2016年6月5日日曜日

〔本〕『「慰安婦」問題の現在』


権力者の免罪符

法学者の李在承による論考が特に有益。日本政府・軍を免罪する『帝国の慰安婦』の誤りを衝く。法的責任を否定し「道義的責任」に逃れる欺瞞。権力に免罪符を与えるとき文学は死を迎える、との批判が厳しい。

<抜粋>
朝鮮が植民地であったという事実、植民地として安定化していった事実は日本当局の暴力が、自然で野放しの暴力から制度的な暴力へと移行したことを意味する。…朝鮮人女性には制度的暴力が合法的に行使できた…。(p.71)

運営主体として民間業者の慰安所を強調するとしても、それすらも軍隊の徹底した管理と統制の下にあったという点に変わりはない。慰安婦問題の主犯は業者ではなく日本軍部であった。(p.78)

責任の基本とは法的な責任であり行為の責任であると考える。…重大な人権侵害において法的責任につながらない責任論は真正性がない。法的責任を排除した論理は実際に責任を無効にしたり空虚にしたりするためである。(p.88)

日本の学者らの相当数が法的責任を否定し、その否定に基づく道義的責任や人道的責任を論じている。法的責任がないのであればそこで終わりであり、なぜ人道的責任を履行しようとするのか理解できない。(p.88)

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