融緩和政策はこの結合関係を破壊する。あたかも生産しなくても消費できるかのように見える環境を作り出すのだ。
Let's Hope Deflation Is Headed Our Way | Mises Wire
最近の通貨供給量の増加がいずれ物価を押し上げ、通貨の購買力を下げる可能性は高い。中央銀行は経済制度の崩壊防止を優先目標としている。そのために通貨を増やした結果、物価高を招いても、やむをえぬ損害とみなすだろう。国を守るためなら通貨破壊も仕方ないというわけだ。
To Prevent Problematic Inflation, We Need More Production. Which Means There's Trouble Ahead. | Mises Wire
余った労働者が専門技能を身につけるには時間がかかる。その過程は労働組合によって妨げられる。建前は組合員の保護でも、実際は労働資源の再配置に対する抵抗だ。政府が経済に介入すると不採算な事業や誤った投資から資本を引き揚げるのを妨げられ、不況を無駄に長引かせる。
Central Banks Are Destroying What Was Left of Free Markets | Mises Wire
政府の物価指数には、現実との食い違いがある。たとえば資産価格が含まれていない。しかしここ数十年、不均衡な物価上昇が進み、とくに不動産や株式など長期資産が大きく値上がりしている。ユーロ圏における実感に基づく物価上昇率が公式発表値より年5%高いのは不思議でない。
Why Official Inflation Measures Don't Work | Mises Wire
Let's Hope Deflation Is Headed Our Way | Mises Wire
最近の通貨供給量の増加がいずれ物価を押し上げ、通貨の購買力を下げる可能性は高い。中央銀行は経済制度の崩壊防止を優先目標としている。そのために通貨を増やした結果、物価高を招いても、やむをえぬ損害とみなすだろう。国を守るためなら通貨破壊も仕方ないというわけだ。
To Prevent Problematic Inflation, We Need More Production. Which Means There's Trouble Ahead. | Mises Wire
余った労働者が専門技能を身につけるには時間がかかる。その過程は労働組合によって妨げられる。建前は組合員の保護でも、実際は労働資源の再配置に対する抵抗だ。政府が経済に介入すると不採算な事業や誤った投資から資本を引き揚げるのを妨げられ、不況を無駄に長引かせる。
Central Banks Are Destroying What Was Left of Free Markets | Mises Wire
政府の物価指数には、現実との食い違いがある。たとえば資産価格が含まれていない。しかしここ数十年、不均衡な物価上昇が進み、とくに不動産や株式など長期資産が大きく値上がりしている。ユーロ圏における実感に基づく物価上昇率が公式発表値より年5%高いのは不思議でない。
Why Official Inflation Measures Don't Work | Mises Wire
2020-05-26
大流行から大惨事へ
天然痘撲滅を指揮した米医師ドナルド・ヘンダーソン氏は、感染症対策として日常生活を混乱させると、かえって大惨事をもたらすと警告した。今回のコロナ対策はまさしくそれだった。韓国、スウェーデン、日本など一部の国を例外として、世界中でひどい意思決定ミスが広がった。
Pandemics and the Liberal Path – AIER
新型コロナで厳しい都市封鎖を実施した国や州は、死亡率が高い。非常に厳しい封鎖を行ったイタリアの百万人あたり495人に対し、ほぼしなかった韓国はわずか5人。封鎖しなかった米サウスダコタ州などはほぼ無傷で、強権発動したミシガン、NY、カリフォルニア州は打撃が大きい。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Listening to the Coronavirus 'Experts' Has Led to Death and Despair
人の心理は進化によって、たとえ想像上のものでしかなくても、あらゆる脅威を恐れるようにできている。政府は人の本性に関するこの事実を理解しており、それを利用する。支配者はマキャベリの忠告に本能的に耳を傾ける。「愛されるよりも恐れられる方が、はるかに安全である」
Covid-19 Fear Used to Justify Expanded Government Power
米国の富豪は遺産のおかげで金持ちになったのではない。1982年以降、純資産額の大きい上位400人について調べたところ、2014年にも400位以内にとどまった本人またはその子孫は、69人だけだった。つまり富豪の多くは叩き上げであり、その相続人は親並みに金持ちではいられない。
Charitable Giving Helps Mitigate the Impact of COVID-19. What’s Wrong With That? – Reason.com
Pandemics and the Liberal Path – AIER
新型コロナで厳しい都市封鎖を実施した国や州は、死亡率が高い。非常に厳しい封鎖を行ったイタリアの百万人あたり495人に対し、ほぼしなかった韓国はわずか5人。封鎖しなかった米サウスダコタ州などはほぼ無傷で、強権発動したミシガン、NY、カリフォルニア州は打撃が大きい。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Listening to the Coronavirus 'Experts' Has Led to Death and Despair
人の心理は進化によって、たとえ想像上のものでしかなくても、あらゆる脅威を恐れるようにできている。政府は人の本性に関するこの事実を理解しており、それを利用する。支配者はマキャベリの忠告に本能的に耳を傾ける。「愛されるよりも恐れられる方が、はるかに安全である」
Covid-19 Fear Used to Justify Expanded Government Power
米国の富豪は遺産のおかげで金持ちになったのではない。1982年以降、純資産額の大きい上位400人について調べたところ、2014年にも400位以内にとどまった本人またはその子孫は、69人だけだった。つまり富豪の多くは叩き上げであり、その相続人は親並みに金持ちではいられない。
Charitable Giving Helps Mitigate the Impact of COVID-19. What’s Wrong With That? – Reason.com
2020-05-25
大恐慌前夜?
大恐慌前夜と現在の米経済の類似点。FRBの大幅な金融緩和による消費者物価の緩やかな上昇。通貨供給量の増加は1921-29年が60%、2009-19年がなんと480%だ。経済学者たちは視野が狭く、消費者物価ばかりに注目し、株式など資産価格を含む広義のインフレを正しく認識しなかった。
How Government Intervention Triggers Depressions | Mises Wire
多くの賢い人が欺かれ、景気刺激策という誤った道へと向かう。経済の表面しか見ていないからだ。GDP、消費者支出、失業率。経済活動の結果だけを見て、価値と富の源泉といった、より深い関係を見ていない。この浅はかな経済的思考が、膨張する財政刺激という愚行につながる。
Why Government Stimulus Is Bad Policy - Foundation for Economic Education
デフレやインフレがいつどの程度起こるかわからない。変数が多くて正確な予測は無理だし、政治家の判断はとくに予想困難だ。個人にできる備えは、財産の一部を金、原油、銅、アルミなど価値がゼロにならない実物資産への権利にしておくこと。流動性の高さと国際分散が重要だ。
Deflation or inflation: COVID-19 economic chaos - Washington Times
資源は交換できる。スミスは1週間分の労働をジョーンズに提供し、ジョーンズはスミスに衣食をいくらか与える。交換の条件が価格だ。貨幣経済では価格は金銭で表示される。貨幣経済に暮らす人々は、労働の時給や自家用車、住宅など自分のもつ資源に関する相場感覚が養われる。
The Remarkable Blessings of the Price System – AIER
How Government Intervention Triggers Depressions | Mises Wire
多くの賢い人が欺かれ、景気刺激策という誤った道へと向かう。経済の表面しか見ていないからだ。GDP、消費者支出、失業率。経済活動の結果だけを見て、価値と富の源泉といった、より深い関係を見ていない。この浅はかな経済的思考が、膨張する財政刺激という愚行につながる。
Why Government Stimulus Is Bad Policy - Foundation for Economic Education
デフレやインフレがいつどの程度起こるかわからない。変数が多くて正確な予測は無理だし、政治家の判断はとくに予想困難だ。個人にできる備えは、財産の一部を金、原油、銅、アルミなど価値がゼロにならない実物資産への権利にしておくこと。流動性の高さと国際分散が重要だ。
Deflation or inflation: COVID-19 economic chaos - Washington Times
資源は交換できる。スミスは1週間分の労働をジョーンズに提供し、ジョーンズはスミスに衣食をいくらか与える。交換の条件が価格だ。貨幣経済では価格は金銭で表示される。貨幣経済に暮らす人々は、労働の時給や自家用車、住宅など自分のもつ資源に関する相場感覚が養われる。
The Remarkable Blessings of the Price System – AIER
2020-05-24
教育と政府の分離
今日、宗教と政府の分離は当然と思われている。それなら教育と政府を分離してもいい。教育の選択は、宗教と同じように親に任せればいい。教会が富裕・中間層の寄付で建てられ、貧困層も自由に利用できるように、学校も運営できるはず。授業料は無償かほぼ無償にできるだろう。
How About Permanently Closing Public Schools? – The Future of Freedom Foundation
ジョンはリンゴを10個、ジョージはオレンジを10個持っている。2人は合意のうえで、リンゴ9個とオレンジ1個を交換する。ジョンに残ったのはリンゴもオレンジも1個だけ、ジョージはどっちも9個。不公正取引ではない。2人とも取引のおかげで生活水準が向上。果物の数は関係ない。
Free Trade Raises Standards of Living – The Future of Freedom Foundation
債務不履行に陥ったアルゼンチンの政府債務は650億ドル。一方、米国は25兆ドルを突破。制御不能の福祉・軍事支出、多額の景気刺激策、数兆ドルの「無償」支援、150兆ドルの未積立負債、大量の失業者、貯蓄率の低下、空前の通貨発行量…。覚悟しよう、ろくな結末にはならない。
Government Debt in Argentina and the U.S. – The Future of Freedom Foundation
ルーズベルト米大統領がニューディール政策で導入した社会保障は、社会主義の政策であり、その構想はドイツの社会主義者の間で生まれ、米国に輸入された。その思想によると政府は国民の面倒を見る責任があり、ある集団から税金を取って他の集団に与えるのは思いやりだという。
The FDR Plan to Restore America – The Future of Freedom Foundation
How About Permanently Closing Public Schools? – The Future of Freedom Foundation
ジョンはリンゴを10個、ジョージはオレンジを10個持っている。2人は合意のうえで、リンゴ9個とオレンジ1個を交換する。ジョンに残ったのはリンゴもオレンジも1個だけ、ジョージはどっちも9個。不公正取引ではない。2人とも取引のおかげで生活水準が向上。果物の数は関係ない。
Free Trade Raises Standards of Living – The Future of Freedom Foundation
債務不履行に陥ったアルゼンチンの政府債務は650億ドル。一方、米国は25兆ドルを突破。制御不能の福祉・軍事支出、多額の景気刺激策、数兆ドルの「無償」支援、150兆ドルの未積立負債、大量の失業者、貯蓄率の低下、空前の通貨発行量…。覚悟しよう、ろくな結末にはならない。
Government Debt in Argentina and the U.S. – The Future of Freedom Foundation
ルーズベルト米大統領がニューディール政策で導入した社会保障は、社会主義の政策であり、その構想はドイツの社会主義者の間で生まれ、米国に輸入された。その思想によると政府は国民の面倒を見る責任があり、ある集団から税金を取って他の集団に与えるのは思いやりだという。
The FDR Plan to Restore America – The Future of Freedom Foundation
2020-05-22
経済危機の原因
経済学者ミーゼスは戦時中、当時の経済危機の原因は戦前からの誤った経済政策にあると指摘した。大きすぎて潰せないという口実で、本来淘汰されるはずの金融機関や企業を政治が支援。官民が癒着する縁故資本主義。税金による保護や助成のばらまき。今となんと似ていることか。
An “Austrian” Agenda for Post-Coronavirus Recovery – The Future of Freedom Foundation
経済に関する古い誤りの一つは、お金は富という考えだ。紙切れをつくり、これはお金だという政府の印をそれに押し、社会の人々に振りまけば、あら不思議、無から富が生まれるという。お金は取引の手段であり、それをいくら増やしたからといって、人々が求める商品は増えない。
There Will Be No Recovery Without Production – The Future of Freedom Foundation
政府による個人情報の収集と利用について、保守派はテロ対策や麻薬規制、移民規制に必要だと言う。進歩派はヘイトクライムや人身売買の規制、公共医療や環境保護、コロナウイルス対策に必要だと言う。どちらも悪用はしないと強調する。次の選挙では敵が勝つかもしれないのに。
The Coronavirus and the Attack on Liberty and Privacy – The Future of Freedom Foundation
英社会学者スペンサーによれば、産業型社会では生産と貿易で経済が繁栄し、富と物質的な豊かさが増す。その結果、軍事型の部族社会では淘汰されていた弱者が、適者として生き残れるようになる。そこで必要なのは知性、創造力、芸術・文化への好奇心と能力、商業への適応力だ。
Herbert Spencer on Equal Liberty and the Free Society – The Future of Freedom Foundation
An “Austrian” Agenda for Post-Coronavirus Recovery – The Future of Freedom Foundation
経済に関する古い誤りの一つは、お金は富という考えだ。紙切れをつくり、これはお金だという政府の印をそれに押し、社会の人々に振りまけば、あら不思議、無から富が生まれるという。お金は取引の手段であり、それをいくら増やしたからといって、人々が求める商品は増えない。
There Will Be No Recovery Without Production – The Future of Freedom Foundation
政府による個人情報の収集と利用について、保守派はテロ対策や麻薬規制、移民規制に必要だと言う。進歩派はヘイトクライムや人身売買の規制、公共医療や環境保護、コロナウイルス対策に必要だと言う。どちらも悪用はしないと強調する。次の選挙では敵が勝つかもしれないのに。
The Coronavirus and the Attack on Liberty and Privacy – The Future of Freedom Foundation
英社会学者スペンサーによれば、産業型社会では生産と貿易で経済が繁栄し、富と物質的な豊かさが増す。その結果、軍事型の部族社会では淘汰されていた弱者が、適者として生き残れるようになる。そこで必要なのは知性、創造力、芸術・文化への好奇心と能力、商業への適応力だ。
Herbert Spencer on Equal Liberty and the Free Society – The Future of Freedom Foundation
2020-05-20
『記者たち』〜記者よ、政府を疑え
2016年の米大統領選挙でトランプ陣営がロシア政府と共謀して得票を不正に操作したという「ロシア疑惑」は実際にはなかったことが、モラー特別検察官の捜査によって結論付けられました。過去2年以上にもわたり大手メディアが洪水のように垂れ流してきたロシア疑惑報道は、フェイク(偽)ニュースだったことになります。
何がいけなかったのでしょう。米国の大手メディアが報じるロシア疑惑のニュースはどれも、情報源が政府関係者でした。政府関係者は中立公平な人物とは限りません。一般の人々と同じく、自分の利益のために行動する生身の人間です。メディアを通じて自分に都合の良い情報操作をしようと考えても不思議はありません。
2003年のイラク戦争開戦時、大半の米メディアはその危険に対する注意を怠りました。イラクが大量破壊兵器を保有しているという米政府高官らの情報を鵜呑みにして報道し、開戦を正当化する役割を演じてしまったのです。しかしその中で唯一、政府の主張を疑い、異を唱えた報道機関がありました。『記者たち』(ロブ・ライナー監督)で描かれる中堅新聞社ナイト・リッダーです。
同社の記者、ランデー(ウディ・ハレルソン)とストロベル(ジェームズ・マースデン)は政府と大手メディアの主張が嘘であることに気づき、同時テロ後の米国内に愛国心が沸き上がる中で孤立に悩みながらも、真実を訴えていきます。彼らの情報源は、大手メディアが気にも留めないような末端の政府職員たちでした。政府上層部にコネがなかった分、情報操作に惑わされずに済んだと言えます。
ライナー監督みずから演じる、同社ワシントン支局長ウォルコットの言葉は印象的です。「政府が何か言ったら、必ずこう問え。『それは真実か?』」。米政府の言うことを疑わずロシア疑惑を報じ続けた米メディアや、それを右から左に伝え続けた日本のメディアは、この問いを噛み締め、読者・視聴者の信頼回復に努めなければならないでしょう。
<福岡・KBCシネマ>
何がいけなかったのでしょう。米国の大手メディアが報じるロシア疑惑のニュースはどれも、情報源が政府関係者でした。政府関係者は中立公平な人物とは限りません。一般の人々と同じく、自分の利益のために行動する生身の人間です。メディアを通じて自分に都合の良い情報操作をしようと考えても不思議はありません。
2003年のイラク戦争開戦時、大半の米メディアはその危険に対する注意を怠りました。イラクが大量破壊兵器を保有しているという米政府高官らの情報を鵜呑みにして報道し、開戦を正当化する役割を演じてしまったのです。しかしその中で唯一、政府の主張を疑い、異を唱えた報道機関がありました。『記者たち』(ロブ・ライナー監督)で描かれる中堅新聞社ナイト・リッダーです。
同社の記者、ランデー(ウディ・ハレルソン)とストロベル(ジェームズ・マースデン)は政府と大手メディアの主張が嘘であることに気づき、同時テロ後の米国内に愛国心が沸き上がる中で孤立に悩みながらも、真実を訴えていきます。彼らの情報源は、大手メディアが気にも留めないような末端の政府職員たちでした。政府上層部にコネがなかった分、情報操作に惑わされずに済んだと言えます。
ライナー監督みずから演じる、同社ワシントン支局長ウォルコットの言葉は印象的です。「政府が何か言ったら、必ずこう問え。『それは真実か?』」。米政府の言うことを疑わずロシア疑惑を報じ続けた米メディアや、それを右から左に伝え続けた日本のメディアは、この問いを噛み締め、読者・視聴者の信頼回復に努めなければならないでしょう。
<福岡・KBCシネマ>
(note 2019/04/07)
2020-05-19
最大の脅威
合衆国憲法の人権保障規定(権利章典)には、緊急事態の例外規定がない。昔の米国人は歴史上、政府が非常時に乗じて市民の自由を奪ってきたことを知っていた。人々は危機の際、おびえて政府に安全を求める。彼らは、自由にとって最大の脅威は自国政府であることを忘れている。
Three Reminders from The Bill of Rights – The Future of Freedom Foundation
合衆国憲法の前身である連合規約は約10年続いた。当時連邦政府は存在したものの、その権限は非常に弱く、課税の権限すらなかった。課税権のない連邦政府の下で10年も暮らせたのである。米国の先祖たちは、連邦政府の力が強いと、最後には自由と幸福が破壊されると知っていた。
Early Americans Would Have Rejected the U.S. Government – The Future of Freedom Foundation
社会主義者の主張に反し、会社と従業員には共通の利益がある。会社が稼げなければ、従業員を雇っていられない。会社が繁盛すれば、職は安定する。もし会社のオーナーが世界一利己的な人物でも、労働者を求めて他の多くの会社と競争している以上、賃金を上げなければならない。
Businesses, Employees, and the Coronavirus Crisis – The Future of Freedom Foundation
政府が意味するものはつねに強制・強要であり、必然的に自由と対立する。政府は自由を守らなければならない。政府が自由と両立しうるのは、その権限が経済の自由を守るうえで適切な範囲に制限されている場合のみである。—経済学者、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
My Discovery of Freedom – The Future of Freedom Foundation
Three Reminders from The Bill of Rights – The Future of Freedom Foundation
合衆国憲法の前身である連合規約は約10年続いた。当時連邦政府は存在したものの、その権限は非常に弱く、課税の権限すらなかった。課税権のない連邦政府の下で10年も暮らせたのである。米国の先祖たちは、連邦政府の力が強いと、最後には自由と幸福が破壊されると知っていた。
Early Americans Would Have Rejected the U.S. Government – The Future of Freedom Foundation
社会主義者の主張に反し、会社と従業員には共通の利益がある。会社が稼げなければ、従業員を雇っていられない。会社が繁盛すれば、職は安定する。もし会社のオーナーが世界一利己的な人物でも、労働者を求めて他の多くの会社と競争している以上、賃金を上げなければならない。
Businesses, Employees, and the Coronavirus Crisis – The Future of Freedom Foundation
政府が意味するものはつねに強制・強要であり、必然的に自由と対立する。政府は自由を守らなければならない。政府が自由と両立しうるのは、その権限が経済の自由を守るうえで適切な範囲に制限されている場合のみである。—経済学者、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス
My Discovery of Freedom – The Future of Freedom Foundation
『[リミット]』〜政府は市民を守れるか
内戦が続く中東イエメンを取材するため現地に渡航しようとしたフリージャーナリストの常岡浩介さんが外務省から旅券返納命令を受け、出国を禁じられました。外務省側は「邦人保護」を理由に制限に出たとみられています。
市民の保護は政府の重要な役割だとされます。けれども私たちは身の安全を政府に任せて、本当に大丈夫なのでしょうか。『[リミット]』 (ロドリゴ・コルテス監督)はそのような問いを突き付けます。
イラクで民間トラック運転手として働く米国人ポール(ライアン・レイノルズ)が目を覚ますと、そこは暗いひつぎの中。何者かに襲われ、地中のどこかに埋められてしまったのです。ひつぎにあった携帯電話に犯人が連絡をよこし、助けてほしければ身代金を米政府に払わせろと要求。ポールは窒息死の恐怖と戦いながら、必死で政府や勤務先の会社に助けを求めますが、救出は一向にはかどらず、時間だけが無情に過ぎていきます。
政府のいくつかの機関や部署をたらい回しされ、ポールはお役所仕事にいら立ちます。国務省でようやくダンというテロ人質対策の責任者に回されますが、ダンは犯人の脅迫でやむなく自分の動画をアップしたポールを責めるなど、政治問題を避けることを優先。口先ではポールを励ますものの、肝心の救助は進みません。
結末は意外性があり、しかも強烈な皮肉が利いています。政府は政治的な都合で市民を言葉巧みに欺く一方で、情けないほど無能である――。その両面の真実がラストの一言で鮮やかに浮かび上がります。
政府は、顧客の利益を第一に考える民間企業とは違い、政治的利害によって動く組織です。そのうえ、劣悪なサービスでも国民という顧客に逃げられたり税金の返金を迫られたりする心配はありません。そのような組織に身の安全を委ねる危うさを、この映画から気づかされます。
<Netflix>
市民の保護は政府の重要な役割だとされます。けれども私たちは身の安全を政府に任せて、本当に大丈夫なのでしょうか。『[リミット]』 (ロドリゴ・コルテス監督)はそのような問いを突き付けます。
イラクで民間トラック運転手として働く米国人ポール(ライアン・レイノルズ)が目を覚ますと、そこは暗いひつぎの中。何者かに襲われ、地中のどこかに埋められてしまったのです。ひつぎにあった携帯電話に犯人が連絡をよこし、助けてほしければ身代金を米政府に払わせろと要求。ポールは窒息死の恐怖と戦いながら、必死で政府や勤務先の会社に助けを求めますが、救出は一向にはかどらず、時間だけが無情に過ぎていきます。
政府のいくつかの機関や部署をたらい回しされ、ポールはお役所仕事にいら立ちます。国務省でようやくダンというテロ人質対策の責任者に回されますが、ダンは犯人の脅迫でやむなく自分の動画をアップしたポールを責めるなど、政治問題を避けることを優先。口先ではポールを励ますものの、肝心の救助は進みません。
結末は意外性があり、しかも強烈な皮肉が利いています。政府は政治的な都合で市民を言葉巧みに欺く一方で、情けないほど無能である――。その両面の真実がラストの一言で鮮やかに浮かび上がります。
政府は、顧客の利益を第一に考える民間企業とは違い、政治的利害によって動く組織です。そのうえ、劣悪なサービスでも国民という顧客に逃げられたり税金の返金を迫られたりする心配はありません。そのような組織に身の安全を委ねる危うさを、この映画から気づかされます。
<Netflix>
(note 2019/02/13)
2020-05-18
『生きる』 〜官僚主義への抵抗
政府の統計調査に不正が発覚し、そのうえ、問題を検証する第三者委員会の聞き取りに、問題を起こした側の管轄官庁の幹部らが出席・発言していたことが明らかになるという、お粗末な出来事がニュースをにぎわせています。行政サービスの改善よりも組織防衛を優先する、官僚機構の正体をさらけ出した格好です。
日本を代表する映画監督で、世界にも影響を与えた黒澤明監督が生きていたら、さぞ憤ることでしょう。代表作の一つ『生きる』で、官僚主義の愚かさ、醜さを痛烈に批判しているからです。
市役所の市民課長、渡辺勘治(志村喬)は30年間無欠勤、まじめだが事なかれ主義の典型的な役人です。ところがある日、自分が胃がんだと知り、これまでの生き方に疑問を抱きます。思い出したのは、住民たちが児童公園の建設を求めて提出した陳情書。勘治は残り少ない人生を公園実現に賭け、病身に鞭打って、縄張り主義に凝り固まった他部署の課長や、変化を嫌う上層部の説得に乗り出します。
勘治が公園建設を思い立つきっかけは、役所をやめておもちゃ工場に転職した元部下、小田切とよの言葉です。若くて活発なとよは、勘治におもちゃを見せ、こう話します。「これ作り始めてから、日本中の赤ん坊と仲良しになったような気がする。ねえ、課長さんも何か作ってみたら?」
とよの作るおもちゃは子供を喜ばせます。つまり、価値をもたらします。けれども勘治はこれまでの役人人生で、他人に喜んでもらった経験がないことに気づきます。余命短く、今さら転職はできません。しかし今の職場でも「やる気になればできる」と信じ、行動を起こします。
勘治の努力は実り、公園は完成します。しかし黒澤監督は、ただの美談で終わらせません。完成直後に公園のブランコで息を引き取った勘治の通夜の席で、酔った役所の部下たちは口々に「渡辺さんの後に続け」「死を無駄にしない」と気勢を上げますが、翌日には何もなかったかのように、窓口に訪れた住民を平然とたらい回しするお役所仕事を続けるのです。
劣悪なサービスでも顧客に逃げられる心配のない官庁が、官僚主義の悪弊を脱することは不可能なのでしょう。それでもそこで働く個人は、官僚主義に抵抗し、立派な生き方をすることができる。この名作は、そう訴えます。
<Amazon プライム・ビデオ>
日本を代表する映画監督で、世界にも影響を与えた黒澤明監督が生きていたら、さぞ憤ることでしょう。代表作の一つ『生きる』で、官僚主義の愚かさ、醜さを痛烈に批判しているからです。
市役所の市民課長、渡辺勘治(志村喬)は30年間無欠勤、まじめだが事なかれ主義の典型的な役人です。ところがある日、自分が胃がんだと知り、これまでの生き方に疑問を抱きます。思い出したのは、住民たちが児童公園の建設を求めて提出した陳情書。勘治は残り少ない人生を公園実現に賭け、病身に鞭打って、縄張り主義に凝り固まった他部署の課長や、変化を嫌う上層部の説得に乗り出します。
勘治が公園建設を思い立つきっかけは、役所をやめておもちゃ工場に転職した元部下、小田切とよの言葉です。若くて活発なとよは、勘治におもちゃを見せ、こう話します。「これ作り始めてから、日本中の赤ん坊と仲良しになったような気がする。ねえ、課長さんも何か作ってみたら?」
とよの作るおもちゃは子供を喜ばせます。つまり、価値をもたらします。けれども勘治はこれまでの役人人生で、他人に喜んでもらった経験がないことに気づきます。余命短く、今さら転職はできません。しかし今の職場でも「やる気になればできる」と信じ、行動を起こします。
勘治の努力は実り、公園は完成します。しかし黒澤監督は、ただの美談で終わらせません。完成直後に公園のブランコで息を引き取った勘治の通夜の席で、酔った役所の部下たちは口々に「渡辺さんの後に続け」「死を無駄にしない」と気勢を上げますが、翌日には何もなかったかのように、窓口に訪れた住民を平然とたらい回しするお役所仕事を続けるのです。
劣悪なサービスでも顧客に逃げられる心配のない官庁が、官僚主義の悪弊を脱することは不可能なのでしょう。それでもそこで働く個人は、官僚主義に抵抗し、立派な生き方をすることができる。この名作は、そう訴えます。
<Amazon プライム・ビデオ>
(note 2019/01/30)
2020-05-17
州知事の憲法蹂躙
州知事には緊急時、法的効力をもつ規制を導入する固有の権限があるか。否。合衆国憲法第4条は、各州に共和政体を義務づけている。それが意味するのは三権分立だ。つまり市民を代表する議会のみが、刑罰や実力行使を伴う法律を制定しうるのであって、知事による立法は違憲だ。
U.S. Constitution shredded by dangerous elected officials during COVID-19 pandemic - Washington Times
合衆国憲法が連邦政府に認める権限は、広範囲に及ぶと同時に、制限されている。憲法に列挙されていなければ、官僚や省庁にその権限はない。これは多くの人にとって理解しにくいようだ。しかし実際のところ、合衆国憲法は連邦政府に対し医療、教育、警察の権限を与えていない。
Civics 101: How to understand the Constitution | | Tenth Amendment Center
合衆国憲法には「一般的福祉」に触れた条項(第1条第8節第1項)がある。しかしそれは一般的福祉の名目で、連邦政府に無制限の権限を与えるものではない。権限は第2項以下に列挙されたものに限定される。もし与える権限が無制限なら、わざわざ特定の権限を列挙するはずはない。
The General Welfare Clause Is Not a Blank Check | | Tenth Amendment Center
合衆国憲法を制定者の考えに沿って解釈する始原主義は、現代の保守主義の産物だと批判される。実際には、始原主義は英米の裁判所で少なくとも16世紀初め以降、法解釈の指針とされてきた。1782年の判決でバージニア州最高裁は繰り返し、「建国の父たちの意図」に言及している。
Underselling Originalism | | Tenth Amendment Center
U.S. Constitution shredded by dangerous elected officials during COVID-19 pandemic - Washington Times
合衆国憲法が連邦政府に認める権限は、広範囲に及ぶと同時に、制限されている。憲法に列挙されていなければ、官僚や省庁にその権限はない。これは多くの人にとって理解しにくいようだ。しかし実際のところ、合衆国憲法は連邦政府に対し医療、教育、警察の権限を与えていない。
Civics 101: How to understand the Constitution | | Tenth Amendment Center
合衆国憲法には「一般的福祉」に触れた条項(第1条第8節第1項)がある。しかしそれは一般的福祉の名目で、連邦政府に無制限の権限を与えるものではない。権限は第2項以下に列挙されたものに限定される。もし与える権限が無制限なら、わざわざ特定の権限を列挙するはずはない。
The General Welfare Clause Is Not a Blank Check | | Tenth Amendment Center
Underselling Originalism | | Tenth Amendment Center
『パッドマン 5億人の女性を救った男』〜資本主義は女性にやさしい
資本主義は男性中心の仕組みで、女性には冷たいと思っている人が少なくありません。けれども実話に基づくインド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』(R・バールキ監督)を観れば、その考えが正しくないことがわかります。
インドの田舎町で小さな工房を共同経営するラクシュミ(アクシャイ・クマール)は、新妻のガヤトリが生理の際に古布を使っていることを知り、市販のナプキンが高くて使えないという妻のために、安くて清潔なナプキンを作れる機械の研究を始めます。ところが没頭するあまり、常識外れな行動をしてしまい、町の人々から非難され、妻からもやめてほしいと言われる始末。諦めきれないラクシュミは一人都会に旅立ち、そこで成功の手がかりをつかみます。
日本を含め、世界の企業トップは男性が多く、だから資本主義は女性に冷たいと言われがちです。けれども重要なのは企業トップが男性か女性かよりも、ビジネスを通して女性の役に立ちたいという気持ちがあるかどうかでしょう。不潔な古布は不妊や命にかかわる病気を招く場合があります。ラクシュミは妻への愛から起業家としてナプキンの製造を実現させ、妻だけでなく、インドの多数の女性を救いました。
映画で印象的なのは、生理をタブー視する伝統的価値観の強さです。妻のガヤトリが涙ながらに夫に訴える「恥をかくより死ぬほうがまし」という言葉は、それを象徴しています。けれどもラクシュミは妻が実家に去り、親戚や町の人々から変人扱いされても、めげることなく初志を貫きます。世間の圧力に負けないこの意志の強さは、優れた起業家に欠かせない資質でしょう。
アジアの生理用品市場では、日本企業もシェアを伸ばし、活躍しています。資本主義がこれからも世界の女性を笑顔にしていくことを願ってやみません。劇場内は多くの女性客でにぎわっていました。
<東京・TOHOシネマズ シャンテ>
インドの田舎町で小さな工房を共同経営するラクシュミ(アクシャイ・クマール)は、新妻のガヤトリが生理の際に古布を使っていることを知り、市販のナプキンが高くて使えないという妻のために、安くて清潔なナプキンを作れる機械の研究を始めます。ところが没頭するあまり、常識外れな行動をしてしまい、町の人々から非難され、妻からもやめてほしいと言われる始末。諦めきれないラクシュミは一人都会に旅立ち、そこで成功の手がかりをつかみます。
日本を含め、世界の企業トップは男性が多く、だから資本主義は女性に冷たいと言われがちです。けれども重要なのは企業トップが男性か女性かよりも、ビジネスを通して女性の役に立ちたいという気持ちがあるかどうかでしょう。不潔な古布は不妊や命にかかわる病気を招く場合があります。ラクシュミは妻への愛から起業家としてナプキンの製造を実現させ、妻だけでなく、インドの多数の女性を救いました。
映画で印象的なのは、生理をタブー視する伝統的価値観の強さです。妻のガヤトリが涙ながらに夫に訴える「恥をかくより死ぬほうがまし」という言葉は、それを象徴しています。けれどもラクシュミは妻が実家に去り、親戚や町の人々から変人扱いされても、めげることなく初志を貫きます。世間の圧力に負けないこの意志の強さは、優れた起業家に欠かせない資質でしょう。
アジアの生理用品市場では、日本企業もシェアを伸ばし、活躍しています。資本主義がこれからも世界の女性を笑顔にしていくことを願ってやみません。劇場内は多くの女性客でにぎわっていました。
<東京・TOHOシネマズ シャンテ>
(note 2019/01/20)
2020-05-16
民主政府の専制
コロナ拡大の下、米国民が言論、宗教、移動、商業活動の自由に対する規制を受け入れたのは、単にその規制が民主的に選ばれた人物によるものだからだ。しかし民主的な政府でも専制政治を行う恐れはある。政府が規制は国民自身のためだと説得したからといって、従う必要はない。
Why Americans must stop acting like sheep and tell the government to take a hike - Washington Times
政治家たちは自分の髪型を完璧に整えていながら、行政命令を発し、一般市民を散髪した者を逮捕させた。テキサス州では勇敢な美容院店主が、あえて営業を再開した「罪」で1週間投獄された。アボット知事はそれを非難したが、逮捕した警官は知事自身の命令に従ったにすぎない。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Authoritarians Using Coronavirus Fear to Destroy America
コロナウイルスが去った後には、法律や財政支出の残骸、政府の将来の行動への先例が残される。危機が去っても規制は残る「歯止め効果」だ。危機の後、政府は少し小さくなっても、危機の前の規模には戻らない。危機が生み出す大きな政府は一時だけに終わらず、いつまでも残る。
Coronavirus Is the Health of the State – Reason.com
米国民には、自由への容認できない規制がある。豪州が導入するコロナ追跡アプリはその一つだ。過剰な規制は病室不足がなくなれば不要だし、過剰監視に対する米国民の本能的な嫌悪感は、守るに値する。コロナ前の普通の日常を、都市封鎖にこだわる人々の犠牲にしてはならない。
Post-Lockdown: Insist on the Old Normal | The American Conservative
Why Americans must stop acting like sheep and tell the government to take a hike - Washington Times
政治家たちは自分の髪型を完璧に整えていながら、行政命令を発し、一般市民を散髪した者を逮捕させた。テキサス州では勇敢な美容院店主が、あえて営業を再開した「罪」で1週間投獄された。アボット知事はそれを非難したが、逮捕した警官は知事自身の命令に従ったにすぎない。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Authoritarians Using Coronavirus Fear to Destroy America
コロナウイルスが去った後には、法律や財政支出の残骸、政府の将来の行動への先例が残される。危機が去っても規制は残る「歯止め効果」だ。危機の後、政府は少し小さくなっても、危機の前の規模には戻らない。危機が生み出す大きな政府は一時だけに終わらず、いつまでも残る。
Coronavirus Is the Health of the State – Reason.com
米国民には、自由への容認できない規制がある。豪州が導入するコロナ追跡アプリはその一つだ。過剰な規制は病室不足がなくなれば不要だし、過剰監視に対する米国民の本能的な嫌悪感は、守るに値する。コロナ前の普通の日常を、都市封鎖にこだわる人々の犠牲にしてはならない。
Post-Lockdown: Insist on the Old Normal | The American Conservative
『デス・ウィッシュ』 〜銃規制への問い
米国で銃乱射事件が起こるたびに、銃規制の声が高まります。昨年2月、フロリダ州パークランドの高校で17人が死亡する銃乱射事件が起こり、3月に米各地で一斉に銃規制強化を訴える抗議デモが行われたのは記憶に新しいところです。
まさにその3月、銃規制の議論に一石を投じる形となった映画が米国で封切られました。『デス・ウィッシュ』 (イーライ・ロス監督)です。
銃犯罪が多発するシカゴ。外科医のポール・カージー(ブルース・ウィリス)は、撃たれて運び込まれる負傷者の治療に日々忙殺されます。ある日、家を留守にした間に何者かに妻を殺され、娘は昏睡状態に。警察の捜査が進まないことに業を煮やしたポールは、自ら銃を手に入れ、犯人を捜し出して抹殺することを決意します。
銃規制を支持する人なら、銃の使用は警察に任せればいいと言うでしょう。けれども現実はそう簡単ではありません。作中で何人かの人物が口にするとおり、警察は呼んでもすぐには来てくれません。撃たれた後に駆けつけてくれても手遅れです。
しかも、お役所仕事の警察は、ポールをいら立たせたように、犯人を捕まえるにも時間がかかりすぎます。捕まえられればいいほうで、事件を解決できない場合も少なくありません。映画では警察の壁のボードに未解決事件のカードがびっしり貼られ、「もっと大きなボードを!」というメモ。
規制しないと銃犯罪が増えると心配になるかもしれません。ですが経済学者ジョン・ロットの研究によれば、市民に銃の携行を認めるほど、凶悪犯罪は減るといいます。犯罪者が反撃を恐れるためです。
米国での公開時、高校銃乱射事件の直後だったため批判もありました。ロス監督は「もし自分の家族がカージー家のような目に遭ったらどうしますか、という主題にこだわりたかった」と語ったそうです。この問いは軽くありません。
<東京・新文芸坐>
まさにその3月、銃規制の議論に一石を投じる形となった映画が米国で封切られました。『デス・ウィッシュ』 (イーライ・ロス監督)です。
銃犯罪が多発するシカゴ。外科医のポール・カージー(ブルース・ウィリス)は、撃たれて運び込まれる負傷者の治療に日々忙殺されます。ある日、家を留守にした間に何者かに妻を殺され、娘は昏睡状態に。警察の捜査が進まないことに業を煮やしたポールは、自ら銃を手に入れ、犯人を捜し出して抹殺することを決意します。
銃規制を支持する人なら、銃の使用は警察に任せればいいと言うでしょう。けれども現実はそう簡単ではありません。作中で何人かの人物が口にするとおり、警察は呼んでもすぐには来てくれません。撃たれた後に駆けつけてくれても手遅れです。
しかも、お役所仕事の警察は、ポールをいら立たせたように、犯人を捕まえるにも時間がかかりすぎます。捕まえられればいいほうで、事件を解決できない場合も少なくありません。映画では警察の壁のボードに未解決事件のカードがびっしり貼られ、「もっと大きなボードを!」というメモ。
規制しないと銃犯罪が増えると心配になるかもしれません。ですが経済学者ジョン・ロットの研究によれば、市民に銃の携行を認めるほど、凶悪犯罪は減るといいます。犯罪者が反撃を恐れるためです。
米国での公開時、高校銃乱射事件の直後だったため批判もありました。ロス監督は「もし自分の家族がカージー家のような目に遭ったらどうしますか、という主題にこだわりたかった」と語ったそうです。この問いは軽くありません。
<東京・新文芸坐>
(note 2019/01/14)
2020-05-15
本当の敵
中国と米国が互いの選挙制度を非難し合うのは、まるでクラスの悪ガキ2人が互いに身なりのあら探しばかりして、成績の悪さや他の生徒へのいじめには無頓着でいるようなものだ。現実の世界で言えば、米中どちらの国民にとっても、膨張の止まらない政府権力こそ本当の敵なのだ。
The Chinese Mindset in a Hybrid War With the US - Antiwar.com Original
コロナは史上最大の危機ではない。最大の公衆衛生危機ですらない。しかし都市封鎖は紛れもなく、個人の自由に対する史上最大の介入である。大臣が認める何らかの口実がない限り全国民を毎日自宅に閉じ込めたことは、戦時中にもない。英元判事ジョナサン・サンプションが批判。
Lord Sumption: The Lockdown Is Without Doubt the Greatest Interference with Personal Liberty in Our History – AIER
コロナ感染拡大の抑制が都市封鎖のおかげだったと単純に言うことはできない。人との間隔を空けるソーシャル・ディスタンシングは封鎖の前から始まっていた。封鎖による追加効果はどれくらいなのか。強制的な封鎖の効果と自発的な密集回避の効果は分けて考えなければならない。
End The Lockdowns Now | Hoover Institution
米国で多くの州が都市封鎖の規制を緩和し、一定の企業に営業再開を認めるとともに、消費者にも一定の施設の利用を認め始めている。選択は企業と消費者に任されている。これは自発的な手段に基づき社会が組織される光明だ。企業は再開を強制されずに、自分でそれを判断できる。
Coronavirus Lockdown: The Political Versus The Voluntary | The Libertarian Institute
The Chinese Mindset in a Hybrid War With the US - Antiwar.com Original
コロナは史上最大の危機ではない。最大の公衆衛生危機ですらない。しかし都市封鎖は紛れもなく、個人の自由に対する史上最大の介入である。大臣が認める何らかの口実がない限り全国民を毎日自宅に閉じ込めたことは、戦時中にもない。英元判事ジョナサン・サンプションが批判。
Lord Sumption: The Lockdown Is Without Doubt the Greatest Interference with Personal Liberty in Our History – AIER
コロナ感染拡大の抑制が都市封鎖のおかげだったと単純に言うことはできない。人との間隔を空けるソーシャル・ディスタンシングは封鎖の前から始まっていた。封鎖による追加効果はどれくらいなのか。強制的な封鎖の効果と自発的な密集回避の効果は分けて考えなければならない。
End The Lockdowns Now | Hoover Institution
米国で多くの州が都市封鎖の規制を緩和し、一定の企業に営業再開を認めるとともに、消費者にも一定の施設の利用を認め始めている。選択は企業と消費者に任されている。これは自発的な手段に基づき社会が組織される光明だ。企業は再開を強制されずに、自分でそれを判断できる。
Coronavirus Lockdown: The Political Versus The Voluntary | The Libertarian Institute
『ボヘミアン・ラプソディ』 〜アーティストという起業家
優れたアーティストは起業家の資質を持っています。製品(作品)に対する自分の直感を信じ、技術の専門家でなくても最新のテクノロジーに関心を抱き、何より最終消費者(観客・聴衆)を大切にします。
世界でヒットしている『ボヘミアン・ラプソディ』(ブライアン・シンガー監督)は、英ロックバンド、クイーンのリードボーカルで、エイズのため45歳で没したフレディ・マーキュリーの伝記映画です。フレディ役のラミ・マレックをはじめ俳優陣が見事な演技で、脚本も練られており、クイーンに詳しくなくても楽しめます。
映画の題名にもなっている「ボヘミアン・ラプソディ」は、フレディが作詞・作曲したクイーンの代表曲の一つですが、彼の起業家としての資質を示す楽曲といえます。レコード会社重役は過去のヒット曲と同じ路線の曲を求めますが、それに抵抗し、オペラを取り入れた約6分もある、この曲を作ります。
重役は6分もあってはラジオでかけてもらえないと難色を示し、発売後もマスコミに酷評されますが、聴衆からは支持され、大ヒットします。興味深いのは、綿密な市場調査をしたわけでもないのに、型破りな楽曲がファンの心をつかんだことです。市場調査に否定的だったアップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏の「何をほしいかなんて、それを見せられるまでわからない」という言葉を思い出します。
フレディは聴衆に迎合せず、自分の作りたい曲を作りましたが、聴衆をないがしろにしたわけではありません。聴衆が真に求めるものを理解していたからこそ、型破りでも支持される曲を作れたといえます。フレディがコンサート中、聴衆の中に飛び込み、支えられる場面は、両者の信頼関係を象徴しています。
もちろん曲そのものをていねいに作ったことも「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットした理由でしょう。映画では、コーラス部分の効果を高めるため、フレディを含むメンバーが声を何度も重ね録りし、テープが劣化してしまうエピソードが描かれます。当時は16トラック録音が主流だったのに対し、この曲は24トラックで録られたそうです。
誰もがフレディのように成功できるわけではないかもしれません。それでもプロとして自分を貫く彼の姿は、何かを成し遂げたいと願う人に励みとなります。
<横浜・イオンシネマみなとみらい>
世界でヒットしている『ボヘミアン・ラプソディ』(ブライアン・シンガー監督)は、英ロックバンド、クイーンのリードボーカルで、エイズのため45歳で没したフレディ・マーキュリーの伝記映画です。フレディ役のラミ・マレックをはじめ俳優陣が見事な演技で、脚本も練られており、クイーンに詳しくなくても楽しめます。
映画の題名にもなっている「ボヘミアン・ラプソディ」は、フレディが作詞・作曲したクイーンの代表曲の一つですが、彼の起業家としての資質を示す楽曲といえます。レコード会社重役は過去のヒット曲と同じ路線の曲を求めますが、それに抵抗し、オペラを取り入れた約6分もある、この曲を作ります。
重役は6分もあってはラジオでかけてもらえないと難色を示し、発売後もマスコミに酷評されますが、聴衆からは支持され、大ヒットします。興味深いのは、綿密な市場調査をしたわけでもないのに、型破りな楽曲がファンの心をつかんだことです。市場調査に否定的だったアップル創業者、スティーブ・ジョブズ氏の「何をほしいかなんて、それを見せられるまでわからない」という言葉を思い出します。
フレディは聴衆に迎合せず、自分の作りたい曲を作りましたが、聴衆をないがしろにしたわけではありません。聴衆が真に求めるものを理解していたからこそ、型破りでも支持される曲を作れたといえます。フレディがコンサート中、聴衆の中に飛び込み、支えられる場面は、両者の信頼関係を象徴しています。
もちろん曲そのものをていねいに作ったことも「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットした理由でしょう。映画では、コーラス部分の効果を高めるため、フレディを含むメンバーが声を何度も重ね録りし、テープが劣化してしまうエピソードが描かれます。当時は16トラック録音が主流だったのに対し、この曲は24トラックで録られたそうです。
誰もがフレディのように成功できるわけではないかもしれません。それでもプロとして自分を貫く彼の姿は、何かを成し遂げたいと願う人に励みとなります。
<横浜・イオンシネマみなとみらい>
(note 2019/01/06)
2020-05-14
『光あれ』〜戦場なき反戦映画
先月、米西部ロサンゼルス郊外のバーで起きた銃乱射事件。事件後に自殺した容疑者の男(28)はアフガニスタンや沖縄県に派遣された元海兵隊員で、軍務による心的外傷後ストレス障害(PTSD)の可能性があるとみられています。
PTSDと名付けられたのは1978年のことですが、帰還兵が不眠、うつ、パニック発作、フラッシュバック、自傷行為などの症状に苦しむ現象は以前から知られていました。ハリウッドで活躍したジョン・ヒューストン監督は1946年に製作したドキュメンタリー映画『光あれ』で、その様子を克明にフィルムに収めます。
この映画は米軍の依頼を受けて製作されたもので、そもそもの狙いは、催眠療法や麻酔統合といった当時最新の治療法をアピールすることにありました。ところが出来上がった作品にはPTSDの症状があまりにも生々しく描かれており、軍は兵士のプライバシー保護を口実に公開を禁止してしまいます。ようやく観ることができるようになったのは1980年のことです。
ヒューストン監督は症状を誇張するため編集したと思われないように、長回しを多用し、兵士たちの表情や発言、動作を淡々と追います。精神医との面談中に泣き出し、席を立とうとする者。外傷はないのに精神的原因で歩けなくなり、両脇を抱えられてベッドにたどり着く者。ドイツの爆撃機から弾が飛んでくる「ササササ」という音への恐怖から「s」を発音できなくなった者。
いずれも治療で回復するのですが、観客はそれで安心するよりも、兵士たちをここまで精神的に追い詰めた戦争に恐怖や疑念を抱くのは間違いありません。
ヒューストン監督は職人気質で、反戦映画を撮るつもりはなかったでしょう。それでもその腕前で事実を忠実に記録した結果、戦場をまったく描かずに、戦争の恐怖を鮮烈に伝える作品を生み出したのです。
<Netflix>
PTSDと名付けられたのは1978年のことですが、帰還兵が不眠、うつ、パニック発作、フラッシュバック、自傷行為などの症状に苦しむ現象は以前から知られていました。ハリウッドで活躍したジョン・ヒューストン監督は1946年に製作したドキュメンタリー映画『光あれ』で、その様子を克明にフィルムに収めます。
この映画は米軍の依頼を受けて製作されたもので、そもそもの狙いは、催眠療法や麻酔統合といった当時最新の治療法をアピールすることにありました。ところが出来上がった作品にはPTSDの症状があまりにも生々しく描かれており、軍は兵士のプライバシー保護を口実に公開を禁止してしまいます。ようやく観ることができるようになったのは1980年のことです。
ヒューストン監督は症状を誇張するため編集したと思われないように、長回しを多用し、兵士たちの表情や発言、動作を淡々と追います。精神医との面談中に泣き出し、席を立とうとする者。外傷はないのに精神的原因で歩けなくなり、両脇を抱えられてベッドにたどり着く者。ドイツの爆撃機から弾が飛んでくる「ササササ」という音への恐怖から「s」を発音できなくなった者。
いずれも治療で回復するのですが、観客はそれで安心するよりも、兵士たちをここまで精神的に追い詰めた戦争に恐怖や疑念を抱くのは間違いありません。
ヒューストン監督は職人気質で、反戦映画を撮るつもりはなかったでしょう。それでもその腕前で事実を忠実に記録した結果、戦場をまったく描かずに、戦争の恐怖を鮮烈に伝える作品を生み出したのです。
<Netflix>
(note 2018/12/30)
2020-05-13
『あん』 〜最低賃金が奪うもの
マクロン仏大統領は、燃料税引き上げ方針をきっかけに反政府デモが全土に広がったことを踏まえ、来年1月から最低賃金を月額100ユーロ(約1万3000円)引き上げるなどの対策を発表しました。
最低賃金を引き上げると企業が新たな雇用に慎重になり、若者など職のない人から就労のチャンスを奪うことは経済学のイロハです。にもかかわらず、労働者にやさしい政策だと誤解している人が日本でも少なくありません。
最低賃金という親切の押し売りは、人々から働く機会を奪います。就労が収入を得る手段以上の何かである場合、生きる意味さえ奪いかねません。『あん』(河瀬直美監督)を観ると、あらためてそう感じます。
どら焼き屋の雇われ店長、千太郎(永瀬正敏)の店に、徳江(樹木希林)という高齢の女性が働きたいとやって来ます。徳江が作る粒あんが評判となり、店は大繁盛。ところがある日、かつて徳江がハンセン病を患っていたことが近所に知られ、楽しい日々は終わりを告げます。
徳江から最初に雇ってほしいと頼まれたとき、千太郎は「いまどき時給600円しか出せないから」と断ろうとします。しかし徳江は300円、200円でもいいからと食い下がり、千太郎は熱意にほだされて採用を決めます。
おかげで徳江は短い間ですが、充実した日々を送ることができました。もし時給1000円の最低賃金が課されていたら、千太郎は徳江を雇うことができず、徳江は施設で満たされない思いを抱えたままだったでしょう。
千太郎自身、人にけがをさせ、重い障害を負わせた過去を背負います。その千太郎に徳江は「私たちには生きる意味がある」と言い残し、人生に希望を与えます。それも千太郎が雇うことを通じて徳江に出会えたからです。
最低賃金という心ない制度が、仕事を通じた人と人との出会いを世界中でこれ以上奪わないよう、願うばかりです。
<Netflix>
最低賃金を引き上げると企業が新たな雇用に慎重になり、若者など職のない人から就労のチャンスを奪うことは経済学のイロハです。にもかかわらず、労働者にやさしい政策だと誤解している人が日本でも少なくありません。
最低賃金という親切の押し売りは、人々から働く機会を奪います。就労が収入を得る手段以上の何かである場合、生きる意味さえ奪いかねません。『あん』(河瀬直美監督)を観ると、あらためてそう感じます。
どら焼き屋の雇われ店長、千太郎(永瀬正敏)の店に、徳江(樹木希林)という高齢の女性が働きたいとやって来ます。徳江が作る粒あんが評判となり、店は大繁盛。ところがある日、かつて徳江がハンセン病を患っていたことが近所に知られ、楽しい日々は終わりを告げます。
徳江から最初に雇ってほしいと頼まれたとき、千太郎は「いまどき時給600円しか出せないから」と断ろうとします。しかし徳江は300円、200円でもいいからと食い下がり、千太郎は熱意にほだされて採用を決めます。
おかげで徳江は短い間ですが、充実した日々を送ることができました。もし時給1000円の最低賃金が課されていたら、千太郎は徳江を雇うことができず、徳江は施設で満たされない思いを抱えたままだったでしょう。
千太郎自身、人にけがをさせ、重い障害を負わせた過去を背負います。その千太郎に徳江は「私たちには生きる意味がある」と言い残し、人生に希望を与えます。それも千太郎が雇うことを通じて徳江に出会えたからです。
最低賃金という心ない制度が、仕事を通じた人と人との出会いを世界中でこれ以上奪わないよう、願うばかりです。
<Netflix>
(note 2018/12/19)
2020-05-12
争いの制度
福祉国家では、誰もが政府を使って他の全員に戦争をしかけ、他人の財産を奪おうとする。それは果てしない争いの制度である。そのような社会は制度の中心が道徳的に腐敗しているから、いつか内部から崩れ落ちるだろう。聖書の言うように、ばらばらになった家庭は立ち行かない。
The Great Fictitious Entity – The Future of Freedom Foundation
19世紀米国には良い点がいくつかあった。所得税も国税庁もなかった。月給がまるまる自分のものになった。福祉国家がなかった。社会保障も医療保険も医療補助も教育手当もなかった。連邦準備制度がなかった。建国の父らは不換紙幣が国民の財産の収奪に利用されると知っていた。
The Most Unusual Society in History – The Future of Freedom Foundation
19世紀米国で奴隷制の改革運動があった。むち打ちの軽減、労働時間の短縮、衣食と医療の改善などだ。奴隷の多くは喜んだ。けれど心からではない。欲しいのは自由だったからだ。今の自由主義者にも福祉国家・戦争国家の改革に熱心な人々がいる。純粋に自由な社会をあきらめて。
It Ain’t Freedom – The Future of Freedom Foundation
2001年にアルゼンチンは約1000億ドルの債務不履行に陥った。それにより同国史上最悪の経済危機に見舞われ、多数の中間層が貧困に転落した。同国政府は資金を手に入れるため、個人年金を差し押さえ、国債に置き換えた。その国債は政府の通貨増発政策のせいで価値が吹き飛んだ。
Argentina’s Default Points Toward the U.S. Future – The Future of Freedom Foundation
The Great Fictitious Entity – The Future of Freedom Foundation
19世紀米国には良い点がいくつかあった。所得税も国税庁もなかった。月給がまるまる自分のものになった。福祉国家がなかった。社会保障も医療保険も医療補助も教育手当もなかった。連邦準備制度がなかった。建国の父らは不換紙幣が国民の財産の収奪に利用されると知っていた。
The Most Unusual Society in History – The Future of Freedom Foundation
19世紀米国で奴隷制の改革運動があった。むち打ちの軽減、労働時間の短縮、衣食と医療の改善などだ。奴隷の多くは喜んだ。けれど心からではない。欲しいのは自由だったからだ。今の自由主義者にも福祉国家・戦争国家の改革に熱心な人々がいる。純粋に自由な社会をあきらめて。
It Ain’t Freedom – The Future of Freedom Foundation
2001年にアルゼンチンは約1000億ドルの債務不履行に陥った。それにより同国史上最悪の経済危機に見舞われ、多数の中間層が貧困に転落した。同国政府は資金を手に入れるため、個人年金を差し押さえ、国債に置き換えた。その国債は政府の通貨増発政策のせいで価値が吹き飛んだ。
Argentina’s Default Points Toward the U.S. Future – The Future of Freedom Foundation
『マイノリティ・リポート』〜テクノロジーと政府権力
人工知能(AI)や生体認証など新しいテクノロジーが登場すると、市民生活に対する脅威として警戒する声が上がります。けれども問題は技術そのものではありません。テクノロジーが社会にとって脅威となるのは、政府権力と結びついたときです。傑作『マイノリティ・リポート』(スティーヴン・スピルバーグ監督)は、その真実を描き出します。
近未来の米国。首都ワシントン市では凶悪犯罪を防ぐため、ある方法を導入し、大きな成果をあげます。予知能力者「プリコグ」によって未来に起こる犯罪を事前に察知し、犯人となる人物を捕まえてしまうのです。ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は犯罪予防局のチーフとして活躍していましたが、ある日、自分が36時間以内に見ず知らずの他人を殺害すると予知され、一転して追われる立場になります。
ジョンは追う立場にあったとき、司法省調査官から「法を犯していない者を逮捕するのは人権的に問題だ」とまっとうな批判を受けても、聞く耳を持ちません。幼い息子を誘拐された過去があり、犯罪者に憎しみを燃やすからです。しかし追われる立場になったとき、犯罪の事実がないのに逮捕される制度の危うさを思い知ることになります。
未来のワシントンでは網膜認証の情報を市が把握し、電車に乗ったり店に入ったりするたびに、居場所が当局に筒抜けです。このため追われるジョンは闇医者に手術を頼み、眼球を他人のものと取り替える破目になります。もし情報が政府に知られないよう保護されていれば、もっと楽に逃げられたでしょう。
最近、国内外の警察でAIを使った犯罪予測の試みが広がり、まるで『マイノリティ・リポート』の世界だと話題になっています。テクノロジーがどんなに進歩しても、それを使うのは不完全な人間であることを忘れてはならないでしょう。
<Netflix>
近未来の米国。首都ワシントン市では凶悪犯罪を防ぐため、ある方法を導入し、大きな成果をあげます。予知能力者「プリコグ」によって未来に起こる犯罪を事前に察知し、犯人となる人物を捕まえてしまうのです。ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は犯罪予防局のチーフとして活躍していましたが、ある日、自分が36時間以内に見ず知らずの他人を殺害すると予知され、一転して追われる立場になります。
ジョンは追う立場にあったとき、司法省調査官から「法を犯していない者を逮捕するのは人権的に問題だ」とまっとうな批判を受けても、聞く耳を持ちません。幼い息子を誘拐された過去があり、犯罪者に憎しみを燃やすからです。しかし追われる立場になったとき、犯罪の事実がないのに逮捕される制度の危うさを思い知ることになります。
未来のワシントンでは網膜認証の情報を市が把握し、電車に乗ったり店に入ったりするたびに、居場所が当局に筒抜けです。このため追われるジョンは闇医者に手術を頼み、眼球を他人のものと取り替える破目になります。もし情報が政府に知られないよう保護されていれば、もっと楽に逃げられたでしょう。
最近、国内外の警察でAIを使った犯罪予測の試みが広がり、まるで『マイノリティ・リポート』の世界だと話題になっています。テクノロジーがどんなに進歩しても、それを使うのは不完全な人間であることを忘れてはならないでしょう。
<Netflix>
(note 2018/12/12)
2020-05-11
社会主義と知識人
いつどこであれ、社会主義が初めから労働者階級の運動だったことはない。社会主義は、ある種の傾向をもった抽象的観念をもとに、理論家がつくりだしたものにすぎない。知識人による長期にわたる説得の結果、労働者階級は社会主義を自らの綱領として採択するようになったのだ。
Why Intellectuals Fall for Socialism | Mises Wire
もし国民が消費を減らし、政府が支出で埋め合わせたら? もし国民が投資(貯蓄)をやめ、政府が企業への出資で埋め合わせたら? GDPの計算式からは一見何も変わらない。だが国民が利己心に導かれ損失を避けようとするのに対し、政府は腐ったゾンビ企業への出資を気にしない。
How Government Spending Can Make the Debt Burden Look Smaller than It Really Is | Mises Wire
スウェーデンの臨床医によれば、厳格な都市封鎖では高齢者や病弱な人を新型肺炎から守れない。ウイルスは各国で急拡大中だが、止める手段はほとんどない。封鎖で感染を遅らせても、規制を緩めればまた広がる。封鎖をした国もしない国も、1年後の死亡者数は変わらないだろう。
When Governments Switched Their Story from "Flatten the Curve" to "Lockdown until Vaccine" | Mises Wire
米国中の警察は州知事や市長が立法手続きによらず発した命令を強制し、納税者を困らせている。タバコ屋を閉めない事業主を逮捕。ほとんど人のいない公園で家族とソフトボールをしていた男性を勾留。在宅命令に違反した事業主を逮捕。社会的距離に関する違反でトリマーを逮捕。
Police Are Complicit in Politicians' Disregard for the Rule of Law | Mises Wire
Why Intellectuals Fall for Socialism | Mises Wire
もし国民が消費を減らし、政府が支出で埋め合わせたら? もし国民が投資(貯蓄)をやめ、政府が企業への出資で埋め合わせたら? GDPの計算式からは一見何も変わらない。だが国民が利己心に導かれ損失を避けようとするのに対し、政府は腐ったゾンビ企業への出資を気にしない。
How Government Spending Can Make the Debt Burden Look Smaller than It Really Is | Mises Wire
スウェーデンの臨床医によれば、厳格な都市封鎖では高齢者や病弱な人を新型肺炎から守れない。ウイルスは各国で急拡大中だが、止める手段はほとんどない。封鎖で感染を遅らせても、規制を緩めればまた広がる。封鎖をした国もしない国も、1年後の死亡者数は変わらないだろう。
When Governments Switched Their Story from "Flatten the Curve" to "Lockdown until Vaccine" | Mises Wire
米国中の警察は州知事や市長が立法手続きによらず発した命令を強制し、納税者を困らせている。タバコ屋を閉めない事業主を逮捕。ほとんど人のいない公園で家族とソフトボールをしていた男性を勾留。在宅命令に違反した事業主を逮捕。社会的距離に関する違反でトリマーを逮捕。
Police Are Complicit in Politicians' Disregard for the Rule of Law | Mises Wire
『百万円と苦虫女』〜自由は弱者にやさしい
自由は「強者の論理」だと思っている人が少なくありません。けれども実際は違います。むしろ自由ほど弱者にやさしいものはありません。『百万円と苦虫女』(タナダユキ監督)を観ると、それがよくわかります。
21歳の鈴子(蒼井優)は、たまたまルームシェアすることになった男から、拾った子猫を捨てられたことが許せず、男の荷物をすべて廃棄。ところが器物損壊で刑事告発され、罰金20万円の刑を受けてしまいます。
軽い罪とはいえ、前科者になった鈴子に周囲は冷たい目を向けます。鈴子は決心します。アルバイトをして、百万円貯まったらこの街を出よう。その後も百万円貯まるごとに、自分を知る人が誰もいない土地に引っ越そう。鈴子は計画を実行します。
鈴子は気丈ではありますが、女性であり、フリーターであり、おまけに前科者です。社会的には典型的な弱者といえます。その鈴子が何とか心穏やかに生きてゆくことを支えてくれるのは、自由です。
具体的には、住みたいところに住む自由、引っ越す自由、そして働く仕事を選ぶ自由。この3つの自由は、日本国憲法22条1項に「居住、移転及び職業選択の自由」として記されています。いわゆる経済的自由です。
これらの自由がなければ、鈴子はいつまでも故郷の街で前科者と後ろ指をさされながら、息を詰めるように生きてゆくしかなかったでしょう。
強者なら、自由のない社会でも、気に入らない相手を力で排除し、それなりに快適に過ごせるでしょう。弱者にそんなことはできません。自由な社会の良いところは、力のない弱者であっても、平凡に、普通に努力することで、自分の望まない生き方から少しでも遠ざかり、望む生き方にわずかでも近づける点にあります。
美しい映像と蒼井優さんのすばらしい演技が印象的なこの作品は、自由の大切さを声高には叫ばず、しかし静かに語ります。
<Netflix>
21歳の鈴子(蒼井優)は、たまたまルームシェアすることになった男から、拾った子猫を捨てられたことが許せず、男の荷物をすべて廃棄。ところが器物損壊で刑事告発され、罰金20万円の刑を受けてしまいます。
軽い罪とはいえ、前科者になった鈴子に周囲は冷たい目を向けます。鈴子は決心します。アルバイトをして、百万円貯まったらこの街を出よう。その後も百万円貯まるごとに、自分を知る人が誰もいない土地に引っ越そう。鈴子は計画を実行します。
鈴子は気丈ではありますが、女性であり、フリーターであり、おまけに前科者です。社会的には典型的な弱者といえます。その鈴子が何とか心穏やかに生きてゆくことを支えてくれるのは、自由です。
具体的には、住みたいところに住む自由、引っ越す自由、そして働く仕事を選ぶ自由。この3つの自由は、日本国憲法22条1項に「居住、移転及び職業選択の自由」として記されています。いわゆる経済的自由です。
これらの自由がなければ、鈴子はいつまでも故郷の街で前科者と後ろ指をさされながら、息を詰めるように生きてゆくしかなかったでしょう。
強者なら、自由のない社会でも、気に入らない相手を力で排除し、それなりに快適に過ごせるでしょう。弱者にそんなことはできません。自由な社会の良いところは、力のない弱者であっても、平凡に、普通に努力することで、自分の望まない生き方から少しでも遠ざかり、望む生き方にわずかでも近づける点にあります。
美しい映像と蒼井優さんのすばらしい演技が印象的なこの作品は、自由の大切さを声高には叫ばず、しかし静かに語ります。
<Netflix>
(note 2018/12/02)
2020-05-10
政府への幻想
コロナ下でわかったのは、政府に対する人々の幻想だ。政府は神のような、人間を超える存在だと信じている。現実は違う。政府を構成するのは人間で、他の人間と同じく誤る可能性があり、実際に誤りやすいし、利己的だ。またコロナウイルスの特質についてほとんど何も知らない。
Public Choice and the Lockdowns – AIER
人を殺すのは無知ではなく、傲慢である。ハイエクの言う「致命的な思い上がり」である。それは現代の社会科学と政治に浸みこんでいる。十把一絡げの政策、気ままな権力、白か黒かで割り切る思考……。全員に何が最善か、わかる人はいない。社会問題に万人向けの解決策はない。
It Is Not Our Ignorance that Will Kill Us, But Our Arrogance – AIER
車で移動すると、死傷する機会は増える。それでも車を選ぶのは、それによって生じる命の危険よりも、利便やスピードを重んじている証拠だ。だからといって科学を拒否しているわけでも、不合理なわけでもない。人間が重んじるのは健康や安全だけではないということにすぎない。
Science and the Pandemic – AIER
1968-69年に流行した香港風邪は米国で10万人、世界で100万人もの死者を出した。しかし今ではほぼ忘れられている。学校や企業はほとんど休みにならず、バーやレストランにも行けた。株は暴落せず、政府の経済対策もなかった。伝説のウッドストック音楽祭はその最中に開かれた。
Woodstock Occurred in the Middle of a Pandemic – AIER
Public Choice and the Lockdowns – AIER
人を殺すのは無知ではなく、傲慢である。ハイエクの言う「致命的な思い上がり」である。それは現代の社会科学と政治に浸みこんでいる。十把一絡げの政策、気ままな権力、白か黒かで割り切る思考……。全員に何が最善か、わかる人はいない。社会問題に万人向けの解決策はない。
It Is Not Our Ignorance that Will Kill Us, But Our Arrogance – AIER
車で移動すると、死傷する機会は増える。それでも車を選ぶのは、それによって生じる命の危険よりも、利便やスピードを重んじている証拠だ。だからといって科学を拒否しているわけでも、不合理なわけでもない。人間が重んじるのは健康や安全だけではないということにすぎない。
Science and the Pandemic – AIER
1968-69年に流行した香港風邪は米国で10万人、世界で100万人もの死者を出した。しかし今ではほぼ忘れられている。学校や企業はほとんど休みにならず、バーやレストランにも行けた。株は暴落せず、政府の経済対策もなかった。伝説のウッドストック音楽祭はその最中に開かれた。
Woodstock Occurred in the Middle of a Pandemic – AIER
『華氏119』〜政治への幻想
私たちは何か社会問題が起こると、政治に期待しがちです。「政府が何とかするべきだ」「政治の力で解決してほしい」と声を上げます。政府はそうした声を受け、待ってましたとばかりに法律を作ったり規制を強化したりします。けれどもそれは正しくありません。世の中に政治の力で解決できる問題はほとんどないし、政府の介入はむしろ問題を悪化させます。
ドキュメンタリー映画『華氏119』(マイケル・ムーア監督)で、ムーア監督は怒りを込めて、ミシガン州フリントで起こった水道鉛汚染やフロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射をはじめとする、現代米国の社会問題を告発します。何がそれらの問題の正しい原因かはともかく、ムーア監督の怒りは理解できます。理解できないのは、問題を解決する方法として、ムーア監督の頭の中に政治しか存在しないことです。
ムーア監督は共和党のトランプ大統領を批判する一方で、大統領選の対抗馬だった民主党のクリントン元国務長官やオバマ前大統領も大手金融機関から多額の献金を受け、癒着していると正しく指摘します。そこまでわかっていながら、ムーア監督が次に期待するのは、結局は政治です。国民皆保険や労働組合との連携強化など、より社会主義的な政策を唱える民主党の新人候補たちにエールを送るのです。
米国で医療費が高騰し庶民を苦しめるのは、医療が政府の規制でがんじがらめになり、十分な供給がないからです。国民皆保険にしても解決しないのは、社会保障の財政悪化にあえぐ日本を見れば明らかでしょう。真に必要なのは規制をかいくぐって優れた医療サービスを提供する起業家ですが、この映画に登場するのは政治運動家ばかりで、自ら価値を生み出す起業家は見事なくらい一人も出てきません。社会問題を解決する第一歩は、政治への幻想から覚めることです。
<東京・TOHOシネマズ シャンテ>
ドキュメンタリー映画『華氏119』(マイケル・ムーア監督)で、ムーア監督は怒りを込めて、ミシガン州フリントで起こった水道鉛汚染やフロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射をはじめとする、現代米国の社会問題を告発します。何がそれらの問題の正しい原因かはともかく、ムーア監督の怒りは理解できます。理解できないのは、問題を解決する方法として、ムーア監督の頭の中に政治しか存在しないことです。
ムーア監督は共和党のトランプ大統領を批判する一方で、大統領選の対抗馬だった民主党のクリントン元国務長官やオバマ前大統領も大手金融機関から多額の献金を受け、癒着していると正しく指摘します。そこまでわかっていながら、ムーア監督が次に期待するのは、結局は政治です。国民皆保険や労働組合との連携強化など、より社会主義的な政策を唱える民主党の新人候補たちにエールを送るのです。
米国で医療費が高騰し庶民を苦しめるのは、医療が政府の規制でがんじがらめになり、十分な供給がないからです。国民皆保険にしても解決しないのは、社会保障の財政悪化にあえぐ日本を見れば明らかでしょう。真に必要なのは規制をかいくぐって優れた医療サービスを提供する起業家ですが、この映画に登場するのは政治運動家ばかりで、自ら価値を生み出す起業家は見事なくらい一人も出てきません。社会問題を解決する第一歩は、政治への幻想から覚めることです。
<東京・TOHOシネマズ シャンテ>
(note 2018/11/25)
2020-05-09
経済危機の真因
コロナウイルスは経済危機の原因ではない。引金を引いたにすぎない。米国経済はもとから弱かった。世帯の3分の1は貯蓄がゼロで、60%は1000ドルに満たない。その主因はインフレ政策と利息収入への課税だ。連邦準備理事会と財務省は必要もないのに、家計を危機にさらしている。
This Bust Wasn't Caused by a Virus | Mises Wire
2020年の株暴落はウイルスが原因ではない。ウイルスは暴落の到来を早め、事業・移動の禁止という狂った政策が拍車をかけた。本当の原因はもろい経済だ。米国史上最も偉大な経済とやらは実は病人で、薬で痛みを感じず、元気に見えた。パンデミックは経済の病を暴き出したのだ。
How to Think About the Fed Now | Mises Wire
自由な社会は個人と地域の協力ネットワークだ。感染症が発生した地域は周辺地域と連携し、ウイルスをすばやく封じ込めるだろう。別の地域では一時的な隔離を選ぶかもしれない。情報共有も進むだろう。一方、政府は失敗しても責任を取らない。それどころか予算と権限が増える。
The Benefits of a Free Society during Pandemics | Mises Wire
ホワイトカラーの「クリエイティブ」階級は在宅勤務をしながら、うれしそうに「おうちにいよう」とお説教。現場で人と接しなくてはならない労働者階級は、ついてない。収入がなくてはやっていけず、政府のわずかな給付金を待って何週間もいらいら。それもそのうち来なくなる。
COVID Panic: The New War on Human Rights | Mises Institute
This Bust Wasn't Caused by a Virus | Mises Wire
2020年の株暴落はウイルスが原因ではない。ウイルスは暴落の到来を早め、事業・移動の禁止という狂った政策が拍車をかけた。本当の原因はもろい経済だ。米国史上最も偉大な経済とやらは実は病人で、薬で痛みを感じず、元気に見えた。パンデミックは経済の病を暴き出したのだ。
How to Think About the Fed Now | Mises Wire
自由な社会は個人と地域の協力ネットワークだ。感染症が発生した地域は周辺地域と連携し、ウイルスをすばやく封じ込めるだろう。別の地域では一時的な隔離を選ぶかもしれない。情報共有も進むだろう。一方、政府は失敗しても責任を取らない。それどころか予算と権限が増える。
The Benefits of a Free Society during Pandemics | Mises Wire
ホワイトカラーの「クリエイティブ」階級は在宅勤務をしながら、うれしそうに「おうちにいよう」とお説教。現場で人と接しなくてはならない労働者階級は、ついてない。収入がなくてはやっていけず、政府のわずかな給付金を待って何週間もいらいら。それもそのうち来なくなる。
COVID Panic: The New War on Human Rights | Mises Institute
『日日是好日』〜 かけがえのない時間
時間のとらえ方には二種類あるといわれます。直線の時間と円環の時間です。西洋ではキリスト教の影響から、時間が世界の始まりから終わりまで一直線に進むと考えるのに対し、日本では一日や四季が繰り返すように、時間は円を描くように繰り返すと考えられてきたといいます。けれども時間は繰り返すと考える文化の下にあろうと、一人一人の人生にとって、時間はかけがえのないものです。
『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』(大森立嗣監督)の主人公、典子(黒木華)は二十歳の春、母に勧められてお茶を習うことになります。興味のなかったお茶の魅力に気づき、惹かれていく典子。それからの人生でさまざまな悲しみに出会ったとき、お茶が心の支えとなります。何か大切なものを失った日であろうと、ありのまま受け止め、ひたすら生きれば、どんな日もかけがえのない絶好の一日——。稽古場に掲げられた「日日是好日」という言葉を、年齢を重ねた典子は噛みしめます。
映画ではお茶の道具がいろいろと登場しますが、印象深いのは、初釜で使われる、その年の干支にちなんだ茶碗です。十二年に一度しか使われません。習い始めの頃それを聞いた典子は、戌(いぬ)の絵のついた茶碗を手にしながら驚きます。それから十二年後、典子は昔と同じ戌の茶碗を見つめます。十二年周期のサイクルを永遠に繰り返す時間に比べ、限りある人の一生。だからこそ大切に味わう価値があります。
季節は毎年同じように巡ってきても、去年の人はもうそこにいないかもしれません。典子が父を亡くしたとき、お茶の先生が一緒に縁側に座り、散る桜を見つめながら言葉少なに慰めます。このシーンをはじめ、見事な演技を見せる先生役の樹木希林さんも先日、惜しくも世を去りました。その所作、表情は、人生という時間を大切に生きなさいと語りかけるようです。
<東京・シネスイッチ銀座>
『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』(大森立嗣監督)の主人公、典子(黒木華)は二十歳の春、母に勧められてお茶を習うことになります。興味のなかったお茶の魅力に気づき、惹かれていく典子。それからの人生でさまざまな悲しみに出会ったとき、お茶が心の支えとなります。何か大切なものを失った日であろうと、ありのまま受け止め、ひたすら生きれば、どんな日もかけがえのない絶好の一日——。稽古場に掲げられた「日日是好日」という言葉を、年齢を重ねた典子は噛みしめます。
映画ではお茶の道具がいろいろと登場しますが、印象深いのは、初釜で使われる、その年の干支にちなんだ茶碗です。十二年に一度しか使われません。習い始めの頃それを聞いた典子は、戌(いぬ)の絵のついた茶碗を手にしながら驚きます。それから十二年後、典子は昔と同じ戌の茶碗を見つめます。十二年周期のサイクルを永遠に繰り返す時間に比べ、限りある人の一生。だからこそ大切に味わう価値があります。
季節は毎年同じように巡ってきても、去年の人はもうそこにいないかもしれません。典子が父を亡くしたとき、お茶の先生が一緒に縁側に座り、散る桜を見つめながら言葉少なに慰めます。このシーンをはじめ、見事な演技を見せる先生役の樹木希林さんも先日、惜しくも世を去りました。その所作、表情は、人生という時間を大切に生きなさいと語りかけるようです。
<東京・シネスイッチ銀座>
(note 2018/11/10)
2020-05-08
緊急事態の利用
ナチスはなぜ、テロリストの仕業とされる国会議事堂への放火を見逃し、手助けまでしたのか。国家の緊急事態の下では国民がおびえ、安全と引き換えに自由を差し出すことを知っていたからだ。ヒトラーは国家防衛の名目で大統領令を出させ、市民の自由を保障する憲法を停止した。
How Hitler Became a Dictator – The Future of Freedom Foundation
ソ連は大量虐殺を行った点で、ナチスドイツと変わらない。スターリンはウクライナでの飢饉、粛清、強制収容所で少なくとも2000万人を殺害。米国はソ連の同盟国となることで、スターリンを立派に見せ、軍事支援を行い、ソ連軍が欧州の半分を45年間も占領することを可能にした。
The Consequences of World War II – The Future of Freedom Foundation
第2次大戦中、米国の主な同盟国は大英帝国とソ連で、民主主義国のお手本とは言えない。英国はピーク時で世界の陸地の25%近くを統治。ドイツや日本ほど苛酷ではなかったかもしれないが、暴力で支配していた。最強国の座を失うまいとする英国の無益な試みが大戦の一因となった。
Was the “Good War” Really Good? – The Future of Freedom Foundation
政府の悪事を非難したからといって、愛国心がないとは言えない。もし自分の国を愛していなければ、沈黙はたやすい。国を愛し、ここで自由が失われたらどこにも行く場所はないと思うからこそ、声を上げる。私たちは市民であり、臣民ではない。政府を恐れず批判する権利がある。
Protect the Right to Criticize the Government – The Future of Freedom Foundation
How Hitler Became a Dictator – The Future of Freedom Foundation
ソ連は大量虐殺を行った点で、ナチスドイツと変わらない。スターリンはウクライナでの飢饉、粛清、強制収容所で少なくとも2000万人を殺害。米国はソ連の同盟国となることで、スターリンを立派に見せ、軍事支援を行い、ソ連軍が欧州の半分を45年間も占領することを可能にした。
The Consequences of World War II – The Future of Freedom Foundation
第2次大戦中、米国の主な同盟国は大英帝国とソ連で、民主主義国のお手本とは言えない。英国はピーク時で世界の陸地の25%近くを統治。ドイツや日本ほど苛酷ではなかったかもしれないが、暴力で支配していた。最強国の座を失うまいとする英国の無益な試みが大戦の一因となった。
Was the “Good War” Really Good? – The Future of Freedom Foundation
政府の悪事を非難したからといって、愛国心がないとは言えない。もし自分の国を愛していなければ、沈黙はたやすい。国を愛し、ここで自由が失われたらどこにも行く場所はないと思うからこそ、声を上げる。私たちは市民であり、臣民ではない。政府を恐れず批判する権利がある。
Protect the Right to Criticize the Government – The Future of Freedom Foundation
『search/サーチ』〜ネット社会は悪くない
インターネットの普及した、いわゆるネット社会は、しばしば批判の槍玉に上がります。ネットで他人の暮らしを見て劣等感を抱いたり、ネットでのつながりの薄さに孤独を感じたりするからよくないというのです。けれども人間心理のそうした側面は、ネット社会以前からある話でしょう。むしろ私たちは、ネット社会のありがたみをもっと噛みしめるべきです。
『search/サーチ』(アニーシュ・チャガンティ監督)の主人公、デビッド・キム(ジョン・チョー)は3年前に妻を亡くし、高校生の娘と二人暮らし。ある日、娘が忽然と姿を消し、行方不明事件として捜査が始まります。残されたパソコンから娘が利用していた交流サイト(SNS)にアクセスを試み、懸命に手がかりを探るデビッド。やがて事件は思わぬ展開に向かいます。
デビッドがSNSの調査を進めるうち、娘には本当に親しい友人がいないことが明らかになったり、行方不明事件がマスコミで話題になったとたん、冷淡だった同級生たちがにわかに親友ぶったりと、ありがちなエピソードが語られます。しかしこの映画はそこで安易なネット社会批判に走ったりしません。絶望しかけるデビッドに希望をもたらすのは、警察の捜索(search)という行政サービスではなく、グーグルの検索(search)サービスです。
最近、巨大ネット企業を政府が規制すべきだという意見が強まっています。けれどもいくら巨大でも、市場競争にさらされる民間企業である限り、利用者にそっぽを向かれればそれまで。劣悪なサービスでも国民に押しつける政府のほうが、よほど厄介で危険な存在です。27歳のインド系米国人で、ユーチューブに公開した短編映画で頭角を現したというネット時代の申し子チャガンティ監督は、その道理を理解しています。
<東京・TOHOシネマズ日本橋>
『search/サーチ』(アニーシュ・チャガンティ監督)の主人公、デビッド・キム(ジョン・チョー)は3年前に妻を亡くし、高校生の娘と二人暮らし。ある日、娘が忽然と姿を消し、行方不明事件として捜査が始まります。残されたパソコンから娘が利用していた交流サイト(SNS)にアクセスを試み、懸命に手がかりを探るデビッド。やがて事件は思わぬ展開に向かいます。
デビッドがSNSの調査を進めるうち、娘には本当に親しい友人がいないことが明らかになったり、行方不明事件がマスコミで話題になったとたん、冷淡だった同級生たちがにわかに親友ぶったりと、ありがちなエピソードが語られます。しかしこの映画はそこで安易なネット社会批判に走ったりしません。絶望しかけるデビッドに希望をもたらすのは、警察の捜索(search)という行政サービスではなく、グーグルの検索(search)サービスです。
最近、巨大ネット企業を政府が規制すべきだという意見が強まっています。けれどもいくら巨大でも、市場競争にさらされる民間企業である限り、利用者にそっぽを向かれればそれまで。劣悪なサービスでも国民に押しつける政府のほうが、よほど厄介で危険な存在です。27歳のインド系米国人で、ユーチューブに公開した短編映画で頭角を現したというネット時代の申し子チャガンティ監督は、その道理を理解しています。
<東京・TOHOシネマズ日本橋>
(note 2018/11/07)
2020-05-07
ウイルスによる死、失業による死
失業による貧困や社会的地位の喪失は、健康を損ねる大きな要因だ。この事実は、あらゆる犠牲を払ってもウイルスと戦うという近視眼的な運動に不都合なため、政治家や専門家の多くは耳を貸さない。ウイルスは失業より多くの死をもたらすというなら、立証責任は政府の側にある。
Unemployment Kills: The Longer Lockdowns Last, the Worse It Will Get | Mises Wire
科学者はたいてい社会問題に関する訓練を受けていない。市場の自然発生的な秩序という考えを理解できない。アインシュタインがあけすけに社会主義を支持したのはその一例だ。政治家が少なくともさまざまな利害のバランスを承知しているのに対し、科学者には白か黒かしかない。
Politicians Have Destroyed Markets and Ignored Human Rights with Alarming Enthusiasm | Mises Wire
保護主義で自給自足経済は可能になるかもしれないが、それは生活水準の低下というコストを伴う。国際分業が妨げられると生産性が低下するからだ。インフレ政策の助けも借りて失業は減り、名目賃金は上昇するかもしれない。だが物価も上昇し、実質賃金は急激に低下するだろう。
Facing Economic Disaster, France Turns against Globalism | Mises Wire
労働者は搾取されてはいない。製品が売られるまでには、時間がかかる。労働者が資本家と取引に応じるのは、製品の代金が入るまでの間、生活する手段がないからだ。資本家にはその手段がある。資本家は不確実性に耐え、製品が売られるまでの間、労働者に賃金を払う手段がある。
In Defense of Landlords | Mises Wire
Unemployment Kills: The Longer Lockdowns Last, the Worse It Will Get | Mises Wire
科学者はたいてい社会問題に関する訓練を受けていない。市場の自然発生的な秩序という考えを理解できない。アインシュタインがあけすけに社会主義を支持したのはその一例だ。政治家が少なくともさまざまな利害のバランスを承知しているのに対し、科学者には白か黒かしかない。
Politicians Have Destroyed Markets and Ignored Human Rights with Alarming Enthusiasm | Mises Wire
保護主義で自給自足経済は可能になるかもしれないが、それは生活水準の低下というコストを伴う。国際分業が妨げられると生産性が低下するからだ。インフレ政策の助けも借りて失業は減り、名目賃金は上昇するかもしれない。だが物価も上昇し、実質賃金は急激に低下するだろう。
Facing Economic Disaster, France Turns against Globalism | Mises Wire
労働者は搾取されてはいない。製品が売られるまでには、時間がかかる。労働者が資本家と取引に応じるのは、製品の代金が入るまでの間、生活する手段がないからだ。資本家にはその手段がある。資本家は不確実性に耐え、製品が売られるまでの間、労働者に賃金を払う手段がある。
In Defense of Landlords | Mises Wire
『恋のしずく』〜日本文化を守るには
日本の文化を守るには補助金を出したり輸入品を規制したりして国産品を保護しなければならない、という意見をよく聞きます。短い間なら、いや、もしかするとかなり長い間、そのもくろみは成功するかもしれません。けれどもそのとき、その文化は死んでいるでしょう。文化とは人々の自発的な選択に支えられて初めて、血が通うものだからです。
『恋のしずく』(瀬木直貴監督)の題材は日本酒です。東京の農大でワインソムリエを目指すリケジョ(理系女子)の詩織(川栄李奈)は、日本酒嫌いにもかかわらず、単位取得に必要な研修先が広島にある日本酒の酒蔵に決まってしまいます。詩織は当初とまどいながらも、酒造りに人生を捧げる地元の人々との出会いを通じ、かけがえのない喜びを見出していきます。
海外では日本酒ブームといわれますが、国内では消費量が年々減り、酒蔵や酒販店の経営は楽ではありません。政府に酒の安売りを規制してもらい、消費者を犠牲に息をつこうという情けない動きもあります。けれどもこの映画では、誰も政治家や官庁に泣きつこうとはしません。迷い、悩みながらも、あくまでも良い酒を造るという正攻法で老舗を守ろうとします。
もちろんいくら良い酒を造っても、コストを度外視しては経営は成り立ちません。それに対する回答は映画の中では与えられませんが、もしかするとリケジョの詩織は蔵元を継いだ息子の莞爾と将来結ばれ、持ち前の合理精神を発揮して、経営を見事再建してくれるかもしれない。詩織役の川栄李奈さんによるラストシーンのすばらしい演技に続いて映し出される、瀬戸内の美しい空と海はそんな希望を抱かせます。
<東京・丸の内TOEI>
(note 2018/11/04)
2020-05-06
命とリスク
生活にたった一つの目標しかないことはありえない。目標は多様だ。問題はバランスにある。多くの人にとって自分と家族の命を守ることはとても大切だ。それでも完璧には達成できない。命を守るには食がいる。食を得るには働かなければならず、それにはさまざまなリスクが伴う。
A Protest from France | Mises Wire
政府が経済を封鎖すれば、ウイルスで死ぬ人は減るかもしれない。これは目に見える。経済封鎖がなければ、商業設備メーカーや関連企業は売上が増えたかもしれない。養護施設でもっと多くの子供を支援できたかもしれない。失業者が職に就けたかもしれない。これは目に見えない。
The Unseen Costs of Government-Forced Lockdowns | Mises Wire
米政府の税収が2019年で3.462兆ドルしかないことを考えれば、1.2兆ドルもの経済対策をすべて税金でまかなうのはほぼ不可能だ。しかし連邦準備理事会(FRB)があるおかげで、議会は納税者にお金を頼らなくて済む。FRBを頼ればいい。それこそがFRBの創設された理由そのものだ。
The Fed Doesn't Make Grants. But It Makes Federal Giveaway Programs Possible. | Mises Institute
1949〜76年に毛沢東率いる共産党支配下の中国で起こった血生臭い現実は、欧米ではほとんど知られてさえいない。死亡者は4000万人とも1億人以上ともいわれる。1959〜61年の「大躍進」の時期だけで2000万〜7500万人、それ以前に2000万人、それ以降に数千万人と推定されている。
The Horrors of Communist China | Mises Wire
A Protest from France | Mises Wire
政府が経済を封鎖すれば、ウイルスで死ぬ人は減るかもしれない。これは目に見える。経済封鎖がなければ、商業設備メーカーや関連企業は売上が増えたかもしれない。養護施設でもっと多くの子供を支援できたかもしれない。失業者が職に就けたかもしれない。これは目に見えない。
The Unseen Costs of Government-Forced Lockdowns | Mises Wire
米政府の税収が2019年で3.462兆ドルしかないことを考えれば、1.2兆ドルもの経済対策をすべて税金でまかなうのはほぼ不可能だ。しかし連邦準備理事会(FRB)があるおかげで、議会は納税者にお金を頼らなくて済む。FRBを頼ればいい。それこそがFRBの創設された理由そのものだ。
The Fed Doesn't Make Grants. But It Makes Federal Giveaway Programs Possible. | Mises Institute
1949〜76年に毛沢東率いる共産党支配下の中国で起こった血生臭い現実は、欧米ではほとんど知られてさえいない。死亡者は4000万人とも1億人以上ともいわれる。1959〜61年の「大躍進」の時期だけで2000万〜7500万人、それ以前に2000万人、それ以降に数千万人と推定されている。
The Horrors of Communist China | Mises Wire
過酷ノルマは民営化のせい?~経済合理性を無視する真の理由とは~
日本郵政グループのかんぽ生命保険で、新旧の保険料の二重払いなど顧客の不利益になる保険の乗り換えを繰り返していたことが相次ぎ発覚し、問題となっています。不正の背景には、販売を担う郵便局や郵便局職員に課された過剰な営業目標、いわゆるノルマがあると言われます。
販売実績に応じて営業手当が付く一方、ノルマを達成できないと、「何だこの数字は」「契約を取るまで帰ってくるな」「平日に時間がなければ土日に営業しろ」と上司から怒号が飛んだと言います。ノルマ達成が職員の重圧となり、不正につながったことは容易に想像できます。
日本郵便はかんぽ生命の保険商品について、2019年度の営業目標や販売員のノルマを廃止することにしました。しかし、この問題に対するメディアや識者の反応には、気になる点があります。それは、過酷なノルマは郵政民営化のせいだという考えが当然のように語られていることです。
ある新聞の記事では「利益至上主義に陥るのではないかという、民営化当初に懸念していた事態が現実に起きている」という大学教授のコメントが紹介されていました。民営化は利益至上主義をもたらし、過剰なノルマにつながるとの見方です。けれども、それは本当でしょうか。
ここでまず知っておきたいのは、「ノルマ」という言葉の由来です。もともとロシア語で、社会主義国家だったソ連時代、個人や工場に割り当てられた、一定時間内・期間内になすべき生産責任量を意味します。経済活動の民営を原則とする資本主義ではなく、民営を認めない社会主義に由来する言葉なのです。
この言葉を日本に伝えたのは、第二次世界大戦の敗戦直後、ソ連の捕虜となってシベリアに連行・抑留され、長期間の収容所生活を送った末、命からがら帰国した日本軍兵士らです。シベリア抑留では約6万人もが死亡したとされますが、その生命を奪ったのは、極寒、飢餓のほか、ノルマを課す過酷な重労働でした。
シベリア抑留におけるノルマの実態を少し詳しく見てみましょう。それが資本主義に由来するものでないことがよくわかるはずです。
重労働で特に厳しかったのは、炭鉱・鉱山での作業と伐採、貨物の積み下ろしです。極寒の中、斧やハンマー、のこぎり、一輪車などしか使えない、過酷な肉体労働でした。
労働は1日8時間、月4回の休日と定められましたが、それはノルマの達成が条件です。達成できなければ罰として超過労働が要求され、給食が減らされ、休日が減らされました。労働報酬の支払いはノルマの100%以上の遂行が条件だったので、未遂行の場合は支払われませんでした。
抑留者の中には、作業を免れるためみずからの手足の指をわざと切断したり、体温をごまかしたりする人もいました。ある意味で「不正」ですが、命にかかわる状況下でのぎりぎりの自衛行為だったと言えます(長勢了治『シベリア抑留』)。
収容所は独立採算制で、捕虜たちが働いた賃金によって運営されていました。所長の給与も、収容所の収入に比例します。だから捕虜たちが働けば働くほど、収容所長は豊かになりました。資本家による搾取がなくなったソ連にも搾取はあったのです。その所長にもノルマが課されていました。こうして捕虜たちは過酷なノルマ、労働を強いられたのです(栗原敏雄『シベリア抑留』)。
厳しいノルマ、達成できなければ超過労働や休日減、収入増しか頭にない上司……。数万人が命を落とした悲劇と同一視することはできませんが、かんぽ生命の批判されている営業現場とそっくりです。しかし、これらは社会主義の下で起こったことです。
過重なノルマが横行しているからといって、その原因をただちに民営化に求めるのは乱暴な議論だとわかるでしょう。
そもそも、もし民営化が過酷なノルマの原因なら、世間に多数ある普通の民間企業すべてで同じように非人間的なノルマが課され、不正営業や労働災害を招いているはずです。けれども現実は違います。もちろん会社によってノルマはありますし、中には不正や労災につながるケースもあるかもしれません。しかし、それはあくまで例外であり、大半の会社はまっとうに商売しています。
販売実績に応じて営業手当が付く一方、ノルマを達成できないと、「何だこの数字は」「契約を取るまで帰ってくるな」「平日に時間がなければ土日に営業しろ」と上司から怒号が飛んだと言います。ノルマ達成が職員の重圧となり、不正につながったことは容易に想像できます。
日本郵便はかんぽ生命の保険商品について、2019年度の営業目標や販売員のノルマを廃止することにしました。しかし、この問題に対するメディアや識者の反応には、気になる点があります。それは、過酷なノルマは郵政民営化のせいだという考えが当然のように語られていることです。
ある新聞の記事では「利益至上主義に陥るのではないかという、民営化当初に懸念していた事態が現実に起きている」という大学教授のコメントが紹介されていました。民営化は利益至上主義をもたらし、過剰なノルマにつながるとの見方です。けれども、それは本当でしょうか。
ここでまず知っておきたいのは、「ノルマ」という言葉の由来です。もともとロシア語で、社会主義国家だったソ連時代、個人や工場に割り当てられた、一定時間内・期間内になすべき生産責任量を意味します。経済活動の民営を原則とする資本主義ではなく、民営を認めない社会主義に由来する言葉なのです。
この言葉を日本に伝えたのは、第二次世界大戦の敗戦直後、ソ連の捕虜となってシベリアに連行・抑留され、長期間の収容所生活を送った末、命からがら帰国した日本軍兵士らです。シベリア抑留では約6万人もが死亡したとされますが、その生命を奪ったのは、極寒、飢餓のほか、ノルマを課す過酷な重労働でした。
シベリア抑留におけるノルマの実態を少し詳しく見てみましょう。それが資本主義に由来するものでないことがよくわかるはずです。
重労働で特に厳しかったのは、炭鉱・鉱山での作業と伐採、貨物の積み下ろしです。極寒の中、斧やハンマー、のこぎり、一輪車などしか使えない、過酷な肉体労働でした。
労働は1日8時間、月4回の休日と定められましたが、それはノルマの達成が条件です。達成できなければ罰として超過労働が要求され、給食が減らされ、休日が減らされました。労働報酬の支払いはノルマの100%以上の遂行が条件だったので、未遂行の場合は支払われませんでした。
抑留者の中には、作業を免れるためみずからの手足の指をわざと切断したり、体温をごまかしたりする人もいました。ある意味で「不正」ですが、命にかかわる状況下でのぎりぎりの自衛行為だったと言えます(長勢了治『シベリア抑留』)。
収容所は独立採算制で、捕虜たちが働いた賃金によって運営されていました。所長の給与も、収容所の収入に比例します。だから捕虜たちが働けば働くほど、収容所長は豊かになりました。資本家による搾取がなくなったソ連にも搾取はあったのです。その所長にもノルマが課されていました。こうして捕虜たちは過酷なノルマ、労働を強いられたのです(栗原敏雄『シベリア抑留』)。
厳しいノルマ、達成できなければ超過労働や休日減、収入増しか頭にない上司……。数万人が命を落とした悲劇と同一視することはできませんが、かんぽ生命の批判されている営業現場とそっくりです。しかし、これらは社会主義の下で起こったことです。
過重なノルマが横行しているからといって、その原因をただちに民営化に求めるのは乱暴な議論だとわかるでしょう。
そもそも、もし民営化が過酷なノルマの原因なら、世間に多数ある普通の民間企業すべてで同じように非人間的なノルマが課され、不正営業や労働災害を招いているはずです。けれども現実は違います。もちろん会社によってノルマはありますし、中には不正や労災につながるケースもあるかもしれません。しかし、それはあくまで例外であり、大半の会社はまっとうに商売しています。
2020-05-05
同意に基づく国家
あらゆる集団・民族は、ある国家から分離し、受け入れを認める他の国家に加わることができなければならない。この単純な改革が実現できれば、同意に基づく国家ができていくだろう。もしスコットランド人が望むなら、英国からの分離や他国との連合が認められなければならない。
Nations by Consent | Mises Institute
自決権とは国家のものではなく、独立した行政単位を形成しうる規模を備えた、あらゆる領域の住民のものだ。もしどうにかして自決権をすべての個人に与えることができるなら、そうしなければならない。それが実行できないのは、やむをえない技術的な理由によるものにすぎない。
Books / Digital Text
中世欧州のハンザ同盟に都市が自発的に加入して得た利益は、外国や海賊の攻撃に対する防衛と貿易面の利便だった。同盟には明確な上下関係も公式な領域もなかった。軍事に優れ、周囲の国家に十分対抗できた。13世紀から17世紀まで存続し、競合する多くの国家よりも長続きした。
Anarchism and Radical Decentralization Are the Same Thing | Mises Wire
同じ連邦制でも、スイスは州の規模が米国よりずっと小さい。米国の小都市程度だ。もし米国がスイスと同じ人口規模の州でできたとしたら、州の数は1300以上になっただろう。もしそうなれば、納税者が重い税金を嫌って引っ越す「足による投票」は、今よりずっとやりやすくなる。
If American Federalism Were like Swiss Federalism, There Would be 1,300 States | Mises Wire
Nations by Consent | Mises Institute
自決権とは国家のものではなく、独立した行政単位を形成しうる規模を備えた、あらゆる領域の住民のものだ。もしどうにかして自決権をすべての個人に与えることができるなら、そうしなければならない。それが実行できないのは、やむをえない技術的な理由によるものにすぎない。
Books / Digital Text
中世欧州のハンザ同盟に都市が自発的に加入して得た利益は、外国や海賊の攻撃に対する防衛と貿易面の利便だった。同盟には明確な上下関係も公式な領域もなかった。軍事に優れ、周囲の国家に十分対抗できた。13世紀から17世紀まで存続し、競合する多くの国家よりも長続きした。
Anarchism and Radical Decentralization Are the Same Thing | Mises Wire
同じ連邦制でも、スイスは州の規模が米国よりずっと小さい。米国の小都市程度だ。もし米国がスイスと同じ人口規模の州でできたとしたら、州の数は1300以上になっただろう。もしそうなれば、納税者が重い税金を嫌って引っ越す「足による投票」は、今よりずっとやりやすくなる。
If American Federalism Were like Swiss Federalism, There Would be 1,300 States | Mises Wire
交通事故をなくすには~一般道の民営化という選択肢~
福岡市や東京・池袋で高齢ドライバーによる死亡事故が相次ぎ、議論を呼んでいます。政府は高齢ドライバー専用の新しい運転免許をつくる方針を決めました。メディアでは運転免許の定年制や強制返納制度を求める声も見られます。東京都は、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急発進を防ぐ装置の取り付け費用を補助する方針を表明しました。
しかし、これらの対策はドライバーの責任や車の安全対策だけをクローズアップし、問題の本質のもう一つ重要な部分を見落としています。
もし死亡事故が起こったのが、民間の娯楽施設内にあるカートコースだったら、どうなるでしょう。カートがコースを飛び出し、見物していた親子が死亡したとします。たちまち行政が立ち入り調査に踏み込み、コースの設計や安全対策に問題があったなどとして、処分を下すでしょう。運営企業は賠償責任を負い、経営者は辞任するでしょう。刑事責任を問われるかもしれません。
ところが行政自身が管理する国道や県道だと、ドライバーの責任ばかりがあげつらわれ、交通事故に対する道路行政の責任が問われることはまずありません。国土交通大臣が事故の責任を取って辞めたなどという話は、聞いたことがありません。
もちろんドライバーには前方不注意や運転ミスなどの責任はあります。車を運転する限り、不注意やミスは決してあってはならないものですが、人間の限界を前提に、運転に万一の問題があっても大事故につながらないよう気を配るのが、道路というサービスを提供する者の本来の義務の一つであるはずです。
しかし実際には、道路の安全確保に対する行政の努力は、十分とは言えません。5月に滋賀県大津市の県道交差点で起こった事故では、ガードレールや車止めのポールがあれば、事故は防げたかもしれないと言われています。保育士と園児らが歩道上の車道から離れた場所で信号を待つなど用心していたそうなので、道路の安全対策をもう一段進めていたらと考えると残念です。
大津市の事故の場合、歩道はありましたが、日本では国道ですら、歩道のない道路が珍しくありません。高度成長時代、次々に自動車道が建設された際、歩道や自転車道が併せて整備されなかったためです。1964年の東京五輪に間に合わせるため、急ごしらえで道路を作ったことも一因といわれます。このため欧米諸国と比べ、歩行中や自転車乗車中の交通事故による死者数が多くなっています(所正文ほか『高齢ドライバー』)。
来年、56年ぶりに開催される東京五輪には、欧米などから多数の外国人が訪れます。政府はこの機会に日本の魅力をアピールしようと躍起になっていますが、華やかな五輪会場の外にある危険な道路の実情が知れ渡れば、逆に日本のイメージダウンにつながりかねません。
それでは一体、道路の安全性を高めるにはどうしたらよいでしょうか。最近のように悲惨な事故が立て続けに起こり、世間の関心が高まれば、政治の力によって安全対策が一時強化される可能性はあります。けれどもそれは長続きしないでしょう。政府には道路の安全を確保する「動機」が乏しいからです。経済学で「インセンティブ」と呼びます。
しかし、これらの対策はドライバーの責任や車の安全対策だけをクローズアップし、問題の本質のもう一つ重要な部分を見落としています。
もし死亡事故が起こったのが、民間の娯楽施設内にあるカートコースだったら、どうなるでしょう。カートがコースを飛び出し、見物していた親子が死亡したとします。たちまち行政が立ち入り調査に踏み込み、コースの設計や安全対策に問題があったなどとして、処分を下すでしょう。運営企業は賠償責任を負い、経営者は辞任するでしょう。刑事責任を問われるかもしれません。
ところが行政自身が管理する国道や県道だと、ドライバーの責任ばかりがあげつらわれ、交通事故に対する道路行政の責任が問われることはまずありません。国土交通大臣が事故の責任を取って辞めたなどという話は、聞いたことがありません。
もちろんドライバーには前方不注意や運転ミスなどの責任はあります。車を運転する限り、不注意やミスは決してあってはならないものですが、人間の限界を前提に、運転に万一の問題があっても大事故につながらないよう気を配るのが、道路というサービスを提供する者の本来の義務の一つであるはずです。
しかし実際には、道路の安全確保に対する行政の努力は、十分とは言えません。5月に滋賀県大津市の県道交差点で起こった事故では、ガードレールや車止めのポールがあれば、事故は防げたかもしれないと言われています。保育士と園児らが歩道上の車道から離れた場所で信号を待つなど用心していたそうなので、道路の安全対策をもう一段進めていたらと考えると残念です。
大津市の事故の場合、歩道はありましたが、日本では国道ですら、歩道のない道路が珍しくありません。高度成長時代、次々に自動車道が建設された際、歩道や自転車道が併せて整備されなかったためです。1964年の東京五輪に間に合わせるため、急ごしらえで道路を作ったことも一因といわれます。このため欧米諸国と比べ、歩行中や自転車乗車中の交通事故による死者数が多くなっています(所正文ほか『高齢ドライバー』)。
来年、56年ぶりに開催される東京五輪には、欧米などから多数の外国人が訪れます。政府はこの機会に日本の魅力をアピールしようと躍起になっていますが、華やかな五輪会場の外にある危険な道路の実情が知れ渡れば、逆に日本のイメージダウンにつながりかねません。
それでは一体、道路の安全性を高めるにはどうしたらよいでしょうか。最近のように悲惨な事故が立て続けに起こり、世間の関心が高まれば、政治の力によって安全対策が一時強化される可能性はあります。けれどもそれは長続きしないでしょう。政府には道路の安全を確保する「動機」が乏しいからです。経済学で「インセンティブ」と呼びます。
2020-05-04
専門家の支配
政治家は、選挙で選ばれていない専門家に政策立案を任せたがる。不人気な政策を実施した責任は自分にないと言えるからだ。政治と無関係な判断を尊重したとも主張できる。政治家はこう言うだろう。「私を責めないでください。科学やデータを尊重しようとしただけなんですから」
America Is a Technocracy, Not a Democracy | Mises Wire
米国は地方分権のおかげで国中に政策の実験室がたくさんある。州の競争で、どの政策が役立つかわかる。ある程度の自由に恵まれる州と、自由がほとんどない州が出てくるだろう。それでいい。最大の脅威は、異なる政策をもつ州ではなく、首都に権限が集中する巨大な行政国家だ。
COVID-19 Is Teaching Us Decentralization Is Needed More Now Than Ever | Mises Wire
企業への資金支援策は、短期で不況を和らげても、長期では経済をさらに悪化させる。非常時に備えた貯蓄を怠り、借金でリスクの高い事業をしてきた企業が救われる一方で、堅実な経営をしてきた企業が他人のツケを払わされる。その結果、不健全な事業にますます資金が流れ込む。
What the COVID-19 Crisis Means for Europe and the Eurozone | Mises Wire
「誰かが貯蓄(金融資産)を増やすと他の誰かの収入が減る」というのは間違いだ。アリスが年1万ドル節約し、ボブの会社が新たに発行した株式を買う。ボブはその資金で労働者を雇う。このとき、関係者全体の収入は減らない。アリスが節約したお金は結局、労働者の収入になる。
Keynesian Fallacies Are Not Just Wrong, but Dangerous | Mises Wire
America Is a Technocracy, Not a Democracy | Mises Wire
米国は地方分権のおかげで国中に政策の実験室がたくさんある。州の競争で、どの政策が役立つかわかる。ある程度の自由に恵まれる州と、自由がほとんどない州が出てくるだろう。それでいい。最大の脅威は、異なる政策をもつ州ではなく、首都に権限が集中する巨大な行政国家だ。
COVID-19 Is Teaching Us Decentralization Is Needed More Now Than Ever | Mises Wire
企業への資金支援策は、短期で不況を和らげても、長期では経済をさらに悪化させる。非常時に備えた貯蓄を怠り、借金でリスクの高い事業をしてきた企業が救われる一方で、堅実な経営をしてきた企業が他人のツケを払わされる。その結果、不健全な事業にますます資金が流れ込む。
What the COVID-19 Crisis Means for Europe and the Eurozone | Mises Wire
「誰かが貯蓄(金融資産)を増やすと他の誰かの収入が減る」というのは間違いだ。アリスが年1万ドル節約し、ボブの会社が新たに発行した株式を買う。ボブはその資金で労働者を雇う。このとき、関係者全体の収入は減らない。アリスが節約したお金は結局、労働者の収入になる。
Keynesian Fallacies Are Not Just Wrong, but Dangerous | Mises Wire
資本主義は人の絆を弱めるというウソ~偏見を和らげ、他人との協力を可能に~
「資本主義」という言葉がよくメディアをにぎわせます。「市場主義」「商業主義」などと表現されることもあります。いずれにしても、ほめられることはめったにありません。たいていは厳しく批判されるか、さもなければ、あれこれ注文をつけられるかです。
平成元年にあたる1989年11月、ベルリンの壁が崩壊して旧社会主義諸国の悲惨な実態が明らかになり、世界の人々は資本主義の正しさに確信を抱いたはずでした。あれから30年も経っていないのに、早くも資本主義に対する懐疑論がもてはやされるとは、なんともやりきれない心持ちです。
最近話題の書籍、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳、ダイヤモンド社)も、プロローグで書かれた「資本主義という怪物」という言葉が示すように、そのメインテーマは資本主義に対する懐疑論です。
著者は革ジャン姿で有名だったギリシャの元財務相で、経済学者。本書は世界中でベストセラーになっており、日本語版のカバーには「経済をこれほど詩的に語れる書き手が、いまほかにいるだろうか」と絶賛するライターの言葉が踊ります。
「詩的」に書かれているのは、表面的には事実です。ギリシャ悲劇や小説、映画などさまざまな文学・映像作品を引用し、読者の興味を引きつけるからです。けれども、詩が人間の真実を語るものだとすれば、著者の主張が真の意味で「詩的」と言えるかどうかは疑問です。
具体的に見てみましょう。家族や友人、コミュニティーの仲間はお互いに助け合います。家事を分担したり、クリスマスにプレゼントを交換したり、困ったときにご近所同士で助け合ったりです。
バルファキス氏によれば、こうしたやり取りは、ある意味で「交換」ではあるけれども、商業的な意味はなく、市場での取引とはまったく違うそうです。親密さのあかしであり、家族や地域の中で昔から培われてきた深い絆の表れと言います。
一方、市場の取引はその対極にあると言います。バルファキス氏は「一時的で、冷淡で、機械的でもある。クリックひとつでアマゾンから本を注文するときがそうだ」と述べます。
本当でしょうか。少し考えるだけで、人間どうしのやり取りは、商取引とそれ以外でそう単純に割り切れないことに気づくはずです。
インターネット書店アマゾンで子供の欲しがっている本を見つけて買い、プレゼントしたら、そんなプレゼントは「冷淡で、機械的」だと言って、子供は悲しむでしょうか。そんなことはありません。心から喜び、親子の絆はきっと深まることでしょう。
なるほど、もし売られている本ではなく、手作りの本をプレゼントしたら、子供はもっと喜ぶかもしれません。だからといって、売られている本が「冷淡で、機械的」だということにはなりません。
そもそもバルファキス氏のこの本自体、原書も日本語版もアマゾンで売られています。もしバルファキス氏が本当に、アマゾンで本を買う行為が「冷淡で、機械的」で、人の心を荒廃させると思うのなら、なぜアマゾンで自分の本を売るのでしょうか。売り物が良くないと考えるのなら、なぜ無料で配らないのでしょうか。
バルファキス氏はショッピングモールも気に入りません。「その構造、内装、音楽など、すべてが人の心を麻痺させて、最適なスピードで店を回らせ、自発性と創造性を腐らせ……」とさんざんです。
ショッピングモールが購買意欲をそそるような工夫を凝らすのは事実でしょう。そうだとしても、そこで買い物や食事を楽しむ家族の笑顔が、偽物だということにはなりません。商業的な場だから人と人とが親密になれない理由はありません。
平成元年にあたる1989年11月、ベルリンの壁が崩壊して旧社会主義諸国の悲惨な実態が明らかになり、世界の人々は資本主義の正しさに確信を抱いたはずでした。あれから30年も経っていないのに、早くも資本主義に対する懐疑論がもてはやされるとは、なんともやりきれない心持ちです。
最近話題の書籍、『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ヤニス・バルファキス著、関美和訳、ダイヤモンド社)も、プロローグで書かれた「資本主義という怪物」という言葉が示すように、そのメインテーマは資本主義に対する懐疑論です。
著者は革ジャン姿で有名だったギリシャの元財務相で、経済学者。本書は世界中でベストセラーになっており、日本語版のカバーには「経済をこれほど詩的に語れる書き手が、いまほかにいるだろうか」と絶賛するライターの言葉が踊ります。
「詩的」に書かれているのは、表面的には事実です。ギリシャ悲劇や小説、映画などさまざまな文学・映像作品を引用し、読者の興味を引きつけるからです。けれども、詩が人間の真実を語るものだとすれば、著者の主張が真の意味で「詩的」と言えるかどうかは疑問です。
具体的に見てみましょう。家族や友人、コミュニティーの仲間はお互いに助け合います。家事を分担したり、クリスマスにプレゼントを交換したり、困ったときにご近所同士で助け合ったりです。
バルファキス氏によれば、こうしたやり取りは、ある意味で「交換」ではあるけれども、商業的な意味はなく、市場での取引とはまったく違うそうです。親密さのあかしであり、家族や地域の中で昔から培われてきた深い絆の表れと言います。
一方、市場の取引はその対極にあると言います。バルファキス氏は「一時的で、冷淡で、機械的でもある。クリックひとつでアマゾンから本を注文するときがそうだ」と述べます。
本当でしょうか。少し考えるだけで、人間どうしのやり取りは、商取引とそれ以外でそう単純に割り切れないことに気づくはずです。
インターネット書店アマゾンで子供の欲しがっている本を見つけて買い、プレゼントしたら、そんなプレゼントは「冷淡で、機械的」だと言って、子供は悲しむでしょうか。そんなことはありません。心から喜び、親子の絆はきっと深まることでしょう。
なるほど、もし売られている本ではなく、手作りの本をプレゼントしたら、子供はもっと喜ぶかもしれません。だからといって、売られている本が「冷淡で、機械的」だということにはなりません。
そもそもバルファキス氏のこの本自体、原書も日本語版もアマゾンで売られています。もしバルファキス氏が本当に、アマゾンで本を買う行為が「冷淡で、機械的」で、人の心を荒廃させると思うのなら、なぜアマゾンで自分の本を売るのでしょうか。売り物が良くないと考えるのなら、なぜ無料で配らないのでしょうか。
バルファキス氏はショッピングモールも気に入りません。「その構造、内装、音楽など、すべてが人の心を麻痺させて、最適なスピードで店を回らせ、自発性と創造性を腐らせ……」とさんざんです。
ショッピングモールが購買意欲をそそるような工夫を凝らすのは事実でしょう。そうだとしても、そこで買い物や食事を楽しむ家族の笑顔が、偽物だということにはなりません。商業的な場だから人と人とが親密になれない理由はありません。
2020-05-03
中国の世界征服
今や多くの国で政策は同じ。外出するな(政府が必要と認めた以外)、買物に出るな(政府や専門家が必要と認めた以外)、政府が命じるこれら苛酷な方法に疑いを挟むな—。これは中国による世界征服だ。コロナウイルスに勝つ唯一の方法は政府による統制だと確信させたのだから。
The Conquest of America by Communist China – The Future of Freedom Foundation
1930年代初め、ドイツ人の多くはヒトラーとナチスを支持しなかった。支持した要因の一つは、世界大恐慌として知られる経済危機だった。多くのドイツ人は大恐慌に対応し、何をしたか。それは米国人と同じことだった。経済危機から救い出してくれる、強いリーダーを求めたのだ。
Why Germans Supported Hitler, Part 1 – The Future of Freedom Foundation
「愛国心の直接の源泉は古代ローマにある。それは異教徒の美徳である。自身を偶像として崇める態度が、愛国心という形で今に遺された」「戦争は人間を野蛮な奴隷制の水準におとしめる。暴力はそれに服従する者すべてを物に変えてしまう」。仏哲学者シモーヌ・ヴェイユの言葉。
American Exceptionalism Scars Both Victim and Victimizer – The Future of Freedom Foundation
18〜19世紀英国で行われた囲い込みは、土地を失った農民が工場労働者となり、産業革命を促進したといわれる。これは大地主の政治支配によるものだった。大地主は中央の議会を通じ、あるいは地方の治安判事として権力を行使し、自分たちの有利に土地を再配分することができた。
The Enclosure Acts and the Industrial Revolution – The Future of Freedom Foundation
The Conquest of America by Communist China – The Future of Freedom Foundation
1930年代初め、ドイツ人の多くはヒトラーとナチスを支持しなかった。支持した要因の一つは、世界大恐慌として知られる経済危機だった。多くのドイツ人は大恐慌に対応し、何をしたか。それは米国人と同じことだった。経済危機から救い出してくれる、強いリーダーを求めたのだ。
Why Germans Supported Hitler, Part 1 – The Future of Freedom Foundation
「愛国心の直接の源泉は古代ローマにある。それは異教徒の美徳である。自身を偶像として崇める態度が、愛国心という形で今に遺された」「戦争は人間を野蛮な奴隷制の水準におとしめる。暴力はそれに服従する者すべてを物に変えてしまう」。仏哲学者シモーヌ・ヴェイユの言葉。
American Exceptionalism Scars Both Victim and Victimizer – The Future of Freedom Foundation
18〜19世紀英国で行われた囲い込みは、土地を失った農民が工場労働者となり、産業革命を促進したといわれる。これは大地主の政治支配によるものだった。大地主は中央の議会を通じ、あるいは地方の治安判事として権力を行使し、自分たちの有利に土地を再配分することができた。
The Enclosure Acts and the Industrial Revolution – The Future of Freedom Foundation
「新自由主義」という謎の言葉~「小さな政府」という意味ではないの?~
「新自由主義(ネオリベラリズム)」という言葉がニュースや論説によく登場します。最近では、フランスで反政府運動「黄色いベスト」の抗議デモにさらされるマクロン政権の政策路線が新自由主義的だと言われます。
けれどもこの新自由主義という言葉、なんとも正体不明です。いちおうの定義はあるものの、実際には、どう考えても定義と正反対の意味で使われることが少なくありません。たとえるなら、赤は「血のような色」と説明された後で、青空を指差して「ほら、赤いでしょう」と言われるようなものです。これでは頭が混乱します。
たとえだけではわからないでしょうから、新自由主義がどのように正体不明で、人を混乱させるのか、具体的に見ていきましょう。
まず、新自由主義の定義を確認しましょう。辞典では「政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方」(デジタル大辞泉)、「20世紀の小さな政府論」(知恵蔵)などと説明されています。これらの定義は明確です。言い換えれば、経済に対する政府の介入を否定する考えです。
ところが実際には、この定義に当てはまらない政策や考えを新自由主義と呼び、批判するケースをしばしば目にします。
けれどもこの新自由主義という言葉、なんとも正体不明です。いちおうの定義はあるものの、実際には、どう考えても定義と正反対の意味で使われることが少なくありません。たとえるなら、赤は「血のような色」と説明された後で、青空を指差して「ほら、赤いでしょう」と言われるようなものです。これでは頭が混乱します。
たとえだけではわからないでしょうから、新自由主義がどのように正体不明で、人を混乱させるのか、具体的に見ていきましょう。
まず、新自由主義の定義を確認しましょう。辞典では「政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方」(デジタル大辞泉)、「20世紀の小さな政府論」(知恵蔵)などと説明されています。これらの定義は明確です。言い換えれば、経済に対する政府の介入を否定する考えです。
ところが実際には、この定義に当てはまらない政策や考えを新自由主義と呼び、批判するケースをしばしば目にします。
2020-05-02
恵方巻き、ロス削減要請が正しくない理由~見えない別のムダが発生~
節分の時期に店頭に並ぶ恵方巻きについて、農林水産省が作りすぎを控えるよう流通業界に要請し、話題となっています。コンビニエンスストアなどで大量の売れ残りを廃棄する様子が交流サイト(SNS)に投稿され議論を呼んだこともあるだけに、インターネット上では「いい取り組み」「当然のこと」などと好意的な反応が目立ちます。
恵方巻きに限らず、食べ残しなどで捨てられる「食品ロス」への批判が強まっています。恵方巻きについて、農水省は食品資源を有効に活用する観点から、需要に見合った販売をするよう要請したそうです。
今年2月3日の節分に向けた生産準備はほぼ終わっているとみられ、要請にどれほど効果があるか疑問もありますが、少なくとも来年以降は農水省の意向を無視できないでしょう。形式上は要請でも、政府の言うことである以上、企業側は事実上の義務と受け止めるはずです。
けれども政府主導による食品ロス削減は、本当の意味で無駄減らしにつながるのでしょうか。残念ながら、答えはノーです。
恵方巻きなど大量の食料が廃棄される様子は、視覚を通じて私たちに強烈な印象を与えます。ですが経済問題について正しく判断するには、目に見えるものだけにとらわれてはいけません。目に見えないものも考慮に入れる必要があります。
19世紀フランスの経済学者フレデリック・バスティアは「見えるものと見えないもの」と題するエッセーで、次のようなたとえ話をします。
パン屋の小さな息子がうっかり、店の窓ガラスを割ってしまいます。父親の店主はカンカンですが、見ていた人がこうなだめます。「まあまあ、悪いことばかりではないよ。たとえば、そら、ガラス屋が仕事にありつくじゃあないか」
一見、もっともらしく思えます。ガラス屋がやって来て、壊れた窓ガラスを取り替え、代金を受け取り、にっこり笑います。窓には新品でピカピカのガラス。ガラスを割ってくれたおかげで、パン屋や町内が豊かになったようにすら思えてきます。でもそれは、ガラス屋の笑顔や真新しいガラスなど、目に見えるものだけに注意を奪われているからです。
本当に豊かになったかどうかを判断するには、目に見えないものについても考えなければなりません。ガラス交換の代金が2万5000円だったとしましょう。もし窓ガラスが割れなかったら、パン屋の主人はそのお金で新しい靴を買うつもりでした。そうなれば、窓ガラスと靴の両方を持っていたはずです。
ところが実際には窓ガラスが割れ、その交換にお金を使ってしまったので、靴をあきらめ、窓ガラスだけで満足するしかありません。豊かになるどころか、手に入るはずだった靴を失い、貧しくなってしまったのです。
しかし多くの人は、それを理解しません。買いたかった靴という、目に見えないものの存在に思い至らないからです。米国の経済ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットは著書『世界一シンプルな経済学』(邦訳は日経BP社)でバスティアのこのたとえ話を紹介し、経済について正しく考えるには、目に見えないものを見る想像力が必要だと強調します。
恵方巻きに限らず、食べ残しなどで捨てられる「食品ロス」への批判が強まっています。恵方巻きについて、農水省は食品資源を有効に活用する観点から、需要に見合った販売をするよう要請したそうです。
今年2月3日の節分に向けた生産準備はほぼ終わっているとみられ、要請にどれほど効果があるか疑問もありますが、少なくとも来年以降は農水省の意向を無視できないでしょう。形式上は要請でも、政府の言うことである以上、企業側は事実上の義務と受け止めるはずです。
けれども政府主導による食品ロス削減は、本当の意味で無駄減らしにつながるのでしょうか。残念ながら、答えはノーです。
恵方巻きなど大量の食料が廃棄される様子は、視覚を通じて私たちに強烈な印象を与えます。ですが経済問題について正しく判断するには、目に見えるものだけにとらわれてはいけません。目に見えないものも考慮に入れる必要があります。
19世紀フランスの経済学者フレデリック・バスティアは「見えるものと見えないもの」と題するエッセーで、次のようなたとえ話をします。
パン屋の小さな息子がうっかり、店の窓ガラスを割ってしまいます。父親の店主はカンカンですが、見ていた人がこうなだめます。「まあまあ、悪いことばかりではないよ。たとえば、そら、ガラス屋が仕事にありつくじゃあないか」
一見、もっともらしく思えます。ガラス屋がやって来て、壊れた窓ガラスを取り替え、代金を受け取り、にっこり笑います。窓には新品でピカピカのガラス。ガラスを割ってくれたおかげで、パン屋や町内が豊かになったようにすら思えてきます。でもそれは、ガラス屋の笑顔や真新しいガラスなど、目に見えるものだけに注意を奪われているからです。
本当に豊かになったかどうかを判断するには、目に見えないものについても考えなければなりません。ガラス交換の代金が2万5000円だったとしましょう。もし窓ガラスが割れなかったら、パン屋の主人はそのお金で新しい靴を買うつもりでした。そうなれば、窓ガラスと靴の両方を持っていたはずです。
ところが実際には窓ガラスが割れ、その交換にお金を使ってしまったので、靴をあきらめ、窓ガラスだけで満足するしかありません。豊かになるどころか、手に入るはずだった靴を失い、貧しくなってしまったのです。
しかし多くの人は、それを理解しません。買いたかった靴という、目に見えないものの存在に思い至らないからです。米国の経済ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットは著書『世界一シンプルな経済学』(邦訳は日経BP社)でバスティアのこのたとえ話を紹介し、経済について正しく考えるには、目に見えないものを見る想像力が必要だと強調します。
2020-05-01
アフリカの繁栄と自由貿易
2020年7月、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用がスタートする。AfCFTAは、アフリカ連合(AU)に加盟する55カ国・地域による自由貿易圏構想。アフリカ大陸全域での単一市場創設や、資本と人の移動の自由確立を目指している。2019年5月に設立協定が発効した。実現により、人口約12億人を抱える巨大市場が生まれる。
アフリカ経済の将来に対する世界の期待は大きい。アフリカは長らく経済の停滞が続いたため、経済成長の可能性には懐疑的な見方が少なくなかった。しかし経済停滞の原因は、かつては欧州による植民地支配、近年は社会主義政策の採用によって、自由な貿易が阻害されたことにある。
歴史をさかのぼれば、アフリカには自由貿易によって繁栄した時代があった。そこで重要な役割を果たしたのは、イスラム教徒(ムスリム)商人である。
歴史上、アフリカの繁栄に寄与した重要な交易路は大きく二つある。一つはサハラ砂漠を越えるルート、もう一つはインド洋を渡るルートである。
サハラ砂漠は古くから、アフリカが外的世界と交流するうえで重要な役割を果たした。北アフリカの地中海沿岸からサハラ砂漠を越えて西アフリカのニジェール川中流域に至る交易路は、4世紀ごろにラクダを利用するようになってから発展する。
サハラを越えた南北の交渉が活発になるのは、8世紀初め、サハラ以南の西アフリカへイスラム教が浸透してからである。7世紀に興ったイスラム教はまもなく、軍事的制服によって北アフリカに進出するが、西アフリカへの浸透は商業活動を通じた平和的なものだった。また、アラブ人ムスリムの入植によってではなく、イスラム化した西アフリカの黒人諸族を通じて、間接的に浸透していった。
おもな交易品目として北から運ばれたものは岩塩、馬、装身具などの奢侈品、南から運ばれたものは金、奴隷だった。このような交易の保護と取引に対する課税の上に、ガーナ王国など広域支配の国家が形成された。
ガーナ王国は、現在までに知られているアフリカ最古の黒人王国である。現在のモーリタニア東南部を中心として、8世紀初めから11世紀末まで栄えたとみられる。都は王の町と少し離れた商人の町からなり、商人の町はすなわちイスラム教徒の町だった。商人とともに、北アフリカからイスラムの導師などの宗教家や学者も来往し、ガーナの黒人王(王自身はイスラム教徒ではなかった)に厚遇された。
アフリカ経済の将来に対する世界の期待は大きい。アフリカは長らく経済の停滞が続いたため、経済成長の可能性には懐疑的な見方が少なくなかった。しかし経済停滞の原因は、かつては欧州による植民地支配、近年は社会主義政策の採用によって、自由な貿易が阻害されたことにある。
歴史をさかのぼれば、アフリカには自由貿易によって繁栄した時代があった。そこで重要な役割を果たしたのは、イスラム教徒(ムスリム)商人である。
歴史上、アフリカの繁栄に寄与した重要な交易路は大きく二つある。一つはサハラ砂漠を越えるルート、もう一つはインド洋を渡るルートである。
サハラ砂漠は古くから、アフリカが外的世界と交流するうえで重要な役割を果たした。北アフリカの地中海沿岸からサハラ砂漠を越えて西アフリカのニジェール川中流域に至る交易路は、4世紀ごろにラクダを利用するようになってから発展する。
サハラを越えた南北の交渉が活発になるのは、8世紀初め、サハラ以南の西アフリカへイスラム教が浸透してからである。7世紀に興ったイスラム教はまもなく、軍事的制服によって北アフリカに進出するが、西アフリカへの浸透は商業活動を通じた平和的なものだった。また、アラブ人ムスリムの入植によってではなく、イスラム化した西アフリカの黒人諸族を通じて、間接的に浸透していった。
おもな交易品目として北から運ばれたものは岩塩、馬、装身具などの奢侈品、南から運ばれたものは金、奴隷だった。このような交易の保護と取引に対する課税の上に、ガーナ王国など広域支配の国家が形成された。
ガーナ王国は、現在までに知られているアフリカ最古の黒人王国である。現在のモーリタニア東南部を中心として、8世紀初めから11世紀末まで栄えたとみられる。都は王の町と少し離れた商人の町からなり、商人の町はすなわちイスラム教徒の町だった。商人とともに、北アフリカからイスラムの導師などの宗教家や学者も来往し、ガーナの黒人王(王自身はイスラム教徒ではなかった)に厚遇された。
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