注目の投稿

「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2025-12-05

略奪としての戦争

この文章(フレデリック・バスティアの『経済的調和』からの抜粋)は、戦争を「略奪(Spoliation)」の究極的な形態として定義し、生産活動と対比させながら、その経済的・道徳的な悪影響を論じたものです。

以下に主要な論点を要約します。


🗡️ 戦争と略奪の定義

1. 生存手段の二つの源泉

人間(および国家)が生存手段を得る方法は、本質的に以下の二つしかありません。

  • 生産(Production): 創造すること(狩猟、農業、製造など)。これは自然の法則を支配することを目指します。

  • 略奪(Spoliation): 盗むこと(暴力、詐欺、戦争など)。これは他の人間を支配することを目指します。

2. 象徴と本質

  • 生産の象徴は、豊かさをもたらす鋤(すき)に作り変えられた鉄です。生産は、他者から何も奪うことなく無限に富を増大させることが可能です。

  • 略奪の象徴は、破壊をもたらす剣(つるぎ)に作り変えられた鉄です。略奪は、労働が生み出したものを単に移動させるだけであり、一方が満足を得るためには、必ずもう一方に対応する剥奪(privation)を強いることになります。


🧠 略奪(戦争)の根源と経済的損失

3. 戦争の起源

人間は生来、「幸福への欲求」と「苦痛(労働)の回避」という自己利益(self-interest)に基づいて行動します。

  • 労働(生産のための努力)はそれ自体が苦痛であり、人間はこれを避けようとします。

  • 他人の労働によって生産された成果を、自分が労苦を負わずに手に入れることができると気づいたとき、略奪が問題の解決策として提示されます。これが戦争の根源です。

4. 社会的エネルギーの絶対的損失

略奪は、社会全体にとって純粋な損失をもたらします。

  • 略奪者側の損失: 略奪行為そのもの(武装、計画)にも努力が必要であり、それは生産活動に使えたはずの労力を浪費します。

  • 生産者側の損失: 被害を防ぐための防御策(武器、要塞、訓練)にも労力が費やされ、これもまた社会全体にとっては永遠に失われた労働となります。

  • 最終的に、生産者が略奪に抵抗できないと判断した場合、生産そのものが放棄され、損失はさらに拡大します。


🏛️ 社会的・道徳的影響

5. 価値観の転倒

略奪が恒常的になると(征服者と被征服者の関係など)、社会の道徳的基盤が歪みます。

  • 征服者(略奪者)は、余暇、富、芸術、軍事パレードといった「魅力的なもの」を独占します。

  • その結果、世論は、勤勉な労働者よりも、兵士(略奪者)の生活を称賛し、産業よりも戦争を好むようになります。 被征服者でさえ、最終的には支配者の価値観を模倣しようとします。

6. 結論

戦争は一過性のものではなく、歴史上普遍的に存在し、奴隷制度や貴族制といった社会構造の原因となってきました。略奪は人類の自然な進歩を阻害する「妨げ」ですが、人間社会の調和を達成するためには、長期的には「生産」が「略奪」を克服することが必要であると筆者は主張しています。

(Geminiを利用)
War as Spoliation | Mises Institute [LINK]

2025-12-04

ロスバードの国際関係論

マレー・ロスバードの国際関係論と国家に関する理論の要点は、彼の国家に対するリバタリアン的見解から導き出された、国家の性質と行動に関する記述的分析にあります。

この理論は、国家間の行動を理解するための枠組みを提供しており、その主な特徴は以下の4点に集約されます。


🧐 ロスバードの国際関係論の主要な特徴

ロスバードの国際システムの記述は、国家とその外交政策に関する以下の4つの主要な信条によって特徴づけられます。

1. 国際システムは無政府状態(Anarchic)である

  • 現代の世界において、各地域は国家組織によって統治されていますが、全世界を統治する超国家は存在しません。

  • 各国は自国領域内での暴力の独占を持っていますが、国家間では「無政府状態」が存在します。

  • 国家は本質的に強制の上に築かれた制度であるため、国家に支配される国際システムは部分的に暴力によって特徴づけられます。

  • 国家は自国の利益と保全に焦点を当てるため、国際協力は国家自身に利益がある場合にのみ行われます。

2. 政府は少数支配エリートによって運営されている

  • ロスバードにとって、「私たち」は政府ではなく、政府は私たちを正確には「代表していない」という古典的な自由主義の搾取理論が中心です。

  • 国家の正常かつ継続的な状態は寡頭制支配であり、これは国家機構の支配権を獲得した強制的なエリートによる支配です。

  • この寡頭支配は、民主主義の制度の有無にかかわらず真実であり、外交政策の決定は支配エリートによって行われます。

  • 民主主義と独裁の違いは、戦争遂行において、前者のほうが国民の承認を得るためにより集中的なプロパガンダを必要とすることだけです。

3. 国家は自己保全と勢力拡大を目指す

  • 国家は搾取的エリートによって支配されているため、支配階級は自らの権力と富を維持する手段として、国家の保全を最優先します。

  • 戦争と平和に関する事項は支配階級にとって非常に重要であり、彼らは一般納税者を意思決定プロセスから排除するために秘密主義を利用します(例:CIAなどの影の機関)。

  • 国家が最も恐れるのは、他国による征服か、自国民による革命という、自らの権力と存在への根本的な脅威です。

  • 国家は、他国に対して領土と権力を拡大するために征服を追求する傾向があります。ある領土に対する完全な支配は、他国の排除によってのみ達成されるため、国家間には固有の利害の対立が存在します。

  • 戦争は国家に大きな利益をもたらす可能性がある一方で、失敗すれば悲惨な結果を招くため、常に戦争を追求するわけではなく、リスクが高すぎると認識された場合は現状維持を選択します。

4. 戦争はしばしば国内政策の道具である

  • 国家は対外的な勢力拡大の手段としてだけでなく、国内での権力強化の手段としても他国との戦争を利用します。

  • 例えば、第一次世界大戦は、アメリカ合衆国における進歩主義の集大成として、社会主義的な中央計画連邦警察権力を拡大する機会を国家に提供しました。

  • 冷戦終結後の米国のように、弱小国や遠方の国に対する戦争は、国家にとって比較的「安全」な方法で国内の権力を拡大する手段を提供します。


結論

ロスバードの見解は、国際システムは自己利益を追求する支配階級によってコントロールされる国家から構成されており、これが現実のあり方であると示しています。彼は、平和と人権の追求は、国際戦争、軍拡競争、徴兵制、警察国家など、国家の戦争遂行能力を高めるあらゆる制度や戦略に対する一貫した反対を必要とすると主張しています。

(Geminiを利用)
Rothbard’s Theory of International Relations and the State | Mises Institute [LINK]

2025-12-03

市場経済への真の脅威

この記事は、現代の米国経済システムにおける最大の脅威は社会主義ではなく、政府に結びついた億万長者による経済的ファシズム(縁故資本主義)であると主張しています。

📌 主要な論点

  1. 経済的ファシズムの定義と本質:

    • 古典的自由主義者ジョン・T・フリンの定義に基づき、ファシズムは「政府がその権力に制限を認めない(全体主義)」「独裁者によって運営される」「資本主義システムを機能させるために組織される」社会組織の形態であるとしています。

    • 経済的ファシズムは社会主義ではなく、資本主義の一形態であり、私有財産に根ざしています。

    • 現在の米国の問題は、縁故主義、ファシズム、コーポラティズム、金権政治(プルートクラシー)などと表現される、寄生的な億万長者によって堕落した資本主義です。

  2. 社会主義は現実的な脅威ではない:

    • 社会主義は「生産手段の政府所有」と定義されており、今日の米国経済に対する差し迫った、深刻な脅威ではありません。

    • 億万長者ロビーは、補助金、政府契約、市場を制限する規制を通じて利益を保証したいがために、社会主義を仮想敵として利用し、世間の目をそらさせています。

  3. 億万長者による経済への悪影響:

    • ワシントンDCの資本主義推進派の言説は、見せかけの「反社会主義」闘争に終始し、真の脅威であるファシズム的な資本主義にエネルギーをほとんど費やしていません。

    • 政治と結びついた企業への補助金や税制優遇は、一般市民の負担を増やし、市場を歪めています(例:イーロン・マスク氏が受け取った多額の公的資金)。

    • 米国の富豪の多くは連邦政府や地方政府と巨額の契約を結んでおり、彼らが税金を「払いすぎている」のではなく、「税金を取りすぎている」ことが問題です。

    • オバマケア(医療改革)の例では、ポピュラーな社会主義的公的選択肢は実現せず、代わりに保険会社の利益を保証する「私的な」取引所システムが、社会主義医療の国々よりもはるかに非効率で高コストな結果を生み出しました。これは、縁故資本主義が社会主義よりも経済的に破壊的になり得ることを示しています。

  4. リバタリアンへの提言:

    • 「気に入らないものは全て社会主義」というレトリックは、真の問題を見えなくしています。

    • リバタリアンは、幻の敵である社会主義と戦うのではなく、政府の恩恵にあずかっている億万長者と経済的ファシズムという現実の脅威に焦点を当てるべきです。

    • この焦点を変えることで、彼らのメッセージは米国の労働者階級(有権者)の共感を呼ぶ可能性が高まります。


(Geminiを利用)
Billionaires, Not Socialists, Are the Biggest Threat to the Free Market | The Libertarian Institute [LINK]

2025-12-02

戦争の正当性

マレー・ロスバードによるこの文章は、戦争の正当性(Just War) の概念について論じたものであり、特に古典的な国際自然法の伝統と、第一次世界大戦(1914年)以降に支配的となった現代の国際法とを対比させています。

著者の戦争に対する基本的な見解と、米国の歴史における「正当な戦争」の特定、そして現代における「集団安全保障」や「人道的介入」への批判が中心的な内容です。


💡 著者の戦争観

  • 正当な戦争:ある民族が、別の民族による強制的な支配の脅威をかわそうとする場合、または既に存在する支配を打倒しようとする場合に存在する。

  • 不正な戦争:ある民族が、別の民族に支配を課そうとする場合、または既に存在する強制的な支配を維持しようとする場合に存在する。

  • 戦争と国家の権力:著者は、第一次世界大戦時のランドルフ・ボーンの言葉を引用し、戦争は常に「国家の健康(the health of the State)」であり、国家権力を拡大し、市民の自由と繁栄を犠牲にする手段であると主張しています。


🇺🇸 米国の「正当な戦争」

著者は、米国の歴史上、「明白かつ疑いようのない」 正当な戦争は以下の二つだけであると断言しています。

  1. アメリカ独立革命(American Revolution):アメリカ人が英国による望まない支配を排除しようとした戦争。

  2. 南部独立のための戦争(War for Southern Independence) (南北戦争における南部側の主張):南部諸州が、連邦政府による強制的な支配から離脱(脱退)しようとした戦争。

著者は、南部が連邦から脱退し、新しい連合を形成したことは、アメリカ独立革命と同じく「政治的絆を解消する」権利を行使した正当な行為であると主張し、リンカーンによる北部側(War of Northern Aggression)の戦争を不正な侵略であると見なしています。


⚖️ 古典的な国際自然法 vs. 現代の国際法

🏛️ 古典的な国際自然法(16世紀~19世紀)

  • 目的:戦争を廃止するのではなく、制限し、抑制すること。文明による制約を課すこと。

  • 核心的な原則

    1. 非戦闘員(民間人)を標的にしない:戦争は統治者とその軍隊の間で行うべきであり、民間人を可能な限り関与させない。

    2. 中立国の権利を保護する:中立は正当化されるだけでなく、積極的な美徳と見なされた。「中立を守る」ことは高い政治的手腕の証だった。交戦国は中立国による敵国への「禁制品」(武器弾薬に厳密に定義されたもの)以外の物資輸送に干渉できなかった。

🌐 現代の国際法(1914年以降)

  • 提唱者:国際連盟や国連の支持者たち、特にウッドロー・ウィルソンの外交政策とビジョン。

  • 特徴:戦争の制限ではなく、「戦争の廃止」 や「侵略の撲滅」を目指し、結果的に「永久平和のための永久戦争」という逆説的な結果を生んでいると批判されています。

  • ウィルソン流の正当化

    1. 「侵略に対する集団安全保障」:全ての戦争には「侵略者」と「犠牲者」がおり、国際社会は侵略者を特定し、「国際警察」として共同で対処する道徳的義務があるとする考え。しかし、現実には原因が複雑に絡み合い、単純な侵略者特定は困難であると批判。

    2. 「民主主義と人権の強制」:世界中に「民主主義」と「人権」を強制することが、米国および全ての国の道徳的義務であるとするユートピア的な考え。ソマリア介入(純粋な人道的介入の試み)をその失敗例として挙げています。


🔪 人道主義者とギロチン

  • 著者は、イザベル・パターソンの言葉を引用し、「人道主義者(humanitarian)はギロチンを持ったテロリストになる」 と警鐘を鳴らしています。

  • 人道主義者は、他者の生活における「主動力」たろうとし、人々が自らを助ける力を認めない。彼らが「他者のためになる」と考えることを、強制的に実現しようとする時、「ギロチンを設置する」 ことになる。

  • 南北戦争における北部の奴隷制度反対も、この「ギロチンを持った人道主義」の一例として批判されており、大量殺戮と破壊を正当化するために、熱狂的な千年王国主義的な道徳的原理が用いられたと論じています。


🛡️ 権利の普遍性と行使の地域性

  • 自然権の強制:たとえ普遍的な自然権が存在し、他国でその権利侵害(例:ルワンダでの虐殺)があっても、他のいかなる国にも介入する道徳的義務は生じないというのが古典的な自然法学者の見解であると指摘。

  • スローガン「権利は普遍的であっても、その強制は地域的であるべきだ」(Rights may be universal, but their enforcement must be local)。権利を守る責任は、その権利を持つ人々の「自分たちだけ」(Sinn Fein) にあるべきだとしています。


この記事は、戦争の道徳的・法的な評価において、個人の自由、契約理論、そして国家権力への懐疑を重視するリバタリアン的視点が強く反映されています。

(Geminiを利用)
Just War | Mises Institute [LINK]

2025-12-01

仏教と政治権力

今回は仏教について、政治権力に対する考えを中心にみていこう。

紀元前5世紀ごろのインドでは、商工業の発達を背景に、都市を中心とした小国家が形成された。富を蓄積した王侯・商工業者の力が強まり、バラモン教にもとづく身分制度で最上級とされるバラモン(祭官)の権勢は衰えていった。こうした社会変動のなか、新たな教えを説く自由思想家たちが登場する。その1人が仏教の開祖ガウタマ・シッダールタであった。

ガウタマは、現在のネパール領でヒマラヤ山麓に近い釈迦族の部族国家に王子として生まれた。恵まれた生い立ちながら、生まれつき内省的で、早くから人生の問題に悩んだといわれる。結婚し一男を得るが、悩みの解決を求める気持ちは抑えがたく、出家する。

はじめ師について瞑想を学び、のち断食など様々な苦行に励んだが、悩みの解決には至らなかった。35歳のとき、苦行の虚しさを知って断食をやめ、とある大樹の下で端座し、瞑想に入った。ある朝、心に大きなひらめきが起こり、目の前に真理(ダルマ、法)があらわになったと感じて、悩みはついに消滅した。以後、「(真理に)目覚めた者」としてブッダ(仏陀)と呼ばれた。

このあと最初の説法(初転法輪)を行なってから80歳で亡くなるまで、ブッダは生涯をかけて自らが体得した真理を説き続け、やがて教団が形成された。生前のブッダの言葉をまとめたものが経典である。

ガウタマによれば、老い、病み、死を迎えることは端的な苦しみであり、それらが避けられない以上、生まれてきたこと自体が苦しみなのである。これが生・病・老・死の四苦である。さらに、愛別離苦(愛する者との別れ)、怨憎会苦(憎い者との出会い)、求不得苦(欲しいものが手に入らない)、五蘊盛苦(心身の活動それ自体)の四つの苦しみを加えて、八苦ともいう(四苦八苦)。

ガウタマは、ブッダとなった後、苦をめぐる思想と涅槃(安らぎの境地)に至る方法を簡潔にまとめた。それが四諦・八正道である。

四諦(四つの真理)とは、①苦諦(人生は苦)、②集諦(苦の原因は煩悩)、③滅諦(涅槃が理想の境地)、④道諦(涅槃に至る正しい修行法は八正道)の四つである。

八正道とは八つの修行法のことであり、正見(正しい見解)、正思(正しい心のもち方)、正語(正しい言葉)、正業(正しい行為)、正命(正しい生活)、正精進(正しい努力)、正念(正しい気づき)、正定(正しい精神統一)から成る。

八正道のうち、世俗の政治権力との関わりでとくに注目されるのは、正業である。この言葉が指す正しい行為とは、具体的には、殺生や盗みをしないことである。これは、出家をしない在家の信者が守るべき戒律である五戒にも含まれている。すなわち、不殺生(殺生をしない)、不偸盗(盗みをしない)である。ちなみに、他の三つは不邪淫(婚姻外性交をしない)、不妄語(虚言をいわない)、不飲酒(酒を飲まない)である。

仏教の教えで特筆すべきは、身分社会だった当時、人間の貴賤は生まれによっては決まらないと説いたことだ。仏典には「四姓(祭官・武人・庶民・隷民)の中で祭官が最高であり、それ以外は卑しい」と主張する祭官をブッダが論破する物語が多数収録されている(馬場紀寿『初期仏教』)。

たとえば、祭官が最上だと説く祭官に対してブッダは、殺生や窃盗などの悪行を行う者はどの生まれにもおり、それら悪行を離れた者もまたどの生まれにもいることを説いた。また、王族であっても、祭官であっても、庶民であっても、隷民であっても、一部は殺生や盗みなどの悪行を行うし、一部は善行を行う。この世において最上の者は、祭官ではなく解脱した者だと説いた。仏教で解脱とは、欲望を抑制して煩悩の束縛から自己を解放し、心の平静な境地である涅槃を実現することである。


このような仏教の考えは、国王を泥棒と同一視するいう大胆な態度につながる。仏教学者の植木雅俊氏によれば、インド哲学の泰斗・中村元氏は常々、インド仏教では国王を泥棒と同列に見ていたという話をしていた。なぜ同列かというと、泥棒が非合法的に人の物を持って行ってしまう一方、国王は税金という形で合法的に人の物を持って行ってしまう。人の物を取り上げるという意味では共通している、とみるのである(『仏教、本当の教え』)。

このような仏教の考えは近年、西洋のリバタリアン(自由至上主義者)と呼ばれる論客から注目されている。リバタリアンは個人の生命・身体・財産の権利を重視し、正当防衛以外の理由でこれらの権利を侵害してはならないと説く。これだけなら、たいていの人はとくに異論を唱えないだろう。だがリバタリアンの特徴は、その原理原則を一般市民だけではなく、政府にも厳格に当てはめようとするところにある。

たとえば、課税は盗みだとみなす。リバタリアンの理論家マレー・ロスバード氏によれば、政府以外の個人・集団(犯罪者を除く)が相手との自発的な取引や贈与で所得を得るのに対し、政府は、もし収入を与えなければ恐ろしい罰を与えると脅すことによって、強制的に収入を得る。これはピストルを突きつけて金銭を要求する強盗に等しいという(『自由の倫理学』)。

現代リバタリアンのこのような見解は、政治権力者である国王を泥棒と同一視する、仏教の発想と実質同じといっていいだろう。

このような主張に対して反論はある。たとえば、ブッダは生前、様々な統治者と対話したが、その際、課税をやめろと言ったり、税は盗みだから仏教の倫理に抵触すると言ったりしたことはない。だから仏教を自由至上主義と同一視するのは誤りだという。

これに対し、米国のリバタリアン系シンクタンク、ケイトー研究所が運営するウェブサイト「リバタリアニズム」は、記事でこう指摘する。王に向かって「臣民に税を課すのをやめなさい」などと言ったら、王は不快になり、そこで会話が終わってしまいかねない。そうなれば、王を解脱に導くチャンスは失われてしまう。ブッダは人を見て法を説いたのである。

のちに仏教がインドから伝わった中国では、天命を受けた帝王に民衆は服従するものとされた。前出の植木氏によれば、これは仏教本来の倫理とは対立する。それでも仏教者は、国家のために積極的に働こうとまではしなかったという。

ところが日本の仏教は伝来した当初から、鎮護国家の思想が支配的だった。ここがインドや中国との大きな違いだという。また、インド仏教では「人」より「法」を重視するが、日本では聖徳太子信仰や弘法大師信仰など個人崇拝が顕著だとも指摘する。

宗教の倫理がつねに正しいとは限らない。それでも、政治とは異なる価値観に立ち、政治を監視する存在は重要である。社会に及ぼす政治の力が拡大する現在、ブッダが説いた教えの意味を、あらためて噛みしめたい。

2025-11-30

木村貴の経済チャンネル(101本目〜)

  1. 株高の意味 経済の繁栄か? 衰退か?(2025/09/02
  2. 孔子の自由主義思想(2025/09/04
  3. 驕れる大国、経済戦争で自滅!(2025/09/09
  4. 孟子の戦争批判(2025/09/11
  5. 中央銀行と戦争、深い関係(2025/09/16
  6. 織田信長、マネーの原理に敗れたり(2025/09/18
  7. 豊臣秀吉の「大東亜戦争」(2025/09/20
  8. 日露戦争、「借金亡国」への道(2025/09/23
  9. 産業革命は地獄という嘘(2025/09/25
  10. 社会保障、保守政治家の大罪(2025/09/27
  11. 動画が電子書籍になりました!(2025/09/29
  12. 金が信頼される理由(2025/09/30
  13. 銀というグローバル通貨(2025/10/04
  14. デフレ政策が日本を救う!(2025/10/11
  15. アベノミクス再来なら日本沈没(2025/10/14
  16. 政治が戦争を止めるという嘘(2025/10/18
  17. ベネズエラ情勢緊迫 裏に石油利権?(2025/10/21
  18. 元祖アベノミクス、高橋是清を崇めるな(2025/10/23
  19. 金価格が大幅安 歴史的な下げ局面か、再上昇の始まりか(2025/10/27
  20. 大恐慌前夜、「株は暴落しない」と信じた教授の末路(2025/11/03
  21. 「脱ドル」で拡大、世界のゴールド需要(2025/11/10
  22. 大恐慌を予言した男たち(2025/11/17
  23. 金銀価格を押し上げ、債務のブラックホール(2025/11/24
*ショート動画を除く。タイトルは変更する場合があります
YouTube

木村貴の経済の法則!(2025年、更新中)

  1. 「イカゲーム」が語る2025年経済のキモ 資本主義はゼロサムじゃない(2025/1/6*臨時解説
  2. 経済って何だろう? 自然に生まれる秩序の不思議(2025/1/10
  3. 個性は分業を生み、繁栄をもたらす アダム・スミスは何を見落としたか?(2025/1/17
  4. 超人ヒーローも取引で得をする 比較優位って何だろう?(2025/1/24
  5. 公共事業の見えないコストとは? トレードオフと機会費用で考える(2025/1/31
  6. お金を刷っても楽園はできない 希少性って何だろう?(2025/2/7
  7. ダイヤは水よりなぜ高い? 限界効用で考えよう(2025/2/14
  8. 幸せの指針、心のランキングとは? 満足度は「量」でなく「順序」に注目(2025/2/21
  9. 経済に「等価交換」は存在しない 価値が違うから、取引は生まれる(2025/2/28
  10. 金が再びお金になる日 価値保存の力、輝き増す(2025/3/7
  11. 政府が金を没収する日 大恐慌の米、「非常事態」口実に強行(2025/3/14
  12. フォートノックスに金はあるのか? 米金融最大のタブー、市場の波乱要因に(2025/3/21
  13. 米政府がデフォルトした日 黒歴史、なぜ「なかったこと」に?(2025/3/28
  14. トランプ関税、大恐慌の影 世界貿易、縮小のリスク(2025/4/4
  15. ドルの衰退、保護主義で加速 金の存在感、一段と(2025/4/11
  16. 財政破綻より怖いものとは? Nスペ「国債発行チーム」の正しい見方(2025/4/18
  17. 「双頭の怪物」スタグフレーション、日本が退治できない理由(2025/4/25
  18. 投資の神様、バフェット氏の「闇」 3つの残念な発言を読み解く(2025/5/9
  19. 一番怖い「マネー真理教」 インフレ頼みが経済を壊す(2025/5/16
  20. 金の力でドル復活? トランプ氏元顧問の大胆すぎる計画(2025/5/23
  21. 膨らむ政府、買われる金 日米、バラマキ政策止まらず(2025/5/30
  22. 誰も知らない「インフレ」の意味 マネー膨張が経済を壊す(2025/6/6
  23. GDPを信じるな 3つの欠点、経済の現実映さず(2025/6/13
  24. 国家が金を買う理由 本当は怖い?その狙いとは…(2025/6/20
  25. 誰も知らないアメリカファースト 戦争への歯止めのはずが…(2025/6/27
  26. 中央銀行と政府のプロレス インフレを止められない本当の理由(2025/7/4
  27. 大軍拡と米経済の自滅 借金・バラマキで失われるドルの価値(2025/7/11
  28. 米建国の苦い教訓、ハイパーインフレ 戦費調達の悪しき前例、今も色濃く(2025/7/18
  29. 金本位制を壊した野蛮な戦争 第一次世界大戦が変えたマネー、今も劣化続く(2025/7/25
  30. FRB誕生の秘密 なぜ中央銀行が「銀行」と名乗らないのか?(2025/8/1
  31. ニクソン・ショックとは何だったのか? ドルが紙切れになった日(2025/8/8
  32. 紙くずになった「軍票」 不換紙幣のリスク浮き彫りに(2025/8/22
  33. 株高の意味 経済の繁栄か? 衰退か?(2025/8/29
  34. 大国、経済戦争で自滅のリスク ナポレオンの失敗は語る(2025/9/5
  35. 中央銀行と戦争、深い関係 イングランド銀誕生の真相とは?(2025/9/12
  36. 日露戦争、夏目漱石が予言した「借金亡国」 国債頼みの政府膨張の末路とは?(2025/9/19
  37. 金が信頼される理由 中央銀行と不換紙幣に募る不信(2025/9/26
  38. 昭和恐慌、「金解禁」は正しかった 浜口雄幸・井上準之助のデフレ政策、国際競争力を回復(2025/10/3
  39. 高橋是清は英雄か? 元祖アベノミクス、金融緩和と財政出動に頼る危うさ(2025/10/17
  40. 金価格が大幅安 歴史的な下げ相場か、再上昇の始まりか 過去のケースと比較検証(2025/10/24
  41. 大恐慌前夜、「株は暴落しない」と信じた教授の末路 経済学者フィッシャーはなぜバブルを見抜けなかったのか?(2025/10/31
  42. 「脱ドル」で拡大、世界のゴールド需要 金価格の押し上げ要因に(2025/11/7
  43. 大恐慌を予言した経済学者たち 「オーストリア学派」はなぜ危機を察知できたのか?(2025/11/14
  44. 日米で拡大、債務のブラックホール 金銀価格を押し上げ(2025/11/21
  45. 「打ち出の小槌」は国を滅ぼす スペイン帝国とマネー膨張の教訓(2025/11/28

2025-11-29

資本主義は勝利する

この記事は、市場経済の主要な擁護者であったマレー・ロスバード(Murray Rothbard)の著作、特に1973年の論文「A Future of Peace and Capitalism」への論評を通じて、自由市場としての資本主義が最終的に勝利する運命にあるという彼の楽観的な見解を解説しています。

1. 資本主義の敵と定義の混乱

  • 政治・思想界における資本主義の敵:

    • 左派: 社会正義、平等、環境保護などの要求に合わせるために市場プロセスを規制すべきだと主張。

    • ネオコン(新保守主義): 信用拡大と米国の世界的軍事力による「世界秩序」維持のためにグローバル資本主義を主張。

    • 古保守主義(パレオコン): 地域社会の崩壊、国際主義、道徳的悪影響を理由に市場を非難。

  • 定義の混乱: 「資本主義」という言葉は、しばしば貪欲、汚染、腐敗した実業家など、人々が嫌悪するものの総体として使われている。ロスバードは、この用語が自由市場資本主義(平和的・自発的な交換)国家資本主義(暴力的収奪)という2つの全く異なる概念を混同していると指摘した。

2. ロスバードによる資本主義の明確化

  • 資本主義とは何か: ロスバードは、資本主義を社会における自発的な活動、特に交換によって特徴づけられる活動の総和として明確に定義する。それは財産権の自由な交換と、政府による妨害の不在という枠組みの中で生まれるシステムに他ならない。

  • 市場交換の本質: 新聞の購入からCEOの雇用まで、すべての交換は相互の利益を目的とした平和的な行為であり、グローバル市場はこの相互利益の考え方の延長線上にある。

  • 政府介入の分類: 政府の活動(規制、課税、保護主義など)は、次の2つのタイプに分類される:

    1. 2者間の交換を禁止または部分的に禁止すること。

    2. 市場では起こりえない「交換」を誰かに強制すること。

    • ロスバードにとって、課税は強盗であり、国家そのものは大規模な強盗に他ならない。市場の本質が常に自発性であるのに対し、国家の本質は常に強制である。

3. 資本主義の不可避性

  • 「左」と「右」を超えて: ロスバードは、自由市場支持を「右」とも「左」とも特徴づけるのは正確ではないと考えた。1973年当時、保守派は軍国主義や独占的特権といった前資本主義的な制度形態に固執し、国家と企業の連携という形で古典的自由主義革命を逆行させようとしていた。これは、社会主義者と共通する、管理と重商主義の手段を用いるものであった。

  • 社会主義の失敗と市場の生産性: ロスバードは、社会主義が試みられ失敗に終わった東ヨーロッパ諸国が市場モデルに移行せざるを得なくなっていることに注目し(1973年当時)、「自由市場資本主義がそこで勝利することはほぼ避けられない」と予言した。

  • 最終的な勝利の根拠:

    • 産業時代において、社会主義は工業システムを運営できず、長期的に見ればネオ重商主義(介入主義)も同様に運営できないことが明らかになった。

    • 自由市場資本主義は、唯一道徳的で、最も生産的なシステムであるだけでなく、工業化時代における人類にとって唯一存続可能なシステムになった。

    • 彼の楽観主義の根拠は、市場は機能するが、政府は機能しないという確信にある。何百万、何十億もの相互に利益のある交換がもたらす執拗な圧力が、中央計画立案者の意図を打ち破り、最終的に勝利を収めるだろう。

ロスバードの歴史観は、過去に部分的に果たされた「自由、繁栄、平和」の約束が、未来の資本主義の形として必ず成就するという信念に基づいています。


(Geminiを利用)
Why Capitalism is Inevitable | Mises Institute [LINK]

2025-11-28

リバタリアンの戦争論

マレー・ロスバードによるこの記事は、リバタリアン運動が「戦略的知性」を用い、現代の最も重要な問題である戦争と平和にリバタリアン理論を適用する必要があると主張しています。

その根底にあるのは、非暴力の原則財産権の絶対性です。


🛡️ リバタリアン理論の基本原則:非暴力の絶対性

  • 基本公理: 誰も他者の身体や財産に対して暴力をふるう(攻撃する)ことを脅したり、実行したりしてはならない。暴力は、そのような暴力を犯した者に対してのみ、すなわち防衛的にのみ行使できる。

  • 無辜の第三者への暴力の禁止: 犯罪者(攻撃者)に対する正当な防衛であっても、罪のない第三者の身体や財産を侵害することは断じて許されない。たとえば、盗人を捕まえるために爆弾を投下して無辜の人々を殺傷する行為は、窃盗犯以上の犯罪的侵略行為である。

  • 「私に自由を、さもなくば彼らに死を」: 正当な防衛の最中に無辜の人を殺害し、それを「私に自由を、さもなくば死を」というスローガンで正当化しようとするのは論理的に誤りであり、実際のスローガンは「私に自由を、さもなくば彼らに死を」という、擁護の余地のないものとなる。

  • 戦争の正当性: 暴力の行使が個々の犯罪者に厳密に限定される場合のみ、戦争(広義の紛争)は正当である。


💣 現代兵器と大量殺戮の犯罪性

  • 核兵器の特性: 現代の核兵器や「通常型」の空中爆弾は、無差別大量破壊兵器であり、犯罪者のみを対象とすることができない。これは、弓やライフルといった旧式の兵器との決定的な種類の違いである。

  • 最大の罪: したがって、核兵器や類似の兵器の使用、またはその脅威は、正当化できない人類に対する罪と犯罪である。

  • 軍縮の最優先: 大量殺戮の阻止は、他のいかなる政治的目標よりも重要であり、核軍縮はリバタリアンの最優先課題でなければならない。


⚔️ 国家(State)と戦争の犯罪性

  • 国家の本質: 国家は、特定の地域内で暴力行使の独占を確立した集団であり、特に侵略的暴力(徴税)の独占を通じて財源を得る唯一の組織である。

  • 国家間の戦争(水平的暴力)の性質:

    1. 無差別破壊の必然性: 国家間の戦争は異なる地域間で起こるため、現代兵器の使用が容易になり、無辜の民間人に対する侵略がほぼ不可避となる。

    2. 強制的な資金調達: 私的な紛争や革命は自発的な資金提供で戦えるのに対し、国家間の戦争は常に自国民に対する増税という侵略(課税攻撃)によってのみ遂行される

  • 結論:国家の戦争は常に非難されるべき: 革命や私的な紛争の一部は正当化され得るが、国家間の戦争は常に非難されるべきである。

  • リバタリアンの目的: 既存の国家が個人と財産への侵略を最小限に抑えるよう、国際問題においては戦争を完全に回避し、外交に専念するよう圧力をかけるべきである。

  • 帝国主義: 他国の国民に対する国家Aの侵略(帝国主義)は、本国の納税者を搾取し、被支配国の国民に対する抑圧を悪化させるため、リバタリアンはこれを非難しなければならない。

🚨 戦争と国内の専制

  • 「戦争は国家の健康」: 戦争は、国家がその権力、規模、そして国民に対する絶対的な支配を拡大する最高の機会である。

  • 徴兵制の専制: 徴兵制は、戦争が国家の専制を増長させる最も露骨な方法である。自由を防衛するために、その本質が自由の抹殺と個人の人権の蹂躙にある軍隊に強制的に参加させられるという論理の不条理性が指摘されています。

  • 国家の真の関心: 国家が最も厳しく罰するのは、殺人や窃盗といった市民に対する犯罪ではなく、反逆罪や徴兵忌避など、国家自身の権力に対する脅威である。これは、国家が私人の権利を守るよりも、自身の権力維持に強い関心を持っていることを示している。


    (Geminiを利用)
    War, Peace, and the State | Mises Institute [LINK]

2025-11-27

ロスバードと結社の自由

ルー・ロックウェルにによるこの記事は、リバタリアン経済学者マレー・ロスバードの思想に基づき、「結社の自由(Freedom of Association)」と「差別の禁止」や「優遇措置」といった政府による介入について論じています。

ロスバードの単純な解決策は、自由な社会におけるすべての取引は自発的であるべきというものです。


🏛️ ロスバードの結社の自由の原則

  • 中核となる信条: ロスバードにとって、リバタリアニズムの基本は、すべての人自分の所有物(財産)に誰を入れるか、誰を使うかを選ぶ権利を持つことです。

  • 「差別」の定義: 彼にとって「差別(Discrimination)」とは、個人の基準に基づいて有利または不利に選択する行為であり、それは選択の自由、ひいては自由な社会の不可欠な要素です。

  • 政府の介入の拒否: ロスバードは、人種、性別、宗教に基づいて差別を禁止したり(反差別法)、あるいは特定の集団を優遇したりする(アファーマティブ・アクション/優遇措置)といった、すべての政府による強制的な介入を拒否しました。

💰 経済的コストによる差別への抑止力

  • 市場原理の作用: ロスバードは、ほとんどの人が差別をしないのは、そうすることで経済的コストが発生するためだと考えました。自由市場においては、個人は自分の選択のすべてのコストを自分で負う必要があります。

  • 例:家主の差別: たとえば、家主が「背の高いスウェーデン系アメリカ人」にしかアパートを貸さないと決めれば、その結果として多くのテナントを断ることになり、大きな金銭的損失を被ります。

  • 利益動機: 利益動機は非常に強く、ほとんどの事業主は個人的な意見のために取引を諦めることを望まないため、差別は経済的に不利に働きます。

  • 財産権の優先: たとえ差別的な選択が特定の集団に大きな不利益をもたらすとしても、他者の財産権を侵害する権利は誰にもないとロスバードは主張します。

📜 ジム・クロウ法以前の南部における自由市場の機能

  • 政府介入以前の統合: 記事は、ジム・クロウ法が施行される1890年〜1910年以前のアメリカ南部では、承認された歴史物語とは異なり、数万もの企業(黒人・白人経営問わず)が人種を問わずサービスを提供していたという事実を指摘しています。

  • 市場が勝者を選択: ニューオーリンズの路面電車、チャールストンの劇場など、多くの都市で人種統合された施設が多数派であり、非分離の施設が経済的に優勢でした。

  • ジム・クロウ法は「カルテル強制メカニズム」: この状況が変わったのは、州政府が隔離を義務付ける法律(ジム・クロウ法)を制定した後だけでした。これらの隔離法は、結社の自由と契約の自由への明白な侵害であり、市場の競争に勝てなかった事業主たちが、州に保護されたカルテルを形成するための手段であったと分析されています。

    • 経済的動機: 白人のレストラン経営者が隔離を求めたのは、人種的な嫌悪感からではなく、人種を問わずサービスを提供する競争相手に顧客を奪われていたためです。

    • 統合のコスト増: ジム・クロウ法は、人種統合されたビジネスのコストを体系的に引き上げ、州に保護されたカルテルだけが生き残るように仕向けました。

🤝 結論

ロスバードの教えに従い、著者は優遇措置隔離も、どちらも強制するすべての法律に反対し、真の結社の自由を守るべきだと主張して結論づけています。


(Geminiを利用)
Murray Rothbard on Freedom of Association - LewRockwell [LINK]

2025-11-26

リバタリアンの外交思想

この文章は、故ジャスティン・ライモンド氏の外交政策に関する考え方、特に彼が提唱した「リバタリアン・リアリズム」の理論を概説しています。ライモンド氏は、パット・ブキャナン氏が「我々の国を忌まわしい戦争から遠ざけるという大義に不可欠」と評した人物で、Antiwar.com の共同創設者であり、非介入主義的な右派(オールド・ライト)の擁護者でした。

1. リバタリアン・リアリズムの核心

ライモンド氏の理論は、「国際関係におけるロマンスの排除」を特徴とし、従来の外交政策理論(伝統的リアリズム、リベラリズム、マルクス主義)とは一線を画します。

  • 伝統的リアリズムの否定: 国家が「国益」という凝集した単一の利益を持つという考え方を否定します。国家は、他の勢力とのバランスを取るために動く「客観的な外力」によって強制されるわけではないと主張します。

  • 方法論的個人主義: 外交政策の行動を理解するために、オーストリア学派や公共選択論の経済学者と同じく、方法論的個人主義を採用します。つまり、国家の行動は、その国家を構成する個人(政治家、官僚、ロビー団体)の利益によって突き動かされていると見なします。

2. 外交政策を推進する要因

ライモンド氏によれば、外交政策を動かす主たる要因は、政治家や官僚が権力を維持したいという個人的な欲望です。

  • 権力維持の動機: すべての政治家は、再選や権力の維持を望んでいます。

  • 無関心な一般大衆の隙: 外交政策は一般大衆にとって理解されにくく、優先順位が低いため、組織化された利益団体(エスニック・ロビー、軍事請負業者、内部官僚組織)の影響を受けやすい領域です。

  • 特定の利益団体: これらの利益団体は、金銭的、あるいはイデオロギー的(例:ネオコンのソ連に対する「聖戦」の願望)な動機に基づき、自己の利益となるように外交政策を誘導します。

3. 「誰の利益か?」という問い

リバタリアン・リアリストは、政策立案者が「アメリカ国民の利益のため」だと主張するとき、必ず「誰の利益か?」と問う必要があります。

  • 具体的な事例:

    • ナンシー・ペロシ氏の台湾訪問(2022年): 選挙区の台湾系住民へのアピールという動機。

    • 対キューバ政策: フロリダ州のキューバ系亡命者コミュニティの動機。

    • 対ベネズエラ政策: マルコ・ルビオ上院議員(当時の国務長官)やキューバ亡命者の動機。

4. リバタリアン・リアリストの役割

ライモンド氏が提示するリバタリアン・リアリストの役割は、「外交政策の誰が誰であるか(who’s who)」を特定することです。

  • 具体的な証拠の要求: 曖昧な陰謀論ではなく、「特定の個人、特定の政策結果、および得られた利益の間の因果関係を確立する、具体的な、すなわち証拠を引用することが必要」です。

  • 歴史的教訓: 1920年代から30年代にかけて、第一次世界大戦で利益を得たのがデュポン社、JPモルガン社などの武器製造業者や金融業者、そしてイギリス政府であったように、戦争や介入から誰が利益を得るのかを厳密に調査することが不可欠です。

結論

ライモンド氏の理論は、アメリカだけでなく世界中の国際関係を理解するのに役立つ因果的・現実主義的な分析を提供します。それは、すべての国家が、何よりも権力を望む政治家によって操縦されているという視点であり、提示された外交政策が本当に平均的なアメリカ国民の利益になるのかを批判的に分析するためのツールを提供します。


(Geminiを利用)
Foreign Policy, Justin Raimondo Style | Mises Institute [LINK]

2025-11-25

帝国主義の逆説

ハンス・ヘルマン・ホッペによるこの記事は、国家の本質的な性質と、その対外的な行動、特に戦争と帝国主義の関係について、オーストリア学派の視点から分析したものです。

1. 「国家」の本質:独占的権力と税金

筆者は、国家を以下の2つの特徴を持つ機関として定義します。

  1. 究極的な意思決定(管轄権)の強制的領土独占者: 紛争の究極的な仲裁者であり、自身が関わる紛争も裁定します。

  2. 課税の領土独占者: 法と秩序の提供に対して、国民が支払うべき価格を一方的に決定する機関です。

予測される帰結として、国家にしか裁定を求められない場合、正義は国家に有利なように歪められます。紛争を解決するどころか、独占者は自らの利益のために紛争を引き起こす傾向があります。さらに、正義の質が低下する一方で、課税権を持つ国家機関は、収入を最大化し、生産的な努力を最小化することを目指します。

2. 国家、戦争、帝国主義の関係

国家の対外的な結果に焦点を当てると、以下の傾向が見られます。

  • 集中化と排除的な競争: 課税と法の歪曲を行う機関である国家は、最も生産的な市民が「脱出」して税から逃れる脅威に常に晒されています。国家は、支配と課税基盤の拡大を望むため、他の国家と対立します。異なる国家間の競争は排除的であり、ある領域には究極的な意思決定と課税の独占者は一つしか存在できません。この競争は、政治的な集中化、究極的には単一の世界国家へと向かう傾向を促進します。

  • 本質的な攻撃性: 国家は、税金で賄われた究極的な意思決定の独占者であるため、本質的に攻撃的な機関です。個人の攻撃的な行動とは異なり、国家は攻撃行動のコストを納税者に外部化できるため、挑発者や侵略者になりやすく、集中化のプロセスは国家間の戦争という形で進むことが予想されます。

  • 自由主義のパラドックス: 戦争での勝利は、長期的に見て、国家が自由に使える経済的資源の相対量に依存します。国家は課税と規制によって富を創造するのではなく、既存の富を食い潰します。

    • その結果、経済に対する課税や規制の負担が比較的低い「リベラルな国家」ほど、人口が増え、国内で生産される富が増える傾向にあり、より非リベラルな国家を打ち負かし、自国の領土や覇権的支配の範囲を拡大する傾向があります

    • このパラドックス(逆説)が、西ヨーロッパが世界を支配するようになった理由や、最も自由主義的な国家の一つであったアメリカ合衆国が、最も攻撃的な外交政策を追求してきた理由を説明します。

3. 「民主的平和論」への批判

筆者は、民主主義国家同士は戦争をしないという「民主的平和論」を批判します。

  • ヘゲモニー(覇権)の問題: 民主的平和論者が提示する証拠は、民主主義が平和をもたらすのではなく、米国のような覇権的で帝国主義的な勢力が、その支配下にある国々が互いに戦争するのを許さなかったという事実にすぎません。ソ連支配下の東欧諸国間で戦争がなかったのも、ソ連がそれを許さなかったからです。

  • 民主主義と自由の混同: 民主的平和論は、民主主義と自由(リバティ)を概念的に混同していると指摘します。自由の基礎は私有財産であり、私有財産は民主主義(多数決)とは論理的に両立しません。筆者にとって、「民主主義は共産主義の穏やかな変種」であり、自由とは何の関係もありません。
(Geminiを利用)
The Paradox of Imperialism | Mises Institute [LINK]