2016年8月15日月曜日

辻田真佐憲『大本営発表』



政治と報道の癒着

第二次大戦中、デタラメな大本営発表が繰り返された原因は、軍部と報道機関の一体化だった。かつて軍に批判的だったマスコミはなぜ、その言いなりになってしまったのか。きっかけは戦争報道のスクープ合戦にあったと著者は指摘する。

戦前、マスコミの代表格だった新聞の多くは、大正時代から昭和初期にかけて、大正デモクラシーや第一次世界大戦後の軍縮ムードを背景に、軍部に対して批判的な論陣を張っていた。軍部もこれを抑えるのに、たいへん悩まされていた。

ところが1930年代に満洲事変や日中戦争が勃発すると、流れが大きく変わる。「各紙は戦争報道でスクープをあげるため、軍部に協力的になったのである」。軍部はこの変化を巧みに利用し、取材の便宜を図って新聞を懐柔した。

軍部は取材の便宜というアメの一方で、新聞用紙供給制限令などのムチを用いて新聞の隷属を図った。こうして1941年12月の太平洋戦争の開戦までに「軍部とマスコミの関係は、対立から協調、そして支配・従属へと急速に変化した」

ジャーナリズムの最大の役割が権力の監視にあるとすれば、政府の情報に依存した報道は自殺行為である。著者が強調するとおり、大本営発表の史実は、今も根絶されない政治と報道の癒着がいかに大きな危険をはらむか、教えてくれる。

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