2022-10-28

プロパガンダと恐怖戦術

ジャーナリスト、カート・ニモ
(2022年10月24日)

ニュースを無批判に読めば、プーチン(露大統領)がウクライナを核攻撃するつもりだと考える人は多いだろう。もちろん、プーチンはウクライナで核兵器を使うとは言っていない。自国が存亡の危機に直面した場合のみで、間違いなく米政府の方針と同じである。

企業の戦争プロパガンダメディアによって流された嘘とヒステリーは、欧米の何百万人もの人々を怯えさせる結果となった。恐怖のキャンペーンは、ニューヨークに対して核攻撃が行われることをほのめかすまでに至った。ニューヨーク市危機管理局は、核攻撃に対して何をすべきかをニューヨーカーに指示する、まったくおかしな公共広告を公開し、その一翼を担った。屋内に入れ、屋内にとどまれ、メディアの情報をチェックせよ、とビデオは指示する。

核爆発の際に「その場に身を隠す」ことは、無価値にも等しいという事実が語られていない。このビデオは、核兵器が一発、ニューヨークを標的にすることを想定している。くだらない恐怖煽りはこれだけではない。ロシアはその存在が脅かされた場合、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」(SS-18「サタン」の後継)を使うだろう。この新ミサイルは6000マイルを移動することができ、16個の独立した標的核弾頭を搭載する。フランスと同じ面積を破壊する能力がある。

言うまでもなく、マンハッタンからクイーンズ、そしてそれ以外の地域に「避難」している人たちは、その場で死んでしまうだろう。控えめに見積もっても、400万人が死亡し、さらに500万人が負傷するだろう。この核兵器が2発、米国の東海岸を狙った場合、1000万人以上が死亡することになる。

世間を騒がせているインチキな主張は、フォーリン・ポリシー誌(洗脳プログラム「モッキンバード作戦」の制作会社グラハム・ホールディングスが所有)が言うように、プーチンが「世界を吹き飛ばす」だろうというものである。(攻撃の責任を敵になすりつける)偽旗作戦の結果でない限り、そのようなことは起こらないだろう。

偽旗の可能性は明白であるように思われる。「ロシアの(ショイグ)国防相は10月23日、ウクライナが放射性物質を含む『挑発』を準備していると主張した。ロシアが南部でウクライナの前進を食い止めようと苦闘し、緊張が高まるなか、この厳しい主張をウクライナとイギリスの当局者は強く否定した」と同日、フリープレス・ジャーナルは報じている。

ロシア国防省によると、ショイグ氏は「『汚い爆弾』に関わるウクライナの挑発行為の可能性」について懸念を表明した。核爆発のような壊滅的な威力はないものの、広範囲を放射能汚染にさらす恐れがある。

政治的な駆け引きのために嘘をついたり説明を省略したりすることは、最近始まったことではない。米国で最も尊敬されている大統領の一人であるジョン・F・ケネディは、いわゆるキューバ・ミサイル危機の際、メディアに対して誠実な態度を示さなかった。ブログサイト「デイリー・ビースト」(ニューズウィーク誌と同じ親会社)にグレッグ・ミッチェルが寄稿している。

ケネディはキューバのソ連ミサイルへの対応で広く賞賛を浴びたが、その過程で、ホワイトハウスが危機の発生中にいかにマスコミを操作し、あるいは嘘をついたかについてマスコミの間に広く憤慨を呼び起こした。ホワイトハウスのピエール・サリンジャー報道官から、危機の間は自己検閲をし、報道を差し控えるための12項目の正式な「ガイドライン」を受け入れるよう繰り返し要請され、記者たちはしぶしぶ従ったのであった。 たしかに、危機が去れば、政権は少し行き過ぎたと認めるかもしれない(大統領の健康状態や旅行に関する嘘さえも)。少なくとも、危機が生んだ秘密保持の要求をすぐやめるかもしれない。

国防総省の広報担当アーサー・シルベスターは、キューバ危機の間、「(自分の擁護した)情報統制が第二次世界大戦当時よりも厳しかったと認め、猛烈な批判を招いた」という。「そしてシルベスターは、政府の報道『管理』を良く言う際、バイアスのかかった言葉を使った(あやうく口を滑らせかけたが、ケネディ自身、「ニュース管理」という言葉を使い、その習慣を好んだ)」。

「すべての記者は主義信条を問わず、今や政府の宣伝マンかと悲鳴を上げた」

今日、企業メディアの部屋では、国家が作り出したフェイクニュースに対して「悲鳴」は上がっていない。

大多数の「ジャーナリスト」は、自分のキャリアや生活が突然行き詰まらないように、国家が垂れ流す嘘や誤報を文句も言わずにただ書き連ねるだけである。

国家とその所有者によって無知とみなされた米国民(たしかに多くはそうだが)には、安全保障国家を批判や憤りから守るため、大小の嘘を絶えず食わせなければならない。

ケネディはメディアを嫌い、キューバのミサイル危機とされる事態に関して、ソ連がカリブ海の島から全ミサイルを撤去したかどうか中央情報局(CIA)に確認させようとした。

その裏で、ケネディは報道陣をいら立たせ続けていた。撤去したとされるミサイルの一部をソ連が隠しているという、キューバ難民の主張が報道された。ホワイトハウスで国家安全保障の補佐官たちと会議をしたケネディは、それがマスコミに出れば、米国民は「本当だと思うに違いない」し、そうなればソ連との緊張が再び高まり、「もしかしたら戦争になるかもしれない」とまで不満を口にした。そのようなマスコミ報道は、ケネディ政権を「無能か嘘つき」と思わせるものだ。ケネディはマコーンCIA長官に、ミサイルの撤去を確認し、報道を否定するよう頼んだ。

ケネディは、メディアが米国民に伝える内容を管理する「新しい仕組み」を求めていた。「しかし側近らは、ホワイトハウスが報道は間違いだと反論し、否定し始めるのは得策ではないと主張した」。ケネディは結局、メディアに対し報道記事の裏付けとなる証拠を国に提出させるという要求を撤回した。

デイリー・ビースト(ニューズウィーク)は安全保障国家(1950年代、CIAのモッキンバード作戦=メディア操作作戦=で始まった)に取り込まれた大小の嘘つきプロパガンダメディアの構成分子だから、当然ながら、上記の引用記事は当時のトランプ大統領への厳しい批判で終わっている。

ケネディは要求を撤回した。かりに当時、ケネディが自分のツイッターを持っていたとしても、現在のホワイトハウスの住人と違って、報道機関を「米国民の敵だ」とか、「報道機関が書きたいことを書けるのは正直言ってうんざりだ」と告発したとは想像もつかないだろう。

もはや企業メディアと国家の間に敵対関係はない。ここ数年続いている現在の取り組みは、あらゆる手段を使ってオルタナティブ(代替)メディアを根絶やしにすることだ。情報空間は消毒され、国家の行動に有利な嘘や誤報を広めるために安全な場所にされなければならない。それがどんなに狂気じみ、殺意に満ちていてもだ。

上記の公共広告は、プロパガンダと恐怖戦術の典型例である。どんなに不合理で現実と食い違っていても、国家とそのメディアによって採用される。プーチンがニューヨークと東海岸の大部分を核攻撃するという印象しか残さない。恐怖は便利な道具だ。国民に感情的で不合理な反応をもたらし、海外での違法で不道徳な戦争や、国内での警察国家の行動拡大に向けた合意を形成できる。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Fake News, Fake Putin Nuclear Threat [LINK]

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