ロシアの野党活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏が、獄中で急死した。これに対し米欧政府は、死因もまだ定かでないのに、プーチン露大統領に責任があると非難した。日本の主要紙はその尻馬に乗るかのように、一斉にナワリヌイ氏をほめたたえてその死を悼み、ロシアを叩いている。
(社説)ナワリヌイ氏 弾圧国家が恐れた勇気 https://t.co/faaR5hpupm
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) February 18, 2024
違法な侵略戦争を進めながら、市民からの正当な批判を恐れ、封殺する。プーチン体制の危険性だけでなく、その本質的な弱さも浮き彫りにされたとみるべきだ。
朝日新聞は2月19日の社説で「直接の死因は不明だが」と断りつつ、「過酷な環境で自由を奪われていたことを考えれば、プーチン政権による弾圧が引き起こした悲劇であることに間違いはない」と決めつける。苦しい屁理屈だ。もし朝日のこの理屈が正しいのなら、同じ「過酷な環境」の刑務所で自由を奪われて過ごす囚人たちがバタバタ倒れていなければおかしいが、そんな情報はない。
朝日の主張は、「何が起きたのか正確には分からないが」と前置きしつつ、「プーチンと彼の悪党たちがしたことの結果であることに疑いはない」となぜか自信満々断言した、バイデン米大統領の無責任な発言と大した違いはない。
朝日は続けて、ナワリヌイ氏の経歴について「2000年代から、政府高官の隠し資産や豪邸などを暴露するブロガーとして人気を集めた」とだけ述べる。間違いではないが、これだけでは同氏がどんな人物かわからない。
ナワリヌイ氏がロシア政界で頭角を現したのは2006年、極右の年次集会「ロシアの行進」(同年モスクワで禁止)を支持してからだ。同氏はイスラム地域からの移民を「虫歯」にたとえ、移民の自由に反対した。12年には、「ロシアの外交政策はウクライナやベラルーシとの統合に最大限向けるべきだ」と説いた。
つまりナワリヌイ氏は、進歩的な朝日が忌み嫌うはずの、ヘイトスピーチを行う極右だったうえ、ウクライナのロシア統合を説く民族主義者だったのである。実際、ウクライナではロシアの民族主義者として非難された。ロシアの「侵略」と戦うウクライナを応援する日本のメディアが、そんな人物をほめたたえるのは筋が通らない。
その後、ナワリヌイ氏の発言は穏やかになったが、それは純粋な信念の変化というよりも、西側諸国の支持を得たり、自らを「反プーチン」と称したりするためだったとみられている。朝日など日本のメディアが同氏を持ち上げるのも結局、「反プーチン」なら誰でもいいからだろう。
大騒ぎされるナワリヌイ氏の死と対照的なのは、先月ウクライナの刑務所で死去した米国人ジャーナリスト、ゴンザロ・リラ氏だ。ウクライナ東部ハリコフ州に住み、ブログや動画で情報発信してきたリラ氏は昨年5月、ウクライナ保安局(SBU)に逮捕され、ウクライナの指導部と軍の「信用を失墜させた」として訴えられていた。
同氏の父親によれば、リラ氏は獄中で重い肺炎にかかったのに刑務所から無視された。父親は「息子の死に方を受け入れることはできない。拷問され、恐喝され、8カ月と11日間も隔離されていたのに、米大使館は息子を助けるために何もしなかった」と嘆いた。
リラ氏の非業の死について、日本のメディアがウクライナ政府に対し怒りを表明することはなかった。同じ獄中死でも、政治的な事情によって、騒がれたり無視されたりする。これがジャーナリズムの現実なのだ。
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