前回触れたコロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、ウクライナ戦争の報道について「ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト、MSNBC、CNNといった主要メディアは、バイデン米大統領の嘘を繰り返し、国民から歴史を隠す、政府の単なる代弁者になっている」と厳しく批判する。これら米メディアの報道を右から左に垂れ流す日本のマスコミも、「国民から歴史を隠す、政府の単なる代弁者」だといわざるをえない。
A WAR OF LIES
— David Sacks (@DavidSacks) February 17, 2024
The war in Ukraine is based on lies — lies about how it started, how it’s going, and how it will end.
We are told that Ukraine is winning when in fact it is losing. We are told that the war makes NATO stronger when in fact it is depleting it. We are told that…
日本のマスコミはことあるごとに、米欧日の西側諸国は「民主主義陣営」だと胸を張る。けれども、政府やメディアが正しい情報を提供しなければ、民主主義の主役であるはずの国民は、物事を適切に判断できない。「ロシアは悪、ウクライナと西側は善」という単純な図式、つまり嘘を振り撒くのは、ジャーナリズムではなくプロパガンダでしかない。
起業家で論客としても知られるオリバー・サックス氏(サックス教授とは無関係)は2月18日、ソーシャルメディアのX(旧ツイッター)で、「嘘の戦争」と題する長文の投稿をした。ウクライナ戦争に関する西側の情報は、戦争の始まりだけでなく、進行中の出来事についても嘘にまみれていると告発し、終わるときにも嘘でごまかすだろうと予言する。
サックス氏は戦争の現状について、こう述べる。「ウクライナは勝っているといわれるが、実際は負けている。(略)ウクライナの最大の問題は米議会からの資金不足だといわれるが、実際には西側諸国は十分な弾薬を生産できない。解決には数年かかる問題だ」
サックス氏によれば、欺瞞はそれだけでは終わらない。「和平の機会はないといわれるが、実際には交渉による解決の機会を何度も拒まれた。ウクライナが戦闘を続ければ、交渉上の地位が高まるといわれるが、実際には、すでに提示し拒否された条件よりもはるかに悪くなるだけだ」
こうした嘘が紛争を長引かせ、その結果、ウクライナは「肉挽き機」(多数が戦死する戦場)にかける人々をさらに動員しようとし、国民の不満が急増し、ゼレンスキー政権の崩壊につながるとサックス氏は予測する。
さらにサックス氏はいう。ウクライナがついに戦争に敗れ、国が廃墟と化したとき、「嘘つきども」はこういうだろう。我々は最善を尽くした。プーチン(露大統領)に立ち向かった。プーチン擁護派の第五列(スパイ)がいなければ成功していた、と。同氏はこう締めくくる。「そして責任を転嫁し、自らをほめ称えると、アフガニスタンやイラクで大失敗した後にウクライナに移ったように、あっけらかんと次の戦争に移るだろう」
この投稿に対し、Xの会長を務める起業家イーロン・マスク氏は「的確だ」とコメントした。
サックス氏の予測が的中するかどうかはともかく、政府の公式見解に反するこうした見方もすくい上げ、公平に紹介するのが、言論の自由を掲げるジャーナリズムの役割だろう。今やその役割を果たしているのはXのような一部のソーシャルメディアであり、大手マスコミではない。
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