自民党は憲法改正で日本の「主権と独立」を守ると言うが、本音は違うのではないか。政権中枢の官僚や政治家は「アメリカの意向を忖度して自発的に隷従する、という信仰にも似た強固な意識や価値概念」(p.12)で行動しているのではと著者は指摘する。
そもそも日本の官僚機構は敗戦後、米軍の占領に便利なように温存された経緯がある。元首と中央政府の存在が認められなかったドイツと異なり、天皇と政府を認める「間接占領」の方式がとられたためである(p.38)。
間接占領は「よほど日本人の肌に合ったのでしょうか、日本はアメリカ側も驚くほどこのシステムに順応していきます」(p.38)。宮沢喜一によると、当時の官僚の多くは占領軍を自己の都合のよい方に引っ張っろうと「徹底的にオベッカを使って成功した」(p.39)という。むろん、純粋に「国益」のためばかりではなかっただろう。
政府の自発的隷従の象徴といえるのが、占領時に米軍の物資・労務調達のため設立された特別調達庁である。日本が講和・独立した際、米国側からもう不要と言われたにもかかわらず、日本側の自発的意思で存続が決まった(p.58)。
後身の防衛施設庁は官製談合事件を起こし2007年に廃止されたものの、防衛省に統合され、米軍の「おもてなし」を続ける。「巨大な権益を抱える組織の意識や価値観は容易には変革できません」(p.195)という著者の言葉が重い。
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