2016年8月25日木曜日

スミス『国富論』(まんがで読破)



「経済学の父」の混乱

読者は当惑するに違いない。近代経済学の父といわれるアダム・スミスの主著だから、経済学のエッセンスがすっきりわかるだろうと期待したのに、話にまとまりがないからだ。でも仕方ない。『国富論』とはそういう混乱した本だからだ。

近代経済学の考え方はスミスの独創ではなく、先行する学者たちによって研究され、スミスはそれを『国富論』にまとめた。そのエッセンスを一言でいえば、交換と分業である。このマンガ版も冒頭と中盤で、そのメリットに触れている。

しかしマンガに描かれた魚と野菜の交換だけでは、人間がなぜこれほど豊かになったかはわからないだろう。現在の豊かさをもたらしたのは、産業革命以降に発達した、資本家が道具や機械を、労働者が労働を互いに提供し合う分業である。

一昔前のマルクスかぶれのスミス解説本を参照したのか、資本家と労働者の対立が強調され、両者の協力関係がわかりにくい。マルクスに受け継がれた誤った学説である「労働価値説」に関するやけに詳しい解説も、読者を惑わせるだろう。

スミスは分業のメリットを説きながら、分業が進むと人間は知性や情感、品性が損なわれるなどと根拠に乏しいことを言う。これもマルクスの疎外論と同じだ。本書は『国富論』の誤った部分まで忠実に伝えており、その点では評価できる。

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