日本経済新聞は2月10日の社説で「ロシアによる侵攻を受けたウクライナへの欧米による資金支援が滞っている」と述べ、「支援の停滞が続けば、「法の支配」を守る民主主義陣営の決意の揺らぎとして世界に誤ったシグナルを発することになる」と警告を発した。正義のためなら金を惜しむなという、経済紙らしからぬ勇ましい主張だ。
[社説]危ういウクライナ支援停滞https://t.co/EqQZaoQsTh
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) February 10, 2024
もしお金が無尽蔵にあれば、正義のためにどれだけ支援しても構わないだろう。しかし残念ながら、お金は無尽蔵ではないし、コストを増税や物価高などの形で負担させられるのは、各国の納税者なのである。資金支援が滞るのは当然だ。
日経は、米国を中心とする西側諸国が「「法の支配」を守る民主主義陣営」だと持ち上げるが、いまどきそんなことを信じているのは、よほど国際情勢にうとい読者だけだろう。早い話、もし米国がそのようにご立派な「陣営」の代表だとすれば、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザの住民の大量殺害という「明白な国際人道法違反」(グテレス国連事務総長)を放置するばかりか、イスラエルに対し武器・資金の支援まで続けて平気なはずがない。
日経は、ロシアが「侵攻による利益を手にしたまま強引な停戦で幕引きをはかろうとしている」と書くが、今回の紛争がロシアの一方的な「侵攻」で起こった単純なものでないことは、政府やマスコミの垂れ流す物語を信じるだけの浅はかな読者でない限り、いい加減気づいている。
イスラエルとパレスチナの紛争が昨年10月7日に突然始まったのではないように、ロシアとウクライナの紛争も2022年2月24日にいきなり始まったのではない。コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が整理するとおり、その原因は冷戦終結時、米欧が北大西洋条約機構(NATO)の拡張はしないとソ連に約束したにもかかわらず、それを無視して東方への拡大を続けたことにある。ロシアを悪、ウクライナを善と決めつける勧善懲悪の浪速節はもうたくさんだ。
かりに、ロシアが「強引な停戦」に持ち込んだとして、その何が悪いのか。勝ち目のない戦いをいつまでもやめさせてもらえず、日々多くの命を落とすウクライナの人々からすれば、「民主主義陣営」のメンツなどどうでもいいから、一刻も早く戦争を終わらせてほしいに違いない。
どうしてもウクライナが戦争を続けたいのであれば、自分の金でやってもらいたい。冷たく聞こえるかもしれないが、もっと早く資金支援をやめておけば、ウクライナ(とロシア)の人々はこれほど大勢死なずに済んだ。
日経は、米欧で「厭戦気分」が広がってきたという。やがて丸2年になる戦争が嫌になるのは当然だし、資金支援が尽きるのは、戦争をやめたいウクライナの人々に良いことだ。しかし日経はそれを嘆き、日本は「ウクライナを助けていく必要がある」と尻を叩く。人道支援や避難民の受け入れはともかく、ただでさえ負担増にあえぐ日本の納税者に、遠く離れた外国の戦争のために払う金は、もうない。
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