2016年9月4日日曜日

テイラー『スタンフォード大学で一番人気の経済学入門・マクロ編』


保護貿易はなぜ誤りか

自由貿易に反対し、保護貿易を主張する言論人は少なくない。普段は意見が対立する保守とリベラルも、そこだけは一致する。しかし保護貿易は誤りだ。著者は保護貿易を支持する意見のおもな根拠を取り上げ、それらを一つずつ論破する。

根拠①「輸入によって国内の仕事が減る」。失業率は景気の変動によって上下するもので、貿易は関係ない。むしろ輸入をやめれば、相手国もこちらの国の製品を買ってくれなくなり、輸出で成り立っていた雇用が減ってしまうだろう。

根拠②「貿易のせいで、豊かな国と貧しい国の格差が広がった」。サハラ以南のアフリカや中国内陸部などの貧しい地域はこれまで貿易にあまり参加してこなかった。貿易のせいで貧しくなったのではなく、貿易をしないから貧しくなった。

根拠③「未成熟な新産業を国外の競争から守れ」。未成熟産業が成長しないままに終わってしまうことも。ブラジルは1970年代、国内のコンピューター産業を守るために輸入を制限。その結果、1980年代の終わりまでに、世界の水準から10年も遅れてしまった。

根拠④「安全保障の面から貿易を制限せよ」。石油が重要な資源なら、なぜ輸入を制限するのか。むしろどんどん輸入して備蓄し、いざというときに備えたほうがいい。輸入を制限し国内資源を使い尽くすことが国防に役立つとは思えない。

著者は「経済のしくみが大きく変化するときには、混乱や痛みがつきもの」と認めたうえで、「しかし全体的な方向性としては、グローバリゼーションによって世界はますます豊かになっていくはずです」と自由貿易の拡大を擁護する。

著者は徹底した自由放任主義者ではない。政府の経済介入を否定するわけではなく、そこには不満を感じる。だが保護貿易は、そのような著者でさえ反対する愚かな政策なのだ。感情的な反グローバリズム本などに惑わされず、せめて本書程度の経済学的な常識をわきまえておきたい。

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