北田暁大と五野井郁夫はしきりに、左翼も政権を担うには経済成長策を示さなければならないと力説し、白井聡もある程度同意する。しかし彼らが挙げる具体案は、自公政権以上に国家主義的で、市場経済を窒息させる。
第1に、公務員給与の引き上げや公務員数の拡大で消費を刺激する案。ケインズ経済学の倒錯を示す誤りである。社会を物質的に豊かにするには、消費を煽るのでなく、民間投資で生産力を高めなければならない。
第2に、最低賃金の引き上げ。全国に時給1500円を推し広めろという。最低賃金の引き上げが未熟練労働者を中心に失業を増やすことは、経済学のイロハである。企業は機械化を加速し、人を雇わなくなるだろう。
第3に、課税強化と再分配。富裕層や大企業から税金を多く取れば、投資に回る資金が減り、生産が減り、物価が上がる。つまり実質所得が低くなる。中間・貧困層の生活は楽にならない。政府が関与する分、資源配分が不効率になり、むしろ彼らを貧しくする。
もし左翼勢力が政権を取っても、このような経済原理を無視した政策では、国民生活の悪化は避けられない。すぐに軍国的な自公政権に返り咲かれるか、失政を糊塗するため自公以上に強権的な政府に変貌するかだろう。
経済政策よりはむしろ沖縄問題など安全保障政策に傾聴すべき部分はあるが、分量は少なく、全体として高くは評価できない。
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