2017年3月13日月曜日

アトキンソン『新・所得倍増論』


政府の関与は有害無益

経済に問題があると、多くの人はすぐ「政府が何とかしろ」と主張する。それも一般人だけでなく、本書の著者のように、経済の専門家にも少なくない。しかしそれは正しくない。政府の関与は問題を改善するのでなく、むしろ悪化させる。

アナリスト出身の著者は、日本は生産性が低いと指摘し、改善には改革が必要だと訴える。ここまでは賛成だ。ところがその先の議論がおかしい。政府は公的年金などを通じ、経営者に株式時価総額向上のプレッシャーをかけろと言うのだ。

著者が政府に圧力を求める背景には、企業経営者に対する不信感がある。生産性を上げる改革には反発が多くて面倒なうえ、実現しても経営者の給料は増えない。だから現状維持を望むのは当然と言う。しかし、これは原因を見誤っている。

経営者が改革に不熱心なのは、政府に保護され、消費者を満足させなくても淘汰される心配がないからだ。その典型は、窓口が午後3時に閉まると著者が憤慨する銀行だ。経営が傾いても政府が救済してくれるなら、必死になる理由はない。

経営者の尻を叩きたいなら、規制や保護をやめ、自由に競争させればよい。政府が株価を上げろと圧力をかければ、企業は安易な金融緩和や既得権益を守る規制強化を求め、政治家・官僚は喜んで応えるだろう。経済活性化どころではない。

なお著者は、京町家を壊してビルやマンションを建てる京都人を批判し、政府はなぜ規制に動かないのかと嘆く。しかし町家はもともと職人・商人の住まいであり、著者が引き合いに出すベネチアの美しい街並みと同様、自由な市場経済によって築かれたものだ。規制を厳しくすれば、社会は文化を生む活力を失うだろう。政府の介入はつねに有害無益である。

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