ロシアがウクライナに侵攻して2月24日で丸2年となった。新聞各紙は一斉に社説で取り上げたが、たいていの論調はこれまでとまったく変わらない。ウクライナはあくまで戦い続けろ、という勇ましい主戦論だ。戦況がウクライナに不利となり、多数の兵が戦場で日々命を落としているにもかかわらず、戦争をやめるなという主張は、ウクライナ人はもっと大勢死ねと言うに等しい。
(社説)ウクライナ侵攻2年 長期化見すえ持続的支援を https://t.co/Y2SBSLOjbI
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) February 23, 2024
ロシアが国際規範をふみにじり、隣国ウクライナへの全面的な侵略を始めて、きょうで2年になる。ロシアが一方的に始めた戦争を終わらせられるのは、ロシアだけだ。プーチン大統領に改めて求める。
とくに目に余るのが、日ごろは日本国憲法の平和主義を守れと唱える、朝日新聞のタカ派ぶりだ。24日の社説で「ロシアが一方的に始めた戦争を終わらせられるのは、ロシアだけだ」と決めつけ、あらためてプーチン露大統領に対し「ただちに停戦し、ウクライナ領土から全軍を撤退させよ」と、中身に全然進歩がない。
朝日の「ロシアが一方的に始めた戦争」という言葉に読者は、ウクライナとの戦争は2年前の侵攻で突然始まったと思い込むだろう。しかし今回の戦争は、激化はしたものの、長期の紛争の一局面にすぎない。紛争は2014年2月にウクライナで起こったクーデター「マイダン革命」から断続的に続いている。親露派の大統領を倒し、親米派を据えたクーデターで、米国が関与していた。
民族主義色の濃い新政権は、ロシア語の使用禁止などロシア系住民差別政策を打ち出し、このため東・南部で大規模な抗議デモが起こる。政府はこれを暴力で弾圧し、その後も度重なる砲撃で女性や子供を含む多数が死傷してきた。2年前にロシアが侵攻に踏み切った際、ロシア系住民の保護を目的としたのはそのためだ。内戦への武力介入という選択が最善だったかどうかはともかく、経緯を無視して断罪するのは乱暴すぎる。他国への人道的介入は米国もたびたび行っている。
別の背景として、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授が指摘するように、米欧が北大西洋条約機構(NATO)をそれこそ一方的に東方に拡大し、ロシアの安全を脅かしてきたことも見落とせない。
朝日はプーチン大統領に対し「ただちに停戦」せよと求めるが、ロシアはこれまで停戦を探っており、それを米欧が阻んできたというのが事実だ。2022年3月、ロシアとウクライナはトルコのイスタンブールで停戦について会談し、ほぼ合意した。ところが米英が介入してウクライナのゼレンスキー大統領に合意を破棄させ、長期戦に踏み切らせた。仲介を務めたイスラエルのベネット元首相らが明らかにしている。
また、今月13日のロイター通信の報道によれば、昨年末から今年初めにかけて、ロシアが米国に接触し、停戦の可能性を探ったものの、米国に拒否されたという。
プーチン大統領は今月、米国人記者タッカー・カールソン氏のインタビューで、停戦に向けた対話について聞かれ、イスタンブール会談が中断された以上、ロシアから最初の一歩を踏み出すつもりはないとして、こう答えた。「なぜ、他人の過ちをわざわざ正さなければならないのか」。当然の言い分だろう。
朝日は「侵略者が得をする事態に至れば、模倣する勢力が後に続き、力と恐怖が支配する世界が現出しかねない」と書く。そのご高説を、徴兵され前線に送られるウクライナの兵士やその家族に聞かせてやればいい。きっと喜んで犠牲になってくれるはずだ。
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