2014年12月23日火曜日

プーチン非難の欺瞞

ロシアのプーチン大統領に対し米欧のメディアや知識人が非難の声を強めている。ウクライナ問題をめぐって広まった悪玉論が、最近の通貨危機でさらに勢いづいた。プーチンはそれほど悪いだろうか。

ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマン(Paul Krugman)が先週、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムでプーチンを叩いた。主流メディアの主張をなぞり、「プーチン氏は問答無用にウクライナを侵略した」と決めつけている。

これを批判したのはジャーナリストのロバート・パリー(Robert Parry)である。ウクライナ問題はクルーグマンがいうよりもはるかに複雑で微妙だと指摘。クルーグマンと同じプリンストン大学で教授を務めるロシア研究者、スティーヴン・コーエン(Stephen F. Cohen)の議論を引用しながら、こう反論する

クルーグマンが無視している現実がある。それはウクライナのネオナチ分子である。反ロシア色を鮮明にする民族主義政党、全ウクライナ連合「自由」および同党と親しい極右団体「右派セクター」はともに、純粋な民族からなる国家をつくるため、「自由」のチャフニボーク総裁の言葉を借りれば、「モスクワのユダヤ人マフィア」と同性愛者、フェミスト、政治的左翼といった「人間のクズども」を一掃するよう呼びかけている。またどちらも、今年5月2日に起こった「オデッサの虐殺」(親ロシア派の抗議者が労働組合の建物に閉じ込められ、焼き殺された事件)をほめたたえた。

2013年以来、ウクライナ政府を支持する暴徒や民兵はロシア系住民をつねに虫にたとえ、侮辱している。オバマ米政権と親しいヤツェニュク首相は、南東部で抵抗する住民を「人間以下」と呼んだ。

こうした厄介な事情を無視すれば、ウクライナでほんとうに起こっていることについて米国民を欺くことはたやすい、とパリーは書く。プーチンの行動は、暴虐なネオナチから東部ウクライナのロシア系住民を保護するための措置ではなく、クルーグマンのコラムのように、たんなる「侵略」扱いされてしまう。プーチンを「マッチョ」と揶揄するクルーグマンを、パリーは「プーチンがロシア帝国の再建をめざしているという作り話を広めるネオコンと同類」と批判する。

プーチンが権力に伴う悪と無縁の政治家だなどというつもりはない。しかしほんとうに悪が許せないのなら、ロシアだけを責めるのは筋が通らない。高知大学准教授の塩原俊彦がいうように、たとえば日本政府がロシアのクリミア併合を非難するのであれば、なぜその前に米国によるイラク侵攻やキューバ・グアンタナモ湾占領を問題視しないのか。

「他国を非難し、制裁を加えるのであれば、自らの襟を正すべきであり、米国以外の国は米国の傍若無人をもっと厳しく糾弾しなければならない」(『ウクライナ・ゲート』69-70頁)という塩原の主張は正しい。

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