注目の投稿

「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2016-06-15

柄谷行人『憲法の無意識』



暴力と非暴力の混同

戦争とは、物理的暴力やそれによる威嚇で他国を屈服させる行為である。だから戦争について考えるにはまず、何が暴力で、何が暴力でないかを区別する必要がある。だが本書はそれらを混同している。

著者は「通常、実力という場合、暴力・武力を意味しています。が、金の力もあります」(p.118)という。しかし金の力だけでは人を物理的に傷つけない。だから憲法9条は政府に武力の放棄は求めても、金力の放棄は求めない。

また著者によれば、商取引は真に対等な関係ではない。貨幣をもつ者(資本家)はいつでも商品を買える強みがあるからだという(p.124)。だが現金はインフレで減価するし、過剰な現預金を抱える不効率な企業は買収の格好の標的となる。

一方、国家は暴力を背景に個人から税を奪うものの、それは公共事業・福祉政策などの形で再分配され戻ってくるから、一方的な収奪ではなく「交換」だという(p.122)。もしそうなら押し売りも立派な「交換」ということになる。

戦争の放棄はキリスト流の「純粋贈与」だという(p.128)。だが何かを贈与するには、それがまず自分のものでなければならない。つまり所有権の保護が必要であり、平和の鍵は所有権である。著者が気づいていないこの帰結だけは偶然正しい。

0 件のコメント: