2022-10-21

古典的自由主義と帝国主義は水と油

ケイトー研究所シニアアナリスト、マリアン・テューピー
(2017年12月16日)

2017年8月はインド亜大陸が分割され、ヒンズー教徒主体のインドとイスラム教徒主体のパキスタンが誕生し、(インド・パキスタン戦争の)虐殺が始まってから70年の節目の年である。英国はこの記念すべき年に、多くの知的自責の念に駆られた。かつて植民地保有国だった頃には、これら古い植民地を手放すまいとしたにしても、である。

一般にリバタリアン(自由主義者)は、西洋の価値観を他国の人々に押し付けることには賛成しない。たとえ政治的・経済的自由が望ましく有益だとたまたま信じていても、である。昔からそうだった。アダム・スミスは熱心な反帝国主義者で、帝国は「金の無駄遣い」だと考えていたし、リチャード・コブデンは自由貿易と外交政策における不干渉主義を両立させるべきだと考えていた。

ニーアル・ファーガソンは2004年に出版した『大英帝国の歴史』でコブデンの言葉を引用し、「わが国の商業に関する限り、武力や暴力によって海外を維持することも、大きく傷つけることもできない」と述べている。「わが国の市場を訪れる外国の顧客は、英国の外交官の権力や影響力を恐れてここに連れて来られたわけでもなく、わが国の艦隊や軍隊に捕らえられたわけでもなく、わが国に対する愛情によって引き付けられたわけでもない...欧州の商人が、世界の他の国と同様に、英国の港に船を出し、英国の労働生産物を積み込むのは、もっぱら自己利益の要請によるものである」

なぜ、この一見古く見える歴史を蒸し返すのか。帝国主義を批判するのは、古典的自由主義者やリバタリアンだけではないからだ。共産主義者とその仲間は、ソビエトが東欧と中央アジアに築いた広大な帝国領域を無視する一方で、反帝国主義のバトンを受け取り、それを非常に効果的に使って、自由な市場経済を支持する者をネオ帝国主義者として叩くのである。実際、経済発展に関する文献の中で最大かつ最も悪質な神話の一つは、資本主義が植民地などで多数の人々を搾取する一方で、植民地保有国などで少数の人々だけを利するというものだ。

この神話の起源は、カール・マルクスにさかのぼる。マルクスは、資本主義のもとでは、競争が利益を押し下げ、その結果、労働者の搾取を強化する必要があると考えた。このドイツの経済学者の間違った理論(一人当たりの世界平均所得は過去200年間に10倍になった)は、ウラジーミル・レーニンが1916年に出版したパンフレット『帝国主義』の中で更新された。

レーニンの時代には、西側先進国の労働者は、マルクスが『資本論』(1867年)を書いたときよりも明らかに裕福になっていたので、更新が必要だったのである。ソビエト連邦の最初の独裁者レーニンは、新しい命題を考案した。搾取された植民地から富が西側諸国に流入したため、西側諸国の労働者の生活水準はマルクスの主張とは逆に向上し続けたという。レーニンの主張は第三世界の指導者たちに大きな影響を与え、彼らは資本主義を否定し、代わりにある種の社会主義を受け入れた。今日でも発展途上国の大部分は、西側諸国の大部分に比べて経済的な自由度が低いままである。

植民地主義とそれに対する発展途上国の反応は多くの不幸をもたらしたが、西洋はその帝国主義の過去から無傷では済んでいない。英国の作家ダグラス・マレーはその新著『西洋の自死』で、植民地時代の罪悪感がいかに西洋の自信を失わせ、西洋人をグローバルな富の分配の道徳(=正義)に対して不安な気持ちにさせるかを説いている。

しかし、経済学者ディアドラ・マクロスキーが『ブルジョアの品格』で示すように、「植民地の富の蓄積」によっては、数学的に言えば、1800年代初頭から西洋の生活水準が16倍になったことを説明できるわけがない。同様に、ノーベル経済学賞受賞者のアンガス・ディートンやメリーランド大学哲学教授のダン・モラーも、西洋の繁栄は西洋の帝国拡大より先に起こったことを示した(つまり、西洋帝国主義は西洋の繁栄の原因というよりは、西洋における財産増大の結果だった)。

全体として、帝国主義は悪い考えであり、そんなものはいらない。とはいえ、帝国主義は西欧の繁栄の根源も程度も説明しないし、説明できない。

(次を全訳)
Classical Liberalism Is Incompatible with Imperialism - HumanProgress [LINK]

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

確か大日本帝国の「満蒙は生命線」のスローガンに対するアンチテーゼが小日本主義だったと聞いた覚えがあります。