経済制裁で飢えや寒さに一番苦しむのは北朝鮮の庶民です。対外的な憎しみを募らせ、和平実現には逆効果としか思えません。政府に紛争防止を委ねれば、こうなってしまうのでしょう。しかし個人同士であれば、争いをやめることはもっと簡単なはずです。
第一次世界大戦中の1914年12月24日から25日にかけて、英独の兵士たちが対峙する西部戦線で一時的な停戦状態が生じました。政府の命令によるものではなく、自然発生的に生まれた非公式の「クリスマス休戦」です。
英作家マイケル・モーパーゴは児童文学『世界で一番の贈りもの』(評論社)で、架空の英国将校の目を通し、クリスマス休戦の様子を描きます。
英独両軍の兵士たちは間の無人地帯に向かって歩み寄り、真ん中で一緒になります。互いが持ってきた酒をくみ交わし、ソーセージやケーキを食べ、語り合い、サッカーに興じます。夜になりそれぞれ地下壕に引き揚げた後も、クリスマスキャロルを歌い合います。
教師出身の英国将校は故郷の妻にこう書き送ります。「来年のクリスマスには、この戦争も、ただの遠い思い出話になっていることだろう。今日のできごとで、どちらの軍の兵士も、どんなに平和を願っているかがよく解った」
残念なことに、第一次大戦は1918年まで終わらず、その後も2度目の大戦をはじめ、世界では何度となく戦争が繰り返されてきました。今も新たな戦争の恐れは消えません。
けれどもクリスマス休戦という奇跡のような出来事が実際にあったという事実は、一筋の希望の光を投げかけます。政府に外交交渉を任せきりにせず、個人が直接接したり、商取引で間接的につながったりすることで、悲惨な戦争を避ける可能性は高まるはずです。(2017/12/24)
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