2017年3月4日土曜日

川勝義雄『魏晋南北朝』


シルクロードの自生的秩序

道は政府が作るものだと現代人は思い込む。しかし魯迅の小説ではないが、もともと道のない地上に歩く人が多くなれば、それが道となる。つまり道とは本来、道徳や言語と同じく、人々の自由な行為を通じ自然に形成される自生的秩序だ。

自生的秩序としての道の典型例は、有名なシルクロードだ。本書によると、シルクロードは漢帝国崩壊後の六朝の大混乱期も、きわめて活発に利用された。背景には、沿線諸国が東西貿易を中継することで経済的基盤を得ていたことがある(p.75)。

沿線諸国は中継貿易による利潤と通行税を得たほか、国民も通行するキャラバンに物資を売り、生活が豊かになった。貿易路を円滑に働かせることこそ国の維持・繁栄に必須の条件だったので、政治的混乱の中でもルートは途絶えなかった(同)。

シルクロードを巡る「国際緊張」もなかった。北方の遊牧民は沿線のオアシス農業国家に略奪を試みることもあったが、家畜・畜産品と農産物の交換を通じ共存共栄関係にあった。キャラバンを護衛して通行の安全を保障し、保護料を得た(p.76)。

シルクロードによる東西貿易と文化交流は、さまざまな国家の興亡にもかかわらず、大きな障害を受けることなく続いていった。六朝から隋唐にかけ中国文明が華やかなコスモポリタン文明として咲き誇るのも、この貿易路のおかげである。

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