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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2023-04-22

ペトロダラーの終わり、アメリカ帝国の終わり

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年4月17日)

2023年の最も重要な出来事は、ドナルド・トランプ氏らの2024年大統領選立候補やウクライナ戦争とは関係なかったと、未来の歴史家は言うかもしれない。むしろ最も長期の意味を持つ出来事は、主要メディアではほとんど注目されていない、サウジアラビアが石油の支払いに米ドル以外の通貨を受け入れるという動きかもしれない。
ニクソン米大統領は、ドルと金の最後の結びつきを断ち切った後、サウジ政府と交渉した。米国は武器を提供するなどして、サウジ政権を支援する。その代わり、サウジは石油取引をすべてドルで行う。サウジはまた、余ったドルで米国債を購入することにも合意した。この「ペトロダラー」が、ドルが世界の基軸通貨としての地位を維持する大きな理由である。

また今年、中国とブラジルは、今後の貿易をドルではなく自国の通貨で行うことで合意した。ブラジルのルラ大統領は、より多くの国々にドル離れを呼びかけている。

このような脱ドル化の動きは、米国の外交政策、とくに米政府による経済制裁の強化に対する憤りから生じている。ドルを世界の準備通貨の地位から引き下ろすことで、各国はこうした制裁を無視しやすくなる。

脱ドル化は、米政府の30兆ドルを超える債務の管理能力に悪影響を及ぼすだろう。一部の例外を除き、支出削減に対する議会での真の支持はまだない。共和党の指導層は、歳出削減と結びつかない限り、債務上限引き上げを支持しないと言うかもしれない。しかしバイデン政権が、共和党は社会保障とメディケア(高齢者向け公的医療保険)の削減を望んでいると非難して以降、マッカーシー下院議長は、連邦赤字の大きな要因である社会保障とメディケアへの支出削減を「テーブルから外した」と宣言した。同様に、共和党の間で外国への介入主義に懐疑的な意見が増えているにもかかわらず、軍産複合体は議会の指導部とホワイトハウスを目に見える形で掌握し続けている。したがって軍事費の削減は期待できない。むしろ国防総省の予算は増加する可能性が高い。

連邦準備理事会(FRB)は、増え続ける連邦債務を貨幣化し、金利(ひいては連邦政府の借入コスト)を低く維持する圧力に直面し続けるだろう。その結果生じるインフレは、ドルの世界の準備通貨としての地位を終わらせることへの支持を高めるだろう。ドルを放棄する国が増えれば、FRBはハイパーインフレを起こさずに連邦政府の負債を貨幣化することができなくなる。その結果、ドル危機が起こり、世界恐慌よりもひどい経済破綻が起こるだろう。

この危機は、福祉・戦争・不換通貨制度の終焉につながるだろう。歴史的にみると、これはさらに権威主義的な政治運動の台頭につながるが、自由主義思想の人気が高まっていることから、この崩壊は自由主義運動のさらなる成長を促すことにもなる。つまりこの危機は、小さな政府の回復と自由の進展につながる可能性がある。この危機がもたらす機会を最大限に生かすには、私たち(自由主義者)の考えを広め続けることが重要だ。幸いなことに、私たちは多数派である必要はない。自由を取り戻すという大義にこだわる、疲れ知らずで怒りに満ちた少数派がいればそれでよいのである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Will the End of the Petrodollar End the US Empire? [LINK]

2023-04-21

ウクライナに「ふさわしい場所」はNATOと事務総長

ストルテンベルグ氏、ロシア侵攻後に初訪問

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月20日)

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は木曜日(20日)、昨年ロシアが侵攻を開始してから初めてウクライナを訪問し、同国に「ふさわしい場所」は西側軍事同盟であるNATOへの加盟だと宣言した。
「ウクライナにふさわしい場所は欧州・大西洋ファミリーにある。ウクライナにふさわしい場所はNATOにある。時とともに、我々の支援はこれを可能にするのに役立つだろう」。ストルテンベルグ氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との共同会見でこう述べた。

ウクライナは2008年に初めてNATO加盟を約束された。当時のウィリアム・バーンズ駐露米国大使(現米中央情報局=CIA=長官)が、ロシアはウクライナのNATO加盟を「あらゆるレッドライン(超えてはならない一線)のうち最も明白なもの」と見ていると警告したにもかかわらずである。

NATOがウクライナへの支援を大幅に強化したのは、米国が支援した2014年のウクライナでのクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領(当時)が追放された後だ。ストルテンベルグ氏は「長年にわたり、NATO同盟国は数万人のウクライナ兵に訓練を提供してきた」と首都キーフ(キエフ)での会見で述べた。

ロシアのウクライナ侵攻以来、ストルテンベルグ氏はウクライナがいずれ加盟すると繰り返し公言してきたが、同国にその時期が示されたことはない。NATO加盟国の中には、今年7月にリトアニアの首都ビリニュスで開くサミット(首脳会議)で、ウクライナの加盟の可能性について明確な声明を出したいと考えているところもあるが、米国はこの計画に反発していると伝えられている。

ゼレンスキー氏はビリニュス・サミットに招待されており、ストルテンベルグ氏は、ウクライナに対するNATOの支援強化について議論するよう期待していると述べた。同氏は「ゼレンスキー大統領が加盟や安全保障の問題を提起することも認識しており、これは会議の重要な議題になるだろう」と述べた。サミットで何が起ころうとも、NATOはウクライナのために長期の計画を立てている。

ストルテンベルグ氏は、ウクライナの軍隊とNATOの相互運用性を高める「複数年支援構想」をゼレンスキー氏と協議したという。「それはウクライナに対するNATOの長期的なコミットメント(関与)の証だ。NATOは今日も明日も、そして必要な限り、あなた方とともに立っている」とストルテンベルグ氏は述べた。

NATO事務総長のウクライナ訪問は、戦争に終わりが見えない中で行われた。米マサチューセッツ州の空軍州兵ジャック・テシェイラ容疑者がリークしたとされる米国防総省の文書では、米国は今年中に和平交渉が実現するとは考えておらず、ウクライナが反攻を計画しても重要な領土を取り戻すことはできないとしている。

ストルテンベルグ氏は、戦争がいつまで続くかわからないと認めた。「この戦争がいつ終わるかはわからない。しかしロシアの侵略は止めなければならない有害な傾向であることはわかっている」と述べた。

ウクライナに対するNATOの支援は、ロシアが侵攻した主な動機の一つであったため、NATOの計画は戦争を長引かせることになる。ウクライナへの攻撃を開始する前に、ロシアは米国に対し、ウクライナがNATOに加盟することはないという保証を求めたが、バイデン政権はこの問題への関与を拒否した。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は木曜日(20日)、ウクライナのNATO加盟を阻止することがロシアの戦争目標の一つであると再確認した。「もちろん、そうでなければ、わが国の安全保障にとって深刻で重大な脅威となるからだ」と述べた。

In Kyiv, NATO Chief Says Ukraine's 'Rightful Place' Is in the Alliance - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-20

露に関する政治的見解を理由に起訴 米国人4人らを米司法省

アフリカ人民社会党のメンバーが「外国の悪意ある影響力工作」に関与と主張

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月19日)

米司法省は、アフリカ人民社会党・ウフル(自由)運動(APSP)のメンバー3人を含む4人の米国人を、ロシアに関する政治的見解を理由に起訴した。これは合衆国憲法修正第1条の権利(言論の自由)に重大な影響を与える措置である。
申し立てによると、米国人4人はロシアの連邦保安庁(FSB)が指示する「外国の悪意ある影響工作」に関与していたという。司法省はまた、昨年起訴したアレクサンドル・イオノフ容疑者を含む、この事件に関連するロシア人3人を起訴した。

イオノフ容疑者はモスクワ在住で、非政府組織(NGO)「ロシアの反グローバリズム運動」(AGMR)を設立した。司法省の申し立てによると、イオノフ容疑者はAGMRを利用してロシアの 「悪意ある影響力工作」を行い、米国人を勧誘して「ロシアのプロパガンダ」を広めた。起訴状によると、APSPが拠点を置くフロリダ州セントピーターズバーグの2019年の地方選挙にロシア人が関与したという。

「ロシアの外国諜報機関は米国人を分断し、米国内の選挙を妨害するために、憲法修正第1条の権利(ロシアが自国民に否定している自由)を武器にしたとされている」とマシュー・オルセン司法次官補は述べた。

APSPの事務所や自宅は、2022年にAGMRとの関連をめぐって米連邦捜査局(FBI)の家宅捜索を受けたことがある。司法省に起訴されたAPSPのオマリ・イェシテラ党首は家宅捜索の後、自身の党が何十年も世界中の組織と連携してきたことを指摘した。

「1981年にカリフォルニア州オークランドで開催された第1回党大会では、世界中の組織や政府から連帯声明を受け取った」と、イェシテラ党首は2023年3月にアンチウォー・ドット・コムが掲載した記事で書いている。

「この事実は、私たちのロシアのNGOとのつながりは『外国勢力』との不正な関係の証拠だという考えが、誤っていることを示すのに役立つ」と同党首は述べた。

イェシテラ党首は、自分の党がロシアのために働いていることを強く否定しており、その政治的信条を理由に標的にされたようだ。APSPはロシアへの支持を表明し、米国のウクライナへの関与を非難しているが、同党は1972年の結成以来、米国の外交政策に反対の声を上げてきた。

イェシテラ党首は記事の中で、起訴されることを予想しており、政府は外国代理人登録法(FARA)を使って自分と党を追及する可能性が高いと述べている。

「これは差別的な起訴だ。アメリカ・イスラエル公共問題委員会をはじめとするイスラエルのロビー団体は、イスラエル政府の代理人として明らかに公的な機能を果たしているにもかかわらず、FARA法の下では訴追を免れているように見える」と同党首は書いている。

司法省のプレスリリースによると、米国人とロシア人の容疑者らは「共謀し、法律で定められた司法長官への事前通知なしに、米国市民を米国内でロシア政府の違法な代理人として活動させた」罪で起訴されている。有罪になった場合、最高5年の禁固刑に処される。

イェシテラ党首と他の2人の米国人は、「そのような事前通知なしに米国内でロシアの代理人として行動した」罪でも起訴されており、最高刑は懲役10年までとなる。

APSPは、弁護士の助言により起訴について声明を出さず、弁護活動のための寄付を募っているとのことである。

Biden's DOJ Indicts Four Americans for Their Political Views on Russia - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-19

米、対中ハイテク投資を制限へ 大統領令を準備中とメディア報道

この命令は米企業に対し、中国の技術への新たな投資を届け出るよう義務付け、一部の取引を禁止する

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月18日)

(米政治専門サイト)ポリティコが火曜日(18日)に報じたところによると、ホワイトハウスは、中国のハイテク分野への米国の投資を制限するために前例のない行動を取る準備をしているようだ。

この措置は、バイデン大統領が署名する大統領令の形で行われ、米企業は中国のハイテク分野への新たな投資について政府への届出を義務付けられることになる。また、中国のマイクロチップ(小型集積回路)部門に関わる取引など、一部の投資を全面的に禁止することになる。

記事によると、この大統領令は、バイデン政権の一部の高官が、米国の新たな対中投資をどの程度厳しく追及するかで対立していたため、何年もかけて作られたものであるという。

バイデン政権関係者は、中国との経済的な断絶を求めているわけではないと主張し、この制限は、中国の軍事利用が可能な技術に対する米国の投資を防止するためのものだと述べている。しかしこの大統領令は、1979年に米中が正式に関係を樹立して以来、発展してきた両国の貿易関係を大幅に縮小させることになる。

昨年、米政府は中国の半導体産業を衰退させる目的で、半導体とチップ製造装置に対する輸出規制を実施した。米国はまた、高度なチップ製造に必要な技術を輸出しているオランダと日本にも、これに従うよう圧力をかけている。

ポリティコの報道によると、この大統領令は4月末に署名される予定だという。政府関係者はすでに業界団体に命令の内容を説明しているが、詳細はまだ変更される可能性がある。

米政府は対中投資の制限のほか、トランプ政権時代の対中関税を引き上げ、中国企業バイトダンス(字節跳動)が所有する動画共有アプリTikTok(ティックトック)の禁止を検討している。上院に提出された、ティックトックを禁止するための法案とされるものは、商務長官にハイテク企業を取り締まる広範囲な権限を与えるものだ。

Report: Biden Preparing Executive Order to Limit US Investments in China - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-18

米訓練兵200人、台湾に駐留中 台湾メディア報道

米国防総省は報道についてコメントを避けたが、台湾への支持を確約した

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月17日)

米国が200人以上の米軍を台湾に派遣し、台湾における米軍の存在感を大幅に高めていると、台湾英文新聞が月曜日(17日)に報じた。
記事は上報(アップメディア)の取材に応じた情報源を引用し、米インド太平洋軍が200人以上の人員を台湾に配置し、台湾の軍隊を訓練で支援したと伝えた。

また、台湾の通信社である中央通訊社(CNA)は、米軍事顧問が約200人、台湾全土に駐留していると報じた。この配置について確認を求められた米国防総省はコメントを避けたが、台湾への支持を確認した。

「具体的な作戦や関与、訓練についてはコメントしないが、中華人民共和国がもたらす現在の脅威に対して、台湾への支援と台湾との防衛関係が一貫していることを強調したい」と、国防総省の報道官マーティ・マイナーズ中佐は電子メールでアンチウォー・ドット・コムに述べた。

「台湾に対する我々のコミットメント(関与)は揺るぎないものであり、台湾海峡と地域内の平和と安定の維持に寄与している」とマイナーズ氏は付け加えた。

ウォールストリート・ジャーナル紙は2月、米国が台湾に100~200人の部隊を配置する計画だと最初に報じた。米国はこれまで、台湾に約30人の部隊を駐留させていたにすぎない。

1979年に米国が台湾と国交を断絶して以来、米国はなお少数の軍事訓練兵を台湾に配置していた。台湾における米軍の小規模な駐留はつねに公然の秘密だったが、2021年に蔡英文総統が台湾の指導者として初めて、米軍が1979年以来台湾に駐留していることを認めるまで、公式に確認されることはなかった。

北京は米台関係の拡大に強く警告してきたため、在台米軍の増加は中国の反発を招くリスクがある。中国人民解放軍は最近、蔡総統が米カリフォルニア州でケビン・マッカーシー下院議長(共和党、カリフォルニア州)と会談したことを受け、台湾周辺で大規模な実弾演習を実施した。

Report: 200 US Military Trainers are Now in Taiwan - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-17

米精密誘導弾、ウクライナで役に立たず 米国防当局が流出情報を確認

ウクライナ軍が精密誘導弾を正しく装備していないことと、ロシアによるGPS信号の妨害が、米国製の兵器が標的を外す原因となっている

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月16日)

米国防総省の関係者が(米政治専門サイト)ポリティコに語ったところによると、ジャック・テシェイラ容疑者が流出させた文書の情報を裏付けるように、多くの米国製精密誘導爆弾がウクライナで目的を達成できないでいる。

ホワイトハウスは昨年末、JDAM-ER(統合直接攻撃弾の射程延伸装置)をウクライナに送るよう命じた。3月には国防総省がこの兵器の運用開始を確認した。テシェイラ容疑者が流出させた文書は日付がないものの、ウクライナが2月15日と21日にJDAMを発射したことが示されている。

JDAM-ERは無誘導爆弾に取り付ける装置で、武器を射程距離50マイル以上のGPS(全地球測位システム)誘導式の精密爆弾にアップグレードするものだ。

先週、国防総省の極秘文書が明らかにしたところによると、ウクライナの操縦士が発射した9発のJDAMのうち4発が、ロシアのGPS妨害機能により目標を外れたという。同文書によると、M270 (多連装ロケットシステム)やHIMARS (高機動ロケット砲システム)といった他の砲撃システムも、GPS妨害機能を使用するロシア軍によって影響を受けているという。

ロシアの戦術に対して、文書はウクライナ軍が「JDAM-ERの利用前に可能な限り通信妨害装置を破壊または妨害すること」を推奨している。

ウクライナでJDAMの失敗を引き起こす第2の問題は、弾薬の不適切な作動である。ポリティコが匿名の防衛当局者に確認したところによれば、「いくつかのケースで、信管の安全装置が解除されても作動せず、起爆に失敗する原因となった」。同当局者によれば、ウクライナ軍はミスを繰り返さないように安全装置を装着したという。

米国がウクライナに送ったJDAM-ERの数は不明だが、文書には「1000本の兵器用ストラップ」がウクライナに提供され、米国はすぐにもっと送る予定だったと記されている。これは、ホワイトハウスが1000個以上の精密誘導弾の部品をウクライナに送るよう計画していたことを示唆している。

テシェイラ容疑者は先週逮捕され、スパイ防止法で起訴された。21歳の同容疑者は、マサチューセッツ州空軍州兵の一員である。文書を(SNS=交流サイト=の)「ディスコード」に投稿した。

同容疑者が投稿した文書の多くは、ウクライナの軍事能力について厳しい描写をしており、ホワイトハウスが米国民に示した前向きな評価とは矛盾している。投稿した約50の文書は現在公開されているが、ワシントン・ポスト紙はさらに数百の文書を閲覧したと主張している。

Defense Official Confirms Leak: American Smart Bombs Are Failing in Ukraine - News From Antiwar.com [LINK]

2023-04-16

【コラム】停戦呼びかけをあざ笑う人たち

木村 貴

日本の国際政治学者やジャーナリストらが4月5日、東京都内で記者会見し、ロシアによるウクライナ「侵攻」に対して日本が停戦交渉の仲裁国となるよう求める声明を発表した。日本政府に対し、5月に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に際して停戦交渉を呼びかけるよう訴えている。
朝日新聞の報道によると、声明は学者ら約30人が連名で発表。現状では「核兵器使用や原発をめぐる戦闘の恐れ」があると指摘し、「戦争が欧州の外に拡大することは断固防がねばならない」と訴えた。ロシアとウクライナは即時停戦の協議を再開すべきだと訴え、日本政府が中国、インドとともに交渉の仲裁国となるよう求めている。

発起人には、会見に出席した和田春樹氏(東京大学名誉教授)、伊勢崎賢治氏(東京外国語大学名誉教授・元アフガン武装解除日本政府特別代表)、田原総一朗氏(ジャーナリスト)、羽場久美子氏(青山学院大学名誉教授)らのほか、上野千鶴子氏(東京大学名誉教授)、内田樹氏(神戸女学院大学名誉教授、武道家)、金平茂紀氏(ジャーナリスト)、姜尚中氏(東京大学名誉教授)らが名を連ねた

この中には私が以前、国内の政治経済にからんで批判した人もいる。世界平和の基礎となるのは自由貿易と市場経済だが、そのことを理解している人ばかりでもないようだ。しかし今、つべこべ言うつもりはない。政府やマスコミによって無責任な主戦論が喧伝されるなか、この停戦交渉の呼びかけは、それだけで大きな価値がある。

ところがネット上でみる限り、この呼びかけに対するメディアや専門家・言論人の反応は総じて冷たい。国内主要マスコミで会見を取り上げたのは、共同通信の配信とみられる地方紙を除けば、朝日と東京新聞しかない。専門家・言論人に至っては、十分な知識もないまま反発したり、口汚い言葉で罵ったりあざ笑ったりと、さんざんだ。目についたものを紹介しよう。出所はとくに断らない限り、ツイッターである。誤字・誤記はそのまま。

まずは国際政治の専門家以外からいこう。経済学者の池田信夫氏は「G7にウクライナ戦争の当事国はないのだが、『停戦しろ』って頭おかしいのかな…と思って賛同者を見たら、やっぱりいおかしい人々だった」と投稿した。「G7にウクライナ戦争の当事国はない」というが、後述する国際政治学者の東野篤子氏も認めるように、G7はウクライナを「支援」しているのだから、立派な当事国だ。経済問題に関する悪口はさえている池田氏も、この悪口は「おかしい」。

経済評論家の上念司氏は「この停戦案はウクライナの負担が重すぎる。どっちに肩入れしてるかバレバレです」と書いた。日々多数の人々が戦火で命を落とすなか、即時停戦しても「負担が重すぎる」とは思えないが、かりに第三者にはそう見えても、実際に判断するのはウクライナの人々自身である。停戦は双方の合意によって成立するのだから、もしウクライナ側が「負担が重すぎる」と感じるのであれば、条件交渉すればいい。それが外交というものだ。上念氏がウクライナをそのテーブルに着かせようとさえしないのは、戦争を終わらせたくない勢力に「肩入れ」しているように見える。
今回の戦争に関する議論の特徴は、もともと反戦平和に熱心だったはずの左派言論人が即時停戦に消極的で、人によっては積極的に反対までしていることだ。ジャーナリストの布施祐仁氏は「私も一刻も早い停戦を望む」としながらも、「そのために必要なのはロシアがウクライナ領土の一方的併合を撤回すること」と述べる。そんなことを待っていたのでは、「一刻も早い」どころか、いつまでたっても停戦などできはしない。その間、人は死ぬ。

大手メディアはことあるごとに、ロシアによる南部クリミア半島や東部ドンバス地方の編入を「一方的併合」と言い立てる。布施氏も同じ考えをしているようだ。しかし周知のように、編入の際にクリミアやドンバスでは住民投票が実施され、圧倒的多数の支持を受けて編入が行われている。「一方的」というのは事実に反する。

2022年9月、ドンバス地方のドネツク人民共和国(ドネツク州)で現地取材したカナダ人ジャーナリストのエバ・バートレット氏によると、住民は2014年の内戦開始以来、ウクライナ軍の攻撃に疲れて平和を望み、ロシアに入ればそれが実現すると思っている。多くの市民が投票を確実に進めるためにボランティアとして参加した。西側メディアが主張するようにロシアに銃を突きつけられて投票したのではなく、とうとう投票できたと喜んだ。投票所では外国人を含むオブザーバーが投票手続きを監視した

編入後、クリミアやドンバスの復興が進んでいるという情報はあっても、住民がロシアの弾圧に苦しみ、離脱を望んでいるという話は聞かない。それでもロシアによる「一方的併合」だと信じるのなら、なすべきことはその「撤回」ではない。現地の人々の声を聞き、真偽を確かめることだ。防衛問題について鋭い取材をしてきた布施氏の報告をぜひ読んでみたい。

天皇問題について有益なツイートの多い弁護士の堀新氏は、「停戦すれば単にロシアが占領した状態が既成事実化するだけで、第三者の介入や監視の余地はないのでは」と述べる。「ロシアが占領した」地域がクリミアやドンバスを指すのであれば、すでに述べたとおり、ロシアが手放すはずはないし、手放させる正当な理由もない。クリミアやドンバスを「自称」独立国としてウクライナから分離させたのは国際法違反だと欧米は主張するが、欧米自身、旧ユーゴスラビア紛争の際、セルビアの一部であるコソボを分離させ、国連安全保障理事会が認めないままにその独立を認めており、天につばするようなものだ。

いずれにせよ、領土の現状を「既成事実」として認めるかどうかはロシアとウクライナの協議次第だ。国連など「第三者」の関与は、常識的に不可欠だし、無理だとも思えない。昨春合意に一時近づいたイスタンブールでの停戦協議で、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する見返りとして、中国や米国を含む国連安保理常任理事国などによる安全保障の担保を求めた。

政治学者の五野井郁夫氏は、「今回ウクライナに対して事実上『クリミア他の占領地域をロシアに差し出せ』と迫った日本の有識者たちは、なぜ力による現状変更が国際法違反であり、力による変更の容認がロシアを利することとなり、何よりも抗戦の意思を示しているウクライナ市民を愚弄する発言であることに気が付かないのでしょうか?」と憤る。クリミアなどの編入が住民の支持を得ており、「力による現状変更」といえないことはすでに述べた。「抗戦の意思を示しているウクライナ市民」というが、クリミアやドンバスのロシア系住民は五野井氏からみればウクライナ市民のはずで、彼らはロシアに対し「抗戦の意思」など示していない。むしろロシアに編入されて喜んでいる。

2023-04-14

米機密文書流出、21歳の空軍州兵を逮捕

NYタイムズ紙は、FBIの逮捕前に容疑者の名前を挙げた

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月13日)

米連邦捜査局(FBI)は13日、ペンタゴン(国防総省)をはじめとする米政府機関の機密文書をネット上に流出させた犯人として、マサチューセッツ州空軍州兵の21歳の隊員を逮捕した。
ジャック・テシェイラ容疑者の名前は、逮捕前にニューヨーク・タイムズ紙が初めて漏洩犯の可能性があるとして挙げたものだ。同紙は、欧州連合(EU)が資金を提供し、米情報当局がしばしば賞賛するウェブサイト「べリングキャット」と調査を行い、漏洩者を特定した。

タイムズ紙の報道によると、同紙はテシェイラ容疑者について米政府関係者と話し合い、FBIが同容疑者の名前を公表する前にコメントを求めたという。

「本日司法省は、機密扱いの国防情報を移動、保持、送信した疑いの捜査に関連して、ジャック・ダグラス・テシェイラを逮捕した。テシェイラは州空軍州兵の職員である」とメリック・ガーランド司法長官は逮捕後に述べている。

テシェイラ容疑者はマサチューセッツ州空軍の情報部門に所属しているが、この若い航空兵がなぜこれほど多くの最高機密文書にアクセスできたのかは明らかではない。タイムズ紙によると、同容疑者は昨年7月、兵として下から3階級目の一等空兵に昇進した。

テシェイラ容疑者は、ケープコッドの基地にあるマサチューセッツ州空軍の第102情報飛行隊に勤務していた。職種は、通信機器の修理を行うサイバー・トランスポート・システムズ・ジャーニーマンだった。

テシェイラ容疑者は、主にゲーマーが使用するメッセージプラットフォームである「ディスコード」のサーバーに文書を投稿したことで非難されている。彼が文書を送信していたチャットは非公開で、メンバーは約25人、若い男性や10代の少年のグループだった。

ディスコードのメンバーの1人が、3月に他のチャットルームで文書を公開し始めたとされ、最終的に文書はタイムズ紙に発見された。ワシントン・ポスト紙によると、テシェイラ容疑者が投稿したとされる文書の写真は300枚にのぼるという。

ディスコードのメンバーでタイムズ紙の取材に応じた17歳の女性は、文書を流出させたとされる同容疑者について、「反戦派」の「キリスト教徒」で、「何が起こっているのかを友人の何人かに知らせたかった」だけだと説明している。

Twenty-One-Year-Old Air National Guardsman Arrested as Suspected Leaker - News From Antiwar.com [LINK]

<関連コメント>
スノーデン氏アサンジ氏のように、政府による権利侵害を暴く機密文書をリークした人は皆、勲章を与えられるべき英雄だ。(米リバタリアン党)

2023-04-13

ウクライナ政府関係者、米援助を横領か

アンチウォー・ドット・コム
(2023年4月12日)

調査ジャーナリストであるセイモア・ハーシュ氏は水曜日(4月12日)、米中央情報局(CIA)がウクライナの広範な汚職と米国からの援助の横領を認識していたとする記事を(メルマガサービスの)サブスタックで発表した。
記事によると、ウクライナ政府は米国の税金を使ってロシアからディーゼルを購入し、軍に燃料を供給している。ハーシュ氏は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領が「自国と米国が戦争状態にあるロシアから燃料を購入し、側近の多くとともに、ディーゼル燃料の支払いに充てられた米ドルから数百万ドルもの金をくすねてきた」と述べた。

ハーシュ氏の記事で、CIAのアナリストによるある推定によれば、少なくとも4億ドルの資金が昨年横領された。情報筋はハーシュ氏に、ウクライナ政府関係者は「競い合って」、世界中の民間武器商人と輸出契約を結ぶためのフロント企業を設立しているとも述べた。

汚職の問題は、1月に行われたウィリアム・バーンズCIA長官とゼレンスキー大統領との会談の際に提起された。この会談を直接知る情報機関関係者はハーシュ氏に、バーンズ氏がゼレンスキー氏に驚くべきメッセージを伝えたと語った。

ハーシュ氏はこう書いている。「ウクライナの上級将官や政府高官はゼレンスキー氏の強欲ぶりに怒りを覚えていると、バーンズ氏はゼレンスキー大統領に告げた。 というのも『ゼレンスキー氏は将軍たちに行くよりも不正受給の分け前を多く取っていた』からである」

会談の中でバーンズ氏は、CIAに汚職が知られている35人の将軍と政府高官のリストをゼレンスキー氏に提示した。これに対してゼレンスキー氏は、明らかな汚職に手を染めていた10人の官僚を解任した。「ゼレンスキー氏が解任した10人は、新車のメルセデスでキエフを走り回り、持っている金を堂々と自慢していた」と諜報部員は語った。

ハーシュ氏によれば、ゼレンスキー氏の「中途半端な対応」とホワイトハウスの「関心のなさ」が米情報当局者を怒らせた。ハーシュ氏に語った情報当局者は、バイデン大統領の二大外交政策顧問であるアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)を批判した。

「彼らは経験も判断力も道徳的誠実さもない。ただ嘘をつき、話をでっち上げるだけだ。外交的否認とは別のものだ」とこの当局者は語り、「ホワイトハウスの指導部と情報機関の間に完全な断絶があった」と述べた。

記事によると、この亀裂は秋にノルドストリーム天然ガスパイプラインが爆破されたときに始まったという。ハーシュ氏の以前の報道によると、パイプラインを破壊する作戦を命じたのはバイデン大統領だった。「ノルドストリームのパイプラインを破壊することは、(情報活動)コミュニティーで議論されたこともなければ、事前に知らされたこともない」と当局者は述べた。

この当局者は、バイデン政権内には「戦争を終わらせるための戦略がない」と述べ、ブリンケン氏とサリバン氏に対してさらに痛烈な批判を展開した。

「バーンズ氏は大した問題ではない」と当局者は言った。「問題はバイデン氏とその主な副官であるブリンケン氏とサリバン氏、そしてその崇拝者たちの集まりで、ゼレンスキー氏を批判する人たちを親プーチン(露大統領)とみなしている。『私たちは悪に対抗している。ウクライナは最後の砲弾がなくなるまで戦うだろう』。そしてバイデン氏といえば、米国民に対し、必要な限り戦うつもりだと言っているのだ」

ハーシュ氏の記事は、ペンタゴン(米国防総省)やその他の政府機関から流出した一連の極秘文書がネット上で表面化した後に発表された。文書の中には、米国によるウクライナの戦争計画を示し、反攻を成功させるウクライナの能力を疑っていることを明らかにしたものもあり、ウクライナの能力についてバイデン政権当局者が公言してきたものとは、まったく異なる見解が示されている。

Seymour Hersh: the CIA Knows Ukrainian Officials Are Skimming US Aid - News From Antiwar.com [LINK]

豪議員、アサンジ氏の引き渡し断念求める

英ガーディアン紙
(2023年4 月11日)

48人の下院議員と上院議員が公開書簡で、(内部告発サイト)ウィキリークス創設者の追及は「危険な前例となる」と「最も親密な戦略的同盟国」に警告している。

オーストラリアの政治家たちは政治的党派を超えて、メリック・ガーランド米司法長官に対し、英国からジュリアン・アサンジ氏を引き渡させようとする試みを断念するよう要請した。
政権与党である労働党の13人を含む48人の下院議員および上院議員は、ウィキリークスの創設者を追及することは、報道の自由にとって「危険な前例となり」、米国の評判を傷つけることになると警告した。

豪国籍のアサンジ氏は、ロンドンのベルマーシュ刑務所に留置されている。アフガニスタン戦争とイラク戦争に関する数十万件の文書や外交公電の公開に関連し、米国が同氏の身柄を引き渡させ、罪に問おうとする動きに抵抗している。

労働党、保守連合、緑の党、無所属の政治家たちは、火曜日(4月11日)に発表した公開書簡の中で、ガーランド長官に対し「引き渡し手続きを取り下げ、アサンジ氏の帰国を許可する」よう求めた。

「もし引き渡し要求が承認されれば、豪国民は(米英豪の安全保障の取り組み)「AUKUS(オーカス)」の同盟国から別の同盟国(最も親密な戦略的同盟国)への国民の一人の強制送還を目撃することになり、アサンジ氏は残りの人生を刑務所で過ごすことになる」と手紙は述べている。

「これはすべての世界市民、ジャーナリスト、出版者、報道機関、報道の自由にとって危険な前例となるだろう。また、表現の自由と法の支配に関する世界の指導者である米国にとっても、無用なダメージを与えることになる」と述べている。

書簡によると、スパイ活動法に基づく17件とコンピューター不正使用法に基づく1件を含む罪状は、「戦争犯罪、汚職、人権侵害の証拠となる」情報を公表したアサンジ氏の「ジャーナリストおよび出版者としての」行為に関わるものである。

上下両院の議員は、アサンジ氏を現在も追っていることと、元米軍情報分析官チェルシー・マニング氏の場合を対比している。マニング氏はバラク・オバマ元米大統領が情報漏洩の罪による35年の軍事刑務所の刑を減刑し、2017年に釈放された。

書簡は、アサンジ氏(当初はロンドンのエクアドル大使館に避難していた)が「何らかの形で10年以上にわたって事実上投獄されているが、機密情報を漏らした人物は減刑され、2017年に米社会に参加できるようになった」と述べる。

この書簡を発案したのは、「ジュリアン・アサンジの議会友人グループ」の共同議長を務める無所属議員のアンドリュー・ウィルキー氏である。アサンジ氏がベルマーシュ刑務所に収容されてから4周年にあたる。

ウィルキー氏によると、豪州の48人の連邦議会議員は「世界中の議会議員からの同様の書簡と協調して」行動しており、合わせて数百万人の有権者を代表している。

ウィルキー氏は述べる。「これは小さな問題ではなく、却下されてはならない。政治的関心の高まりが党派を超え、多様な理由に基づいていることも無視してはならない」

アサンジ氏の父親であるジョン・シプトン氏は、息子は「恥辱と不名誉のどん底」の中で生きてきたと語った。

シプトン氏は、新任の豪駐英高等弁務官であるスティーブン・スミス氏が先週ベルマーシュ刑務所を訪問したことは、「真実へのこの殺伐とした厳しい冷淡さと、ジュリアン・アサンジの破滅の終わりの始まり」だと述べた。

アサンジ解放運動の法律顧問であるグレッグ・バーンズ事務局長は、米国がアサンジ氏を起訴しようとすることは「危険」であり、「世界中のどこのジャーナリストや出版社も、米政府が知られたくない資料を暴露したことで米国への送還に直面しうる」ことを意味すると語った。

ペニー・ウォン豪外相は先月末、外交で達成できることには限界があると警告した。

しかし同外相は、豪州は米英両政府に対し、アサンジ氏に対する訴訟は「十分に長引いたので、終結させるべきだ」という見解を表明し続けるだろうと述べた。

火曜日の書簡に署名した労働党議員は、ミシェル・アナンダ・ラジャ、マイク・フリーランダー、ジュリアン・ヒル、ピーター・カリル、タニア・ローレンス、ザネタ・マスカレンハス、ブライアン・ミッチェル、アリシア・ペイン、グラハム・ペレット、スーザン・テンプルマン、マリア・バンバキヌ、ジョシュ・ウィルソン、トニー・ザピア各氏の計13名である。

保守連合の署名者の中で最も注目されたのは、バーナビー・ジョイス元副首相とブリジット・アーチャー下院議員(バス選出)である。

緑の党の指導者であるアダム・バント下院議員は、多くの党員とともに署名し、無所属の下院議員や上院議員も多く署名している。

豪首都キャンベラの米国大使館にコメントを求めたが、ホワイトハウスは以前、アサンジ氏の訴訟について聞かれた際、ジョー・バイデン大統領は「司法省の独立を守る」と述べている。

Dozens of Australian politicians urge US to abandon Julian Assange extradition | Julian Assange | The Guardian [LINK]

中東の平和、米国の苛立ち

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年4月10日)

現在進行中のロシアとウクライナの戦争と、この戦争への米国の関与増大に気を取られているうちに、中東で大きな進展があり、米国がこの地域に介入してきた数十年の歴史に終止符が打たれた。中東に平和が訪れようとしているが、米政府はこれをまったく喜ばない。
たとえば、サウジアラビアと、かつて敵対していたイランやシリアとの関係が最近修復されつつある。中国が仲介したサウジとイランの取引により、両国の外相が先週北京で会談し、完全な国交を再開した。両国の外相会談は、この7年間で最高レベルのものである。

さらに、サウジはシリアをアラブ連盟に復帰させる見込みで、シリアのアサド大統領が次のアラブ連盟首脳会議に出席する可能性もある。シリアがアラブ連盟から外されたのは12年前、当時の米国の中東における同盟国が、地域全体に大混乱をもたらした米国の「アサドは去れ」政策に署名したときだった。

また、10年近く続いたイエメンでの戦争は、その住民に壊滅的な打撃を与えたが、やっと終わりそうだ。サウジが米国に支援されたその戦争の終結を発表する見込みである。アラブ首長国連邦(UAE)の軍隊がイエメンを離れ、サウジの代表団が和平交渉のために到着している。

普通の人々にとって、中東に平和が訪れるということはすばらしいことだ。しかし米政府は普通ではない。バイデン大統領は先週、中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ長官をサウジに派遣し、突然の訪問を行わせた。報道によると、バーンズ氏は和平交渉が成立したことに対する米国の驚きと苛立ちを表明するために派遣されたという。バイデン氏の外交政策チームは、サウジが近隣諸国と仲良くしようと突然動き出したことに「不意打ちを食らった感じ」だという。

サウジがシリアやイランと取引を始めることに米国が怒っているのは、この両国がまだ米国による「重大な障害を与える」制裁下にあるからだ。米国が要求した制裁を無視する国が次々と現れ、米国の外交政策全体が、威勢と脅しだけの張り子の虎であることが露呈しつつある。

中東情勢は、米国の外交政策に関する汚い秘密を明らかにした。米政府は長い間、「分割統治」戦略を用いて、中東やその他の国々を互いにいがみ合わせてきた。制裁、秘密工作、カラー革命はすべて、これらの国々が互いにうまくいかないように、そして誰が主導権を握っているかを確認するために使われてきた。

ありえないことだと思う人もいるかもしれないが、中国がこの地域に進出し、異なる政策をとっている。中国はビジネスパートナーを求めているのであって、中東の内政を操作するつもりはない。中国は中国なりに非情かもしれないが、この地域の国々が米国の干渉に疲れ、新たなパートナーを探していることは、突然明らかになった。

私たち非介入主義者はしばしば、「孤立主義者」として攻撃されるが、私がいつも言っているように、米国を世界から孤立させているのは、政府のネオコン(新保守主義者)と介入主義者である。それが最近中東で顕著に表れている。このような事態になる必要はなかったのだが、もしこれで米国が中東問題に干渉することがなくなるのであれば、結局は米国民にとって、そして平和にとって、良いことである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Peace is Breaking Out in the Middle East…and Washington is Not Happy! [LINK]

2023-04-12

ひそかに増大する米傭兵

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年3月31日)

海外のいわゆる紛争地帯に配置された米軍兵士に関する公式データが、実際の数を過小評価している可能性があることが次第に明らかになってきた。同様に、現役軍人の死傷者は、過去20年間の米国のさまざまな海外聖戦で被った米国人の死者のほんの一部にすぎない。
統計的なごまかしの主な原因は、先週シリア東部の連合軍基地で米軍を標的にしたドローン攻撃で死亡した1人のように、ペンタゴン(米国防総省)が「民間請負業者」の利用を増やしていることだ。1月の議会調査局(CRS)によると、2022年末時点で、中央軍の責任範囲全体で国防総省のために働く請負業者社員は約2万2000人で、イラクとシリアにいる社員は7908人だと報告されている。

この言葉が使われるのを聞くと、ほとんどの人は、関係者が軍に食料、輸送、その他のサービスを提供する支援要員であると考える。そのとおりである。しかし多くの場合、請負業者は武装した警備の代わりをしており、言ってみれば傭兵であり、米軍の正式な一員である部隊と同様の割合で犠牲者を出すことがある。

2017年、北大西洋条約機構(NATO)の「確固たる支援任務(RSM)」およびアフガニスタン米軍司令官(当時)のジョン・ニコルソン陸軍大将は、上院軍事委員会で、国防総省はアフガンで「兵力配置レベルを満たすために、契約者を兵士に代える」必要があると述べた。2018年10月現在、アフガンには2万5000人以上の請負業者がいた。そのうち、アフガンでの民間警備請負業者は4172人で、2397人が武装民間警備請負業者に分類される。

請負業者利用のピークはもちろんグローバルな対テロ戦争時で、イラクとアフガンの戦時契約に関する委員会は2011年の最終報告書で、国防総省、国務省、国際開発庁(USAID)による軍事請負業者への「不健康な過剰依存」があったと述べている。

近年の武装請負業者の正確な数を特定するのは難しい。公式には少ないようだ。2021年2月の報告では、2020年末にアフガンにいた2万7338人の請負業者のうち、武装した(非武装でない)警備請負業者は1413人、イラクとシリアの間の(非武装の)民間警備業者は96人と報告されている。

しかし2023年のCRSによれば、「イラクとシリアで国防総省のために働く警備請負人の数は、さまざまな要因によって、時間の経過とともに大きく変動している。2022年度第4四半期の時点で、国防総省はイラクとシリアで941人の警備請負業者を報告しているが、その中に武装警備請負業者と特定された者はいなかった」という。

しかし2022年4月、国防総省は、イラクとシリアにいる当時の軍事請負業者6670人のうち、596人が訓練と警備に指定されているという数字を発表した。

ペンタゴンの請負業者の多くは、直接戦闘を行わないことになっているが、現代のヘッセン兵(18世紀に欧州主要国が雇っていたドイツの傭兵)にすぎない。英国は、アメリカ植民地の独立を阻止するために、これらの傭兵を利用した。実際、ジョージ・ワシントン軍は、1776年のクリスマスの奇襲攻撃でトレントンとプリンストンを占領した際に、900人以上のヘッセン兵を捕獲している。

現代では、アフガンとイラクの戦争でブラックウォーター社が重要な請負業者として登場し、ペンタゴンの戦略における新たな重要な要素を浮き彫りにした。ブラックウォーターは、1996年12月下旬に元海軍特殊部隊のエリック・プリンス氏によって設立され、その後、何度か社名を変更し、最近ではコンステリスとなった。しかし基本的なビジネスモデルはそのままであり、そのモデルは模倣者を引きつけている。2020年に発表された同社関係者の証言は、同社関係者が米軍にのみ支援サービスを提供しているという幻想を打ち砕くものである。

戦闘状態にある請負業者には、そのような役割のリスクが高まっている。ブラウン大学ワトソン研究所の計算では、2021年9月1日現在、イラクで死亡した米兵は4898人である。請負業者の死者数は3650人とわずかな差だ。アフガンでは、2021年8月に米軍が撤退した時点で、米国の「民間」請負業者による死亡の怪しさがより鮮明になっていた。米政府は、20年にわたる介入期間中に、3846人の請負業者に対し、2448人の米軍兵士が死亡したことを認めた。ワトソン研究所の分析では、請負業者の死亡者数は3917人とされている。

2021年末、戦略国際問題研究所(CSIS)のアナリストは、9・11テロ以降のさまざまな紛争で、米軍兵士よりも多くの請負業者(約8000人)が死亡していると指摘した。請負業者が戦闘行為に何らかのレベルで深く関与していなければ、このような結果はありえない。

ペンタゴンのシリアでの戦略も、請負業者を可能な限り活用することに基づいているようだ。米国がシリアに派遣している部隊は、公式には約500人だが、最近の報道では900人以上とされている。しかし知る人ぞ知る、2017年のジェームズ・ジャラード元帥の不用意なコメントでは、シリアにいる米軍兵士の実際の数はつねに4000人に近いと示唆されている。ジャラード氏は、そのような告白が当時の国防総省の公式見解と矛盾していたにもかかわらず、ワシントンの請負業者の幹部もその合計に含めていたようだ。

国防総省に対し、現在シリアにいる武装した、あるいはそうでない軍事請負業者の数を確認するコメントを求めたが、回答はなかった。

3月23日のシリア東部の米軍標的への無人機攻撃は、米軍契約者1人を殺害し、もう1人(および5人の軍属)を負傷させたが、シリアにおける米国の招かれざる存在の実際の範囲(および危険性)を改めて垣間見ることができただろう。国防総省の請負業者の利用は、米国が不必要で血なまぐさい、道徳的に疑わしい武力紛争に巻き込まれる範囲を隠す便利な煙幕になっている。

私たちは今、ウクライナの対ロシア戦争に対する米国の支援に関して、その状況が現れているのを目の当たりにしているのかもしれない。元国家安全保障会議スタッフのアレクサンダー・ビンドマン氏は、ドナルド・トランプ前大統領に対する最初の弾劾手続きを担当したことで有名だが、破損した兵器システムを修理するウクライナの努力を支援するために軍事請負業者を派遣するよう、米政府を公然と後押ししている。CSISはすでに2022年5月に、米国の「戦場請負業者」を派遣する同様の動きを提案している。このような支援から、いわゆる請負業者による直接戦闘の役割に移行するのに、劇的な発展は必要ないだろう。

米国の指導者は、アフガン、イラク、シリアの問題に干渉したときよりもさらに危険なリスクをちらつかせている。ウクライナに米国の傭兵が存在すれば、ロシアと直接衝突することになりかねないからである。議会も米国民も、すべての戦闘地域における米政府のヘッセン兵の役割について、もっと透明性を高めるよう要求しなければならない。

Syria episode shows how contractors still used to fight America's wars - Responsible Statecraft [LINK]

2023-04-11

中国と戦争するのはやめよう

作家、シェルドン・リッチマン
(2023年4月7日)

パワーエリートを恐怖に陥れる言葉は、中国である。それは存亡の危機に対する恐怖ではなく、むしろ米国が世界政治において二の次になりつつあることへの恐怖である。その結果、中国との戦争は避けられないと信じている、あるいは信じていると言う人もいる。彼らにとって、それは好都合なことなのだ。
ここで提案したい。中国と戦争するのはやめよう。中国は米国ほどではないが、核爆弾を持っている。中国の人々にとっても、米国の人々にとっても、ほとんどすべての人にとっても、戦争は良い結果をもたらさないだろう。例外は中央集権的で権威主義的な権力を擁護する人々や軍産複合体であり、彼らは山賊や殺人者のように儲けるだろう。

中国を敵(または敵対者)とみなすか、競争相手とみなすかという狭い選択は、インチキである。どちらでもないのだ。中国はたくさんの人がいる国だ。たしかに、悪い中央集権政府があり、ある意味、国民に何をすべきか指示している。しかし「我々の」敵でも、「我々の」競争相手でもない。米国人が中国で組み立てられた商品(部品は他の多くの場所で作られるが)を買うとき、少なくとも間接的には、企業としてともに行動する中国人個人と協力している。米国の消費者は、中国の製造業者と競争することはない。米国の会社が作る製品を中国の会社も作って輸出するのであれば競争だが、それは中国の会社との競争であって、中国という国との競争ではない。

世界経済を国家間の競争と考えるのはやめなければならない。そのような態度が、関税や割当など、自由を制限することにつながっている。米政府を含む多くの政府の干渉にもかかわらず、私たちには世界市場があり、それは世界的な分業、つまり協力関係を意味する。

個人の自由を重んじる人は、中国政府の下で暮らしたいとは思わないだろう。政治的自由は存在せず、経済の自由化も制限されている。さらに、中国政府は一つまたは複数の集団を奴隷化していると報じられている。それが事実かどうか、私にはわからない。しかし戦争の理由にはならない。それが核兵器による戦争であれ、通常兵器による戦争であれ。

中国政府はもちろん、米政府と同じように近隣の安全保障に気を配っている。ただし、米政府は全世界を近隣とみなしている。米政府が台湾と戦争演習を行うことは、決して良いことではない。中国が標的なのだ。中国は米国をスパイしているのだろうが、最近の暴露からわかるように、米政府はすべての人をスパイしている。それが大国(と小国)のすることなのだ。秘密はうまく隠そう。

台湾をめぐる紛争の是非はともかく、米政府には関係ないことだ。米国の安全保障のために行動しているという政府の主張は、連邦準備理事会(FRB)が米国の銀行システムの健全性を宣言するのと同じくらいしか信じられない。台湾、香港、南シナ海の小さな島々は、私たちの関心事ではない。自分の自由と繁栄に関心があるならそうだし、世界の他の地域の自由と繁栄にも関心があるなら、なおさらだ。言うまでもなく、まともな人々は、地域のすべての人々の生命、自由、幸福を追求する自由を願うだろうが、戦争がそれらをもたらすことはない。

中国への懸念は、当然ながら他の問題にも影響を及ぼす。最新のものは、1億5000万人の米国人が利用するTikTok(ティックトック)というソーシャルネットワーキングである。ジョー・バイデン米大統領や議会の共和・民主両党(ランド・ポール上院議員のような立派な例外を除く)は、ティックトックが中国企業によって所有されており、中国政府が米国人の情報を収集するために使用している、あるいは使用する可能性があると主張し、禁止しようとしている。ティックトックの最高経営責任者(CEO)は中国人ではなく(周受資CEOはシンガポール人)、米国人パートナーもいるため、これを否定している。

皮肉なことに中国政府は、共産党が自国民に学ばせたくないことを学ばせないために、ソーシャルネットワークを禁止・制限していることで悪名高い。つまり米政府にティックトックを禁止・妨害させようとする人たちは、米政府が中国共産党のような存在になることを望んでいるのだ。意味がわからない。

周知のように米政府は、米国民に知られたくない情報や意見を禁止・制限するよう、米ソーシャルネットワークに日々圧力をかけている。この政府にさらに大きな力を与えようというのだろうか。米議員ならやりかねない。保留中の法案(RESTRICT法)は、不吉なほど広範で曖昧に定義された権限を商務長官に与え、あらゆるソーシャルネットワークを妨害し、「外国」の影響から私たちを守るとされる。それが良い考えでないことはおわかりだろう。この点に関する政府のこれまでの記録は、憂慮すべきものだ。政府と関係のある組織や個人はソーシャルネットワーク上での自由な意見交換を妨害し、意見の発信源は外国の敵対勢力だと主張してきたが、実際の発信源は米国人だった。「ハミルトン68」(訳注・ロシアの工作員が暗躍しているという偽情報を流してきたシンクタンク)に関するツイッター文書が明らかにしたとおりだ。

最後に、中国はイランとサウジアラビアの外交関係の再開を促し、皆を驚かせた。これはいくつかの理由から好ましい。 まず、米国が世界の守護神を自任する役割が弱まることを示唆する。イエメンの人々に対するサウジアラビアの残虐な戦争が正式に終結することも期待したい。また、米・イスラエル政府によるイランとの戦争やイランの屈服という野望を阻止し、米国の武器商人であるドナルド・トランプの下で始まったアブラハム合意(イランに対する統一戦線とパレスチナのさらなる疎外を目的とする協定)の追求を弱体化させるはずだ。イスラエルと米政府は、サウジがこのような協定に署名することを望んできた(バイデン米大統領はなぜ、昔の上司であるオバマ元大統領が署名したイランとの核合意を復活させ、イラン国民に対する残酷な制裁を終わらせないのだろうか)。

中国がサウジやイランの石油を買い、両国との商業関係を途切れさせないよう望んでいるため、中国の中東外交を露骨な利己心とみなす論客がいると聞いたことがある。しかし、もし中国の利己心が戦争の代わりに外交を行うことにあるのなら、何が悪いのだろうか。合理的な利己心は欠陥ではなく、利点である。中国がウクライナとロシアに対して同じようなこと(和平調停)をするかもしれない兆候はある(バイデン氏でなく、ゼレンスキー・ウクライナ大統領は興味があると言っている)。停戦はもっと早く準備されていたはずだ。

米国という国家は長い間、世界の混乱、悲惨、戦争を引き起こす力となってきた。経済制裁、体制転換、ひそかなあるいは露骨な戦争など、その度重なるいじめは、「例外的な国家」の支配にうんざりしている世界の多くの人々をますますうんざりさせている。遅かれ早かれ、そうならざるをえなかった。米政府は世界秩序を設計することはできない。帝国を清算して帰国するときが来たのだ。帝国は外国人に害を及ぼすだけでなく、米国人を不自由で貧しくしてしまう。

TGIF: Let's NOT Go to War with China | The Libertarian Institute [LINK]

2023-04-10

【コラム】偽りの聖地

木村 貴

岸田文雄首相は3月21日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を「電撃」訪問しゼレンスキー大統領と会談した。戦闘が続く国・地域を日本の首相が訪問するのは第2次世界大戦後初めてだ。主要7カ国(G7)の議長としてウクライナへの「揺るぎない連帯」を強調し、殺傷能力のない装備品の提供へ3000万ドル(40億円程度)の拠出を表明した
首相は会談に先立ち、「400人超の民間人が殺害されたとされる」(ロイター通信)キエフ近郊のブチャを訪れ献花し、黙祷を捧げた。首相は、1年前にブチャで起きたことに「世界中が驚愕した」とし、犠牲者や負傷者に「日本国民を代表し、心からお悔みを申し上げる」と述べた。

日本経済新聞の3月31日記事(「『許せない』 岸田首相はブチャでそう呟いた 検証・ウクライナ訪問」)によると、首相がウクライナ到着後、真っ先にブチャに向かった背景には、罪のない多くの命がロシアによって奪われたこの地には「被爆地・広島と共通するものがある」という首相の持論があったという。ブチャでは教会を訪れ、家族を失った人の話を聞いたり、教会内に並べられた凄惨な写真を見たりした後、「来て良かった」「こんなひどいことは許してはいけない」と語った。

岸田首相が本当に、ブチャで400人超の命を奪ったとされるロシアに対し「こんなひどいことは許してはいけない」と憤るのなら当然、広島への原爆投下で約14万人の命を奪った米国に対しては、それ以上に怒り、非難するはずだが、これまで首相の口からそのような言葉は聞いたことがない。奥ゆかしいかぎりだ。

「虐殺の町」ブチャには、岸田首相以前にも米欧諸国から要人が度々訪れ、ある種の「聖地」となっている。ウクライナ最高議会のアレクサンドル・ドゥビンスキー議員が明かすところによると、ウクライナはブチャという「悲しみの絵」を残し、西側諸国に援助を求めやすくするため、あえて修復していないという。

ロシア軍からの解放宣言(といっても後述のように、ロシア軍の自主撤退だが)から1年となった3月31日には、ゼレンスキー大統領自らブチャを訪れ、「我々は決して許さない。全ての犯罪者に罰を与える」と演説し、ロシアの戦争犯罪を追及する姿勢を改めて示した

しかし、一つだけ問題がある。米国が広島(と長崎)に原爆を落とし多数の市民の命を奪ったのは、米国自身も認めるまぎれもない事実だが、ロシアがブチャで多くの民間人を虐殺したというウクライナの主張には、ロシアが事実無根だと反論し、その他の論者からも疑問が呈されている。

まず昨年3月、ロシア軍がブチャの町にいたとき、住民は自由に動き回り、携帯電話を使うことができた。モバイル通信が自由に利用でき、その利用が妨げられなかったので、人々はメッセージを送ったり、親戚や友人、メディアに電話をかけたり、写真や動画を共有したりすることができた。町で何か悲惨なことが起こっていれば、その状況を伝えることもできたはずだ。「しかし、そのようなことは何も起きていなかったので、何も報告されなかった」と在英ロシア大使館は指摘する

3月30日、ロシア軍はブチャから撤退した。これは前日の29日、トルコのイスタンブールで開いた停戦協議の際、ロシアがウクライナと和平合意に達する用意があることを示す善意の印として、自発的に撤退させたものだ。停戦協議では、ロシアが分離独立したドンバス地方とクリミア半島を除くすべてのウクライナから撤退する代わりに、ウクライナは将来の北大西洋条約機構(NATO)加盟を見送り、ロシアとNATOの間の中立を誓うなど、具体的な条件を出して歩み寄り、和平実現に近づいていた。

3月31日、ブチャのフェドルク市長は、市内で自ら撮影した動画を公開した。動画の市長は明るい声で語り、ロシア軍の撤退を喜んだが、処刑された地元民が路上に横たわっているという発言はなかった。市長が撮影した道路にも遺体はなかった。当時SNS(交流サイト)に動画を投稿したのはブチャ市長1人だけではなかった。ブチャの市議会議員の1人も動画を投稿していた。そしてやはり、その動画にも遺体は映っていない。

ブチャはそれほど大きな町ではない。市長がブチャの町を視察した際、後日世界のマスコミがトップニュースとして報じた多数の遺体のうち1体も目にしなかったという事態は「想像不可能」だとロシアの通信社スプートニクは疑問を呈する
ロシア軍撤退後、ウクライナはブチャに特殊部隊を投入。その目的はブチャからの「親ロシア派対敵協力者」の「一掃」と発表され、ウクライナのマスコミ自らこの発表を広めた。特殊部隊は、極端な民族主義で悪名高いアゾフ連隊の戦闘員を伴っていた。上官の通称「ボツマン」氏が投稿した動画によると、戦闘員はこんな会話をする。「青い腕章をしてない奴らがいるんだが、撃っていいか」「いいともさ」 

青い腕章はウクライナ軍との協力関係を示す。一方、白い腕章は自らロシア軍に降伏したことを示す。アナリストのゴードン・ハーン氏は2022年5月10日、自身のウェブサイトで公開した分析で、「動画に映された遺体が白い腕章を付けている事実は、これによって説明できる」と指摘する。さらに「写真で見るよりも多くの死体が白い腕章を付けている可能性がある」とし、「ウクライナ軍や武装勢力は、白い腕章を付けた市民をロシア側の協力者とみなして捕らえ、殺害した可能性がある」と述べる。もし事実なら、それこそ戦争犯罪である。

そしてロシア軍撤退から4日間が経過した4月3日、ウクライナ当局は外国人記者を呼び集め、ブチャ、同じくキエフ近郊のイルピンなどで民間人410人の遺体が見つかったと発表した。現地入りしたメディアが、路上に多くの遺体が横たわる写真や映像を伝えたのは周知のとおりだ。白い腕章を付けた遺体のほか、両手を後ろで縛られた遺体や多数の銃弾を受けた遺体もあった。「空白の4日間」に何が行われたか、全容は明らかになっていない。

2023-04-09

アサンジ氏、史上最高のジャーナリスト

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年4月5日)


面白いことに、イスラエルのエフード・バラク元首相がイスラエルの核兵器保有を認めるツイートを削除したのと同時に、ワシントン・ポスト紙が報じたところによると、米国の同盟国は「(爆破されたロシアのパイプライン)ノルドストリームについて話すな」という方針をとっており、その理由は「答えが見つかるから」だという。誰もが知っているが、公に認めることを許されていない公然の秘密がたくさんある。


世界で最も有名なジャーナリストが国境なき記者団との面会を拒否されたのは、収容されている英国の刑務所が「相手がジャーナリストだという情報を受け取った」ためだ。しかし耳にするのは、ロシアや中国がいかにジャーナリストを虐待しているかという話ばかりである。ジュリアン・アサンジ氏は世界で最も偉大で有名なジャーナリストであり、優れたジャーナリズムを行ったという罪だけで刑務所にいる。でももちろん、ジャーナリストを投獄した、はるか遠くの「権威主義国家」に対して拳を振るうことに時間を費やそうではないか。

アサンジ氏は世界で最も偉大な現役ジャーナリストであるだけでなく、これまで生きてきた中で最も偉大なジャーナリストである。これに対してもっともな反論はできないだろう。まじめな話、もっと優れたジャーナリストを挙げてみてほしい。無理だろう。アサンジ氏は、デジタル時代の情報源保護に革命を起こすことでジャーナリズムのキャリアをスタートさせ、その後、今世紀最大の記事をいくつか発表してきた。生死にかかわらず、彼に匹敵する人物はいない。

そして今、同氏が最高警備の刑務所にいるのは、世界中の誰よりも最高のジャーナリズムを行うことに長けていたからにほかならない。それが私たちの住む文明の姿だ。ジャーナリズムを行うという理由で、史上最高のジャーナリストを投獄するような文明だ。


私は決して納得しない。国民がつねに二つの等しい対立する政治派閥に分裂するのは有機的な現象であり、それはつねに何も成し遂げられない行き詰まりに陥り、その行き詰まりはつねに金持ちや権力者に有利だということには。


中国共産党は、中国のソーシャルメディア微博(ウェイボ)で習近平国家主席を「侮辱」した女性を逮捕した。女性は習氏を「くず」と呼んだとして裁判を受けなければならず、有罪になれば多額の罰金を科されることになる。

冗談だ。中国、習近平、微博ではなく、フランス、マクロン(仏大統領)、フェイスブックである。
(筆者自身のツイート)


中国について騒ぐことに時間を費やす人々は、私がネット上で接する中で最も愚かな集団である。必ずしも最も悪意があるわけでも、最も攻撃的なわけでもないが、間違いなく最も愚かだ。この人々は、中国に批判的であれば、どんなに馬鹿げたことでも、誰の言葉でも信じる。

文字どおり誰からでも中国について否定的な主張を目にしたとたん、批判能力はすべて消え去り、泡を吹くような愚か者の集団と化してしまう。(保守派の心理学者)ジョーダン・ピーターソン氏が緊縛SMの「乳搾り」動画を共有したのは、中国政府による虐待を記録しているという偽情報があったためである。

このような動きは、何世代にもわたって、中国人は私たちとはまったく違う文化を持つ、神秘的で不可解な民族だと描かれてきたことに端を発しているようだ。欧米人が中国政府に意味不明な動機や思惑を抱くのは、それだけが理由だと思う。

ある民族を、希望と夢を抱き、家族を愛し、自分と同じように生きていこうとする普通の人間だと思わなくなると、その動機や目標について何でも真実だと信じることができるようになる。もしあなたが、中国人は多かれ少なかれ自分と同じような動機をもつ人間だと信じているならば、その動機や行動に関するデタラメな主張は、普通の人間の視点からは意味をなさないから、すぐに気づくことができるはずだ。その視点がなければ、あなたは道を踏み外すことになる。

先日ネット上で議論していた人が、中国人を蟻の巣に例えて「昆虫のようだ」と何気なく言っていた。このように国民全体を非人間的な存在にしてしまうと、批判的な思考能力がすべて昏睡状態に陥ってしまう。精神が麻痺してしまう。

反中ヒステリーの人々が、私がネット上でやりとりする中で最も愚かな集団であるもう一つの理由は、いつも次のような馬鹿げたデタラメを聞かされているからだ。

中国は米国人を殺す準備をしており、我々は自衛の準備をしなければならない。国防総省は中国に対抗する準備をゆっくりと進めている。
(保守政治行動会議=CPAC=理事、ゴードン・チャン氏)

反中ヒステリーの人々はつねに、ゴードン・チャン氏のような帝国の宣伝マンによって、このような脳内毒を頭蓋骨に流し込まれている。

「中国は米国人を殺す準備をしており、我々は自衛の準備をしなければならない」。それって中国が、あからさまな軍事包囲網と、米国による中国・台湾間の紛争への介入の可能性から自衛する準備をしていることか。米国にとって地球の反対側の紛争のことか。あなた、ゴードン・チャン氏が戦わないような紛争のことか。

馬鹿野郎が。


欧米のメディア関係者は、プロパガンダ担当者が正当な標的であるという考えを広めたいのかどうか、よく考えるべきだ。
(筆者自身のツイート)


2016年の米大統領選は、すべてを変えた。トランプ氏自身が事態を大きく変えたからではなく(変えなかった)、西側メディアがその時点で、米政府がロシアとの情報戦に勝つのを助けることが自分たちの厳粛な義務であるという合意を形成したからである。

ロシアのハッカーが出所とされた(ただし、今日に至るまで証明されていない)2016年のウィキリークスの発表をメディアが報道するのは間違っているという合意がすぐに形成された。この決定により、主流メディアにおける真のジャーナリズムの最後の光は消し去られた。すべての主流派ジャーナリストが、権力者に関する真の事実を報道するのではなく、政府やお気に入りの政党の情報利益を促進することが自分たちの仕事だと認めた時点で、それは終わったのだ。真実に基づく社会の最後の光明が消え去ったのである。

ロシアがウクライナに侵攻して以来、私たちはこの状況を目の当たりにしてきた。「ジャーナリスト」たちは、検証されていない政府の主張を無批判に報道し、ウクライナの死者数のような重要な問題を無視し、情報戦で嘘を流すためにジャーナリストを使っているという米政府の告白さえ受け入れているのである。

その逆もありえた。メディアはウィキリークス文書で暴露された腐敗をとらえて、米政府の不正を調査するために奮起することができたはずだ。しかしそれは米政府の不正を隠し、許し、助長するために使われたのである。

Assange Is The Greatest Journalist Of All Time: Notes From The Edge Of The Narrative Matrix – Caitlin Johnstone [LINK]

2023-04-08

戦争犯罪の責任を免れる人々

ケイトー研究所主任研究員、ダグ・バンドウ
(2023年4月5日)

国際刑事裁判所(ICC)はロシアのプーチン大統領を戦争犯罪で起訴し、逮捕状を発行した。ジョー・バイデン米大統領は、プーチン大統領が「明らかに戦争犯罪を犯した」と述べ、この行動を支持した。米国務省は、ロシアの軍隊が行った残虐行為について露当局者に責任を取らせるよう求めた。アントニー・ブリンケン国務長官はこう述べた。「法廷の当事者で義務を負う者は、その義務を果たすべきだ」
ただ一つ問題がある。バイデンはさらに、「問題は(ICCを)米国も国際的に承認していないことだ」と認めた。実際、米国はロシアの戦場での行動に関する調査を妨げている。ニューヨーク・タイムズ紙はこう報じた。「国防総省は、米情報機関がウクライナでのロシアの残虐行為について集めた証拠をハーグの国際刑事裁判所と共有しないよう、バイデン政権を妨げている」

なぜそんなことをするのだろうか。「米国の軍事指導者は、裁判所が米国人を起訴する道を開くのに役立つかもしれない先例を作ることを恐れて、裁判所のロシア人調査を助けることに反対している」とタイムズは説明している。

しかしICCに対するトランプ政権の反応に比べれば穏やかなものだ。共和党の大統領候補と目されるマイク・ポンペオ国務長官(当時)が率いる前政権は、「米国人の調査」を敢行したとして、ICCの検事2人とその家族に対して制裁を課した。米政府は検事らを中国、イラン、ロシアの人権侵害者と同様に扱った。

米欧の戦争犯罪がない不自然さ


国務省は最近、米国を除外して人権裁判を支援するという不可能なことを企てるため、同盟国が支援する「国際化された国内裁判所」を設立し、ロシア人を裁くことを提案した。都合の良いことに、そのような裁判所は米国人の恥ずべき調査を行うことはない。国務省のベス・バン・シャーク特使(国際刑事司法担当)によれば、「ウクライナで行われている国際犯罪に対する包括的な説明責任を果たすために、ウクライナや世界中の平和を愛する国々と協力し、このような法廷を立ち上げ、職員・財源を確保することを約束する」。しかし他のどこでも、米国とその同盟国に責任を負わせないよう保護している。

実際、バン・シャーク氏は、米国人を標的にすることに使われる可能性のある前例を作ることを政府が恐れたと認めた。

バイデン政権が米国の潜在的な責任を心配するのは、十分な理由がある。米軍は世界中で活動し、他国を爆撃・侵略・占領しているが、その説明責任はほとんどない。米国の乱暴な軍事力の使用は、イラクとイエメンで最も顕著に、何十万人もの不必要な民間人の死という結果をもたらしている。これらの戦争はどちらも正当化できない。前者は都合の良い嘘に基づき、後者は独裁者の気まぐれに由来している。

経済制裁もまた、人を殺してきた。現在経済制裁は、ひどく困窮するシリア国民をさらに貧しくするために使われている。30年前、マデリン・オルブライト国連大使は、経済制裁によって子供たちが大量に死亡するという懸念を、「その対価に見合うだけの価値があると考えています」という冷ややかな言葉で打ち消した。

米国の戦争にしばしば加担する欧州は、ロシアの侵略を裁くという米国の提案に従うだろうが、自らは同様の国際監視を受けることを拒むだろう。しかし南半球はそうもいかないかもしれない。アフリカ諸国の政府は、ICCのような国際法廷がアフリカ以外の場所で起きた犯罪を扱うことはほとんどないと以前から指摘してきた。さらに米国とその同盟国による利己的な戦争と尊大な道徳的態度の長い歴史の結果、発展途上国は欧米の対露作戦への参加を望んでいない。

ルールはルールであれ


バイデン政権は、ロシアが同じことをすれば、米国の高官に裁判の責任を負わせるよう申し出るべきだ。米国の指導者も審査の対象としよう。世界の道徳的なリーダーシップを敬虔に主張する人たちに特別待遇はないはずだ。

米軍関係者が不当に訴追されるのではないかという懸念を払拭するため、この手続きは、軍や政治の上級意思決定者にのみ適用できるものとする。ウラジーミル・プーチンとジョージ・W・ブッシュ(元米大統領)は、ウクライナとイラクへのそれぞれの侵攻について法廷で裁かれることになろう。バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、そしてそう、ジョー・バイデン(各米大統領)は、イエメンを荒廃させたサウジアラビアへの援助について裁かれよう。イラン、シリア、ベネズエラ、その他の国々を荒廃させ、窮乏と飢餓を政治的な道具として使用したことについて、議会の指導者に世界と向き合わせよう。

もし西側諸国が、ロシアに押しつけようとするのと同じ基準で生きようとしないなら、他者を裁く道徳的権威はあるだろうか。これはロシアの犯罪責任を軽視するものではない。ロシアの高官は、戦争犯罪の責任を問われるべきだ。しかし他の国の指導者も、適切な場合は、ウクライナであろうと米国であろうと、同じように扱うべきである。グローバルサウス(南半球を中心とした途上国)が認識しているように、西側諸国は日常的に殺人や騒乱を起こし、その後、人道的な災害を残したまま何ごともなかったかのように行動している。これらの政府はしかるべく裁かれなければならない。

よく言われる「ルールに基づく秩序」においていつも変わらないのは、それを作った人々がつねにその要件から自分自身を免除していることである。この振る舞いは、米国が提案したロシアの特別法廷でも続いている。米国が世界の道徳の守護者を装うのであれば、その真の意味を受け入れるべきである。

Try George W. Bush and Vladimir Putin for War Crimes - 19FortyFive [LINK]

2023-04-07

テロの「正当な標的」

ジャーナリスト、アレクサンダー・ルービンスタイン
(2023年4月3日)

米政府の後援を受ける(英報道調査機関)ベリングキャットのクリスト・グロゼフ氏は、(ロシア第2の都市)サンクトペテルブルクの公共イベント中にロシアの戦争記者を殺害し多くの人々を負傷させた、テロ攻撃を支持した。グロゼフ氏はまた、ウクライナがロシアの哲学者を暗殺しようとしたのも、哲学者が「宣伝要員」だったからだと擁護している。
2023年4月2日にロシアのサンクトペテルブルクで起きたカフェの爆破事件から数時間後、米政府出資による団体ベリングキャットのクリスト・グロゼフ氏は、戦争記者を殺害し30人を負傷させたテロ攻撃を擁護した。

英スカイニュースとの8分間のインタビューを通じて、ベリングキャットのロシア調査主任クリスト・グロゼフ氏は、サンクトペテルブルクのカフェ「ストリートフードバー・ナンバーワン」での公開イベントでのテロ攻撃を堂々と、事実上支持する発言をした。テロを正当化するために、グロゼフ氏はこのテロを「ハイブリッド戦争」の文脈で行われた正当なウクライナの作戦か、ロシアの偽旗の可能性のいずれかに分類した。

グロゼフ氏は、攻撃の標的であるドンバス地方生まれの戦場記者、ウラドレン・タタルスキー氏を「正当な標的」と位置づけた。なぜならタタルスキー氏はウクライナのクーデター後、政府に対して起こった2014年の同国東部の反乱に武装参加者として従事していたためだとした。また、ベリングキャットのブロガーであるグロゼフ氏は、爆発物が起爆されたカフェは「純粋な民間施設」ではなく、「ロシアのサイバー戦士」の拠点だと主張した。

「彼は正当な標的であり、将校であり、プロパガンダを行う人物でもあった」とグロゼフ氏は自信満々、スカイニュースに語っている。

司会者から、なぜウクライナは「ロシア第2の都市のカフェではなく」、軍事拠点に作戦を限定しないのかと尋ねられたグロゼフ氏は、こう反論した。「しかし、これはこれまで見てきた戦争とは似ても似つかない。熱戦(実際に撃ち合う戦争)に加え、ハイブリッドな戦争なのだ」

おそらく自身が軍事ブロガーであるこのベリングキャットの記者は、カフェの爆破を正当化するために、こう主張した。カフェは「ロシアのサイバー攻撃者、サイバー戦士がウクライナのインフラを実際に狙う、ある種の集合場所として定期的に使われていた。……だからこれが純粋な民間用地かどうか、議論すべきだろう」

グロゼフ氏のコメントは、(ジャーナリスト)マイケル・ワイス氏のような新保守主義(ネオコン)活動家や、NAFO(北大西洋同志機構)として知られる親ウクライナの嫌がらせ軍団のコメントと同じものだった。

このカフェのインターネット上での存在感は、グーグルのレビューが2073件、(旅行サイト)トリップアドバイザーのレビューが161件と、異なることを物語っている。おそらくロシアのサイバー戦士たちは、オンラインでレストランを評価するよりも、もっと重要なことに時間を使っているのだろう。スカイニュースは、ブロガーのタタルスキー氏が攻撃時に「一般の人々」と会っていたと報じている。

グロゼフ氏はさらに、ウクライナ保安局(SBU)がロシアの民族主義哲学者アレクサンドル・ドゥーギン氏を暗殺しようとしたが、代わりに娘のダリヤ・ドゥーギナ氏を殺害してしまったことを正当化した。娘であるダリヤ氏を「同じようにプロパガンダを行うが、父親ほど影響力はなく、同じく正当な標的だ」と評した。

サンクトペテルブルクのテロがロシア人によって行われた可能性について尋ねられたグロゼフ氏は、ロシアに自国のテロがないことを嘆き、スカイニュースにこうコメントした。「ロシア国内に危険を冒す活発なレジスタンスが存在することを望むと同時に、我々が見たその話の多くは、実際には、地元のレジスタンスとして示されたウクライナの活動だと思う」

ウラドレン・タタルスキー氏とアレクサンドル・ドゥーギン氏は「プロパガンダ活動家」として機能しているため、テロの正当な標的であるというグロゼフ氏の主張は、もしその論理が自分たちに適用されれば、大勢の欧米メディアの論客を政治的暴力にさらすだけでなく、ベリングキャットにおけるグロゼフ氏の雇用主を特別に危険にさらすことになるだろう。実際、グロゼフ氏が働いているのは、全米民主主義基金(NED)として知られる米中央情報局(CIA)の手先から資金提供を受け、「ロシア政府の影響力を弱める」ことを目的とした英外務省の秘密活動に参加するメディアなのだから。

“Legitimate target” — Bellingcat defends terror attack at St. Petersburg cafe - The Grayzone [LINK]

2023-04-06

TikTok規制の真の狙い

元米会員議員、ロン・ポール
(2023年4月3日)

米連邦警察国家の拡大を支持する人々は、国民を脅して自由を放棄させるための新たな敵役を発見した。TikTok(ティックトック)だ。利用者が動画をアップロードできるソーシャルメディアプラットフォームで、数千万人の米国人が利用しており、世界で最も人気のあるウェブサイトの一つである。
ティックトックの人気と、中国・北京に本社を置く企業、字節跳動(バイトダンス)に所有されていることから、このサイトが中国政府によって管理されているという主張が広まっている。こうして、中国政府はティックトックを使って米国人のデータを収集しているという主張が生まれた。

上院情報委員会のマーク・ワーナー委員長は先月、「情報通信技術にリスクをもたらす安全保障上の脅威の出現を制限する法律(RESTRICT〈制限〉法)」案を提出した。この法案は、ソーシャルメディアを利用して米国のスパイを行う外国政府から米国の人々を守る方法として売り出されている。

RESTRICT法案では、ティックトックやバイトダンスについては一切触れていない。中国政府は他の五つの政府とともに「外国の敵対者」として指定され、法案の中で一度だけ言及されている。この法案では、商務長官が「過度の、あるいは受け入れがたいリスクをもたらす」と判断した、「あらゆる人による、あるいはあらゆる財産に関する対象取引から生じるリスクを特定・抑止・阻止・禁止・調査・軽減」する権限を、多くの分野で与えている。その中には、「民主的な過程や制度を弱体化させたり、米国の国家安全保障を害する外国の敵対者の戦略目標に有利に政策や規制の決定を誘導するように設計された、外国の敵対者による強制的または犯罪的行為」が含まれている。つまり米国は、あるウェブサイトが実際には米国を弱体化させるようなことはしていないものの、そうなる危険性を許容できないほどもたらすという商務長官の判断に基づいて、米国のソーシャルメディア企業を閉鎖することができるわけだ。

ティックトック論争は、ツイッター社の従業員と政府機関の間の通信を公開した不穏なツイッター文書から注目を奪っている。この通信は、記事の制限や利用者の排除に関して、政府が大手ハイテク企業の決定にどれだけ「影響」を与えたかを示している。RESTRICT法案が法律となったあかつきには、ソーシャルメディア上の特定の記事や個人を規制する米政府の今後の取り組みに協力することを拒否するサイトは、「外国の敵対者の戦略目標」を推進するために働いていると非難されてしまうかもしれない。

このことを疑う人は、米国の外交政策に疑問を持つ人がロシアの工作員として中傷される事実について考えるべきだ。RESTRICT法の犠牲者になりうるのは、Rumble(ランブル)のようなサイトである。ランブルは、ユーチューブに代わる、検閲のないサイトだ。その言論の自由に対する取り組みは非常に強く、ロシア・トゥデイ(RT)などロシア系ニュースソースをフランスのソーシャルメディアで禁止する同国の新たな法律に従う代わりに、フランスでのサイトへのアクセスをブロックすることを選択した。

愛国者法と同様に、RESTRICT法は人々の恐怖心を利用して沈黙させ、議会が人々の自由をさらに奪うものだ。この法案は合衆国憲法修正第1条の露骨な違反である。同条はアメリカ建国の父たちが、政治的言論に従事し、政治的情報や意見を他者と共有する権利を保護することを意図した。ティックトックやその他の場所で政治家階級に挑戦するアイデアを議論・共有する権利を、議会が侵害するのを阻止しなければならない。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The RESTRICT Act Restricts More Than TikTok [LINK]

2023-04-05

体制転換をあおる人々

ジャーナリスト、ダニエル・ラリソン
(2023年3月31日)

米政府におけるイラン政策の議論は、アイデアの貧困に苦しんでいる。過去20年間、強制と脅しに基づく政策が失敗の跡を残しているにもかかわらず、イランの核開発をめぐる議論は、たいてい裏目に出た制裁と、戦争と体制転換の無謀な提案という組み合わせに帰着する。
新アメリカ安全保障センター(CNAS)の新たな報告書は、まさにその最新の例である。この報告書は、シンクタンクが実施した演習の結果を説明し、米国が軍事行動の脅威を拡大し、イランの政治・軍事指導部や核施設を標的とすることを推奨することで結ばれている。核不拡散のためにも、米国の利益のためにも、新たな体制転換を図ることほど悪いことはないだろう。

イラク侵攻がいかに悲惨な政策であるかを示してから20年、政府の誰もがいまだに戦争や体制転換という選択肢を持ち出しているのは信じられないことだが、イラク戦争の罪から本当に学ぶことはなかった。政府がイラク戦争から学んでいない主な理由の一つは、イラク戦争の立案者や支持者に説明責任がなかったことであり、米国内の議論では、いまだに攻撃的で軍事的な政策を支持する傾向がある。政府の多くの人々は、体制転換のための戦争を否定する代わりに、他国に対して同じ致命的な欠陥のある政策を用いることに何の問題も感じていない。

CNASの報告書が、米国に対し、武力行使をちらつかせ、イラン軍が譲歩しなければ体制転換のために武力行使するよう求めていることに疑問の余地はない。報告書の著者は「これ以上進めると、イランの政権を標的にした軍事行動を起こす危険があることを強調すべきだ」と明言している。ある箇所で報告書は、「米国の指導者は、イランの政治的・軍事的指導者に、核開発を放棄しない場合には政権から排除されることになるという決意を示す非公開メッセージを送ることを検討すべきだ」と勧告している。

著者によれば、米国は体制転換の脅しと、すでに実証済みのイラン軍指導者の暗殺能力を活用して、「イランの指導者たちに、イランの核開発計画は自分たちの生存を保証する保険ではなく、自分たちの首を絞める石臼であると確信させる」ことができるそうだ。

これらの提言は、まったく練られていないように見える。イランの指導者に核抑止力の必要性を確信させるのに、イランを転覆させるというあからさまな脅しほど有効なものはないだろう。報告書が認めるように、イラン指導部の最大の関心事が自己保存であれば、指導部の生存を脅かすことは意味をなさない。そのような自己保存の欲求から、イラン指導部は核兵器国への敷居を越えることで、これまで以上のリスクを取ることを決断するかもしれない。

いつものことだが、核問題に対する軍事的な「解決策」はほぼ確実に、その提唱者が望まない結果をもたらす。

また、イラン政府がこれまで、他の強制的な手段や脅しにどのように対応してきたかにも注目する必要がある。米国が核合意を破棄し、「最大限の圧力」による制裁措置を開始する前、イランは核合意を完全に遵守しており、米国が辞めた後も丸一年間は遵守していた。その後、持続的な経済戦争とイスラエルによる暗殺・破壊工作攻撃に対応して、イラン政府は核開発計画を大幅に拡大した。経済的圧力やイラン施設への物理的攻撃は、イランをそれに対して過激にさせることにしか成功していない。なぜイランの指導層に対する直接的な脅しが、異なる結果をもたらすのだろうか。

イランの指導者には、米国が自分たちに従った後に、一転して攻撃してこない保証はない。攻撃の脅威の下で譲歩を要求することは、侮辱と受け取られることになる。「核開発計画」の放棄が何を意味するのかにもよるが、この要求自体があまりに広範囲に及ぶため、イラン政府にとっては話にならないのだろう。イラン政府は核開発に多くの時間、労力、威信を費やしてきたのだから、それを完全に放棄することはできない。弱小国を攻撃で脅すことは卑劣な行為であり、また通常、服従するよりもむしろ怒りの抵抗を呼び起こすものである。
 
報告書は最後の最後で、イランに対する軍事行動には「イランの軍事的反応と戦争を激化させるリスクがある」と認めているが、それさえも危険性を最小限に抑えている。既存の指導者を権力から排除するという明確な目的のために軍事行動を起こすことは、すでに戦争であることは明らかである。イラン軍とその代理人が反撃することは確実である。これは核問題を満足に解決できないだけでなく、米国とより広い地域を、私たちが作り出した新たな、まったく不必要な大火に陥れることになる。

CNASの報告書は国際法について何も述べていないが、イラン領土への軍事攻撃は、それが核施設であれ、より広範な標的であれ、犯罪的侵略にほかならないことを強調する必要がある。米国にはイランに対して武力を行使する法的権利はなく、もし政府がこの報告書の提言通りに行動すれば、国連憲章に明白に違反することになる。

憲章の第2条4項には、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」と書かれている。憲章に違反するのは武力の行使だけでなく、武力行使の威嚇も同様である。イランに核開発の一部または全部を放棄させるために武力を行使することは、ならず者国家による違法行為である。

イランでの戦争や体制転換の話がさらに厄介なのは、それが米国や他の国家の安全保障にまったく必要ないということだ。イランは核兵器開発計画を持っておらず、米政府によれば、過去20年間は持っていない。イランの核開発がJCPOA(包括的共同作業計画=核合意)の厳しい制限の下にあればなお良いが、そうでなくてもイランは核拡散防止条約(NPT)のメンバーである。

イランは現在、核兵器の製造を目指してはいない。米国とイスラエルの無謀で挑発的な行動が、イラン政府に武器化を追求するさらなる誘因を与えたにもかかわらず、イランはまだその一線を越えていない。過去20年の経験から判断すると、イラン政府は他に選択肢がない限り、その一線を越えようとはしないようである。もし米国が体制転換で直接脅し始めたら、イランの指導者はそれが自分たちに残された唯一の選択肢だと判断するかもしれない。

体制転換は道徳的にも戦略的にも破綻した考えであり、それがあたかも重大な政策オプションであるかのように政界で流布されていることは、米国にとって不名誉なことである。米国の人々が健全で平和な外交政策を望むのであれば、まず行わなければならないことの一つは、体制転換を政策論からきっぱりと追放することである。

Centrist DC think tank: US should threaten war, regime change in Iran - Responsible Statecraft [LINK]

2023-04-04

不道徳な軍に入るのは不道徳

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年3月28日)

軍隊に入るという決断は、自国の軍隊が道徳的で公正なやり方で使われる場合にのみ、道徳的に正当化される。この主張に反対する、権力に奉仕する奇妙なタブーがある。それは地球上で最も殺人的な戦争組織に入隊するのを思いとどまらせるよりも、「我が軍」という感情を守るほうが重要だという考えから生まれたものだ。それにもかかわらず、この主張は真実である。
だからといって、軍人を送り込んだ政府関係者よりも、その軍人が自ら行った悪行に責任があるというわけではないし、軍人が救いようのない悪人であるというわけでもない。ただ、不道徳なことをしているということだ。私たちは誰しも時折、不道徳なことをしたり、間違った決断をしたりする。それは軌道修正する必要があることを意味するだけだ。

たしかに軍隊に入る人の多くは、不公平な制度の中でお金を稼ぐために必要なことをしているだけだ。(しかし)刑務所にいるほとんどの人が犯した罪は、米国や同盟国の軍人が日常的に命じられるようなことに比べれば、はるかに悪質でない。なぜなら、米政府の強い要請で罪を犯したわけではないからだ。

また、たしかに軍隊に入る人は、軍隊がどういったもので、何をするものなのか、育った文化によって嘘やプロパガンダを叩き込まれる。しかし罪を犯す人の多くも同じく、周囲の人々によって間違った物語や間違った約束を叩き込まれる。例えば、ギャングに入る人はまさにそういう傾向がある。(カルト集団指導者)チャールズ・マンソンが操って殺人を犯させた人たちは、操られたからといって無罪になるわけではない。操られることは道徳を評価するうえで緩和要因にはなるが、マフィアの殺人が不道徳であるのと同じように、兵役が不道徳である事実は変わらない。

自国の国境を守るためだけに軍隊を使い、決して自国民を虐待しない国に住んでいるのでない限り、入隊を選べば、何か不道徳なことをしていることになる。米国同盟は文字どおり、つねに海外で戦争をしており、したがって入隊は決して道徳的ではない。理屈の上では、もし道徳的な理由で戦うのであれば、つねに海外で戦争をしている軍隊であっても、道徳的でありうるかもしれない。しかし米国同盟がそうだと道徳的に主張することはできないだろう。米国の同盟は、権力と利益のために侵略戦争を行うからだ。

不道徳な軍隊に仕えることが不道徳だと認めないことは、軍隊の勧誘者、戦争利益追求者、ワシントンとバージニア州(米中央情報局=CIA=の本部所在地)の帝国主義者以外の誰のためにもならない。社会としてこのことをはっきりさせ、人々がそのような暴力的な道から離れるよう、軌道修正し始めることができるようにしよう。


彼らは第三次世界大戦への準備を整えるために、第二次世界大戦と比較し続ける。


世界の大国が予見可能な将来を通じ、互いにますます危険な瀬戸際外交を繰り広げることを、私たちは実際に受け入れる必要はない。帝国の宣伝担当者たちは、私たちがこれを甘んじて受け入れる必要があると言い続けているが、私たちはそうしない。

戦争と核兵器によるホロコーストに向かうこの軌道は、米政府とその同盟国の人々によって推進されているが、彼らよりも私たちのほうがずっと多いのである。私たちはいつでも、この船を氷山から遠ざけることができる。ただそれを十分に望めばいい。


9・11同時テロの真実やケネディ暗殺に熱心な人は、米政府が何をしたかを本当に把握できれば、米国人の目が覚めるとよく言うが、これは米国が最近リビア、イラク、イエメン、シリアなどで行った、議論の余地なく公に知られている事実についても、同様に当てはまると強調しておく必要がある。

9・11以降の米国の行為に関する完全に議論の余地のない公の事実は、単に米大統領を暗殺したり、偽旗テロ攻撃で数千人の米国人を殺したりするよりも、はるかに邪悪である。米国は9・11以降、権力と利益のための戦争で何百万人もの人々を殺害したのだ。

問題は、米政府が行ってきた悪事について米国の人々に情報を提供すること、あるいは、それを見て理解してもらうことではない。米国人の世界観を支えてきた心理的な区画化やプロパガンダによる条件付けを吹き飛ばしてしまうほど、深く観察させ、真摯に考察させることである。

それが、私がここでやろうとしていることの大きな部分だ。私は画期的な調査報道をするわけでもなく、新事実を明らかにするわけでもない。ただ、人々が新鮮な目で帝国の本質を見抜き、その世界観を変えるような方法を見つけようと努力している。


心理学や社会学を学べば学ぶほど、幸せで豊かな人生を送れるかどうかは、最終的には「くじ運」にかかっていることが否定できなくなる。しかし私たちの制度はそれを反映していない。貧乏人は貧乏人として罰し、中毒者は中毒者として罰し、子供の頃に虐待を受けたとか、生まれた地域が悪かったとかいう理由で人を監禁している。これは非常に残酷なことであり、現時点では完全に非科学的なことである。

自分が恵まれているのは純粋な幸運によるものだと理解することで、自分の中で何かが変わり、運に恵まれない人々に対する思いやりが生まれるはずだ。ところが多くの人は何も気づかず、自分が持っているものはすべて努力と美徳の結果だと主張する。エゴイズムに陥りやすい人間の性向は、自分より運が悪かったという以外、何もしていない人への思いやりを失わせてしまう。自分たちや、自分たちの心地よい小さな「私」の物語にとって意味あるものだけのために。

私たちはまだ学ぶべきことがたくさんあるし、もっと重要なのは、私たちの体制が、すでに学んだことに追いついていないことだ。それはすべて、成長し、意識的な種になるための過程である。しかしそれを見守るのは、ときにやりきれない。

It’s Immoral To Serve In An Immoral Military: Notes From The Edge Of The Narrative Matrix – Caitlin Johnstone [LINK]

2023-04-03

【コラム】劣化ウラン弾は問いかける

木村 貴

ロシアのウクライナ「侵攻」をめぐり、英国がウクライナに供与する主力戦車の砲弾に劣化ウラン弾が含まれると表明した。英国のゴールディ国防担当閣外相が3月20日、英議員からの質問への回答として、ウクライナに供与する戦車「チャレンジャー2」の砲弾に劣化ウラン弾が含まれることを明らかにした。ロシアはこれに強く反発している。
劣化ウラン弾は、炸裂した際に飛び散る放射性物質が人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されている。英国による供与に対し、広島県内の7つの被爆者団体は3月24日、抗議の声明を発表した。NHKの報道によれば、声明では「劣化ウラン弾は非人道兵器であり、被爆者として許すことが出来ない」と強調。同日広島市役所で開いた会見では、代表の一人が「劣化ウラン弾は即刻廃止すべきで、英国の行為は許されない」と述べた。

しかし被爆者団体の厳しい非難に比べると、つねづね「日本は唯一の戦争被爆国」と強調するメディアの反応は、いかにも及び腰だ。むしろ劣化ウラン弾の人体などへの影響を軽視しようとしたり、ロシアの反発に難癖をつけたりして、英国の供与を実質擁護するような主張が目立つ。

朝日新聞デジタルは3月25日の記事(「『核を用いた兵器だ』恐怖あおるロシア 英国の劣化ウラン弾供給」)で、こう書いている。

劣化ウラン弾の健康や環境への影響は1990年代の紛争をきっかけに注目され、世界保健機関(WHO)などが研究してきた。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、劣化ウランの放射線を浴びたことに関連した「臨床的に重要な病理は認められない」と結論づけた。国際原子力機関(IAEA)が関与した研究でも、着弾の衝撃で飛び出た劣化ウランの小さな粒子による人々や環境への放射線リスクは大きくない、としている。

もし「臨床的に重要な病理は認められない」「人々や環境への放射線リスクは大きくない」という研究結果が正しければ、被爆者団体の「非人道兵器」「即刻廃止」という主張は、見当外れということになる。しかし朝日は急いで付け加える。

とはいえ、健康被害の懸念は消えていない。国連軍縮部は「劣化ウラン弾やその破片に直接触れた個人には、放射線の潜在的なリスクが存在する可能性がある」とも指摘している。

朝日はここで、「劣化ウラン弾やその破片に直接触れた」場合だけにリスクがありうるかのように書いている。最初に掲げた、「着弾の衝撃で飛び出た劣化ウランの小さな粒子による人々や環境への放射線リスクは大きくない」というIAEAの研究結果につじつまを合わせるためだろう。「放射線の潜在的なリスク」の具体的な内容にも触れていない。

しかし、これは日本の他メディアに比べてさえ、リスクを小さく見せすぎる。日本経済新聞は「米軍が湾岸戦争などで使い、微粒子となったウランが拡散して人体に入り、体内被ばくを引き起こすと指摘されている」(3月22日記事)と書いている。産経新聞も「国連環境計画(UNEP)は2022年の報告書で、劣化ウランは『皮膚刺激や腎不全を引き起こし、がんのリスクを高める可能性がある』と指摘している」(3月23日記事)と具体的に説明している。

イラク・湾岸戦争の子どもたち―劣化ウラン弾は何をもたらしたか

個々の研究者による調査では、さらに深刻なリスクも指摘される。たとえば、米軍がイラク戦争(2003〜2011年)で使用した劣化ウラン弾とイラクの子供たちの先天障害に関連が疑われている。イラクではすでに湾岸戦争(1990〜1991年)の後から、フォトジャーナリストの森住卓氏が著書『イラク・湾岸戦争の子どもたち―劣化ウラン弾は何をもたらしたか』(2002年)で伝えたように、新生児の先天障害が増え、その原因として米軍の使った劣化ウラン弾が疑われてきた。イラク人だけでなく、湾岸戦争から帰還した米国や英国の元兵士も、がんや子供の先天障害の増加が報告されている。

これらのリスクは、まだ科学的に証明され、公的に認められたわけではない。だが劣化ウランに限らず、健康被害との因果関係を証明するのに時を費やしている間、何ら対策を講じることなく放置すれば、被害が拡大し深刻化する恐れがある。これは公害問題などで学んだ歴史的教訓でもある。政府や国際機関の科学判断が政治の圧力に左右されやすい現実を考えれば、なおさらだろう。

1990年代以降、環境汚染や環境破壊から生態系や人々の健康を守る際の原則として「予防原則」が確立されてきた。1992年にブラジルのリオデジャネイロで開いた国連環境開発会議(地球サミット)が採択した「環境と開発に関するリオ宣言」には、「重大あるいは取り返しのつかない損害のおそれがあるところでは、十分な科学的確実性がない」場合でも対策を遅らせてはならないと明記された。

この「予防原則」は、地球サミットの行動計画である「アジェンダ21」などでも確認されている。内科医の振津かつみ氏は共著『劣化ウラン弾――軍事利用される放射性廃棄物』(2013年)でこうした経緯を踏まえ、「ウラン兵器は即刻禁止されなければならない」と訴える。

予防原則について朝日自身、いつもは前向きに取り上げている。たとえば、原発訴訟に関する2022年6月18日の記事では「水俣病やアスベスト被害をめぐる最高裁判決では、確実な情報でなくても、事故や被害の危険性がある程度あれば国は対応しないといけない、という『予防原則』の考え方をとり、国の賠償責任を認めてきた。(略)事故が起きると被害を元に戻すことはほとんど不可能という結果の重大性から見ても、予防原則に立ち、国の法的な責任を明らかにすべきだった」という清水晶紀・明治大学准教授(行政法)の談話を載せている。

ところが今回、英国からウクライナへの劣化ウラン弾の供与に対しては、予防原則に従い中止を求める声は、大手メディアでは皆無だ。それどころか、批判の矛先をロシアに向けようとする苦しまぎれの論法が目につく。

2023-04-02

シリアの米軍を守る最善の方法

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年3月27日)

先週シリア北東部を占領する米軍への攻撃が急増し、米軍基地への無人機攻撃は「親イラン」勢力によるものとされ、米国の反撃で少なくとも19人が死亡したとされる。米国の報復の後、「親イラン」勢力による別の攻撃で、シリアの米国拠点が多数攻撃された。シリアの意向に反してシリアに駐留する900人の米軍に対し、攻撃が増えるのは時間の問題かもしれない。前回は米国の請負業者が1人殺された。次回はもっと多くの米国の人々が犠牲になるかもしれない。
突然の戦闘激化の背景には何があるのか。数カ月間の中東の根本的な変化は、米国がシリアとイラクを占領し続けていることに、いかに弁解の余地がないかを浮き彫りにしている。

たとえば、かつての宿敵であったサウジアラビアとイランの関係が、米国の宿敵である中国によって仲介され、歴史的な修復がなされたことである。米国の中東政策は、少なくとも1980年代のイラン・イラク戦争以降、長い間「分割統治」であった。米国が中東戦争に参戦したことで、大量の血が流され、憎しみが煮えたぎることで永続的な和平が望めなくなった。

そして米国は20年前にイラクに侵攻し、イラクをイランの同盟国に変えてしまった。これがネオコン(新保守主義者)の外交政策だ。100%の失敗率である。

そこで今月、イランを含む地域の輸送回廊を作ることに関心をもつ中国がやってきて、米国のやり口である爆撃、侵略、占領の代わりに、実際にサウジとイランの国交回復の仲介をした。

米国の共和党と民主党はともに中国を攻撃するのが大好きだが、中国は米国が何年も抵抗してきたこと、つまり地域の平和を実現したのである。米国が中東で占領を続けていることが、歓迎されていないことに驚くべきだろうか。

米国は、石油と農業があるシリアの巨大な一帯を占領している。その目的は、盗んだ天然資源から米国の多国籍企業に利益をもたらし、シリアの自然の富がその国の再建に使われるのを阻止することにあるようだ。米国が中東で不人気なのはなぜだろうか。

バイデン政権が1000億ドルも国民のお金を使い、ロシアをウクライナから追い出そうとするのは、なんと偽善的なことだろう。米国がシリアで占領している領土より、ロシアがウクライナで占領している領土の割合が少ないのに。そして米国は「ルールに基づく国際秩序」を支持すると主張しながら、私たちを攻撃しなかったイラクとアフガニスタン、その前は私たちを脅かそうとしても脅かすことができなかったセルビアを壊滅させたのである。

米国による中東占領の終焉は目前に迫っており、そのことに早く気づけばよいのだ。私たちは中東の政治に干渉したり、領土を占領したり、資源を盗んだりする必要はない。米国人は国内外のあらゆる敵から米国を守るために米軍に入隊したのに、腐敗したワシントンの高官に操られ、外国の土地を占領し、その石油を盗んでいる。米軍が採用目標を達成できないのは、このためかもしれない。

シリアにいる米軍を、さらなる「イラン連合」の攻撃から守る簡単な方法がここにある。米軍を帰還させるのだ。明日だ。それ以上待ってはいられない。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Best Way to Protect US Troops in Syria [LINK]

2023-04-01

無意味な民主主義サミット

ジャーナリスト、ダニエル・ラリソン
(2023年3月27日)

米国は今週末、第2回民主主義サミットを共同主催する。コスタリカ、オランダ、韓国、ザンビアの各首都で行われるイベントと連携し、米政府は2021年の最初のサミットをフォローアップするために、対面式とバーチャルな会議を組み合わせて開催する予定だ。
このサミットが何か有益なことを成し遂げる可能性は低いと思われる。バイデン(米大統領)の就任1年目に開催された第1回民主主義サミットは、ほとんど無意味な運動であり、なぜ政権が第2回を開催する価値があると考えたのか、という疑問が残る。

このサミットには、第1回と同じような論争がつきものである。北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるハンガリーとトルコは今回も招待リストから外され、自国の民主主義と法の支配を弱体化させてきた他の政府も依然として代表として名を連ねることになる。除外された国々は、自分たちが除外されたことを名誉なことだと考えるかもしれないし、恣意的な理由で再び除外されたことに腹を立てるかもしれない。いずれにせよ米国と共催国は、このようなイベントに、ある国は参加できず、同じような実績を持つ他の国は参加できる理由を説明できるようにする必要がある。

一つの問題は、単なるおしゃべり会から一部の国を排除することで、主催者が政治的な代償を払うことになるかもしれないということだ。もし主催者側が、どの国が参加できるかの線引きを拒否すれば、サミットには中身がないという批判にさらされることになるが、もしハードルを高く設定すれば、世界の選挙で選ばれた政府のほとんどを排除することになる。米国とその同盟国が、ある国は(民主化の)後退を理由に排除し、他の国の失敗は無視する決定を下すと、偽善と優遇主義の非難を浴びることになる。

たとえばインドだ。インドはナレンドラ・モディ首相のもとで、何年も前から着実に間違った方向に進んできた。このたびインドの野党指導者であるラフル・ガンジー氏が、首相への批判を理由に名誉毀損で有罪となり、国会から追放さ れたばかりだ。ガンジー氏は今後6年間、選挙に立候補することができなくなる。

この決定は、インドのすべての野党から抗議を引き起こし、ガンジー氏の追放は「民主主義の直接的な殺人」とさえ呼ばれている。ガンジー氏の所属する議会党のスポークスマンは、「与党による民主主義制度の体系的かつ反復的な無力化」の一環だと述べている。この展開に対する政権の公式な反応がどうなるかはまだわからないが、米国が懸念を表明する以上のことをしたとしたら、純粋に驚きである。

米国は近年、中国に対抗するパートナーとしてインド政府を育成するため、インドの民主化の後退をほとんど無視してきた。今年初め、インド政府は首相に批判的なBBCのドキュメンタリーを放送禁止にしたが、米国務省は知らんぷりだった。先月政府がBBCの事務所を家宅捜索した際も、国務省はそれを軽視した。米国は、相手国の政府が非自由主義的で権威主義的になっても、見て見ぬふりをする習慣がたくさんある。しかし、我が国政府が「専制主義」との壮大な闘いの中で民主主義の重要性を頻繁に宣伝している場合、これを無視することは非常に難しくなる。

インド政府が公然とインドの民主主義と報道の自由を損なっているのに、民主主義サミットにインド政府を代表させるのは、せいぜい気まずいだけだろう。今年のサミットにインドを参加させることは、後退する政府に対して一貫した、あるいは原則的な基準が適用されていないことを明確にするものだ。

今インドをこのようなイベントに参加させることは、モディ首相が自国政府の忍び寄る権威主義や多数派による虐待から目をそらすのに役立つ。バイデン政権がこのようなサミットで達成したい目標が何であれ、非自由主義的なナショナリストを援護し、その人物が政治的な反対を押しつぶすことは、おそらく目標の一つではないだろう。

バイデン政権の「民主主義対専制主義」の美辞麗句は、米国の外交政策や国際政治の現実には決して適合していない。米国には、民主主義を守ることにまったく関心を持たない半権威主義的、権威主義的な同盟国や傀儡国が多いだけでなく、米国の「リーダーシップ」によって、世界的な紛争やライバル関係の一部になりたくない民主主義国とも対立してきた。

米国は世界を反対する陣営に分断するのではなく、体制の種類にかかわらず、できるだけ多くの国家とより良い関係を築くことに前向きであるべきだ。多くの人々が気づき始めたように、米国はその外交政策においてあまりにも柔軟性に欠け、「民主主義対専制主義」という枠組みは、最も余裕がないときにこの硬直性を強化する恐れがある。

他の民主的な政府には当然ながら自国の国益があり、米国や欧州の同盟国から大きなイデオロギーのために必要だと言われたからといって、その国益を犠牲にすることはないだろう。米国は、他の民主主義国がすべての主要な問題で米国の側に立つ義務はないことを理解する必要がある。また、政府形態を共有することが、他の国家が我が国の政府と同じように世界を見ることを保証するものではないことを理解する必要がある。

多くの場合、他国は政府が有権者の望むことを行っているために、大きな問題について中立を保つか、反対に回ることさえある。米国が他の民主主義国を本当に尊重するならば、重要な国際情勢について、他国が異なる、あるいは反対の見解を採用する可能性があることを受け入れなければならない。指導者は、自分たちがすべての民主主義国の代弁者であるとか、自分たちの好みをすべての民主主義国が共有すべきだといった妄想を抱いていてはならない。

指導者は、自国の荒廃した政治体制の補強・修復に注意を払うほうが、米国にとってより良い結果をもたらすだろう。とくに外交政策においては、国民に対して透明性が高く、説明責任を果たすことのできる政府が必要である。指導者は、民主主義を世界に説いておきながら、国内では民主主義を軽視したり、弱体化させたりしている。米国が世界の民主主義の大義を「強化」するためにできる最善のことは、自国での民主主義の実践を改善することである。

そこで、このサミットは何のためにあるのかという疑問に立ち戻る。もしこのサミットが民主主義の規範と実践を「強化」し、後退を食い止めることを目的としているのであれば、あまりうまく機能しているとは言えない。もしそれが、自分たちの体制が優れていると自画自賛するためのショーだとしたら、時間と労力の浪費である。もしそれが他の政策課題の粉飾にすぎないのであれば、民主主義と関係があるかのように装うのはやめよう。

このような落とし穴がある以上、民主主義サミットの開催は、米政府にとって頭の痛い問題を引き起こすに値しないように思われる。

Why is Biden doing another pointless Summit for Democracy? - Responsible Statecraft [LINK]

2023-03-31

ルールに基づく国際無秩序

元米中央情報局(CIA)アナリスト、ラリー・ジョンソン
(2023年3月26日)

「ルールに基づく国際秩序」という言葉を聞いたことがあるだろうか。米政府や北大西洋条約機構(NATO)によれば、ロシアは(中国も)そのルールに違反しており、罰せられなければならない。世界の平和を乱す「ルール違反者」がいてはいけないのだ。
1945年以来、米国はさまざまな同盟関係、経済制度、安全上の利益、政治的・自由主義的規範、その他の手段(しばしば国際秩序と総称される)を構築・維持することによって、その世界的関心を追求してきた。……

国際秩序の構築は、少なくとも1940年代以降、米外交政策の正式な政策であり、建国以来、熱望されてきた目標であった。第二次世界大戦後、それを構築してきた人々によれば、国際秩序とは、米国のような自由で民主的な社会の理想が花開く環境を維持することによって、米国の価値を守るものである。米国はルールに基づく秩序を構築するために、権力と、利害共有に関する理想主義的な考えの両方を利用してきた。この意味で、米国はハードパワーとソフトパワーの両方を駆使して秩序を構築してきたのである。(ランド研究所ウェブサイト)

おわかりいただけただろうか。いわゆる国際秩序とは基本的に米国が決め、外国がそれに従っているかいないかを勝手に判断する体系なのだ。ようするに、これらの「ルール」は、他国を犠牲にして米国の利益を促進するために設計されている。

ルールとは何か。それは「権威のある、定められた行動の指示であり、とくに立法機関の手続きを管理する規則や、ゲーム、スポーツ、コンテストで選手が守る規則の一つ」である。理論上は、このルールは誰にでも適用されることになっている。

バスケットボールを例にとり(米国で「マーチマッドネス(3月の狂乱)」が開催中なのでちょうどいい)、本物のルールが競技の場合にどのように機能するのか見てみよう。大学の試合は、40分、20分ハーフと決まっている。aなたがルール担当者なら、好きなチームに多くの点を取らせ、最後に勝たせたいからといって、プレー時間を勝手に与えることはできない。3ポイントラインの外からシュートを決めた選手は、自チームに3点が与えられる。ボールを持ち、ドリブルをせずに2歩以上歩いた選手はトラベリングとなり、ボールは相手チームに引き渡される。

世界秩序を促進するためのいわゆる国際ルールを見てみると、まったく異なる姿が浮かび上がってくる。米国は伝統的に、カジノで仲間が勝つように仕向ける不正なディーラーのように振る舞ってきた。その一例はこうだ。デモ隊が街頭に出て、米国が気に入っている政府を転覆させようとした場合、それは悪いことで、デモ隊は罰せられなければならない。しかし、その政府が米国の支持を失ったのであれば、デモ参加者は神の意志を遂行する神聖な存在であり、支持されなければならない。

イランはそのケースである。昨年10月、米国はイランでの抗議活動を応援し、その活動を鎮めようとしたイラン当局を罰した。

米国は水曜日(10月6日)、イランの全国的な抗議行動に対する弾圧を続けているイラン政府関係者に対して新たな制裁を科した。これは22歳のマフサ・アミニさんの死後、怒りを鎮めようとするイラン政府に対する米国の最新の反応である。

アントニー・ブリンケン国務長官は声明で、「イランのいわゆる『道徳警察』に拘束された22歳のマフサ・アミニさんの死から40日が経過し、我々は彼女の家族およびイラン国民とともに、喪に服し反省する一日を過ごす」と述べた。

「米国はイラン国民を支援し、イランで進行中の全国的な抗議行動に対する残忍な弾圧の責任者が責任を問われるようにすることに全力を尽くしている」と、ブリンケン長官は述べた。「本日我々は、国務省と財務省の共同行動として、5つの異なる権限を用いて14の個人と3つの団体を指定することを発表し、イラン政府のあらゆるレベルの責任を問うためにあらゆる適切な手段を用いるという我々のコミットメントを示す」(米CNN)

ジョージア(州ではなく国)についても同様だ。同国の議会が自国に対する外国の干渉を制限することを目的とした法律を可決した3月上旬、デモ隊が街頭に出て警察と争った。

グルジアの首都トビリシの警察は水曜日(3月8日)遅く、催涙ガス、水鉄砲、目つぶし閃光弾を使用し、「外国の代理人」法に反対する2日連続の抗議デモを解散させようとした。この法律は報道の自由を制限し、欧州連合(EU)加盟の候補となる国の努力を損なうと批判的である。(英ガーディアン紙)

その「暴力的な暴動」に対する米政府の反応はどうか。

ワシントンでは、国務省のネッド・プライス報道官が、デモ隊との連帯を表明した。

「我々はジョージア政府に対し、平和的集会と平和的抗議の自由を尊重するよう求める」とプライス報道官は述べた。「我々はジョージアの人々と彼らの願いに寄り添っている」(同)

ジョージアの抗議活動の映像を見ると、平和的ではない。

2021年1月6日に米国で起こった、ドナルド・トランプ(前大統領)支持者が米連邦議会議事堂を取り囲んだ出来事とは、まったく対照的だ。トランプ支持者たちは、扇動に燃える暴徒として非難され、起訴され、投獄された。その日の証拠から、米政府のエージェント(およびアゾフ大隊の数人のウクライナ人メンバー)が群衆の中にいて、暴力にかき立てようとしていたことがわかる。デモ参加者たちが議事堂に入ると、暴力行為に参加した者はほとんどいなかった。しかしジョー・バイデン(大統領)に反対したために、卑劣な犯罪者として扱われている。(フォックス・ニュースの)タッカー・カールソン氏は、バイデン政権のプロパガンダに反撃した。

デモ隊への対応により欧州で広く非難されたイランは、議会の承認なしに年金の受給年齢を引き上げたことに怒るフランス市民に対するマクロン仏大統領の対応を大いに楽しんでいる。

イラン当局は、フランスでの大規模な抗議行動やストライキについてコメントした。イラン外務省のナセル・カナニ報道官によると、パリの当局はフランス国民の声に耳を傾け、「民主的権利を守る人々に対する野蛮な暴力的手段」を放棄すべきだとのことだ。(筆者ブログ)

デモに関するルールは、支援のために軍隊を派遣するよう要請されるか、攻撃を受けた場合を除き、外国で軍事活動を行わないという重大なルールに比べれば、小さなものである。米国とNATOは、ロシアはこのルールに大きく違反し、処罰されなければならないと主張している。ロシア側は、2014年以降ウクライナ政府から執拗な砲撃を受けたロシア語話者のウクライナ人を守るため、そしてNATOの国境への拡大に反対するために行動していると主張する。

ロシアも中国も米欧からの不満や怒りを一切信用しないのは、米国自身がベトナム、イラク、シリア、パナマ、旧ユーゴスラビア、ソマリア、アフガニスタンで軍事作戦を行ったという汚れた実績があるためだ。

ルールに基づく国際秩序に関する厳しい真実がここにある。それは米国によって第二次世界大戦後に作られた時代錯誤のものであり、崩壊しつつあり、バイデン政権はその終焉を早めるような政策を取り続けようとしている。

イスラエルから目を離さないでほしい。同国は、最高裁の権限を剥奪し行政府にその権限を集約する法律案をめぐり、抗議行動にさらされている。イスラエル国内の亀裂は深く、日に日に拡大している。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は今日、国防相を解任し、(米ニューヨークの)イスラエル総領事も抗議のため辞任した。

なぜ、このような話をしたのか。バイデン政権がこれらの抗議を「国際的なルールに従ったもの」として祝福するのか、それともネタニヤフ首相をそのルールに違反したと非難するのか、その合図がまだないためだ。

「ルールに基づく国際秩序」についての非難は、米国がもはや自国の意思を他国に押しつける力も能力も持っていないという事実を露呈している。中国、ロシア、イラン、サウジアラビア、インド、南アフリカなどは、この現実に目を覚まし、米国を脇に追いやるような、代わりの国際秩序の構築に奔走している。これがウクライナにおけるNATOとロシアの代理戦争の最も重要な帰結だと私は考えている。米国の弱点が露呈したのであり、米政府がいくら脅したり制裁したりしても、この現実を変えることはできない。

Understanding The International Rules Based Disorder - A Son of the New American Revolution [LINK]

2023-03-30

イラク侵攻とネオコン

クロニクルズ誌編集長、ポール・ゴットフリード
(2023年3月21日)

記憶によれば、2003年3月に始まった米国のイラク侵攻を糾弾した覚えはないし、その後すぐにも糾弾した覚えはない。やがて私は、イラクへの侵攻は愚かな行為であったと考えるようになった。イラク侵攻の初期段階から最も率直な批判者だと広く思われていたにもかかわらず、当初はその考えを明言しなかった。
2003年3月25日付のナショナル・レビュー誌に掲載された「愛国心のない保守主義者」の一人として私を挙げたデビッド・フラム氏も、私をいら立たせた。フラム氏は明らかに、自分が熱狂的に支持している戦争に私が反対していると思い込んでいたが、私に対する同氏の罵詈雑言は、私がイラク侵攻に反対していると思い込んでいたこととはまったく関係がない。敵は私を「パレオ(パレオ・コンサバティブ=旧保守主義者)の中で最も激しく独りよがりだ」と非難した。というのも、フラム氏の新保守主義者の友人たちが私を大学院の教授職から遠ざけようとしたことに、私が反応したからだ。同氏はかなり親身になって、私が非難されているのは、授業に遅刻し、不満を抱いた学生が漫談と勘違いするような方法で講義をしたことにあるとも語っている。不思議なことにフラム氏は、新保守主義者が計画したイラク侵攻に公然と反対した私が「愛国心のない保守主義者」であるという証拠を、提示しなかった。同氏は、この論文で攻撃した他の人たちと私の仕事上の関係から、私の立場を決めつけたのである。

2002年の創刊当時、私はこの雑誌(アメリカン・コンサバティブ誌)の役員を務めていたので、フラム氏は間違いなく、私の発言は米国の保守主義者たちの立場を暗黙のうちに支持していると考えた。私はクロニクルズ誌を含む他の出版物にも寄稿したが、そこではW(ジョージ・W・ブッシュ元大統領)の軍事的冒険にあまり興味を示さなかった。

もちろん私の批判者たちは、私がずっと傾いていた立場について正しかったのである。私は戦争に反対することを宣言して回ったわけではなかったが、結局イラク政府が「大量破壊兵器」を保有しているという怪しげな主張に基づく、大失策であったことを理解したのである。イラクへの侵攻は多くのイラク人の犠牲者を出し、米国の利益には何の役にも立たなかったが、その最も強力な扇動者にとっては有益だった。フラム氏をはじめとするネオコン(新保守主義者)たちは、決して起こすべきではなかった戦争を擁護することで、政治評論家や政府顧問としてのキャリアを積んだ。(ワシントン・ポスト紙コラムニストの)マイケル・ガーソン氏のような宣伝家も、「民主主義の価値」を広めるという米国の使命を提唱し、ジャーナリストとしてのキャリアを築いた。ハンガリーなどの伝統的なキリスト教の国々にLGBT(性的少数者)の権利をもたらそうとする努力に見られるように、私たちは今もその仕事に従事している。

しかし、仲間の多くが早くから把握していたこの事実に気づくには、数週間を要した。当初、私はイラクに上陸した米国の軍隊を応援していた。なぜなら米軍はまあ、米国人だからだ。しかしすぐに、私たちが泥沼に迷い込み、そこから正式に脱出できたのは2011年だったということが明らかになった。しかもネオコンたちは、少なくとも1991年の第一次湾岸戦争が終わったときから、この紛争を迫っており、サダム・フセイン(イラク大統領)が大量破壊兵器の使用を計画しているという荒っぽい主張と、いつもの空虚な人権レトリックでこれを擁護していた。

侵略とその反動から明らかになったことのひとつは、右派における大規模な反戦活動の存在であった。私は冷戦時代を通じて、米国の敵に対して軍事力を行使するのが右派だと考えていた。また軍事的な取り組みに反対する人たちは、必ず左派に属すると信じていた。たしかに、伝統主義者のジョージ・ケナン氏(外交官)から自由主義者のマレー・ロスバード氏(経済学者)まで、私の一般論に例外があることは知っていた。しかし反共的な外交政策に反対するこれらの人々は、めったにいない異常者だと考えていた。

その後1990年代に入り、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス研究所での人脈構築を通じて、「戦争・福祉国家」に反対する非左翼的な人々と知り合うようになった。このとき、米国のベトナム関与に反対した人たちが、すべて共産主義者のシンパだったわけではないことがわかった。さらに1980年代のネオコンとの戦いから、熱狂的な冷戦の戦士がすべて右派であったわけではないことがわかった。左翼にも反共主義者がいて、ソ連帝国が崩壊した後も米国の外交政策に影響を与え続けていた。冷戦が終わったのだから、非共産主義者である左派が優位に立つことは明らかであったはずである。

しかし右派が右派的な理由で反戦活動を行う可能性があることを、それまでそれほど明白ではなかったやり方で明らかにしたのは、イラク侵攻に対する反応だった。米国の軍事力に反対するのは、「同情心あふれるリベラル」としてではなく、その使用が戦略的・道徳的に不当であり、ディープステート(闇の政府)による権力簒奪を招くからだというのが、戦争危機から私が得た大きな認識であった。イラク侵攻とそれに対する嵐のような反応について考えるうちに、その結論に達した。ネオコン評論家たちの主張に反し、2003年3月の私の最初の反応はそうではなかった。

Presumptive Neoconservatives - The American Conservative [LINK]

2023-03-29

米国に迫る屈辱的敗北

モニカ・ショウォルター
(2023年3月21日)

アジア・タイムズで「シュペングラー」として活躍するライター、デビッド・ゴールドマン氏は、ウクライナ紛争の終結を予見している。
ゴールドマン氏は最新のアジア・タイムズの記事で、外交政策関係者の内輪の考えに言及した。 

最近、レーガン政権からトランプ政権に至る米国の元高級軍人、情報機関関係者、学者の私的な集まりで、ウクライナのロシアに対する勝利の見込みについて暗い評価が示された。

ある参加者は、訓練された人材と弾薬が不足しているため、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、中国の和平案を検討するかもしれないと主張した。とくに、イランとサウジの紛争を北京がうまく調停した後では、そのようなことも考えられるという。

数十人の参加者は、その多くが閣僚や副閣僚の経験者であり、参加者個人の特定を禁じながらも、内容自体の提示を認める「チャタムハウスルール」に則って会合が行われた。
 
参加者の多くは、ウクライナがロシアを撃退できるまで物資を供給し続けるというバイデン政権の強引な姿勢を支持していたが、数字上は有利でなかった。ロシアは人員、資源、資金、そして中国やインドといった他の大国との同盟関係において、ウクライナよりもはるかに大きな存在だった。しかしその会議の最後に、ウクライナ軍のほとんどが死亡し、米国が訓練した優秀な兵士も戦死していることを指摘する小さな声が聞かれた。ウクライナの勇敢さは本物だったが、ロシアは圧倒的な戦力によって戦争に勝つことができた。南北戦争で北軍が南軍に勝ったのと同じ理由で、南軍には有能でやる気のある兵士がたくさんいたにもかかわらず、である。

ゴールドマン氏は5月、PJメディアでウクライナの分割は避けられないと書いた。

私は2008年に、また以下に再掲したPJメディアの2014年2月のメモを含む、その後の多くの場面でこう主張した。ウクライナにおける行動の流れは明らかに、チェコやスロバキアが行ったように、国民に分離独立を求める投票を許可することだった。しかし米国は、ウクライナがロシアにとってレッドライン(越えてはならない最後の一線)であることを知りながら、北大西洋条約機構(NATO)という選択肢を残すことを選んだ。プーチン(露大統領)が性悪な人物であろうとどうでもいい。プーチン氏はロシアの国益を明確に理解している、予想どおりの性悪な人物であり、ウクライナのNATO加盟候補に対する同氏の反応は完全に予想どおりであった。

三カ月間、ロシアが崩壊するという予測がほぼ一様にメディアで流された後、現在、ロシア軍がドンバス地方を支配するところまで来ているようだ。ロシア軍を撤退させることは、不可能ではないにせよ、困難であろう。その結果、先週のダボス会議でヘンリー・キッシンジャー(元米国務長官)が示唆したように、(最終的には)ウクライナがロシアに領土を譲り渡すことで和平が実現するだろう。「プーチン・ヒトラーに譲歩してはいけない」という美辞麗句は、その取引を行うときに、自分たちをよりみすぼらしく感じさせるだけである。米国はみすぼらしいと感じるべきなのだ。我々はこれを壮大なスケールで台無しにしたのだ。

それは陰鬱な内容で、結論はさらに不穏なものだった。----米国はまたしても屈辱的な敗北を喫し、ロシアを勝たせ、中国に仲裁を任せるべきだということだ。というのも、米国はベトナム戦争後のように、重要な潜在的紛争に対して戦略を練り直し、再考する必要があるからだ。世界の偉大な超大国はもはや存在しない。それはジョー・バイデン(大統領)の仕業である。

今月初め、フーバー研究所のサイトで、ゴールドマン氏はこう指摘した。

最も可能性の高い結果は、屈辱的な休戦である。逆説的だが、それは米国の長期の利益につながるかもしれない。北ベトナムは、ソ連より先に米国に屈辱を与えることで、米国に恩恵を与えた。1950年代後半から米国の軍事立案者が抱いていた、限定戦争という幻想を破壊した。1975年のベトナムからの屈辱的な撤退は、1977年のハロルド・ブラウン国防長官の時代からレーガン政権に至るまで、米国の軍事戦略を根本から見直すことを可能にした。米国は近代的な航空電子機器と精密兵器を製造する防衛技術の革命を行い、1970年代初頭にロシアが通常兵器で享受していた優位性を逆転させた。1982年のベッカー高原航空戦と戦略防衛構想の開始により、ロシア軍は米国に技術的に追いつけないという結論に達した。

民主主義を輸出するというユートピア的な幻想が、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、最後にはウクライナに至るまで、米国の過去一世代の大失態をうながした。冷戦を勝利に導いた技術的優位の追求に立ち戻るには、ベトナム戦争のような規模の国家的屈辱が必要なのかもしれない。

これらはすべて、地理、歴史、人間性について深い知識を持つ、驚異的な予言者であるゴールドマン氏の印象的なエッセイである。ゴールドマン氏が話した政府高官たちが、同氏が予見していたことに今になって賛同していることは、同氏の「壁に書かれた世界の文字」(王の宴会中、手が現れて壁に文字を書き、暗い未来を予言したという旧約聖書のエピソード)を読む能力の高さを証明するものである。

三つのエッセイはいずれも一読の価値ありだ。 

It slowly dawns on the West that Ukraine is not going to win - American Thinker [LINK]

2023-03-28

ミンスク合意の裏切り

コラムニスト、テッド・スナイダー
(2023年3月20日)

歴史を振り返ると、ミンスク合意(東部ウクライナにおける紛争の停止を目指した合意。2014年の「ミンスク1」と2015年の「ミンスク2」がある)を結ばなくてよかった世界がある。
2014年、米国が支援したクーデターにより、民主的に選ばれ、東部を地盤とするウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領が解任され、米国が選んだ米欧寄りの(ペトロ・ポロシェンコ)大統領と交代させた。ビクトリア・ヌーランド国務次官補(欧州・ユーラシア担当)は、ヤヌコビッチの後任としてアルセニー・ヤツェニュク(元ウクライナ首相)を米国が選んだとする通話が傍受されている。

新たな政府は、(東部)ドンバス地方が求める多文化ウクライナを否定し、民族主義的で一元論的なウクライナの実現を要求した。ドンバスのロシア系民族は、その言語、文化、権利、財産、生命に対する攻撃に苦しむことになる。

ドンバスはクーデター政権に反抗し、2014年5月までに、ある種の自治を宣言する住民投票を承認した。ウクライナの内戦は始まっていたのである。

ドンバスの暴力に対する最善の解決策は、ミンスク合意だった。ミンスク合意はフランスとドイツが仲介し、ウクライナとロシアが合意し、2014年と2015年に米国と国連が受諾したものである。ドンバスに完全な自治権を付与しつつ平和的にウクライナに返還することで、ウクライナにはドンバスを維持するチャンスを、ドンバスには平和とその望む統治を実現するチャンスを与えるものだった。

しかし、ミンスク合意以前に可能な解決策があった。

5月11日、ドンバスのドネツク州とルガンスク州は、主権獲得に賛成した。プーチン(露大統領)は住民投票の延期を要請しており、ロシアは民意を尊重しながらも、その結果を認めなかった。

2週間後、ポロシェンコが大統領に選出され、ドンバスの反政府勢力指導者と平和的解決に向けた交渉を開始した。交渉は順調に進み、翌月末にはドンバスをウクライナに平和的に残すための方式が見いだされた。この時点で、6月24日、ロシア議会は海外での軍隊使用権限を取り消した。和平は可能だった。

しかしその代わりに、(米政治学者)ニコライ・ペトロの報告によれば、ウクライナ政府は、プーチンが軍隊を撤退させたことで、ウクライナ軍が新たな優位に立つと判断し、ポロシェンコは和平を追求するのではなく、ドンバスを軍事的に奪還するための攻撃の開始を命じた。

この和平プロセスへの裏切りによって、ミンスク合意の調印が必要となったのである。戦いに敗れたポロシェンコは、ドンバスの平和的返還交渉に後退せざるをえなかった。

ミンスク合意が最善の解決策となったのは、ポロシェンコが和平交渉を妨害した後であった。ポロシェンコはミンスク合意も妨害してしまうだろう。それには多くの手助けがあったかもしれない。

ミンスク合意は、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのポロシェンコ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、フランスのフランソワ・オランド大統領によって交渉された。プーチンの各交渉相手は最近、ミンスク交渉は平和的解決を約束してロシアを停戦に誘い、ウクライナに軍事的解決に向けた軍備増強の時間を与えるための意図的な欺瞞であったと明らかにした。その主張を信じるなら、見かけ上の平和交渉は、最初から軍事的解決を意図していたものの隠れ蓑だったことになる。

ミンスク交渉の主役はドイツのアンゲラ・メルケル首相である。しかし同首相が2022年12月1日のシュピーゲル誌インタビューで語ったところによれば、「ミンスク会談の間、ウクライナがロシアの攻撃をうまくかわすために必要な時間を稼ぐことができた。現在、ウクライナは強固で要塞化された国になっている。あのとき、プーチンの軍隊に制圧されていたことは間違いない」。12月7日、メルケルはツァイト紙のインタビューでその告白を繰り返した。「2014年のミンスク合意は、ウクライナに時間を与えようとするものだった」とメルケルは述べた。ウクライナは「今日見るように、この時間を使ってより強くなった。2014~15年のウクライナは、今日のウクライナではない」

メルケルの主張は、ミンスクの参加者によって検証されている。オランド元仏大統領は12月28日のキエフ・インディペンデント紙のインタビューで、「ミンスクでの交渉は、ウクライナにおけるロシアの進出を遅らせるためのものだったと考えているか」と問われ、「そうだ、この点に関してはアンゲラ・メルケルが正しい」と答えた。そして「2014年以降、ウクライナは軍事態勢を強化した。実際、ウクライナ軍は2014年のそれとはまったく異なっていた。訓練も装備も良くなっていた。ウクライナ軍にこのような機会を与えたのは、ミンスク合意のおかげである」と述べた。

メルケルとオランドは、現在受け入れられている物語に合わせるために、過去の物語を書き換えるというオーウェル的な行為に及んだというもっともな指摘がなされている。しかし二人の説明は、プーチンと交渉しているもう一人の人物によって裏付けられる。

フィリップ・ショートの伝記『プーチン』によれば、ポロシェンコは後に、ミンスク合意に署名したのは「戦闘を止める唯一の方法だったからだが、政治体制や世論のナショナリズムの勢いのために、それが実行されることはないとわかっていた」と述べたという。

しかし2022年5月、ポロシェンコは「ミンスク合意を実施する政治的意志がないことを知りながら署名した」という主張を超え、ロシアを欺いたのは意図的だったとするメルケルとオランドの主張を裏付けた。ポロシェンコはフィナンシャル・タイムズ紙に、ウクライナは「軍隊をまったく持っていなかった」と語り、ミンスク合意の「偉大な外交成果」は「ロシアを国境から遠ざけること、国境からではなく、全面戦争から遠ざけること」だったと述べた。この合意により、ウクライナは軍備を整える時間を得ることができた。ポロシェンコはウクライナのメディアなどに「我々は望んでいたことをすべて達成した。我々の目標はまず、脅威を止めること、少なくとも戦争を遅らせること、つまり経済成長を回復し、強力な軍隊を作るための8年間を確保することだった」と語った。

ウォロディミル・ゼレンスキー(ウクライナ現大統領)は最近になって、証言に加わっている。ロシアとの和平やミンスク2への署名を掲げて当選したにもかかわらず、ゼレンスキーは現在、それらに署名するつもりはなかったと述べている。2月9日、ゼレンスキーはシュピーゲル誌に、協定を「譲歩」とみなし、メルケルとマクロンに「ミンスク全体としては……このままでは実施できない」と告げて「驚かせた」と語ったと報じられている。

更新した主張とは裏腹に、ゼレンスキーはミンスク合意を実施するという選挙公約を守ることに誠実であったようだ。当選後、ゼレンスキーは記者団に対し、ドンバスの分離主義者たちとの和平交渉を「再起動」させると語った。「ミンスク(和平)協議の方向性を継続し、停戦の締結に向かう」と伝えたのである。

2019年10月1日、ゼレンスキーは、ドンバスの選挙と自治権の承認を求めるドイツとフランスの仲介によるシュタインマイヤー方式に署名した。しかし「国内ですぐに反発に遭い」、ロシア、ドイツ、フランスはシュタインマイヤー方式に合意したものの、ウクライナは結局合意しなかった。

ロシアとの和平交渉とミンスク合意への署名を約束したゼレンスキーに対する反発は、強引で危険なものだった。極右民族主義的な準軍事組織「右派セクター」の創設者であるドミトリー・ヤロシュは、ゼレンスキーが選挙公約を実行すれば「彼は命を落とすだろう。どこかの木にぶら下がるだろう。……彼がこのことを理解することが重要だ」と脅した。

ウクライナの超国家主義者に外交の道を断たれたゼレンスキーは、選挙公約を翻し、合意の履行を拒否した。連邦主義者から民族主義者への旅は、決して珍しいものではなかった。ニコライ・ペトロは、ウクライナの運輸相であるウォロディミル・オメラヤンの2019年の発言を引用する。「ウクライナの新たな大統領はそれぞれ、自分こそがロシアと建設的な対話を行うことができ、ビジネスを行い、良好な関係を築く仲裁人の役割を与えられているという確信を持ってスタートを切る。……そしてすべてのウクライナ大統領は結局、(民族主義者)バンデラの事実上の(国家主義)信奉者となりロシア連邦に喧嘩を売る」

物理的な脅迫に直面した政府のメンバーは、ゼレンスキーだけではなかった。2020年3月12日、ゼレンスキーが「和解と統一のための国家プラットフォーム」を創設することを発表した場で、ゼレンスキー顧問のセルゲイ・シボコは、アゾフ大隊の大群から地面に投げ飛ばされた。

ミンスク2は自分が実行しない譲歩だというゼレンスキーの主張は、大統領になったばかりの頃(の考え)を反映していないかもしれないが、ウクライナ政府関係者の大合唱は反映している。メルケルとオランドの後の主張に力を貸したのは、ウクライナ国内ではポロシェンコとゼレンスキーという2人の大統領だけではない。

ニコライ・ペトロは『ウクライナの悲劇』の中で、「当初からウクライナの戦略はミンスク2の実施を阻止することだった」と述べる。ポロシェンコ、メルケル、オランドの証言に加え、ウクライナの元外相パウロ・クリムキンがラジオのインタビューで、「ウクライナがミンスク2に署名した唯一の目的は、ウクライナ軍の再建と対ロシア国際連合を強化することだった 」と述べたと、ペトロは伝えている。クリムキンは「文字どおりに読めば、ミンスク合意は実行不可能だ」と述べ、さらに「それは初日から理解されていた」と、欺瞞の事実を確固たるものにしている。

ペトロいわく、「過去と現在のウクライナの交渉担当者は皆、2021年2月にゼレンスキー大統領の参謀長であるアンドリー・イェルマークがしたのと同様に、同じ点を指摘している」。

メルケルとオランド、ポロシェンコとゼレンスキー、ウクライナ内部の声によって形成される、この多数の認め合いが真実なら、ミンクス合意は、ウクライナが軍隊を作り、西側がドンバスでのロシアとの戦争に備えてずっと計画し意図していた連合を作りながら、ロシアをなだめすかそうとする欺瞞だったと言えるだろう。

The Minsk Deception and the Planned War in Donbas - Antiwar.com Original [LINK]