グローバル化の輝き
「グローバル化が進むと国民国家が壊れる」という主張をよく目にする。しかし著者が指摘するように、国民国家とは近代西洋がつくり出した概念にすぎず、実体はない。経済のグローバル化こそ国を繁栄させる。その阻止は本末転倒だ。
国民国家は民族国家とも言い、一民族から成る国家を指す。だがこれはフィクションである。一国家一民族の実例は存在したことがない。日本も明治時代に戸籍を作る際、朝鮮半島、中国、東南アジア出身者やその子孫も「日本人」とした(早尾貴紀『
国ってなんだろう?』)。
西洋民族などというものがいないように中華民族も存在しないと著者は指摘する。返す刀で、日本の国家主義や偏狭な愛国主義も日本民族の純粋性を強調する点で中華主義と同列だと批判する。「純粋という名の排他的思想に学問的根拠は微塵もない」
著者によれば、中国文化が最高潮に達した唐は、中国史で最も国際性・開放性に富む王朝だった。それ以前の狭義の漢民族に匈奴、鮮卑などの異民族が融合して創建され、しかも一貫して多民族国家だった。今のアメリカ合衆国にも通じる。
輝かしい唐文化は仏教をはじめ、日本に多大な影響を及ぼす。シルクロード貿易という当時のグローバル化がなければ、日本文化はさぞさびしいものになっただろう。反グローバル化という排外主義は、社会を物質的・精神的に貧しくする。
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