注目の投稿

「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2022-11-10

最低賃金上げがダメな5つの理由

エコノミスト、ジョン・フェラン
(2019年3月25日)

全米の州や市で、最低賃金の引き上げを求める運動が展開されている。通常、最低賃金は15ドルを目指している。なぜ15ドルなのか。サービス従業員国際組合のケンダール・フェリス氏の説明によると、「10ドルでは低すぎるし、20ドルでは高すぎるので、15ドルにした」そうだ。

経済学者ポール・クルーグマンが言うとおりである。

最低賃金を上げると、どのような影響があるだろうか。経済学の基本を学んだ学生なら、誰でも答えがわかるだろう。労働の需要量を減らし、その結果、失業をもたらす。

米在住の経済学者の72%が、連邦最低賃金を時給15ドルにすることに反対している理由の一つはこれである。

もう一つの理由は、実証的証拠の大勢が示唆するところによれば、最低賃金の引き上げは意図した政策目標を達成できないからである。

2008年、経済学者のデビッド・ニューマークとウィリアム・ウォッシャーは、最低賃金法の効果に関する20年にわたる研究を調査した。焦点を当てた五つの分野について、政策の影響をそれぞれ以下のように述べている。

1. 最低賃金は雇用を減らす

全体として、検討した100ほどの研究のうち約3分の2は、最低賃金の雇用へのマイナス効果について(決して統計的に有意ではないものの)比較的一貫した証拠を得た。一方、プラスの雇用効果について比較的一貫した示唆を与えているのは8つだけである。対照的に、最も信頼できる証拠とした33の研究のうち、80%以上がマイナスの雇用効果を指摘している。

2. 最低賃金の引き上げは、低賃金労働者の所得を減らす

最低賃金の上昇は平均して、影響を受ける労働者の経済的福利を低下させる傾向があることを、証拠は示している。最低賃金以上の賃金を得ている労働者への影響に関する証拠は、最低賃金の引き上げによって労働所得が減少することを示唆しており、最低賃金が雇用や労働時間に及ぼす負の効果を反映している。

3. 最低賃金の引き上げは、一部の低賃金労働者の生活を向上させ、他の労働者の生活を犠牲にする。

最低賃金の引き上げは、低所得世帯の間で所得の再分配をもたらすことがほとんどである。雇用機会の減少や労働時間の短縮の結果、得をする者と損をする者があり、正味で見れば、貧しい家庭や低所得の家庭がより悪くなる可能性があることを示している。

4. 最低賃金の引き上げは、若年労働者の技能を低下させ、将来の収入を減少させる

最近の研究では、最低賃金の上昇にさらされた10 代の若者は、20代後半で賃金や収入が低く、取得技能の低下と一致することがわかっている。

5. 最低賃金の引き上げは、製品・サービスをより高価にする

限られた実証的証拠が一貫して示すところによれば、最低賃金の引き上げは、低技能労働者によって生産される商品やサービスの価格上昇につながる。

ニューマーク氏は2018年12月、調査を更新し、「最低賃金の導入・引き上げで雇用は減るのか」と問いかけている。それによると、次のとおりだ。

最低賃金引き上げの潜在的な利点は、影響を受ける労働者の賃金が上がることであり、その中には貧困層や低所得者層がいる。一方、潜在的な欠点は、最低賃金が上がると、最低賃金で助けようとする低賃金・低技能労働者を企業が雇用しなくなる可能性があることだ。

最低賃金が低技能労働者の雇用を減らすとすれば、最低賃金は貧困層や低所得層を助ける「タダ飯」(費用なしに得られるもの)ではなく、ある人々の利益が他の人々のコストになるトレードオフ(相反)を意味する。研究結果は一様ではないが、特に米国では、最低賃金が低技能労働者の雇用を減少させることを示唆する証拠がある。

賃金を上げる唯一の方法は、労働者の生産性を上げることだ。最低賃金法によって低技能労働者の雇用を違法化しても、何の役にも立たない。

(次より抄訳)
Economist: 5 Reasons Raising the Minimum Wage Is Bad Public Policy - Foundation for Economic Education [LINK]

反動派よ、進歩派に立ち向かえ!

経済学者、ジョセフ・サレルノ
(2022年11月3日)

米国の社会的・政治的状況は激変しており、自由の勝利とリヴァイアサン(国家という怪物)の打倒を望む者は、それに応じて戦略を調整しなければならない。新しい時代には、古い、そしておそらくは時代遅れの戦略を考え直すことが必要である。——マレー・N・ロスバード

マレー・ロスバード(米経済学者、自由主義の理論家)は、1994年に早すぎる死を迎える直前に、上記の言葉を書いた。この言葉は、1990年代に彼が発表した一連のすばらしい論文の主要テーマを要約したものであり、東欧とソビエト連邦における共産主義の崩壊の後に出現した新しい政治的・社会的な現実に応じ、リバタリアン(自由主義)戦略を根本から再調整するよう呼びかけている。ロスバードはこれらの論文で、当時出現した抽象的な社会哲学と具体的な政治運動の双方が、自由と社会に対する最大の脅威だと指摘した。そして、変化した思想的・政治的文脈の中で求められる新たな戦略を表現するために、政治的枠組みの抜本的な見直しと政治用語の改訂を提案したのである。 

先に進む前に、ロスバードの論文は、その深い洞察とリバタリアン戦略への根本的な示唆にもかかわらず、いくつかの理由で敵味方関係なくほとんど見すごされてきたことを指摘したい。第一に、この論文を書いたとき、ロスバードは経済思想に関する二巻の記念すべき論説(『経済思想史におけるオーストリア学派の視点』)の執筆に懸命になっていた。当然ながら、1991年から1994年にかけての急激な変化の時期に、特定の出来事、思想、政治的展開に対する一回限りの反応として、これらの論文をすばやく書き上げたのである。そのため、ロスバードの戦略に関する新しい見解は、どうしても繰り返しや重なりを含む、異なる論文の中の断片として提示された。このため、これらの論文を総合すると、急進的な社会的・政治的変革のための体系的かつ包括的な戦略が示されているという事実が不明瞭になった。第二に、これらの記事は、社会・政治・文化の解説誌である「ロスバード・ロックウェル・レポート(RRR)」に掲載されたものである。残念なことに、RRRは非常に広範なトピックを扱っているため、多くの論文を支える深い理論的考察から読者が遠ざかってしまうことがあった。正直なところ、私は最近までロスバードの記事の意義、その統一性と視野の広さを理解していなかった。

社会民主主義――敵の正体


共産主義が崩壊し、ナチズムとファシズムが「とうに死んで葬られた」後、社会民主主義が唯一残された国家主義体制であり、その支持者はイデオロギーの独占を最大限に利用しようと躍起になっているとロスバードは主張した。「ポスト共産主義の新世界」において、ロスバードはこう書いている。

自由と伝統の敵は、今や社会民主主義であることが完全に明らかになった。社会民主主義は、そのあらゆる形態で、いまだに存在しているだけでなく、スターリン(ソ連の独裁者)とその後継者が去った今、社会民主主義者は、全権力を手に入れようとしているのである。

社会民主主義は、その多くの形態でいまだに存在しているだけでなく、「左派の被害者学やフェミニズムから、右派の新保守主義(ネオコン)まで、政治思想の分布図全体を網羅する」。ロスバードは「すべての重要問題に関し、社会民主主義者がどのように自称しようと、自由や伝統に反対し、国家主義や大きな政府を支持する立場」だと警告している。さらに、社会民主主義は「社会主義を『民主主義』と『探求の自由』という魅力的な美徳と結びつけると主張しているので、他の形式の国家主義よりもはるかに陰湿である」。社会民主主義者、米国の政治用語では左翼リベラルは、一世紀半にわたり政治状況を鋭く観察し、たしかに真剣に民主主義に関与している。ロスバードの次の説明のとおりである。

民主的な選択肢を維持することは、たとえそれが幻想であっても、あらゆる種類の社会民主主義者にとって不可欠である。一党独裁体制は、心から嫌われ、おそらく最後には、その権力構造全体とともに打倒されることを、社会民主主義者は長い間、認識してきた。

ロスバードは、現代の政治理論家ポール・ゴットフリートの洞察に基づき、社会民主主義者が民主主義に傾倒するのは、言論の自由と報道の自由の権利の「絶対的」不可侵を主張する人々に対する攻撃の口実にもなると指摘する。言論の自由に対する攻撃について、ロスバードは1991年に先見の明をもって指摘している。

(ネオコンと社会民主主義者は)「非民主的」だとする言論や表現を制限・禁止するために、いずれ国家権力を行使する。この「非民主的」とされる区分は無限に拡大しうるし、そうなるだろう。実際の、あるいはその疑いのある共産主義者、左翼、ファシスト、ネオナチ、分離主義者、ヘイト思想犯、そしていずれは昔ながらの保守主義者、昔ながらのリバタリアン、左派リバタリアンも対象になるだろう。

進歩主義――社会民主主義の社会思想


ロスバードは、社会民主主義や共産主義のすべての系統と変種の根底にある独特の社会哲学を明らかにするために、さらに深く探った。この哲学は、今ここにある社会・経済政策以上のものであり、将来の地上天国の建設を目指すユートピア的な社会哲学である。進歩主義者の核となる信念は、歴史とは人類の完成に向けた、避けようのない、つねに上昇する行進だという啓蒙神話に基づくものである。社会民主主義者の場合、完璧の定義とは、正しく、効率的で、平等主義的な社会主義国家によって支配され、設計された社会である。さらに社会民主主義的な進歩主義者は、伝統的なマルクス主義者とは異なり、歴史は階級闘争や流血の革命を通じてではなく、民主主義の容赦ない前進によって展開されると信じている。ロスバードの言葉を借りれば、

左翼はその骨の髄まで 「進歩主義者」である。つまり、ホイッグ史観(勝利者による正統史観)あるいはマルクス史観的に、歴史とは光の中へ、社会主義のユートピアへと向かって避けがたく上昇する、行進から成ると信じている。歴史は自分たちの味方であるという、進歩の必然の神話を信じている。

この避けがたく進歩する社会変革の究極目標は、伝統的なマルクス主義のような、あらゆる階級区別の根絶とプロレタリアート独裁のもとでの生産手段の集団所有ではない。むしろそれは、ロスバードの言葉を借りれば、「官僚、知識人、技術者、療法士、『新階級』全体が、平等を求める認定被害者圧力団体と協力して運営する、社会主義・平等主義の国家」である。資本家階級と企業家階級は消滅しないし、その生産手段も収奪されることはないだろう。その代わり、市場経済は維持されるが重税を課され、規制され、制限される。ロスバードによれば、

社会民主主義者は、社会主義国家にとって、資本家を残し、縮小された市場経済を規制・制限・管理し、国家の命令に従わせるほうがはるかに良いと理解している。社会民主主義の目標は「階級闘争」ではなく、資本家と市場が社会と寄生的国家機構の利益のために働く、一種の「階級調和」である。

政治思想の枠組み見直し


ネオコンが保守主義運動を乗っ取り、「民主党中道派」ビル・クリントン(元米大統領)が強硬な左翼路線を示したことから、ロスバードは、進歩派に対抗するには、米国の政治思想の枠組みとその語彙の一般概念を完全に修正することが急務だと気づいた。社会変革の進歩的・マルクス主義的構想に触発されたすべての政治党派を、再構築した政治思想分布図の左側に並べた。これらの党派はまた、進歩的な政治的・経済的目標を実現する最も確実な手段としてだけでなく、ロスバードの言葉を借りれば、「十戒や山上の垂訓を含む他のすべての道徳原則に事実上取って代わる、究極の絶対倫理としての禁忌」として、民主主義を狂信していた。ロスバードの考えでは、左派とは政府系の保守派、ネオコンから左派リベラルに及び、それらと結びついた知識人・メディアのエリート、公式被害者団体も含んでいる。

2022-11-09

政治と癒着する軍上層部、国民を危機の淵に

ジャーナリスト、カート・ニモ
(2022年11月3日)

ダグラス・マクレガー退役大佐のこの論説が怖くないとしたら、一体何が怖いだろう。マクレガー氏は、フランスの週刊誌「ルクスプレス」によるデビッド・ペトレイアス元大将のインタビュー記事を引用している。このインタビューで、元中央情報局(CIA)長官でもあるペトレイアス氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領とその政府の敗北を防ぐために、米国政府が現場でロシアと直接対峙する時が来たと述べているのである。

マクレガー氏はこう書いている。

たしかに、この件は怪しげではあるが、ペトレイアス氏の提案は却下されるべきではない。同氏の軍事に関する専門知識が検討に値するからではない。むしろペトレイアス氏は、米政府や金融業界の有力者に言われない限り、このような提案をすることはないだろうから、注目に値するのである。ジェフリー・サックス氏(経済学者、コロンビア大学教授)が米国人に語ったように、グローバリストとネオコン(新保守主義者)のエリートは、明らかにロシアとの直接的な武力衝突を望んでいる。

マクレガー氏によれば、ペトレイアス氏は「何事もやる前に自分より上の立場の人間に確認することで出世してきた」のだという。上司を怒らせないように、歯向かわないようにして、出世の道を切り開いたという。

イラクで、ペトレイアス司令官率いる「有志連合」が、経済制裁で破壊されたイラクを難なく制圧したことを思い起こそう。ペトレイアス氏はこのような考え方に囚われているのだ。「ウクライナはイラクではないし、ロシア軍はイラクのような軍隊でもない」と、マクレガー氏は警告している。

冬が始まると、故障や離反の多いウクライナ軍にロシア軍を撃退する能力がないことは、痛いほど明らかになってくる。「過去60日から90日にかけてのウクライナの一連の反撃は、ウクライナの何万人もの命と、ウクライナ政府では補充できない軍の人的資源を犠牲にした」と、マクレガー氏は書いている。

マクレガー氏によれば、ウクライナは今、正念場である。「11月か12月、あるいは地面が凍る頃に、ロシアのハンマーがゼレンスキー政権に振り下ろされ、ウクライナ軍の残党はすべて粉砕されるだろう」

今は11月で、秋の雨でぬかるんでいることで有名なウクライナの野原は、まもなく凍りつく。ロシアは、ゼレンスキー政権と、現在ウクライナの正規軍に組み込まれている超国家主義のネオナチ連隊に終止符を打つために動き出すだろう。

ペトレイアス氏は、このタイミングが非常に重要だと考えている。大量虐殺を行ったステパン・バンデラ(第二次世界大戦中に本物のナチスに協力し、何十万人ものユダヤ人、ポーランド人、ジプシー、その他の「下等人種」を虐殺した)に敬意を表する「愛国者」たちで構成されたゼレンスキー政権とその大統領を救うには、今しかない。

ホワイトハウス、国防総省、CIA、米議会のいつもながらの戦争タカ派は、宣戦布告なしにウクライナに米軍を派遣すれば、ロシアに対し体面を保てるという主張を、おとなしい米国の有権者が信じてくれると考えているのだろう。

マクレガー氏は、「そんな考えは危険で愚かであり、米国人はこの考えを拒否すべきだが、このような誤った考えが政府中枢に蔓延していると考えるのは無理からぬことだ」と考えている。

米国民は今、多くの問題、とくにインフレと経済悪化で頭がいっぱいだ。ウクライナ人に同情はしても(ウクライナの歴史やネオナチがウクライナのロシア系住民にもたらす脅威をほとんど知らない)、直接軍事介入は政府に取り組んでほしいことのリストの上位にないことはたしかである。

ワシントンの権力中枢では、「参戦」の前提にはつねに一定の条件がある。戦争権限法を発動する責任を無視する従属的な議会、軍事行動を支える無制限の財源、軍事担当の政治家が主張するどんな馬鹿げた考えにも従う準備ができている軍の上級指導者たちである。ペトレイアス氏やその仲間には、将来の任命や金銭上の利益という形で、何らかの具体的な報酬が約束されている可能性も高い。

一言でいえば、地球上で最も多くの核兵器を保有する国(ロシア)との直接対決の可能性は、国家安全保障の舵取りをする指導者たちのことを考えれば、明らかに高まっているのである。「米国の軍事指導者たちの知的・職業的資質は嘆かわしいほどだ」とマクレガー氏は結論づける。

実際その事実は、かつて強力だった米軍が最初に負けた大規模戦争であるベトナム戦争以来、明白である。ペトレイアス氏のような身勝手な出世主義者が多く、かつての面影はない。

今、地獄の淵に立っていると警告しても大げさではない。水準が下がり政治色を強めた軍の指導者、ネオコン、少なからぬ数の議員が、ゼレンスキー政権をどう救うかについて考えを巡らせているのだから。同政権は、米政府と国務省のビクトリア・ヌーランド(国務次官)ら狡猾なネオコンによって画策された違法なクーデター(2014年のマイダン革命と呼ばれる政変)の後継者である。

バイデン政権には、「人道的介入主義者」とネオコンが多い。ダグラス・マクレガー元大佐の経験を考慮し、その見方が正しいとすれば、私たちは今、取り返しのつかない奈落の底に突き落とされようとしているのである。ミサイルが発射されたら、もう後戻りはできない。地球上の生命が絶滅する可能性は、日に日に高まっている。

(次を全訳)
Former CIA Boss Petraeus Demands US Forces Enter the Fight in Ukraine [LINK]

ばかげた反露被害妄想

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年11月8日)

中間選挙を控え、米当局の反露パラノイア(偏執的な被害妄想)はピークに達している。連邦政府は、ロシア人が米国の有権者に不適切な影響を及ぼし、国防総省(ペンタゴン)や中央情報局(CIA)の極端な反露感情を拒む候補者を支持させていないかどうかを見極めるために、インターネットを調べ上げている。米国の有権者は、そのほとんどが公立学校の卒業生であることから、親共産主義者や親ロシアのカモにされやすい、きわめて軟弱な精神を持っているというのだ。

たとえば昨年7月、司法省はアレクサンドル・ヴィクトロヴィッチ・イオノフ氏というロシア人を起訴した。イオノフ氏はモスクワを拠点に「ロシアの反グローバリズム運動」という組織を率いており、ロシア政府から資金援助を受けているとされる。

容疑は何か。マシュー・オルセン司法次官補は 「イオノフ氏は大規模な宣伝活動を指揮し、米国の政治団体と米国民をロシア政府の道具にしたとされる」と述べている。

この意味がわかるだろうか。公立学校で教育を受けた米国人の心はとても軟弱でプロパガンダに弱いので、連邦政府のパパによって、米国人を闇の世界に引き込もうとする邪悪なロシア人から守ってもらわなければならないのだ。

司法省刑事局のケネス・ポライト司法次官補は、オルセンが述べたことを補強した。「米国の選挙や政治団体に影響を与えようとする外国政府の秘密工作は、誤った情報を広め、不信感を醸成することで我々の民主主義を脅かす」。フロリダ州中部地区のロジャー・ハンドバーグ連邦検事は、この件に関し次のように述べた。「この犯罪行為を起訴することは、外国政府が米国の政治過程に介入しようとするときに、米国民を守るために不可欠である」

本来は知的であるはずの人たちが、このような意味不明な発言をするのを読むと、二つのことを考えずにはいられなくなる。

第一に、米国の役人が他国の政治過程に大規模に介入することをどうやって正当化するのかということだ。まずはイラン、グアテマラ、チリの民主主義体制を故意に、意図的に破壊したことを忘れてはならない。米国が支援する政権交代を狙った暗殺、クーデター、制裁、禁輸の計画は言うに及ばずである。

第二に、連邦政府を長い間動かしてきた極端な反露感情について議論するとき、ケネディ大統領(JFK)のことを考えずにはいられない。ケネディは、ペンタゴンやCIAとは正反対の方向に米国を動かそうと決意していた。ペンタゴンとCIAが米国民に植え付けた、極端な反ロシア(ソ連)感情に終止符を打とうと決意したのである。

もしケネディがテキサス州ダラスでの暗殺事件で助かり、1964年の再選に立候補していたら、どうなっていたかと考えずにはいられない。ケネディを支持し、共和党の対立候補バリー・ゴールドウォーター(国防総省やCIAと同じような考え方の持ち主)に反対するロシア市民を、国防総省とCIAは標的にしていただろうか。

そうしていたことは間違いないだろう。ケネディがソ連の手先となり、米国を破滅に導いているとも非難しただろう。実際、拙著『悪との遭遇——ザプルーダー物語』で詳述したように、それこそ暗殺前に国防総省とCIAがケネディについて語っていたことなのである。自由の未来財団(FFF)が刊行した、『JFKと国家安全保障体制の戦い——なぜケネディは暗殺されたのか』も参照されたい。暗殺記録審査委員会の委員を務めたダグラス・ホーン氏の著書だ。

何十年にもわたって米国を支配してきた国防総省とCIAの極端な反露感情は、米国民の自由と幸福に対する重大な脅威である。その理由の一つは、反露感情が(1962年のキューバ危機に続いて)再び、命を奪う核戦争の淵に私たちを追いやっていることだ。この馬鹿げた妄想を早く終わらせれば、米国民はもっと幸福になれるだろう。

(次を全訳)
The Anti-Russia Paranoia – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2022-11-08

マスク氏対国家主義者

元ニューヨーク大学教授、マイケル・レクテンワルド
(2022年10月31日)

イーロン・マスク氏がツイッターを買収し、ただちに上層部を解雇した事実が示すのは、「社会正義に目覚めた」ハイテク大手カルテルが弱体化する可能性だ。このカルテルは情報を管理し、コンテンツを検閲し、ユーザーを非難・追放し、左翼全体国家主義者のプロパガンダ機関として機能している。左翼国家主義への協力と推進を考えると、ツイッター、フェイスブック、グーグルなどが、私が「統治性」と呼ぶ国家機関として機能してきたことは十二分に明らかである。マスク氏の買収は、「目覚めた」カルテルだけでなく、カルテルが熱心に仕えるグローバリスト国家主義者らにも打撃を与える可能性があることを意味する。

マスク氏のツイッター社での作戦が、「目覚めた」カルテルにとって重要なテストケースになると論じてきた。「世界一の富豪」を国家の代理人に対抗させるものだからだ。マスク氏の買収は、このカルテルとその支持する国家主義者が、マスク氏が自身の財産を使った行動を統制することによって、財産権をどれだけ侵害することができるかを実証することになるだろう。

すでに欧州連合(EU)は、ツイッターのコンテンツを管理するようマスク氏を脅している。マスク氏が「鳥(ツイッター)は解放された」とツイートした後、EUの産業責任者ティエリー・ブルトン氏は「欧州では、鳥はわれわれEUのルールに従い飛ぶだろう」とツイートした。ブルトン氏は、欧州全域で「違法・有害コンテンツ」の禁止を目指すEUの「デジタルサービス法」に間接的に言及したのである。

しかしデジタルサービス法は、ソーシャルメディアや検索エンジンによるコンテンツ管理を共通化し、米国では(まだ)法的に認められていない「偽情報」や「ヘイトスピーチ」に対するEUの厳格で反言論の法律が適用される恐れがある。EU圏のユーザーに対してはEUで施行されたコンテンツ規制の遵守を強いられることになるため、ツイッター社がEU発の投稿とそれ以外からの投稿を区別できるアルゴリズムを構築しない限り、デジタルサービス法の規則をすべてのコンテンツに単純適用するおそれがある。

マスク氏がツイッター買収に動いた直後、米国やEUを含む数十の国や国際統治機関が、「偽情報や誤報に対する耐性を強化し、民主的プロセスへの参加を増やす」ことなどを目的とした「インターネットの未来に関する宣言」の批准を発表した。マスク氏がツイッター買収を発表した二日後、バイデン政権は「偽情報統制委員会」の設立を発表したが、その後、少なくとも現時点では廃止された。

「目覚めた」カルテルとその支持する左翼全体主義的国家主義が、主要ソーシャルメディアの所有権に対するマスク氏の侵攻をただ黙って受け入れるとは思えない。この戦いは、「権力者一派」にとって情報統制がいかに重要であるかを示すことになるだろう。

マスク氏は決して自由市場リバタリアン(自由主義者)の模範ではないが、ツイッターの買収と再編は、目覚めたカルテルとそのが支持する国家に対する自由の闘いにおいて、重要な出来事であることに変わりはない。ツイッターで起こることは、マスク氏の誠意と決意を試すだけでなく、国家の命令と物語を強制する「目覚めた」カルテル体制の力をも試すことになるだろう。

私は最近、ツイッターによる反体制的意見の排斥の犠牲者となった。トランスジェンダー運動は新マルサス主義による人口減少政策の一環である(同時に家族を解体する手段でもある)と主張したために、追放されたのだと思う。マスク氏が指揮を執る今、アカウント回復(と認証)を願っている。しかし、期待はしていない。

(次を全訳)
Changing of the Guard: Can Musk Deliver on His Promises for Free Speech and Information? | Mises Wire [LINK]

米次期議会に3つの提案

元米連邦下院議員、ロン・ポール
(2022年11月7日)

明日は米中間選挙の投票日だ。世論調査では、米国民は民主党による上下両院の支配を覆すと言われている。政治家やメディアはいつも、今回は史上最も重要な選挙だと言う。しかし投票が終わり、煙が晴れると、たいして変化がないことがあまりにも多い。ワシントンの一党独裁が引き継ぎ、現状維持を確認するだけだ。

こんなことではいけない。たとえば、次期共和党の上下両院は、自分たちの票がワシントンの似た者同士の争いで無駄になったわけではないと支持者を安心させるために、早い段階で手を打つことができるだろう。ここでは、良いスタートを切るための三つの提案を紹介する。

まず共和党の上層部は、前議会で決められたウクライナへの巨額の資金注入を止めると宣言しなければならない。米国・北大西洋条約機構(NATO)とロシアの代理戦争を戦うために、ウクライナに600億ドルもの資金が投入されたとの見方もある。

これは共和党の支持層に強く支持される動きだろう。ウォールストリート・ジャーナル紙の最近の世論調査では、共和党員の37%しかウクライナへの援助増額を支持していない。共和党の扇動的な下院議員であるマージョリー・テイラー・グリーン氏は最近、共和党のもとではウクライナに一ペニーたりとも渡さないと述べた。党上層部がこのような動きを支持するかどうかは疑わしいが、共和党の有権者が支持するのは明らかだ。

さらに、この代理戦争を終わらせることで、世界的な核戦争の危険な可能性を減らすという利点もある。これは悪くない取引だ。

第二に、共和党は国土安全保障省の予算削減を表明することができる。この怪物が作られたとき、私は議場でこう言った。

「新しい国土安全保障省に与えられた危険で憲法違反の権限は、数え切れないほどある。令状なしの捜査、地域社会全体へのワクチン接種の強制、連邦政府の近隣密告計画、連邦情報データベース、軍事情報を使って国内市民をスパイする国防総省の不吉な『情報啓発室』の新設などは、この新しい法律の厄介な点のほんの一部にすぎない」

残念ながら、これらのことはすべて実現した……そしてそれ以上である。最近わかったことだが、国土安全保障省はソーシャルメディア企業と共謀し、政府が他人に聞かれたくない意見を米国人が言ったり投稿したりできないようにしようとしている。

国土安全保障省は私たちを安全にすると約束したが、憲法の破壊ほど私たちを危険にさらすものはない。

最後に、次期共和党の上下両院ができる三つ目の仕事は、おそらく最も簡単なものである。「連邦準備理事会(FRB)監査法案」を可決することだ。十年前、米下院は私が提案したFRB監査法案を超党派で可決したが、上院では足踏み状態に陥った。共和党が議会の両院を支配する今、幅広い支持を集め、FRBの帳簿を公開する法案が、バイデン大統領に承認されない理由はないだろう。誰もが透明性を支持しているはずだから。

インフレは制御不能で、米国の中産階級に実害を及ぼしている。バイデン政権は米国民をロシアとの命がけの戦争に導こうと決意しているようだ。国土安全保障省は米国民と憲法に対して動員される武器と化している。

共和党が支配する下院と上院は、これらの問題を解決するために実際に何かをすることができるし、その結果、米国民を安全で自由にすることができる。お手並み拝見といこう。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Hey Incoming Congress: Try These Three Simple Tricks for a Successful Start [LINK]

2022-11-07

終わりなき戦争

コラムニスト、フィリップ・ジラルディ
(2022年11月1日)

プロイセンのカール・フォン・クラウゼヴィッツ少将は、ナポレオン戦争での自らの体験をもとに、政治現象としての戦争を考察したことで有名である。1832 年の著書『戦争論』では、戦争と平和についてよく引用される簡潔な要約を示し、政治・ 軍事戦略という観点から、「戦争は他の手段による政治の継続にすぎない」と書いている。言い換えれば、戦争は、他のすべてが失敗したときに国家の政治目標を達成するために政治家に提供される道具である。

クラウゼヴィッツの戦争に関する考え方の極度の非道徳性を否定する一方で、歴史上、一部の国家が戦争を利用し、領土の拡大と外国資源の収奪を図ってきたことを認めることができる。古くはローマ共和国で、選挙で選ばれた指導者が執政軍の長を兼ねており、執政軍は毎年春になると帝国を拡大するために出兵することになっていた。最近では、英国が数世紀にわたってほぼ絶えまなく植民地戦争を行い、史上最大の帝国を築き上げたことが知られている。

米国を支配するネオコン(新保守主義者)の特徴は、自らが帝国の責任とそれに密接に結びついた戦争権力を受け継いだと考えていることだ。しかし米国を戦争によって作られ、力を得た国家に変貌させるうえで、別の側面を避けてきた。第一に、他国と交戦した後に何が起こるかは予測不可能である。米国の戦争は、朝鮮半島に始まり、ベトナム、アフガニスタン、イラク、そしてラテンアメリカ、アフリカ、アジアでの小規模な作戦に至るまで、死や破壊や負債に見合う好ましいものがほとんどなく、被害を受けた人々に悲しみだけをもたらしてきた。また、武力行使を急ぐあまり、米国民に目に見える利益をもたらすという連邦政府の存在意義が忘れられている。9・11テロ以降、いやそれ以前から、そのような利益はまったくなかった。ウクライナをめぐるロシアとの代理戦争となったものに対する米国の強硬姿勢は、さらなる痛み(おそらく悲惨なほどの)をもたらし、本物の利益は何もないだろう。

もし戦争をすることがワシントンの民主・共和両党の主たる役目になっていることを疑うのなら、この数週間に掲載されたいくつかの記事を検討すればよいだろう。第一は、共和党側からのもので、おそらく明るい展開が含まれている。共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務は二週間前、来月の下院選挙で共和党が過半数を獲得すれば、ウクライナに「白紙の小切手」を書き続けるとは限らないと警告した。ウクライナの腐敗した政権に向けた際限のない財政支援に対し、共和党が懐疑的になっていることの表れだろう。マッカーシー議員は「国民は不況にあえぎ、ウクライナに白紙の小切手を書くことはないだろうと思う。そんなことはしない。...白紙の小切手はタダではない」

ウクライナに対する米国の無批判な支援は、戦闘が始まって以来、ホワイトハウスや メディアによって仕組まれたものであり、共和党員、とくにドナルド・トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」に賛同する一部の人々は、国内で記録的なインフレが起こっているときに、海外で多額の連邦支出を行う必要があるのかと異議を唱えるようになってきた。2月にロシアが侵攻を開始して以来、米議会はウクライナに対する数百億ドルの緊急安全保障・人道支援を承認し、バイデン政権はさらに数十億ドル相当の武器や軍備を軍の在庫から出荷している。その資金と武器の行き先は、ほとんど、あるいはまったく監視されていない。

しかし残念ながら、共和党はウクライナとロシアに対する取り組みで統一されているとは言いがたい。リズ・チェイニー下院議員(タカ派で知られたディック・チェイニー元副大統領の娘)は、「蛙の子は蛙」のことわざどおり、トランプ氏を吊るし上げる作業の合間を縫って、彼女のいう「共和党のプーチン派」を非難した。チェイニー議員はこう言った。「共和党はレーガン(元大統領)の党であり、冷戦に勝利した党だ。そして今、私が思うに、共和党のプーチン派は本当に大きくなっている」

チェイニー議員は、この問題に関してフォックス・ニュースが「プロパガンダを行っている」と批判し、とくにフォックスの司会者タッカー・カールソン氏を「あのネットワークで最大のプーチンのプロパガンダを行っている」と呼んだ。「この戦いでフォックスは誰の味方なのか、よく考えないといけない。ウクライナに残忍な侵略を行うプーチン(露大統領)の味方に米国がなると考える共和党の一派がいるというのは、どういうことなのか」

チェイニー議員は、そもそも米英がロシアとの外交よりも軍事力による威嚇を好んだために戦争に発展したという問題には、とくに触れなかった。なぜ米国は、米国民にとって真の国益とはいえない外交政策の問題で、核戦争の恐れの瀬戸際でビクビクせざるをえないと感じているのだろうか。チェイニー議員がどこで発言したかといえば、アリゾナ州のマケイン研究所だ。そう、それは(タカ派で知られた)故ジョン・マケイン元上院議員の遺産であり、マケイン氏は戦争であれば何でも熱心に支持した、もう一人の共和党員である。

ジョー・バイデン大統領もナンシー・ペロシ下院議長も、それがどんな意味であれ、「勝利」が得られるまで米国はウクライナから離れないと認めている。一方、他の政権幹部は、この戦闘の実際の目的はロシアの弱体化とプーチン大統領の排除だとほのめかしている。ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官は、マッカーシー議員の発言について聞かれると、党の方針をあっさりと口にした。同報道官は「ロシアの戦争犯罪と残虐行為に対するウクライナの自衛を支援する」ために超党派で活動している議会指導者に感謝し、こう付け加えた。「政府は議会と協力し、これら取り組みに関する議論を注視し続け、必要な限りウクライナを支援するつもりだ。毎日戦っている勇敢なウクライナ人に、彼らの自由と民主主義のために戦うという約束を守るつもりだ」

チェイニー議員のコメントよりももっと奇妙なのは、民主党の進歩派30人が作成した、ウクライナでの戦闘を終わらせる交渉に米国の支援を促す手紙の話だろう。この書簡は6月に作成されたが、先週まで公表されず、翌日には圧力ですぐに撤回された。議会進歩派議員連盟を率いるプラミラ・ジャヤパル氏は、マッカーシー議員がウクライナへの予算削減を警告した際の「発言と混同された」ために撤回された、と述べた。ジャヤパル氏はこの書簡を「注意散漫」と呼んだが、同氏が本当に言いたかったのは、無意味に拡大しているのが明らかな紛争における戦争と平和を含め、いかなる問題でも共和党と大義をともにする気はない、ということだ。

無知なジャヤパル氏はまた、自分のグループが出したメッセージをわざわざ否定し、政権のウクライナ政策に対し民主党議員から反対はなかったと強調した。民主党は「ウクライナの人々への軍事、戦略、経済支援のすべての施策を強力かつ全会一致で支持し、賛成票を投じてきた」という。ホワイトハウスのメッセージを倍加し、ウクライナの戦争は、「ウクライナの勝利」の後にのみ、外交によって終了すると断言した。

ようするに、ワシントンでウクライナについて良識を語る者は、政党内の勢力と、現場で起きている事実をすべて誤って伝える従順な国内メディアとの協力によって、締め出されるのである。バイデン大統領が最近、世界は核の「ハルマゲドン(終末戦争)」の最も高いリスクに直面していると警告したにもかかわらず、米政権は紛争を終わらせるためにロシアとの外交を模索する気配がなく、もちろんそれをプーチンのせいにしている。これは悲劇をもたらす。これらのことを考えると、私見によれば、自国民を守ると同時に、全世界を巻き込む恐れのある核の大惨事を避ける合理的な措置を取ることができない、あるいは取る気がない政府は、根本からして悪であり、すべての正統性を失っている。退陣する前に、その事実を認識すべきである。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : War Without End [LINK]

ワクチン義務化とグレート・リセット

経済学者、フィリップ・バガス
(2021年8月25日)

ワクチン未接種者への圧力が強まる。ある国のワクチン接種者は、コロナ対策によって奪われた自由を取り戻しつつあるが、ワクチン未接種者はそれほど恵まれていない。差別の対象になっている。公共の場への出入りや移動がより難しくなっている。国によっては、いくつかの職業にワクチン接種が義務付けられているところもある。

しかし、なぜ政府にとってワクチン接種キャンペーンがそれほど重要で、これほどまでに圧力を強めているのだろうか。誰が世界的なワクチン接種キャンペーンに関心を寄せているのだろうか。

これらの問いに答えるには、流布するワクチン接種の物語を分析し、そこから利益を得ているのは誰なのかを問うことが必要である。その際、政府、メディア、製薬業界、超国家機関の間の利害の一致に注目する必要がある。

まず、製薬業界から見てみよう。製薬会社はワクチン接種キャンペーンで明らかに経済的な利益を得ている。ワクチン接種が普及すれば、莫大な利益が得られるからだ。

政府はどうだろうか。新型コロナの危機では、政治家が恐怖とヒステリーを組織的に増幅させた。政府は内外の危険から国民を守るという主張の上にその存在意義を築いているのだから、これは偶然ではなく、当然である。政府は恐怖の上に成り立っている。政府の助けがなければ、国民は飢餓、貧困、事故、戦争、テロ、病気、自然災害、パンデミックに対して無防備になってしまうというのがそのストーリーである。したがって政府は、起こりうる危険に対する恐怖を植え付け、それを解決するように見せかけて、その過程で権力を拡大することが利益になる。比較的最近の例では、9月11日の同時多発テロと第二次イラク戦争の後、テロの脅威に対応するため、米国では市民の自由が制限された。同様に、国民の基本的権利を犠牲にして平時にはありえないほど国家権力を拡大するために、恐怖を意図的に植え付け、新型コロナを特異な殺人ウイルスとして描くことは、政府の利益につながるものであった。

コロナ危機が始まったとき、このウイルスの潜在的危険性についてあまり知られていなかったので、政治家は非対称的な対価に直面することになった。政治家が危険を過小評価し、対応しなかった場合、その責任を問われる。選挙も権力も失う。とくに、死者を出したことを非難されればなおさらである。集団埋葬の写真はともかく、危険を過小評価して行動しなかった場合の結果は、政治生命にかかわる。対照的に、危険を過大評価し、断固とした行動を取ることは、政治的にはるかに魅力的である。

本当に前例のない脅威であれば、政治家はロックダウン(都市封鎖)などの厳しい措置で称賛される。そして政治家はつねに、自分たちの断固とした行動がなければ、本当に災害が起きていたと主張することができる。結局、危険はそれほど大きくなかったので、対策は大げさだったと判明した場合、その対策によって起こりうる負の結果は、大量埋葬の写真ほど政治家に直接かかわるものではなく、間接的かつ長期的なものだからである。ロックダウンの間接的かつ長期的な健康コストには、自殺、うつ病、アルコール中毒、ストレス関連疾患、手術や検診のキャンセルによる早期死亡、総じて低い生活水準が含まれる。しかしこれらの代償は厳しいコロナ対策に直接関連するものではなく、政策のせいだとされる。これらの影響の多くは次の選挙以降、あるいはそれ以降に発生し、目に見えない。たとえば、生活水準が高ければ平均寿命がどの程度伸びたかを観察することはできない。また、6年後にロックダウンをきっかけに発症したアルコール依存症やうつ病で誰かが死んだとしても、ほとんどの人はロックダウンの政治家の責任を追及しないだろうし、追及したとしてもその政治家はすでに退陣している可能性がある。したがって、脅威を過大評価し、過剰に反応することが政治家の利益になるのである。

政治家にとって魅力的なロックダウンのような過酷な手段を正当化し、擁護するためには、恐怖心をあおることが必要である。コロナ危機で政治家が恐怖とヒステリーをあおり、ロックダウンのような厳しい規制を実施した際、経済と社会構造へのダメージは計りしれないものであった。しかし社会は、コストが上昇し続ける以上、永遠にロックダウンしているわけにはいかない。どこかの時点でロックダウンから抜け出し、正常な状態に戻らなければならない。だが殺人ウイルスの脅威に対する恐怖をあおりながら、どうやって正常な状態に戻すことができるのだろうか。

その解決策がワクチン接種である。ワクチン接種キャンペーンによって、政府は自らを深刻な危機の救世主として演出することができる。政府は国民のために予防接種を計画し、国民に「無料」で予防接種を提供する。この「接種救済」がなく、永久に封鎖された状態では、市民権の制限による経済的・社会的な悪影響が大きく、国民の恨みは募り続け、最終的には不安の危機が訪れるだろう。だから遅かれ早かれ、ロックダウンは終わらせなければならない。しかしもし政府当局がそれ以上の説明なしに封鎖や制限を撤回し、結局危険はそれほど大きくなかった、制限は誇張であり間違いだったとほのめかせば、住民の支持と信頼を大きく失うことになる。したがって政府の立場からは、最も厳しい制限の中で、面目を保つ良い「出口シナリオ」が必要であり、ワクチン接種キャンペーンはそれを提供してくれる。

政府が提供するワクチン接種によって、政府は大きな脅威という物語を保持し続け、なおかつロックダウンから抜け出すことができる。同時に、ワクチン接種によって正常性を多少なりとも高めている救世主として、自らを売り込むことができる。そのためには、できるだけ多くの人口がワクチン接種を受けることが必要である。もし人口の一部しかワクチン接種を受けなければ、ワクチン接種キャンペーンをロックダウンからの開放に必要なステップとして売り込むことができないからである。したがって、人口の大部分にワクチンを接種させることは、政府の利益となる。

この戦略がうまくいけば、政府は前例を作り、権力を拡大し、市民をより依存させることになる。市民は、政府が自分たちを死活的な苦境から救ってくれた、将来は政府の助けが必要になる、と考えるようになる。その見返りとして、市民は自分の自由の一部を永久に手放すことをいとわないだろう。政府が毎年行うブースター(追加接種)が必要だという発表は、市民の依存心を永続させるだろう。

マスメディアはワクチン接種のシナリオに同調し、盛んに支持する。政府とマスメディアは密接な関係にある。有力メディアによるフレーミング(枠づけ)と、国民を標的にすることには、長い伝統がある。すでに1928年にエドワード・バーネイズがその古典的著書『プロパガンダ』で大衆の知的操作を提唱している。現代の政府では、マスメディアは、コロナの場合のような政治手段に対する大衆の支持を構築するのに役立っている。

マスメディアが政府を支持するのには、いくつかの理由がある。あるメディアは国家によって直接所有され、他のメディアは厳しく規制され、政府の免許を必要とする。またマスコミ各社は政府の教育機関の卒業生で構成されている。さらに、とくに危機の時代には、政府との良好なつながりが利点となり、情報への特権的なアクセスが可能になる。政府の恐怖物語を喜んで伝えるのは、悪いニュースや危険の誇張が注目を集めるという事実にも由来する。

コロナ危機では、ソーシャルメディアを通じて拡散した一方的な報道が批判的な声を封じ込め、恐怖とパニックを助長し、国民に大きな心理的ストレスを与えた。しかしメディアにとって魅力的なのは悪いニュースだけでなく、政府が国民を大きな危機から救うという物語もまたよく売れる。このように、ワクチン接種の物語はマスメディアの思惑にはまる。

国民国家、メディア、製薬会社に加えて、超国家的組織も世界人口のワクチン接種を実現させることに関心がある。超国家的組織は、世界的なワクチン接種キャンペーンが重要な役割を果たすような方針を活発に追求している。これら組織には世界経済フォーラム(WEF)、国連、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)などがあり、相互に密接に結びついている。

これら組織のなかには、グレート・リセット、あるいはグレート・トランスフォーメーションを目標に掲げるものもある。パンデミックや気候保護、ジェンダー、移民、金融システムの分野において、これら組織は世界中のすべての人々の利益のために協調して答えを見つけたいと考え、責任の共有とグローバルな連帯を強調している。予防接種、気候変動、金融や移住の流れの中央管理は、新しい世界秩序の特徴を帯びる。たとえば、WEFの2019年年次総会のテーマは「グローバル化4.0:第四次産業革命時代のグローバルアーキテクチャを作る」である。また超国家的な計画の例として、国連の「移民のためのグローバル・コンパクト 」がある。国家レベルでは、ドイツ地球変動諮問委員会の政策文書「移行期の世界:大きな変革のための社会契約」が示すように、過激な考え方が支持されている。

レイモンド・ウンガー氏は、この超国家的計画の推進を、アントニオ・グラムシとハーバート・マルクーゼが構想した文化戦争の一環であると見ている。とくに気候変動やコロナの分野では、新しい社会主義的な世界秩序を確立するために、意見と怒りのグローバルな管理が、恐れと恐怖の場面と組み合わされる。実際、WHO、IMF、国連は元共産主義者によって率いられている。WEFは製薬業界や大手ハイテク企業を含むグローバル企業から資金提供を受けている。WEFはその一部で、国連の2030アジェンダに多大な資金を提供している。WHOもまた製薬会社やビル&メリンダ・ゲイツ財団から多額の資金提供を受けており、世界的なワクチン接種キャンペーンを先導している。コロナ危機の際にも、製薬業界はWHOに影響力を行使している。IMFはWHOの勧告に従った場合のみ、各国を支援する。

相互に結びついたこれら超国家機関は、コロナ危機を自分たちの方針推進のチャンスととらえている。国連の政策文書「責任の共有、グローバルな連帯---新型コロナの社会経済的影響への対応」は、新型コロナを現代社会の転換点としてとらえている。その意図は、この機会をとらえ、世界的に協調して行動することである。大手ハイテク企業はこうした方針を支持している。ハイテク大手はWEFのメンバーでもあり、マスメディアと同じように、そのプラットフォーム(ツイッター、ユーチューブ、フェイスブック)でコロナに関する好ましくない情報を検閲している。とくにユーチューブでは、ワクチン接種に批判的な動画はすぐに削除される。

IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事の基調講演のタイトル「グレート・ロックダウンからグレート・トランスフォーメーションへ」も、超国家組織がコロナ危機を自分たちの目的に利用したいのだという考えを強調している。WEFの創設者であるクラウス・シュワブ氏は、コロナ危機は「経済と社会の制度に新たな基礎を築く貴重な機会」であると主張している。シュワブ氏はティエリ・マルレ氏との共著『グレート・リセット』で、決定的瞬間について語り、新しい世界が現れると主張している。シュワブ氏によれば、今こそ資本主義の根本的な改革を行うべきときである。

したがって、世界的に連携したワクチン接種政策は、グレート・リセットの超国家的戦略の構成要素であると解釈することができる。その後の世界的な予防接種キャンペーンに利用できる、世界的な予防接種の仕組みが確立されつつある。グレート・リセット提唱者の視点から見ると、世界的に連携したコロナワクチン接種は、その後「気候変動」と効果的に闘い、グレートリセットを推進するような他のグローバルな目的のために使用できる、グローバルな構造と組織の必要性を強調するものである。つまり政府、メディア、製薬業界、超国家機関が密接に絡み合い、ワクチン接種という物語に共通の利害を持っているのだ。このような観点からすれば、ワクチン非接種者への圧力が強まるのは当然のことである。

(次を全訳)
Vaccine Mandates and the "Great Reset" | Mises Wire [LINK]

言論の自由を許さない人たち

ジョージ・ワシントン大学法学教授、ジョナサン・ターリー
(2022年11月4日)

ヒラリー・クリントン氏(元国務長官)ら民主党幹部は海外の仲間に検閲法の制定を呼びかけ、イーロン・マスク氏がツイッターで言論の自由を回復するのを阻止しようとしている。欧州連合(EU)は力強く応じてマスク氏に対し、言論の自由を拡大すれば、途方もない罰金や刑事罰を受ける恐れさえあると警告を発した。ソーシャルメディア企業の代理人による検閲を何年も利用してきた民主党指導者は、古き良き時代の国家検閲を再発見したようだ。

エリザベス・ウォーレン上院議員(民主党、マサチューセッツ州選出)は、ソーシャルメディアにおける言論の自由の価値を回復するというマスク氏の公約を、民主主義そのものを脅かすものだと断じ、そのような変更を阻止するために「ルールが設けられる」と約束した。ウォーレン議員だけではない。オバマ元大統領は、偽情報に対し「規制が解決策の一部でなければならない」と宣言している。

ヒラリー・クリントン氏は、その空白を埋めるよう欧州に目を向け、「手遅れになる前に世界の民主主義を強化する」ために大規模な検閲法を可決するよう欧州の対応相手に呼びかけている。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は最近、国連でこの世界的な検閲の呼びかけを繰り返し、外交官やメディアから喝采を浴びた。

EUの検閲官は、ツイッターのオーナーや顧客の希望に関係なく、ツイッター上で自由な言論を起こさないと米民主党の指導者に請け合っている。

欧米で最も強く言論の自由に反対する人物の一人、ティエリー・ブルトン欧州委員(域内市場担当)は、ツイッターの利用者が無修正の資料を読んだり、無許可の意見を聞いたりすることができるかもしれないと警鐘を鳴らしている。

ブルトン氏は自ら、EUの官僚が誤解を招きやすいか有害だと判断した意見を検閲する際には、ツイッターは「(EUの)ルールに従って飛ばなければならない」と脅した。ブルトン氏はマスク氏に対し、EUの許容範囲を超えるような保護を再び導入しないよう警告するために、公然と動いている。マスク氏はEUの検閲官と会談する予定であり、そうした強制的な検閲ルールに抵抗できないかもしれないと認めている。

クリントン氏のような指導者の希望は、最近EU諸国で可決された言論の自由に対する対策、「デジタルサービス法(DSA)」である。同法には強制的な「偽情報」規則が含まれ、「有害な」思想や意見を検閲できる。

ブルトン氏が公言する意見によれば、言論の自由は米国からやって来る危険であり、インターネットから遮断される必要がある。同氏は以前、EUはデジタルサービス法によって、インターネットがほとんど規制のない自由な言論の場(同氏によれば、インターネットの「未開拓時代」)に戻るのを防ぐことができると宣言している。

この発言は、EUが言論の自由そのものを存亡の危機とみなしていることを物語っている。良い言論が悪い言論に打ち勝つという言論の自由の概念を否定している。それは「未開拓時代」だとみなされている。

私たちの多くは、地下室から憎しみのこもった考えをまき散らす変人よりも、グローバルな検閲をはるかに恐れる。私は「インターネット原文主義者」を自称している。

代替案は「インターネット原文主義」、つまり検閲をしないことだ。ソーシャルメディア企業が本来の役割に戻れば、政治的な偏見やご都合主義という転落への坂道はなくなり、電話会社と同じような地位を占めるようになるだろう。有害な思想や「誤解を招く」思想から人を守る企業は必要ない。悪い言論に対する解決策は言論を増やすことであり、言論を許可することではない。

もしペロシ米下院議長が通信会社のベライゾンやスプリントに対し、人々が虚偽や誤解を招くようなことを言うのを止めるため通話を中断するよう要求したら、国民は怒り狂うだろう。ツイッターは、同意した当事者間で同じコミュニケーション機能を果たす。何千人もの人々がそのようなデジタルのやり取りに参加できるようにするだけだ。人々がソーシャルメディアで意見交換するのは、ツイッター創業者のドーシー氏らインターネット支配者に会話を監視させ、誤った考えや有害な考えから自分を「保護」するためではない。

検閲の水準が高まることの危険は、法律や科学(この場合はその両方)における不合理な主張よりもはるかに大きい。私たちにできることは、インターネット上の自由な言論と表現を最大限に生かし、自由な言論そのものが偽情報の究極の消毒剤になるようにすることである。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : EU Warns Musk Not to Restore Free Speech Protections After Calls from Clinton and Other Democratic Leaders [LINK]

2022-11-06

ヒトラーは反資本主義

歴史家、ライナー・ツィテルマン
(2022年4月11日)

ドイツの政治学者ユルゲン・ファルターは、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党、NSDAP)本部党員証の目録二部から、大規模で広範囲にわたるサンプルを分析した。ファルターが示すように、ナチ党におけるブルーカラー労働者の割合はつねに、これまで歴史研究者が想定してきたよりもはるかに高いものだった。ナチ党への投票者と同様に、党員のおよそ40%は労働者階級であった。

ナチ党はなぜ国家社会主義ドイツ労働者党と名乗り、アドルフ・ヒトラーにとって労働者を味方につけることがなぜそれほど重要だったのか。ヒトラーは社会ダーウィン主義者であった。ヒトラーの世界観できわめて重要な概念は、一方では「強さ」と「勇気」であり、他方では「弱さ」と「臆病」であった。

拙著『ヒトラーの国家社会主義』では、ヒトラーの著書二冊、演説、エッセイ、とりわけ側近に対する発言(総統府でのいわゆる独白、あるいは「テーブルトーク」など)など、何千もの発言を分析した。これら発言のすべてにおいて、ヒトラーは「ブルジョアジー」を弱さ、臆病、退廃と結びつけている。労働者階級を強さ、力、勇気と結びつけているのとは対照的だ。ヒトラー自身の言葉から、ブルジョアジーという階級は絶望的であり、未来は労働者階級に属すると信じていたことは明らかである。

1942年3月1日、ヒトラーは側近に対する独白でこう述べている。「もしこれほどまでに健康な生活をあちこちで見なければ、完全な人間嫌いにならざるをえまい。もし上層の一万人の人間しか見ていなかったら、自分もそうなっていただろう。そうならなかったのは、健康な大衆と付き合ってきたおかげだ」。1942年4月8日、ヒトラーは再び次のように振り返っている。

私が政治活動の初期に打ち立てたモットーによれば、重要なのはブルジョワジー(資本家)の獲得ではない。労働者階級をわが思想に熱狂させることだ。ブルジョワジーは法と秩序しか望まず、政治的立場には臆病である。したがって、闘争期の初期数年間はすべて、労働者をナチ党に獲得するよう計画された。

そのためにヒトラーは以下のような手段を用いた。マルクス主義政党と同じように、絶叫するような赤の政治ポスターを配布し、トラックで宣伝活動を繰り広げた。トラックは真っ赤なポスターで覆い、赤い旗を立て、スローガンを歌うコーラス隊を乗せていた。運動の支持者は全員、ノーネクタイ、ノーカラーで集会に参加させ、手作業で働く人々の信頼を得るよう気を配った。さらにヒトラーは、

本当に熱狂しているわけでもないのにナチ党に参加しようとするブルジョワ分子を怖がらせようと、集会ではプロパガンダを絶叫させたり、粗暴な服装をさせたりして、最初から運動の仲間に臆病者がいないようにした。

ヒトラーはある点では米国を称賛していた。とくに伝統的な階級の壁が、欧州ほど大きな役割を果たしていなかったからである。「最近数十年間に重要な発明という富が、特に北アメリカで非常に増加したが、これは北アメリカではけっきょく最下層のものでも本質的に才能があれば高等教育をうける可能性が、ヨーロッパの場合よりも、多かったということによっている」と、ヒトラーは『わが闘争』で書いている。

国家社会主義は、労働者に昇進の機会を与え、伝統的な階級の壁を取り払わなければならないと、ヒトラーは繰り返し明言した。

「このブルジョア階級の世界ではなにがより勝れたものであるのか、ひどい精神遅滞者なのか、柔弱なのか、臆病なのか、あるいはとことんまで堕落した根性なのか、ほんとうに判らないのである。かれらは実際運命によって没落が定められている階級であるが、ただ残念なことは全民族がかれらによって地獄にいっしょにひっぱり込まれることである」と、ヒトラーは『わが闘争』で書く。その数段落先ではこう書いている。「当時わたしは心の底から次のことを自覚していた。つまり、ドイツのブルジョアジーは自分達の使命を終ろうとしており、もうその先かれらの天職としての課題はなにもなかったことをである」

(次を全訳)
No, Hitler Was Not a Closet Capitalist | Mises Wire [LINK]

(参考文献)
ヒトラー(平野一郎・将積茂訳)『わが闘争』角川文庫

江戸の金融危機

金融機関の経営悪化や取り付け騒ぎ、破綻、企業の連鎖倒産などが起こり、経済が危機的な状況になる現象を金融危機という。金融危機はなぜ起こるのだろうか。その答えのヒントが、江戸時代の米取引にある。

江戸幕府によって貿易の道をふさがれ、都市の市場での物品販売が唯一の幕府貨幣獲得手段となった諸大名にとって、最大の産物である米をより高く売りさばくことが、財政上の重要課題となっていた。 

大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 (講談社現代新書)

当時の都市の中で、豊臣政権下で蓄えた経済的豊かさを江戸時代に継承し、東西の交通の要衝として整備された大坂は、後発の江戸などとは比べようもないほどのにぎわいだった。米の流通・換金においても、さまざまな面で有利だった。

大坂での初期の米取引は、領主米の販売を委託された米問屋(蔵元)が、自店の店先に米仲買人を集めた米市で行われていた。有力だったのは戦国期以来の豪商淀屋で、井原西鶴の『日本永代蔵』にも取引の盛んな様子が描かれている。

藩にとって、この米の委託販売は管理上、煩瑣で複雑なものになってきたので、大坂に領主米を置く蔵を建て、そこに実務担当者(蔵役人)を配置するようになる。 これが大坂の蔵屋敷の発端といわれる。各藩の米取引の責任者である蔵役人には、藩の厳しい財政をやりくりするため、蔵の米を思惑通りの値段で仲買人に買わせ、藩に必要な資金を調達するという使命があった。

元禄年間には95の蔵があった。この蔵屋敷で、国元から送られてきた物産を大坂の商人に売りさばくのだが、米については売買で移動させるには重くてかさばることから、「米切手」と呼ばれる証書の形で販売した。

通常の米切手は、厚紙を裁断した長方形の用紙に、切手と交換できる俵の数、産年、蔵名、通し番号などが記載されている。この米切手を発行元の蔵屋敷に持参すれば、実物の米と引き替えることができるわけだが、多くの場合、米切手は第三者へ転売された。この転売市場が堂島米市場である。

もともと淀屋の門前で立っていた米市が1697(元禄10)年、堂島(大阪市北区)に移り、ここでの米相場が全国に大きく影響するようになった。1730(享保15)年に米仲買に株が許可され、堂島は幕府官許の米市場として発展する。

米市場とは呼ばれるものの、堂島では実物の米を売買したわけではない。堂島の取引風景を描いた絵を見ると、米俵は描かれていない。すでに述べたように、堂島は米切手の取引市場であり、米俵の取引市場ではないのである。さらにいえば、取引風景には米切手すら描かれていない。取引はすべて帳簿上で管理され、米切手と現金のやりとりが取引のたびごとに行われることはなかった(高槻泰郎『大坂堂島米市場』)。

さて各藩は、年貢として徴収した米や商品作物の売却益といった収入の中から、江戸藩邸費用、参勤交代費用、普請手伝い費用、治水事業費用などを支出していたが、相次ぐ大規模干拓事業などの実施により、江戸初期から多くの藩は財政が苦しかった。

各藩が不足する資金を調達する方法としては、蔵屋敷に出入りする掛屋といわれる商人から借りる方法があった。これとは別にもう一つ、不足する資金を調達する方法があった。いわゆる「空米切手」を利用した、堂島米市場からの資金調達である。

米切手は建前としては、蔵から販売される米の量に見合った量で発行されている。しかし実際には、蔵にある米の量より多くの米切手が発行されていた。このような、蔵にある米を超える米切手を「空米切手」という。形式的にはどの米切手も同じもので、どれが空米切手で、どれがそうでない米切手かという区別があるわけではない。

各藩にとって米切手は、ある種の「打ち出の小槌」のようなもので、財政上の都合でついつい過剰に発行しがちなものだった。米切手の保有者が米との引き替えを求めて一斉に殺到しない限り、交換できなくなる恐れは小さいものの、破綻に直面するリスクはつねに存在していた。

実際、江戸幕府は空米切手禁止令(米での交換が確約できない米切手の発行禁止)を何度か出し、米切手が交換できない事態をできるだけ減らそうとした。しかしやはり何度か、米切手を米と交換できない事態に陥る。有名なのは筑後国(福岡県)久留米を本拠とした久留米藩のケースだ。

1620(元和6)年に成立した久留米藩は、島原の乱への出陣、飢饉や洪水の復旧などで出費がかさんだ結果、財政難に陥る。進退極まってとった選択は、空米切手の乱発だった。

1791(寛政3)年、久留米藩蔵屋敷に54名の米商人が押しかけ、米切手と米の交換を速やかに行うことと、過剰に発行された米切手の回収を要請する。これに対し蔵屋敷には交換に応じるだけの米はなく、やむなく蔵役人は米との交換を断った。この対応に米商人は、蔵屋敷の蔵元らを相手取り、8万5830俵余の蔵米出し不履行を大坂町奉行所に訴え出たのだった。

奉行所の調べによれば、久留米藩蔵屋敷が保有していた蔵米はわずか2370俵しかなく、米切手8万5830俵分のほぼすべてが空米切手だった。米商人たちは「米で返せなければ金で返せ」と久留米藩に迫った。

米商人の要求どおりにすれば、さらに久留米藩の財政は困窮するが、今後、米商人に筑後米を買ってもらえなくなれば、藩の存続そのものが危うくなる。やむなく、久留米藩はありったけの米を出して返済した。それでも不足する5万9220俵については、大部分を両替商からの借入れで返済している。結局、久留米藩の借金は、減るどころかいっそう膨らむことになった(日本取引所グループ『証券市場誕生!』)。

久留米藩で起こったことは、現代の銀行取り付け騒ぎを連想させる。銀行は短期の借入れ(預金)で長期の貸し付け(投資)を行っているが、この双方の満期に不一致がある。これが取り付け騒ぎ発生の根本的な原因だが、これは、蔵にある米が米切手の量と見合っていないことに似ている。

現代では取り付け行動を防ぐために預金保険制度が導入されているが、金融機関の不健全な経営を許容するモラルハザードを招きかねないなど、弱点もある。金融機関にしろ、かつての藩のような政府機関にしろ、金融危機の根本の原因である不健全な財務に陥らない心がけが何より大切だろう。

<参考文献>
  • 高槻泰郎『大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済』講談社現代新書
  • 日本取引所グループ『日本経済の心臓 証券市場誕生!』集英社

2022-11-05

崩れ去る西側シナリオ

元インド外交官、メルクランガラ・バドラクマール
(2022年11月3日)

米バイデン政権は非常に無邪気にも、米軍がロシアに隣接するウクライナの国土に実際に進駐していると、世界の世論に「感づかせて」しまった。国防総省の無名の高官がAP通信とワシントン・ポスト紙にこのことを明らかにし、米政府は「軟着陸」した。

この高官は、米軍はウクライナが受け取った西側兵器について「適切に会計処理していることを確認するために、最近現地での検査を始めた」と巧妙な説明をした。これは国務省が先週発表した、「ウクライナに提供された武器が、ロシア軍やその代理人、その他過激派集団の手に渡らないようにするための、より広範な米国の取り組みの一部である」と主張した。

しかしバイデン大統領は事実上、いかなる状況下でもウクライナに「軍隊を駐留させない」という自らの約束を破っているのだ。ウクライナに遠征中の米国人の集団が、ロシア軍から砲撃を受ける危険性はつねにある。実際、米軍の派遣は、ウクライナの重要なインフラに対するロシアの激しいミサイル攻撃やドローン攻撃を背景にしている。

簡単に言えば、意図的であろうとなかろうと、米国は紛争激化のはしごを上っているのだ。これまで米国の介入は、ウクライナ軍司令部への軍事顧問の派遣、リアルタイムでの情報提供、ロシア軍に対する作戦の計画と実行、米国の傭兵による戦闘の許可などだった。数百億ドル相当の兵器の安定供給は別としてである。

質的な違いは、代理戦争が北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間で熱い戦いになる可能性があることだ。ロシアのショイグ国防相が本日、ロシアとベラルーシの国防省合同会議で述べたところによれば、東中欧に駐留するNATO軍の数は2月以降、2.5倍になり、近い将来さらに増加する可能性がある。

ショイグ氏が強調したところによれば、ロシアは、西側諸国が同国の経済と軍事的潜在力を破壊し、独立した外交政策の追求を不可能にする協調戦略を追求していると十分理解している。

また、NATOの新戦略コンセプトが、「前方駐留による」ロシア封じ込めから、「東側における全面的な集団防衛体制」の構築を示唆していると指摘し、非地域加盟国がバルト諸国や東欧、中欧に兵力を展開し、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアに多国籍大隊戦術群を新たに編成していることを明らかにした。

最近のノルドストリーム・パイプラインに対する破壊行為や、クリミア半島セバストポリにあるロシア黒海艦隊の基地に対する10月29日のドローン攻撃について、ロシア側が英情報機関の関与を主張しているこのタイミングで、米政府がウクライナに米軍の存在を認めたのは偶然ではないだろう。

歴史的に見れば、米英の「特別な関係」にはグレーゾーンがある。両国関係の記録には、重要な瞬間に尻尾(英国)が犬(米国)を振り回す事例が数多くある。重要なのは、興味深いことに、セバストポリへの攻撃について、ロシアはウクライナよりも英秘密情報部(MI6)の工作員を指弾していることだ。

もともと米英の計算では、ロシアをウクライナで泥沼に陥らせ、「プーチンの戦争」に反対するロシア国内の反乱を扇動することだった。しかし、それは失敗した。米国の見方によれば、ロシアが部分動員した30万人以上の予備役をウクライナに派兵したのは、今後3〜4カ月で戦争を終わらせる大攻勢をかけるためである。

つまり、ウクライナに関する西側のシナリオを形成していた、嘘と欺瞞に満ちたプロパガンダが崩れ去ろうとしているのである。ウクライナでの敗北は、欧州だけでなく世界の舞台で超大国としての米国のイメージと信頼を失墜させ、大西洋同盟の指導力を弱め、NATOを解体させることさえありうる。

しかし奇妙なことに、この状況下でもロシアがウクライナに停戦交渉の再開を働きかけている事実を、米政府は見逃すことはできない。実際、11月1日に重要な進展があり、ウクライナはイスタンブールの共同調整センター(JCC。トルコ、ロシア、国連で構成)に対し、人道回廊と、農産物輸出に指定されたウクライナの港を今後、ロシアに対する軍事作戦に利用しないと書面で保証したのである。ウクライナの約束によれば、「海上人道回廊は、黒海イニシアチブ(国連が仲介した黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意)および関連するJCC規則に従ってのみ使用される」。

今にして思えば、バイデン政権はこの戦争について、西側の制裁の重みでロシア経済が崩壊し、同国の政権交代につながると予想したのが大間違いだったのだ。それどころか、国際通貨基金(IMF)でさえ、ロシア経済が安定したことを認めている。

ロシア経済は来年までに成長を取り戻すと予想されている。高インフレと不況に沈む西側経済との対照はあまりに明白で、世界の視聴者は見逃すまい。

米国とその同盟国が、ロシアを叩く制裁を使い果たしたことは言うまでもない。一方、ロシア指導部は、百年来の米国の世界支配に挑戦する多極化した世界秩序への移行を推し進めることで、結束を固めている。

この危機の根本的な原因は、資本主義体制そのものにある。我々は現在、第二次世界大戦で起こった世界の再分割以来、資本主義体制が経験した最も長く深い危機の影響下で苦しんでいる。帝国主義勢力は、第二次世界大戦前と同じように、危機を脱するために世界を再分割しようと再び戦争の準備を進めている。

大きな問題は、ロシアの対応がどうなるかである。ウクライナに米軍が駐留していることがワシントンで明らかになったが、ロシアが不意を突かれたわけではないことはほぼ確実である。ロシアが即座に反応する可能性はきわめて低い。

ウクライナによる「反攻」は頓挫した。領土を獲得することも、重要な突破口を開くこともできなかった。しかしウクライナ軍は何千人もの死傷者を出し、軍備の莫大な損失を被った。ロシアは優勢になり、それを自覚している。前線の至るところで、ロシア軍が着実に主導権を握っていることが明らかになりつつある。

米国もNATOの同盟国も、大陸戦争を戦える状態にはない。したがって、ウクライナの草原で米国製兵器の監査をしている米軍兵士が、トラブルを避け、心身をともに保つことができるかどうかに、すべてはかかっている。シリアでのように、米国防総省はロシアと「衝突回避」措置をとるかもしれない。

とはいえ、真面目な話、ロシアの立場からすれば、ウクライナ国内での米国製兵器の監査自体は悪いことではないかもしれない。現実の危機として、最近、欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表が使ったみごとな比喩を借りるなら、米国から供給された兵器が欧州に流れ込み、あの美しく手入れされた庭を(ウクライナや米国のように)ジャングルに変えてしまうかもしれないからである。

(次を全訳)
Who’s afraid of US troops in Ukraine? - Indian Punchline [LINK]

ロックダウンを赦すな

ブラウンストーン研究所創設者・所長、ジェフリー・タッカー
(2022年11月2日)

こうして友人や隣人に話すことができるようになった今、実感が増してきた。公衆衛生の専門家と政治家が米国に対して行ったことは、ひどいものだ。中国・武漢の全体主義的なロックダウン(都市封鎖)に影響され、世界保健機関(WHO)がその政策を真似るよう報告書で促した。報告書をファウチ(首席医療顧問)の国立衛生研究所(NIH)が承認し、合衆国憲法上のあらゆる権利が投げ捨てられた。

教会は閉鎖された。学校は休校となり、地域によっては二年間も休講が続き、全世代の教育が犠牲になった。家庭でのパーティーも制限された。家賃を払っている息子や娘でさえも、高齢者の家を訪ねることはできなくなった。州をまたぐ旅行も、検疫の関係で不可能になった。

とりわけ保健所は、人々が集まるすべての会場を閉鎖しなければならないと求めた。前代未聞だ。ようやく穴を這い出すように家から出ることが許されると、マスクの着用を強制され(何かの役に立つ証拠は全然なかったのに)、あげくの果てにワクチンを打たされた。ワクチンでパンデミック(感染大流行)が終わると誰もが言ったが、どう見てもそうではなかった。

この三年間は、まさに地獄のような日々だった。私たちは今、その後遺症とともに生きている。後遺症とは、ひどいインフレ、学習能力の低下、薬物中毒、犯罪の増加、文化の虚無感、完全に正しいとわかった国民の怒りだ。この怒りは11月8日の中間選挙で、民主党を破滅に追い込むだろう。一連の政策の失敗が明らかになった後もそれに執着し、ずるずると続けてきたのは民主党だからだ。

国民が怒っているのは間違いない。正しい答えは、保健当局と政治家が謝罪し、許しを請うことだろう。しかしそうはなっていない。保健当局と政治家は、すべてうまくいったというふりをし続けるだけだ。米疾病対策センター(CDC)が主張する次回以降の隔離権限は撤廃されていないし、バイデン政権自身のパンデミック対策では、各州が次回以降に隔離を拒否することを禁止している。

それでは、アトランティック誌に掲載されたエミリー・オスター博士(経済学者)の論文について説明しよう。この論文は、オスター博士が宣言したある種の恩赦に誰もがすぐに従わなければならないと主張している。私たちはすべてを忘れ、前に進むことになっている。なぜそうなのか。それは、あまりに不確実性が高かったからだとオスター博士は言う。ウイルスのことを知らなかっただけなのだ。戦争の霧の中で、みんながんばったのだ。

「知らなかった」と言いながら、この時代の「不確実性」という言葉を五回も連発する。もしオスター博士(あるいは保健当局や政治家)がそれほど不確実であったなら、なぜこれほど早く米国のすべての自由を破壊しようと決めたのだろうか。いわゆる予防原則(科学的に不確実であっても被害が深刻なら、安全側に立つ)は、政府がそのような政策に着手すべきではないことを示唆している。明らかに害があるからだ。ところが保健当局・政治家は構わず断行した。

問題はここだ。これは完全に腐っている。新型コロナ感染症の重症化に関するリスク評価は、2020年2月からわかっていたことだ。すべての論文に書かれていた。データもあった。同年2月のダイヤモンド・プリンセス号の経験から、船内で70歳以下の死者が出ていないことはわかっていた。それは当時得られたあらゆる情報と合致していた。当時の知識に基づけば、ロックダウンをしなければならないケースはまったくなかったし、しない理由もそろっていた。

オスター教授はそこまで調べずとも、ただニュースを見ればよかったのかもしれない。MSNBCテレビは2020年1月30日、オバマ元大統領の健康アドバイザー、エゼキエル・エマニュエル博士の発言を報じている。「米国の誰もが、深呼吸をして落ち着き、パニックやヒステリーにならないようにするべきだ。私たちはこの件に関し、少しヒステリックになりすぎている」

2020年3月4日、スレート誌はこう報じている。「新型コロナウイルスは現在恐れられているほど命にかかわるものではないと結論づけるに足る、多くの説得力ある理由が存在する。それにもかかわらずコロナパニックが起きている。良いニュースをお伝えしたい。この恐ろしい数字が続くことはないだろう。このウイルスの真の症例致死率(CFRとして知られる)は、現在の報告が示唆するよりもはるかに低い可能性が高い」

同日、サイコロジー・トゥデイ誌が報じた。「そう、このウイルスは他のコロナウイルスとは異なっていて、たちが悪いのだが、それでも非常に見慣れたものだ。わからないことよりも、わかっていることのほうが多い。目に見えない敵があなたを病気にしようとしていると思うと、怖いだろう。しかし、あなたの主治医はパニックになっていないし、あなたもパニックになる必要はない」

ファウチ博士その人にも目を向けることができる。ファウチ氏は2020年2月20日、米医学専門誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)で次のように書いている。「新型コロナの臨床結果を総合すると、結局のところ、重症季節性インフルエンザ(症例致死率約0.1%)またはパンデミックインフルエンザ(1957年と1968年のものに類似)に似ているかもしれない。致死率がそれぞれ9~10%、36%だった重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)とは異なる」

2020年3月17日、有名な疫学者ジョン・イオアニディスはすべてを見通していた。「現在のコロナウイルス病、新型コロナ感染症は百年に一度のパンデミックと呼ばれている。しかし、百年に一度の証拠隠滅かもしれない….。最重要ポイントの一つとして、経済、社会、精神衛生に大きな影響を及ぼすことなく、ソーシャルディスタンスやロックダウンをいつまで続けられるかわからない。金融危機、騒乱、内乱、戦争、社会構造の崩壊など、予測不可能な事態が起こるかもしれない。少なくとも意思決定の指針として、進化する感染負荷に対する有病率と発生率の公正なデータが必要である」

予言的中ではないか。そのすべてが起こった。イオアニディス氏にそれがわかったのは、千里眼があるからではなく、働く頭脳を持っていたからだ。健康、経済、社会関係、その他多くのことに影響を及ぼさずに、ただ社会を閉鎖することはできない。言い換えれば、当局は、データではどうにも説明のつかない極端な手段をとり、社会構造に多大な損害を及ぼす政策を、それと承知のうえで実行したのである。

それどころか、2005〜06年に初めてロックダウンが推し進められたときから、その被害については知られていた。有名な疫学者ドナルド・ヘンダーソンは、このような措置は管理可能なパンデミックを大惨事に変えると警告していた。

そういうわけで私たちは今、大惨事のさなかで生きている。謝罪はない。あるのは隠蔽だけだ。2020年1月下旬から2月中旬まで、主要メディアは冷静に情報を提供し、ロックダウンの狂乱を避けるよう促していたのに、ファウチ氏ですら、このパンデミックから抜け出すのにワクチンは必要ないと言っていたのに、なぜ急に変わったのか。3月上旬、ファウチ氏が部下や側近とともにトランプ大統領を取り囲み、ロックダウンの許可を求める原因となった新しい証拠は、何だったのだろうか。

なぜ、このようなことが起こったのか。私なりの仮説はあるが、あくまでも仮説にすぎない。推測するに、①ファウチ氏とその一味は、国立衛生研が武漢の研究所に資金提供したためパンデミックに責任があると考え、感染拡大を止めるため、もしくは注意を混乱させるためにロックダウンを推進した②トランプ大統領に経済を破壊させることが、11月の選挙で彼を失脚させる最も確実な道だった—-ということである。二点目については、捏造された病気パニックがたまたま不在者投票のルール変更につながり、結果としてトランプ氏を破滅させることになった。

これは陰謀論と言えるかもしれない。それが事実でないことを心から願う。なぜなら、歴史に残るスキャンダルになるからだ。おそらく私が間違っていて、何百万ものビジネスと人生を台無しにするようなとんでもない行為には、何か別の理由があるのだろう。それが何なのか、知りたいものだ。しかし、エミリー・オスター博士の「知らなかった」という言い訳は、「ウイルスはもっと悪性だと信じていた」にしろ、「マスクは感染を防ぐ」にしろ、まったく根拠がない。ロックダウンを実行した人々に「恩赦」を求めるオスター氏の主張もまた、筋違いである。

私たちは知っていた。脅威がどのようなものか、既存のデータに基づいて確実に知っていたし、ロックダウンによって引き起こされる深刻な被害も、歴史上の経験と常識に基づいて確実に知っていた。知らなかったという言い訳は、いかなる証拠基準に照らしても、通用しない。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : No Amnesty for Lockdowners [LINK]

2022-11-04

グレタ氏、資本主義の打倒呼びかけ

RT
(2022年11月2日)

スウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥンベリ氏は、政治の舞台に目を向け、資本主義の打倒を訴えた。資本主義は気候変動の原因だという。

19歳の気候変動活動家トゥンベリ氏は10月30日夜、ロンドンで自著『気候の本』を発表し、聴衆に向かい、世界は「もう決して正常には戻れない」と語った。英テレグラフ紙の記事によると、トゥンベリ氏は、地球温暖化は「体制全体の変革」によってのみ解決できると主張した。

トゥンベリ氏は続けて、資本主義体制を「特徴づけるのは、いわゆるグローバルノース(先進国)による植民地主義、帝国主義、抑圧、大量虐殺であり、それによって富を蓄積し、現在も世界秩序を形成している」と述べた。

「経済成長だけを優先するのであれば、今起きていることはまさに起こるべきことだ」と付け加えたうえで、化石燃料の採掘を「人種差別」と呼んだ。

トゥンベリ氏の一部批判者がネット上で指摘したように、世界の生活水準は資本主義の下で広範囲に上昇し、炭素排出量は2000年代に入ってから資本主義の米国で減少している。同氏は11月2日、これらの批判に対し、「社会主義、自由主義、共産主義、保守主義、中道主義、そのどれもが失敗した」と述べ、それらに戻ることを支持しているわけではないと反論した。

トゥンベリ氏は以前から、自分が指摘する問題に対して解決策を示さないという批判を受けているが、資本主義をどのような仕組みで置き換えるのかは明言しなかった。

2018年に母国スウェーデンで一連の校内デモを組織して有名になったトゥンベリ氏はその後、欧米諸国の議員や国連のサミット、スイスのダボスで毎年開かれる世界経済フォーラム(WEF)の会合で、環境破壊の劇的な予測を伝えてきた。WEFの創設者クラウス・シュワブ氏もまた、世界秩序を根本から再構築することを提唱し、その構想を「グレート・リセット」と呼んでいる。

トゥンベリ氏は数年にわたり世界で活動してきたにもかかわらず、来週エジプトで開催される国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)を欠席する。同氏は、このサミットを「詐欺」であり、政治家が自らを環境に優しいと偽る「グリーンウォッシング」の一例と見ていると、聴衆に語っている。

(次を全訳)
Greta Thunberg calls for downfall of capitalism — RT World News [LINK]

徴兵制の暴力

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年9月30日)

米国とロシアがいかに似てきたか、米国人がしばしば思い知らされるのは興味深いことだ。

第一に、ロシアによるウクライナへの侵攻があった。米国も侵略をする。アフガニスタンやイラクが思い出される。

第二に、ロシアの麻薬取締法違反で逮捕・起訴され、九年の実刑判決を受けたブリトニー・グライナー(米女子プロバスケットボール選手)の件だ。米国にも薬物法はあるし、薬物法違反で長期にわたって刑務所送りになることもある。

第三に、貿易制限、渡航制限、入国管理だ。

第四に、中央銀行、不換紙幣、法定通貨。

第五に、最低賃金法を含む、政府に規制・管理された経済。

さらに、拷問、無期限拘留、大規模な秘密監視、軍事法廷、国家主導の暗殺なども挙げられる。米露両国はこれらすべてに関与している。

そして今、徴兵制がある。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナとの戦争に参加するロシア人男性を無理やり動員するために、徴兵制に頼ろうとしている。何千人ものロシア人男性が、徴兵を避けるために国外に逃亡している。

しかし米国も徴兵制を使って、米国人に外国の戦争で戦うことを強制している。それが徴兵登録だ。米国の役人は若い米国人に名前と住所を登録するように要求し、政府が海外で戦争に参加しなければならない場合に備えている。ロシアと同じだ。

間違ってはいけない。もしそうなれば、米当局はロシア当局と同じ復讐心で徴兵忌避者を追いかけるだろう。徴兵を避けるために国外に逃亡するロシア人男性に対してロシア当局が使っている、「卑怯者」という言葉で呼ぶことになるだろう。これは実際、米政府の違法な(憲法で定められた宣戦布告がない)ベトナム戦争に参戦させられるのを避けるためカナダに逃亡した米国人男性を、米当局者がそう呼んだのと同じである。

その違法な戦争で、米国の役人は5万8000人の米国人を無駄に犠牲にした。考えもてみてほしい。5万8000人だ! 全員死んだ。15万人が負傷し、一生障害が残った人もいた。その多くは、殺すか殺されるかのために行かされた。徴兵制とはそういうもの、暴力なのだ。皮肉なことに、米国の役人は徴兵された男たちに、お前たちは「自由」のために戦っているのだと言っていた。しかし役人は、「自由」のために戦うよう強制されることが、本当の自由とどのように調和しうるのか説明できなかった。さらに、徴兵された何千人も米国黒人たちは、当然ながら、自分がベトナムで「自由」のために戦う一方で、国内では人種隔離に反対して殴られ、殺され続けていることを理解するのに苦労していたのである。

モハメド・アリが徴兵に服することを拒否した際、米政府は復讐のためにアリを追いかけた。ちょうど今、ロシアの役人が徴兵制に服することを拒む人々に対してやっているようにだ。史上最も偉大な(そして最も真実味のある)言葉の一つは、アリの「ベトコンとは喧嘩しない」という発言である。

これは米政府関係者、とくに国防総省(ペンタゴン)と中央情報局(CIA)の関係者を怒らせた。米政府が公式の敵を指定した以上、その人物や団体を自分にとっても公式の敵にすることは、すべての米国民に課せられた義務なのだ。

いずれにせよ、女性を含む若い米国人は、ロシアで起こっていることに注意を払うのが賢明だろう。なぜなら、それとまったく同じことが、米国でも一夜にして簡単に起こりうるからだ。もし若者たちが賢明ならば、徴兵登録の即時中止と、すべての徴兵記録の即時破棄を要求しているだろう。徴兵制は、真に自由な社会では何の役にも立たない。

米国民は、徴兵制を含む多くの重要な点で、自分の国がロシアと似てきているという事実について、真剣に考えるのが賢明だろう。

(次を全訳)
Russia’s Draft and America’s Draft Registration – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2022-11-03

ブッシュ、グアンタナモ、法の支配

元判事、アンドリュー・ナポリターノ
(2022年10月31日)

米政府は先週、2001年9月11日同時多発テロの残りの共謀犯とされるハリド・シェイク・モハメド被告とその仲間4人を裁判にかける気はないと発表した。

5人は全員、キューバのグアンタナモ湾にある米海軍基地で裁判を待っている。容疑は、この5人が共謀し、大量殺人を行ったというものだ。死刑を科しうる罪だ。共謀は戦争犯罪ではないにもかかわらず、連邦政府は、連邦刑事裁判で利用されているルールの下で、これらの被告を軍事法廷で裁くことを計画している。

5人はいずれも2003~2006年頃まで米中央情報局(CIA)のブラックサイト(国外の秘密軍事施設)に拘束され、そこで独房に監禁され、ひどい拷問を受けた。CIAの拷問が終了した後、5人は2006年にグアンタナモの軍事施設に移送された。

そこで米連邦捜査局(FBI)捜査官が尋問に来るまでの間、拷問が再開された。他の事件での失敗を考慮し、FBIは軍の拷問と独房監禁に歯止めをかけた。

CIAにこれら抑留者を拷問させる、憲法の要求に反して米国の連邦地方裁判所で死刑に問わない、軍事拷問を行う、軍事法廷において戦争法の下で認められていない犯罪でこれらの人々を告発する、憲法が求める陪審制度を無視する、司法省をこれらの事件に関与させない、といった決定は、すべて法的に無知で憲法を無視するジョージ・W・ブッシュ大統領によってなされたものである。

12年にわたる訴訟と、検察チームと審理する裁判官の度重なる変更は、ブッシュの底知れぬ無能さの結果だが、あげくの果てに、連邦政府はこれらの人々の審理をあきらめようとしているのだ。

以下はその経緯である。

権利章典にある適正手続の保障は、米国人だけでなく、個人を保護するものである。この原則の唯一の例外は、戦争法に違反する犯罪の場合だ。米国が外国政府と戦争状態にあり、その諜報員や軍隊が米国市民に危害を加えた場合でも、基本的な適正手続が適用されるが、米国が加盟している条約では戦争犯罪の裁判の場として軍事法廷を認めている。

もし外国の民間人が米国内で米国の民間人に対して罪を犯した場合、外国の民間人を起訴する場所は、犯罪の現場に物理的に最も近い連邦地方裁判所である。9・11テロでいうと、世界貿易センタービルの場合はマンハッタン、国防総省(ペンタゴン)の場合はバージニア州アーリントン、シャンクスビルの墜落事故の場合はペンシルバニア州中央部がその場所となる。

しかし、ブッシュはそうしなかった。9・11テロを防げなかった失敗の責任を問われることを恐れていたのだろう。アフガニスタンとイラクで戦争をしかけ、犯罪的な拷問を命じ、9・11の抑留者に公正な陪審裁判を受けさせないと固く決意した。ブッシュの原始的な考え方によれば、軍事法廷のほうが拘禁者はすぐに有罪判決を受け、死刑を宣告される可能性が高いのである。

先週、これらの事件(グアンタナモにおける9・11関連事件はこれらだけである)を担当する軍事判事は、公判前審問と公判期日をすべて延期し、司法取引交渉を保留した。死刑を求め、まだ公に手の内を明かしていない政府は、これらの被告が有罪である証拠は圧倒的であると主張している。

もし政府の主張が真実なら、なぜ司法取引のために休廷したのだろうか。

マジド・カーンの登場である。カーンはパキスタン生まれで米国育ちの若者で、CIAによって3年間拷問を受け、その後グアンタナモに連行された。カーンの罪状は、インドネシアの仲間に現金を渡し、仲間がその金でジャカルタのホテルを破壊し、そこで何人かの米国人が殺されたことだ。カーンは容疑を争うどころか、有罪を認めた。

政府はカーンを殺人の共犯という死刑の罪で起訴したため、カーンには判決を下す陪審員の前で審理を受ける権利があった。

カーンは判決公判で、軍の陪審員に対して、CIAが外国のブラックサイトの一つで自分に行った恐ろしい拷問を説明した。政府はカーンの証言を覆すような証拠を提示しなかった。これは、米国史上初めて、刑事被告人が政府による拷問を主張し、政府がそれに異議を唱えなかった例といえるかもしれない。

裁判の結果、陪審員はカーンに懲役26年を宣告したが、8人の陪審員のうち7人が、刑期を実質短縮するよう裁判官に手紙を出した。軍の陪審員に慈悲を求めるという前代未聞のこの要請の理由は、カーンの拷問にあると述べられている。カーンは刑期を実質短縮され、釈放された。

さて、ハリド・シェイク・モハメドに話を戻そう。モハメドは4年間拷問を受け、その間にCIAと軍はカーンと同じ拷問技をモハメドに加えた。政府は、英語が流暢になったモハメドが裁判で陪審員や一般市民や報道陣に、政府によって自分に加えられた恐怖を伝えることを恐れている。

政府はまた、モハメドが必要な抗弁をはっきり述べることを恐れている。

それはアイゼンハワー政権時代、CIAがイランで民衆に選ばれた世俗指導者(モサデク元イラン首相)を転覆させたことにまでさかのぼり、モハメドとその専門家の証人が、中東の罪のない人々に米政府が犯した悪事のすべてを明らかにすることを可能にする。

ジョージ・W・ブッシュが引き起こしたことを見よ。ジョー・バイデン大統領は究極の選択を迫られている。終身刑の嘆願を受け入れるか、米国の外交政策が破壊されるような裁判を許可するかだ。法の基本原則に対するブッシュの底知れぬ無知、タフに見せようとする子供じみた決意、9・11を予見できなかった自身の失敗から歴史の目をそらすため拷問と殺戮をいとわない姿勢は、100億ドルを費やして建設した悪魔の島(グアンタナモ)で途方もない不正を引き起こしたのである。

グアンタナモの収容所は解体し、ブッシュは戦争犯罪で裁くべきであり、法の支配をすべての訴追に回復しなければならない。

(次を全訳)
Bush, Guantanamo, and the Rule of Law - Antiwar.com Original [LINK]

制裁強化で北朝鮮の核開発は止まらない

ケイトー研究所シニアフェロー、ダグ・バンドウ
(2022年7月18日)

北朝鮮が核兵器を保有する以前から、韓国の政府関係者は米国の先制攻撃の提案に抵抗していた。韓国に対し通常兵器で報復が行われた場合でさえ、リスクが大きすぎるからだ。今日の北朝鮮ははるかに危険である。例えば、生物・化学兵器を含む大量破壊兵器による攻撃が数回行われただけでも、韓国、北東アジア、そして潜在的には米国の領土に甚大な被害をもたらすだろう。

もう一つのよく提案される万能薬は、経済制裁である。より多くの制裁。より厳しい制裁。制裁の強化。米国の歴代政権は、この伝説の一角獣を必死になって探してきた。オバマ政権は、中国とロシアの支持を得た後、最も実現に近づいたかもしれない。その後、国連は北朝鮮の輸出産業を標的にし、北朝鮮経済を大幅に減速させた。しかし、北朝鮮はそれでも屈しなかった。

金正恩委員長とトランプ大統領が初の米朝首脳会談に合意すると、中国は米朝の交渉から外れることを避けるため、方針を転換した。習近平国家主席は金正恩と仲睦まじい首脳会談を相次いで行い、以後、北の立場を事実上バックアップしてきた。

さらに、米国は中国・ロシアとの関係を急激に悪化させている。ウクライナの代理戦争に代表されるように、ロシアとの関係は冷戦時代並みに悪化している。米中関係もそれに劣らない。バイデン政権はトランプ政権後期に欠けていた対話を開始しようと試みたが、中国は米国の政策を推進するために何もする気にならないだろう。中国とロシアは、北朝鮮の核武装も不安定な北東アジアも望んでいないが、北朝鮮を米国に対する有効な武器とみなしている。

中国とロシアは、北朝鮮が今年これまでに行った31回のミサイル発射実験に対する国連の新たな制裁措置を拒否している。核実験が行われた場合、両者がどのような反応を示すかは定かではない。しかし、エネルギーや食糧の遮断など、北朝鮮の体制を脅かすような措置には同意しそうにない。そして、金王朝は非常に強いことが証明された。1990年代後半、金正恩の父親(金正日)は、少なくとも50万人が死亡した数年にわたる飢饉にもかかわらず、辛抱強く生き延びた。2年以上前、金正恩は新型コロナ感染症の蔓延を防ぐため自国を制裁し、孤立させた。かつて中国は、非核化支持と安定志向のバランスをつねに取っていた。しかし、今は米政府への明らかな敵意から、非核化支持は弱まっている。

では、どうすればいいのか。

英国王立防衛安全保障研究所のアーロン・アーノルド氏は「中国とロシアを制裁せよ」と言う。

アーノルド氏は、最も強力な潜在的敵対者である両国が米政府の要求を拒否するという、ありふれた、驚くには値しないことに憤慨している。国連安全保障理事会が最後に新たな制裁を課してから五年年近く、中露は北朝鮮に対する国際的な制裁を更新・修正するどんなにささやかな努力も妨げてきた。先月両国は、北朝鮮による挑発行為と相次ぐ弾道ミサイル発射実験を受け米国が提出した、制裁強化の決議案に拒否権を行使した。中国外務省の趙麗健報道官は、北朝鮮が再び核実験を行った場合、新たな制裁を求める意思はないことをほのめかした。

すべて事実である。しかし、たしかにこれは予想されたことだ。核保有を宣言していないイスラエルに対して、たとえ国連で承認されたとしても、米国が同様の制裁措置を取るとは誰も考えないだろう。米国は、このような措置は米国の(そして間違いなく米国の政治家の)政治的利益を損なうと考えるだろう。その際、国際法や国際的な義務に対する配慮は即座に消え失せるだろう。

それにもかかわらず、アーノルド氏の意見によれば、「西側諸国が本気で核不拡散の国際公約を守ろうとするならば、ロシアと中国にその責任を問わねばならない。ロシアと中国が北朝鮮の制裁逃れや収入源となる活動に目をつぶるなら、両国の国内機関に対する二次的制裁で対応すべきだ」という。

そうすれば、劇的なことになる。長々と饒舌に神妙に語ることを得意とする米政府高官を喜ばせることができるだろう。しかし、非核化を前進させることはできないだろう。

第一に、制裁は、政府が重要であると信じるものを放棄させるという点では、あまり実績がない。米国の歴代政権はスーダンを標的にしたが、スーダンが変わったのは国内の革命の後だった。トランプ政権はイラン、シリア、ベネズエラに「最大限の圧力」をかけ、これら政府のいずれをも降伏させることができなかった。中国、ロシア、キューバは、より軽い経済的な罰則を無視し、キューバへの制裁は六十年以上になる。北朝鮮は、制裁緩和を勝ち取るには完全な非核化が必要だと確信すると、米韓との対話を実質停止した。政治で譲歩を強いるために経済で強制力を行使しても、この程度の結果しか得られない。

第二に、制裁に制裁を重ねれば、その効果を弱め、国家の行動に影響を与える可能性を低下させる。現在のロシアは、米国の制裁が強化されても失うものは何もない。ロシア経済の大部分はすでに制裁下にあり、制裁を強化するという脅しは何の脅しにもならない。また、制裁緩和のための条件が増えれば増えるほど、その遵守の可能性は低くなる。

中国も標的にされることを避けたいと考えているが、近年、多数の個人や組織に対して類似の罰則が強化される事態に直面している。北朝鮮の場合、米国の要求に屈するくらいなら、一部の企業や銀行を犠牲にする可能性が高い。さらに、制裁が強化されれば、米国の経済的圧力に対する弱さを抑える戦略をとるための努力に拍車がかかるだろう。また、米国の経済的影響力の乱用により、ロシア、インド、その他のBRICS諸国、中東諸国、さらには欧州諸国もドル依存の引き下げに関心を抱いている。

第三に、米国は、ロシア・中国の両国とさまざまな問題を抱え、北朝鮮を優先させることは容易ではない。ロシアの場合、ウクライナとの戦争が米国にとって最も重要な問題である。ロシアは和平交渉の一環として、制裁解除を主張するかもしれない。そのような場合、米政府はリスクを冒してまで北朝鮮への制裁を継続することはないだろう。

中国は、さらに複雑な問題が絡み合っている。台湾や南シナ海に集中する領有権主張などの安全保障上の懸念、複雑な人権問題、貿易、知的財産権侵害、産業政策、サイバーセーフティなど多岐にわたる経済論争、一帯一路構想などの国際経済・外交活動、同盟国の政治体制に影響を及ぼす試みなどなど、さまざまな問題がある。米国はこれらすべてについて、思いどおりになるとは思っていない。実際、米国が中国に遵守を求めれば求めるほど、中国の抵抗は大きくなる可能性が高い。その中で北朝鮮はどのような位置づけにあるのだろうか。

残念ながら、北朝鮮問題に単純な答えはない。クジラに囲まれたエビのように、北朝鮮は当然のことながら、核兵器が生存のために重要であると考えている。北朝鮮の政権エリートたちが、核兵器が支配階級の存続に役立つと確信しているのは間違いない。となると、米国は別の戦略を試す必要がある。

北朝鮮への渡航制限の撤廃だ。北朝鮮のコロナ規制は残っているが、この一歩によって、米国の「敵意」に対する北朝鮮の日頃の不満に応えることができ、将来の米国訪問への道筋をつけることができるだろう。バイデン政権はまた、外交官関係の確立を提案すべきである。友人よりも敵と話すことが重要だ。とりわけ相手が核兵器を持っている場合は。

最も重要なのは、米国は金正恩委員長とトランプ大統領が物別れしたところまで戻る意志があることを示すことだ。米国の公式目標は非核化であることを繰り返すべきだが、北朝鮮の核開発を制限しながら制裁を解除し、段階的に進める意思があることを示すべきだ。部分的な進展でもあれば、地域と米国はより安全なものとなる。中国はこの取り組みを奨励するかもしれない。そうすれば、核に対する中国の恐怖心が薄れ、国境の安定が促進される。

制裁を支持する人たちは決してあきらめない。すべての失敗は、「少なすぎる」ことが原因だと説明される。つまり、十分な数の国、人、企業、製品、取引、活動に対して、十分な期間、十分な罰則を課さなかったことが原因なのだ。したがって、答えは簡単である。「もっとやれ!」。その果てしない繰り返しになる。キューバ、ベネズエラ、イラン、北朝鮮を見るがいい。

残念なことに、北朝鮮との交渉には時間切れが迫っている。北朝鮮問題はまもなく危機的状況に陥るかもしれない。ランド研究所とアサン研究所は昨年、「北朝鮮は2027年までに、二百個の核兵器と数十基の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、核兵器を運搬するための数百基の戦域ミサイルを保有する可能性がある」と予測した。米国の都市を標的とすることができる北朝鮮の重大な核抑止力に直面した場合、米国の政策立案者はこれまでとはまったく異なる世界に身を置くことになる。

残念ながら、北朝鮮、中国、ロシア、あるいはその三カ国すべてに対して制裁を強化しても、状況は変わらない。米国は別のやり方を試す必要がある。今すぐだ。

(次より抄訳)
Expanding Sanctions Won't Halt North Korea's Nuclear Program - Antiwar.com Original [LINK]

2022-11-02

米政府がソーシャルメディア検閲、ハイテク大手と結託

RT
(2022年10月31日)

米政府はソーシャルメディア・プラットフォームと手を組み、オンラインの「偽情報」(たとえば、じつは本当だったハンター・バイデン=バイデン大統領の次男=のノートパソコンの話)を検閲していたことが、リークと公文書請求によって入手した米国土安全保障省の内部文書から明らかになった。米インターネットメディア「インターセプト」が10月31日報じた。国土安全保障省は今後も新型コロナウイルス、「人種的正義」、米国のウクライナ支援に関する意見を検閲し続ける予定だという。

「閉ざされた扉の向こうで、民間のプラットフォームへの圧力によって、米政府はその権力を使ってオンラインの言説を形成しようとしてきた」とリー・ファング、ケン・クリッペンスタイン両記者は記事に書いている。

両記者の大きな発見のひとつは、ツイッター、フェイスブック、レディット、ディスコード、ウィキペディア、マイクロソフト、リンクトインなどのハイテク企業が2020年の大統領選挙の前後、毎月、連邦捜査局(FBI)などの政府機関と会っていたことだ。フェイスブックは、アクセスに法執行機関の電子メールが必要な「テイクダウン」用の特別なポータルを設置したほどだ。

この経緯は、国土安全保障省職員とツイッター社、非政府組織「インターネット・セキュリティ・センター」との間の電子メールにも記載されており、会議のメモには、政府がテック系プラットフォームに対し「報道内容を処理し、プラットフォームから報告された偽情報を可能な限り削除するなど、迅速な対応を行う」よう呼びかけていることが示されている。

文書の多くは、現在米上院に立候補している共和党のミズーリ州検事エリック・シュミット氏による訴訟によって明るみに出た。その中には、ハンター・バイデンのラップトップの話をもみ消すために、2人のFBI職員がフェイスブックとの高度なやり取りに関与していたことが明らかにされた。FBIの外国影響力タスクフォース(FITF)のチーフであるローラ・デムロー氏、サンフランシスコ支局の特別捜査官エルビス・チャン氏である。

2020年10月に発表された、じつは本当だったハンター・バイデンの記事は、民主党のジョー・バイデン氏やほとんどの企業関係者から「ロシアの偽情報」と糾弾され、報道したニューヨーク・ポスト紙はフェイスブックとツイッターで弾圧された。

今年3月の別の文書には、デムロー氏がツイッター社の幹部に対し、ソーシャルメディア上の破壊的な情報は米政府への支持を損ねる恐れがあると語っていたと記されている。

ソーシャルメディアにおける「ロシアの影響」が何らかの形で2016年にドナルド・トランプ氏を大統領に当選させたという民主党の主張を受け、2019年に創設されたFBIの外国影響力タスクフォースはその後、新型コロナに関する「偽情報分析」へとその守備範囲を拡大する。

インターセプトにリークされた戦略文書「国土安全保障レビュー」の草案には、国土安全保障省が「不正確な情報」を標的とする意向であることが示されている。そのテーマは「コロナパンデミックの起源とコロナワクチンの効果、人種的正義、米国のアフガニスタン撤退、米国のウクライナ支援の性質」などである。

バイデン大統領に指名され、国土安全保障省の「サイバーセキュリティおよびインフラセキュリティ局」(CISA)を率いるジェン・イースタリー氏は2月、マイクロソフトの従業員にメールを送り、こう述べている。「連邦政府がプラットフォームと協力して誤情報・偽情報の傾向をよく理解し、関連機関がそれら情報の流布を防止したり、虚偽を暴いたりするのに役立つようにしたい」

2021年11月の会議でイースタリー氏は、「最も重要なインフラは人間の認知インフラであり、誤情報や偽情報に対する耐性を高めることは、信じられないほど重要だと思う」と主張した。

CISAの会議録には、選挙セキュリティ・イニシアティブのディレクターであるジェフ・ヘイル氏が「政府のプロパガンダと思われない、信頼できる情報の中継所」として、第三者である非営利団体を利用するよう促していることも紹介されている。

バイデン政権はシュミット氏の訴えを立件できないとして却下しようとし、ソーシャルメディアは自発的に投稿を削除したのであり、政府の「強制的」な影響力(これは憲法修正第一条で禁止されている)はなかったと主張している。

米自由人権協会(ACLU)の元会長であるナディーン・ストロッセン氏はインターセプトに対し、「もし外国の専制政府がこうしたメッセージを送ってきたら、間違いなく検閲と呼ぶだろう」と述べている。

(次を全訳)
US government worked with Big Tech to censor social media – Intercept — RT World News [LINK]

米中間選挙で何かが変わるか?

元米連邦下院議員、ロン・ポール
(2022年10月31日)

多くの専門家は来週の米中間選挙で、インフレに対する国民の怒りによって、共和党が下院、そしておそらく上院で過半数を奪還すると予想している。しかし、上院の接戦のすべてが共和党に有利に運び、共和党の新議員が自由主義的な政策を通そうと決意したとしても、バイデン大統領の拒否権やチャック・シューマー上院院内総務のフィリバスター(議事妨害)を覆す票数はないだろう。歳出削減、憲法修正第1条(信教・言論・出版・集会の自由)、同第2条(武器保有権)、同第5条(適正手続の保障)の権利の保護、教育省の廃止、連邦準備理事会(FRB)の監査など、自由を擁護する法案が成立することはないだろう。

自由を擁護する法案が法律にならないからこそ、多くの共和党議員はそのような法案に賛同し、投票することに抵抗がないのである。米国政治の汚い秘密の一つだが、民主・共和両党の有力者は、大企業と癒着した福祉・戦争国家と、それを可能にする不換紙幣制度を支持している。細かい部分では言い争うが、両党の間にただ一つ存在する真の意見対立は、どちらが経済を動かし、世界を動かし、人々の個人生活を動かすのに適しているかということである。

議会が共和党の手に渡ることで期待できることはある。共和党は2024年の大統領選挙に向けて、バイデン大統領に立法上の大きな勝利を与えないようにしたいと望んでいる。これは多額の支出を伴う法案(例・インフレを加速させる、間違った名前のインフレ抑制法)から米国民を守ることを意味する。また、医療における政府の役割を拡大し、グリーンニューディール(脱炭素政策)を実施しようとする試みから、人々の自由と繁栄を守ることも期待できる。

上院を共和党が制した場合、私の息子であるケンタッキー州のランド・ポール上院議員が上院保健・教育・労働・年金委員会の委員長に就任する可能性がある。ランドはすでに、新型コロナ騒ぎの前と最中におけるアンソニー・ファウチ博士(大統領首席医療顧問)の行為について徹底した調査を望むと発言している。ランドが委員長になれば、教育省が親の権限を弱め、学問を弱める一方で、公立学校で「批判的人種理論」の利用を推進している点を調査することもできるだろう。また、教育省がその権限を濫用し、男子生徒に女子スポーツチームでプレーさせたり、女子トイレを使わせたりすることを学校に強制している点にも目を向けることができよう。

アリゾナ州は、自由主義の議員に新たな味方を送ることができる。ブレイク・マスターズ氏である。マスターズ候補は小さな立憲政府の支持者であり、連邦準備理事会の野放図な権力に挑戦し、自由と繁栄を守る大切さを理解している。マスターズ候補は現在、上院における銃規制の主唱者である現職のマーク・ケリー上院議員ときわどい接戦を展開している。

私たちは自由のために立ち上がる少数の政治家を支持すべきだが、政治家だけに頼って自由を取り戻すことはできないことを忘れてはならない。むしろ自由を取り戻すただ一つの道は、政治家が活動する政治的・文化的環境を変えることにある。だからこそ、必要最小限の人々をリバタリアニズム(自由主義)に転向させることが重要なのだ。私たちに勝利をもたらすのは、議会に多数のリバタリアン(自由主義者)を選出することではなく、政治的・知的環境を支配し、専制政治の支持者でさえも、自由のために投票せざるをえないと感じるようにすることである。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Will the Midterms Change Anything? [LINK]

2022-11-01

EU、ワクチン取引で調査に着手

RT
(2022年10月15日)

欧州検察庁(EPPO)は、欧州議会の複数の議員に汚職と秘密の裏取引疑惑が浮上するなか、欧州連合(EU)が調達した数十億人分の新型コロナワクチンについて調査に着手した。

EU当局は10月14日、短い声明を出し、「EUにおける新型コロナワクチンの調達について現在調査中である」ことを明らかにした。同当局は、この問題について「きわめて高い社会的関心」があったことを受けてのことだと付け加えたが、その他の詳細については言及を避けた。

検察当局は調査の正確な内容については口を閉ざしているが、今回の発表は、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長がファイザー社のアルベルト・ブーラ最高経営責任者(CEO)と秘密裏にワクチン交渉を行ったという欧州議会議員の疑惑を受けたものである。フォンデアライエン委員長の事務所は、ジャーナリスト、議員、EU監視団からの要請にもかかわらず、約20億人分のワクチンに関する交渉中にブーラ氏に送られた個人的なテキストメッセージを提出せず、汚職の非難を浴びている。

フォンデアライエン委員長の事務所は、ジャーナリスト、議員、EU監視団からの要請にもかかわらず、約20億人分のワクチンに関する交渉中にブーラ氏に送られた個人的なテキストメッセージを提出せず、汚職の非難を浴びている。

クロアチアの欧州議会議員ミスラブ・コラクシッチ氏は14日、新たな調査について言及し、この決定は議員からの圧力のおかげで行われたと述べた。同議員は、この調査について詳しい説明をすることはできなかったが、EUのワクチン調達過程については非常に批判的であり、数十億人分のワクチンの取引は「汚職」と秘密主義によって損なわれていると主張している。

「今日、我々欧州議会議員10人は、フォンデアライエン氏にこう質問しました。45億回分のワクチンを調達する際に、その製品の有効性、とくに有害性についての証拠がまったくないときにファイザー社と交わしたやり取りを、いつ見せてくれるのでしょうか」と今週初めにツイートし、この問題を「人類史上最大の汚職疑惑」と呼んだ。

先月、欧州会計監査院は欧州委員会に対し、ファイザー社からのEU最大の購入案件に関する「事前交渉」について、情報提供を求めた。「相談した科学専門家と受け取ったアドバイス、交渉のタイミング、議論の記録、合意した条件の詳細」などだ。しかし「何も提供されなかった」という。 欧州委はいまだにこの情報を公開しておらず、欧州議会議員の主張する汚職疑惑について火に油を注いでいる。

(次を全訳)
EU opens probe into vaccine deals — RT World News [LINK]

北朝鮮市民にナパーム弾を浴びせた米軍

シカゴ大学歴史学教授、ブルース・カミングス
(「デモクラシー・ナウ!」インタビュー、2018年6月12日)

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長との歴史的な会談は、わずか数週間前に行われた金委員長と韓国の文在寅大統領との、朝鮮戦争を正式に終わらせるため努力することに合意した別の歴史的な会談に続くものである。2018年6月12日、シンガポールで開いた首脳会談の後、トランプ氏は朝鮮戦争を「きわめて血なまぐさい紛争」と呼び、戦争がまもなく正式に終結することへの希望を表明した。朝鮮半島に関し複数の著書のあるシカゴ大学の歴史学者、ブルース・カミングス氏に話を聞く。

エイミー・グッドマン 「デモクラシー・ナウ!」です。エイミー・グッドマンがフアン・ゴンサレスとお送りします。シカゴ大学の歴史学教授、ブルース・カミングス氏をお招きしました。『朝鮮半島現代史』『朝鮮戦争論』など朝鮮半島に関する多くの著書をお持ちです。

何十年にもわたって韓国を追ってこられたわけですね。本日署名された声明について、最も驚かれたことをお聞かせください。また、これは過去の延長線上にあるのか、それとも過去との最初の決別なのでしょうか、カミングス教授。

ブルース・カミングス 北朝鮮と米国の新たな関係に関する最初の原則は、非常に重要だと思います。それは北朝鮮を認めるということです。米国は72年前、1946年2月に金日成(北朝鮮最高指導者)が権力を握ったことを認めなかった。それは金日成が実質的に中央の権力者になったということです。米国はそれをソ連の策略と糾弾した。それ以来、米国は北朝鮮を認めないようになった。北朝鮮は自国の尊厳を誇示し、他国から尊敬されたいというイデオロギーを持っています。だから、共同声明の第一項(「米国と北朝鮮は、両国民が平和と繁栄を切望していることに応じ、新たな米朝関係を確立すると約束する」)は、実行されれば非常に重要なものになると思います。

次に、ドナルド・トランプはこういう無邪気さを持っていますよね。トランプ氏は無邪気な目で韓国問題を見ています。1953年に戦争が終わった直後、あるいはこの60年の間に、平和条約が結ばれていないのは馬鹿げていると言っています。そして、そのことは正しいのです。

しかし、私はティム・ショーロック氏(ジャーナリスト)と同意見で、最も衝撃的だったのは、トランプ氏が軍事演習は挑発的だと話したことです。演習の中止や、少なくとも中断することに関する発言については言うまでもありません。バラク・オバマが大統領だった頃、北朝鮮のミサイルや爆弾の実験に関し何か危機が起こると、オバマは核兵器を搭載した爆撃機を送り込み、韓国の島々にテスト用の原爆を投下したものです。ショーロック氏が言ったように、演習ではしばしば北朝鮮の政権を倒そうとしたり、戦争の初期段階で(北朝鮮の)元山港に海兵隊を送り込んで平壌に進撃させたり、朝鮮半島で核兵器を使用したりする計画もありました。ですから、もし演習が中止されれば非常に重要なことだと思います。しかし、状況をよく知らない人物、つまりドナルド・トランプがこの状況を見て、「ちょっと待てよ、これは金がかかるだけでなく、非常に挑発的だ」と言ったことも、きわめて重大です。

アメリカ国旗のすぐ隣に北朝鮮の国旗があること、ドナルド・トランプが北朝鮮の指導者を賢い男、偉大な男と表現すること、これらすべてが首脳会談の演出として非常に重要だったという点にも、クリスティンさん(平和活動家クリスティン・アーンか)と同意見です。米国では、トランプ氏のあのような発言に対して、さまざまな非難があることは承知しています。しかし、トランプ氏は明らかに、実地の、お互いを理解できる関係を信じる人物です。これはうまくいっているように見えます。

フアン・ゴンサレス 米朝関係の歴史を知らない多くの視聴者やリスナーのためにお聞きしたいのですが、朝鮮戦争で米国が北朝鮮にもたらした損害の規模について、また、米国がアジアで起きたすべての変化(中国との関係正常化、ベトナムとの関係正常化)に直面して、ある意味で冷戦を続けた地域として韓国が残っているのはなぜか、お話しいただけないでしょうか。

ブルース・カミングス 韓国政府が北との関係改善、米朝政府の関係改善を望んでいなければならないのです。ここ九年間はそうではありませんでした。しかし、文在寅大統領は就任すると、すぐに北朝鮮と関わりを持つと言いました。クリスティーンが言ったように、文氏は米国と北朝鮮を結びつける重要な役割を担っています。 このような背景から、韓国の大統領が協力的であることが重要であり、そのような大統領がいないこともよくあります。今に始まったことではありませんが、事態は前進しています。90年代に金大中が政権を握ったときも、北朝鮮との関係を深めていましたから。しかし、文在寅は非常に経験豊富です。彼は盧武鉉大統領の首席補佐官を務めていました。自分が何をしているのか、わかっている。それが、米国が今、北朝鮮と関わりを持つようになった最大の理由だと思います。

北朝鮮の誰もが知っていますが、朝鮮戦争中、家族の誰かが殺されています。たいていは、米国が際限なく行った焼夷弾の爆撃によるものです。第二次世界大戦中にドイツや日本の都市を破壊するために使われた焼夷弾の装置は、ほぼ北朝鮮に転用されました。北朝鮮にはそれなりの規模の都市が15か16ありましたが、それらはすべて地球上から消し去られたのです。米空軍の公式統計によると、北朝鮮の都市の破壊率はときに100%に達し、第二次大戦中のドイツや日本より平均して高いものでした。しかもナパームがそこらじゅうに飛び散っていました。チャーチル(英首相)が1953年、アイゼンハワー(米大統領)に電報を送り、「ナパーム弾が発明された当時、それが一般市民にばら撒かれるとは思ってもみなかった」という意味のことを言わざるをえなかったほどです。歴史家の推定によれば、朝鮮戦争の死傷者の約70%が民間人であり、ベトナム戦争の約40%を大きく上回っています。つまりトランプ大統領が言ったように、きわめて破壊的な戦争だったのです。北朝鮮の人々は誰もがそのすべてを知っています。

(次を全訳)
US Bombing in Korea More Destructive Than Damage to Germany, Japan in WWII [LINK]

2022-10-31

マスク氏がツイッター買収、メディアはパニック

ジョージ・ワシントン大学法学教授、ジョナサン・ターリー
(2022年10月29日)

10月27日の夜、私はイーロン・マスク氏がツイッター社買収にあたり直面する課題についてコラムを書き、新しいことに全力で取り組む手順を提案した。以前のコラムで述べた明らかなステップの一つは、史上最大の検閲システムの一つを作り上げた主要人物であるパラグ・アグラワル最高経営責任者(CEO)、ネッド・セガル最高財務責任者(CFO)、ビジャヤ・ガッデ最高法務責任者(CLO)を解雇することだった。マスク氏は就任後数分でこれを実行し、アグラワル氏らの解任は世界における言論の自由という大義において異例の前進となった。

予想どおり昨日の朝、メディア関係者は、ツイッターが長年にわたる偏向した強引な検閲の後、言論の自由の保護を回復するかもしれないと考え、大パニックに陥った。物議を醸したワシントン・ポスト紙のコラムニスト、テイラー・ロレンツ氏は「今夜、このサイト(ツイッター)で地獄の門が開かれたようだ」と嘆いた。そのとおり、他人が自分の意見を表明するためツイッターを利用できるようになることは、多くのメディア関係者にとって地獄のようなものなのだ。

アグラワル氏とガッデ氏は、ツイッター社の検閲文化を体現しており、言論の自由や多様な意見に関する伝統的な考え方に臆することなく反対する人物だった。

アグラワル氏は就任してまもなく、「より健全な公共の会話につながると信じるものを反映した」コンテンツ規制を行うと宣言していた。

アグラワル氏は、同社が「言論の自由について考えることにあまり重点を置かないようにする」と述べた。「インターネットでは言論は簡単だ。ほとんどの人が発言できる。我々の役割として特に強調されるのは、誰の声を聞くことができるかということだ」

私はかねて、インターネットは言論の自由にとって印刷機の発明以来の大発展だと考える「インターネット原論者」だと自認してきた。しかし、議会から大学まで、言論の自由の価値が急速に損なわれているのは、憂慮すべき事態だ。

ジョー・バイデン大統領を筆頭に、民主党の指導者やメディア関係者は、気候変動、公正な選挙、公衆衛生、性自認などの諸問題について、反対意見を抑えるため、企業検閲のほか国家検閲さえ要求してきた。たとえば、ワシントン・ポスト紙のマックス・ブート氏は「民主主義が生き残るには、コンテンツの節度を高めることが必要で、低くする必要はない」と宣言した。

その同じ人物の多くが今や、気候変動、選挙規制、性自認などさまざまなテーマについて他人が反対意見を述べることができるかもしれないと考え、憤慨しているのだ。

ジャーナリストのモリー・ジョンファスト氏は、「誰か新しいツイッターを作ってくれないか、それともこれはとても愚かな質問か」と尋ねた。つまりこのジャーナリストは、他人が日常的に黙らされるようなソーシャルメディアのプラットフォームを作り直したいと思っているのだ。答えは簡単。フェイスブック、それに事実上他のすべてのソーシャルメディア・プラットフォームである。

マスク氏恐怖症の人々が騒ぎ出したのは、たった一つのソーシャルメディア企業が、言論の自由の保護を強化するという見通しによって引き起こされた。たった一社だ。しかし人々が代替手段を持てば、政治的・社会的言論を統制する努力は水の泡になると彼らは知っている。これらの企業が検閲を売り物にできるのは、言論の自由の競争相手をほとんど封じ込めてきたからにほかならない。今、代替手段ができるかもしれない。

一つのソーシャルメディアサイトで勃発した言論の自由に対するパニックは、ジャーナリズムや法学の教授たちにも共有されている。ニューヨーク市立大学のジャーナリズム教授、ジェフ・ジャービス氏は「太陽が暗い」「これは緊急事態だ! ツイッターは邪悪なシス卿(映画『スターウォーズ』の悪役)に乗っ取られることになる」と書いた。ジャービス氏は以前、マスク氏による買収の可能性が高いというニュースの後、「今日のツイッターは、ワイマール・ドイツの黄昏時にベルリンのナイトクラブで過ごす最後の夜のように感じる」と書いた。

ジャービス氏だけではない。

ジャーナリズムの学校では、アドボカシー(特定の主義の唱道)ジャーナリズムの台頭と客観性の否定について議論されてきた。作家、編集者、コメンテーター、学者らは検閲や言論統制を求める声の高まりを受け入れており、バイデン氏やそのおもだった顧問らも同様だ。この動きには、ジャーナリズムにおける客観性という概念そのものを否定し、あからさまな唱道ジャーナリズムを支持する学者も含まれる。

コロンビア大学ジャーナリズム学部長でニューヨーカー執筆者のスティーブ・コル氏は、合衆国憲法修正第一条による言論の自由の権利が、偽情報を守る「武器」にされていると批判している。スタンフォード大学のジャーナリズム教授であるテッド・グラッサー氏は学生新聞とのインタビューで、ジャーナリズムは「社会正義の感覚を身につけるために客観性という概念から自らを解放する必要がある」と主張している。グラッサー氏はジャーナリズムが客観性に基づいているという考えを否定し、「ジャーナリストは活動家」とみなすという。なぜなら「最良の状態におけるジャーナリズムとは、そして最良の状態における歴史とは、すべて道徳に関するものだからだ」という。したがって「ジャーナリストは社会正義を公然と、かつ率直に主張しなければならず、客観性の制約の下でそれを行うのは難しい」。

同様に、ハーバード大学の法学教授ジャック・ゴールドスミス氏とアリゾナ大学の法学教授アンドリュー・キーン・ウッズ氏はアトランティック誌に発表した論文で、「ネットワークの自由対管理に関する過去20年間の大議論において、中国はほぼ正しく、米国はほぼ間違っていた」と述べ、中国式のインターネット検閲を呼びかけている。

マスク氏が、ツイッターに言論の自由の保護を回復するという公約を忠実に守ることができるかどうか、見極めなければならない。そのために私は、同社を言論の自由の砦(サイト)に早急に作り変えることができる「憲法修正第一条オプション」(政府に適用される言論の自由の侵害禁止を、企業が自主的に適用する)を提案した。マスク氏がどのような方法で同社を再建するかはともかく、はっきりしているのは、大手ソーシャルメディアサイトで言論の自由が守られる可能性が出てきたことである。言論の自由に反対する人々のパニックは、ソーシャルメディアにおける多様な意見と議論を深めるため、一つの扉が今開かれたという希望を何百万人に与えるのに十分なものである。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : 'The Gates of Hell Opened': A Media Panic Ensues As Musk Takes Over Twitter and Fires Chief Censors [LINK]

戦争屋の圧力に屈した民主党左派

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年10月26日)

米議会進歩派議員連盟は、バイデン大統領に宛てた、きわめておとなしく歯切れの悪い書簡を撤回した。ウクライナ紛争を終わらせるために、ちょっとした外交活動を検討するよう丁重に求めたものだ。公認の帝国主義路線からわずかに外れたため公の場で怒りが殺到し、撤回されたのである。

アレクサンドリア・オカシオコルテス、イルハン・オマル、アヤンナ・プレスリー、ラシダ・タリーブ、ジャマール・ボウマン、ロー・カンナら下院の左派議員が署名した元の手紙を実際読んでみると、言葉は並んでいるものの、どんな声明よりも無害で無節操であることがすぐにわかる。冒頭でバイデンのウクライナ介入政策を絶賛し、ロシア政府を終始あからさまに非難し、提案内容はすこぶる控えめだ。「米国がウクライナに提供してきた軍事・経済支援と前向きな外交支援を組み合わせ、停戦の現実的枠組みを模索する努力を倍加する」という。明確に支持されているのは、そのような外交があらゆる段階でウクライナにとって納得のいくものであることだ。

この役立たずな代物は、バイデンに「ウクライナ戦争の戦略を劇的に変える」よう求めていると、ワシントン・ポスト紙によって奇怪にも喧伝された。本文のどこにも、「劇的」と解釈されるようなものはないにもかかわらずだ。手紙はナンシー・ペロシ下院議長ら両党の戦争屋から反感を買った。米国左翼の法王バーニー・サンダースは個人的に手紙を非難した。ネット荒らしや戦争屋は、公式の場でこの手紙を掲載したすべてのソーシャルメディアの通知に群がり、「宥和」や「チェンバレン」(ヒトラーに妥協し宥和外交を行ったと批判された英首相)という言葉を考えもなしに一斉に叫んだのである。

進歩派議連のプラミラ・ジャヤパル会長は、手紙の撤回に関する声明の中で、和平をあおる書簡の公表という問題行為の責任を認めると同時に、公表をスタッフのせいにした。

「この手紙は数カ月前に起草されたが、残念ながら審査なしでスタッフによって発表された。議連の会長として、この責任を負う」とジャヤパル氏は述べた。

「あらゆる戦争を終わらせるのは外交であり、この戦争もウクライナの勝利の後に終わるだろう」と声明にはあり、米当局がこの戦争でウクライナが完全に勝利する見込みはないとひそかに考えているという主流の報道を無視した。「昨日送られた書簡は、その基本原則を再確認するものではあるが、ウクライナによる国家主権の正当な防衛を支援することに対する共和党の反対と混同されてしまっている。この時期に混乱を招くものであり、書簡を撤回する」

アメリカ帝国を批判する人々は、撤回が卑屈なものだとただちに強調した。

「左派にとって、米国が挑発し、長引かせ、その過程で武器メーカーに何十億ドルも手渡した悲惨な代理戦争に賛成票を投じるより哀れなことはない。外交を求める生ぬるい呼びかけを撤回し、それをスタッフのせいにすることで、彼らはなんとかその場をしのいだ」とアーロン・マテ(ジャーナリスト)はツイートした。

「間違いなくワシントンの非常識なタカ派の雰囲気を物語っている。核兵器による破滅にエスカレートする危険のある紛争で、まったく合理的で責任ある必要な外交の呼びかけを撤回するよう、進歩派議員連盟に圧力をかけたのだから」とラニア・カレック(同)はツイートしている。

「体制に挑戦するという公約に基づいて議員に選ばれたのに、超党派のワシントンの権力者からの怒りにおびえ、表明して24時間もしないうちに、ほんの温和な反対意見をおとなしく撤回するとは」とグレン・グリーンウォルド(同)のツイート。

もう少し外交的にという弱々しい主張を進歩派議連が撤回したのは、どんな圧力が決め手になったのか、その圧力のどれだけが、中央政界の沼に住む大きな政治的怪物によって舞台裏でもたらされたのかはわからない、結局それはどうでもいい。この教訓から得られる重要なことは、繰り返すが、民主党左派は寡頭政治と帝国の仕組みに反対するうえで無価値に等しいということだ。

実際彼らの行動を見れば、党の他の集団と意味のある違いがある派閥であるかのように「民主党左派」と表現するのは、正確でない。医療や債務免除に関し時折発する空疎な声明は別として、彼らは米国人の生活をより良くする左派の課題を解決するために何もしていないし、米国の戦争機構の拡大を防ぐために何もしていないのも間違いない。

民主党左派とは、善良な億万長者や米国の正義の戦争と同じく、神話である。「スクワッド(分隊)」(民主党左派の小派閥)は、民主党政権のソーシャルメディアに精通した支部に過ぎない。米国には戦争屋の寡頭政治政党が二つあり、その詐欺に等しい政治機構に心を支配させ続けるように、大規模なナラティブ(物語)操作を行い、米国人を操作し、おだて、強要している。

同時期にルーマニアの国防相が、ウクライナの平和を達成するには和平交渉が必要だと発言して辞任に追い込まれた。これらは私たちの現在と未来について、多くを明らかにしているにすぎない。この社会で最も轟々たる非難を浴びるのは、核超大国間の対立を外交で緩和するよう試みようという主張だ。「オバートンの窓」(多くの人に尊重すべきのものとして受け入れられる政治的な考えの範囲)が、すでに戦争狂の方向に引きずられてしまっているため、平和が割り込む余地はないのである。

(次を全訳)
Worthless House Progressives Retract Mild Peace Advocacy Under Pressure From Warmongers [LINK]

2022-10-30

富裕層は入れ替わる

ケイトー研究所アナリスト、チェルシー・フォレット
(2016年1月8日)

トップに立つのは思ったよりたやすいかもしれないが、トップに立った後、それを保つのは大変だ。

コーネル大学の研究によると、米国人の50%以上が、現役時代に少なくとも1年間は所得上位10%に入る。また11%以上が少なくとも1年間、所得上位1%(年収33万2000ドル以上)に数えられる。

なぜ、このようなことが可能なのだろうか。単純に、これら集団内では入れ替わる率がきわめて高いからだ。

どのくらい高いのか。「トップ1%」に入った米国人の約94%は、その地位を1年間しか享受できない。そして約99%が10年以内にその地位を失う。

ここで、上位1%よりもはるかに高級なクラブである、米国の所得上位400人について考えてみよう。1992年から2013年の間に、上位400人のうち、その地位を1年以上保てなかったのは72%。10年以上保てなかったのは97%以上だ。

ヒューマンプログレスの諮問委員会メンバーであるマーク・ペリーは、このテーマに関する最近のブログ記事で、次のようにうまく表現している。

所得五分位の最上位または最下位、所得上位または下位のX%(あるいは納税者上位400人)などに関する解説を耳にするたびに、当たり前の前提とされるのは、それらは静的で閉鎖的な会員制クラブであり、動的な入れ替わりはほとんどないというものだ。しかし経済の現実はまったく異なる。人々は職歴や人生を通じて、所得五分位や百分位のグループを上下に移動する。

経済的な流動性を、年収ではなく、築いた財産でみてみるとどうだろうか(年収のほうが変動しやすい)。

フォーブス400は、その年の収入に関係なく、推定純資産の合計で最も裕福な米国人をリストアップしたものである。1982年から2014年の間に、フォーブス400のリスト記載者とその相続人の71%以上が400位以内の地位を失っている。

だから次に米国の富裕層について議論するときは、財産か所得かを問わず、入れ替わりが非常に激しいことを忘れないようにしよう。

(次より抄訳)
High Turnover Among America's Rich - HumanProgress [LINK]

冷戦詐欺を終わらせよう

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年4月1日)

冷戦はそもそも行われるべきでなかった。冷戦は米国史上最大の過ちの一つであり、米国民の権利と自由を破壊し、多くの死と苦しみをもたらした。

冷戦はまた、米国の政府構造を根底から変え、連邦政府を建国時の小さな政府の共和国から安全保障国家に転換させた。安全保障国家は、当局者が暗殺、誘拐、拷問、無期限拘留、クーデター、独裁国家との同盟など全能の闇の力を行使する全体主義体制の一形態である。

やがて国防総省(ペンタゴン)、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)といった国家安全保障機構は、事実上、連邦政府の別部門となり、最も強力な部門となった。今日、連邦政府を実際に動かしているのはこの部門であり、他の三部門(立法・行政・司法)は支配しているように見せかけながらも、実際には国防総省、CIA、NSAの圧倒的な権力と支配に従属している。

冷戦は国家安全保障機構だけでなく、増大し続ける「防衛」請負業者の軍隊を肥え太らせ、国民を食い物にする、金のなる木のようなものになった。

冷戦の結果、米国はアジアで二度の地上戦に巻き込まれ、韓国とベトナムで10万人以上の米兵が無駄に犠牲になった。

また冷戦は1962年のキューバ危機で、米ソを全面核戦争の寸前まで追い込んだが、この危機は米国の国家安全保障体制が引き起こした部分が大きい。

おそらく最も重要なことは、冷戦が米国民の良心を萎縮させ、道徳価値をゆがめ、曲解させたことである。この現象は、残念ながら今日まで続いている。

なぜ米国は冷戦に踏み切ったのだろうか。ケネディが平和演説で指摘したように、結局のところ米ソは第二次世界大戦でナチス・ドイツを倒すために手を組んだ。なぜ、戦争が終わった後も協力し合うことができなかったのか。なぜ米国は第二次世界大戦が終わった途端に、戦時中のパートナーかつ同盟国と冷戦状態に入る必要があったのだろうか。

ナチスドイツはロシアに侵攻し、全土制覇の寸前まで追い詰めた。その過程で、ロシア全土に甚大な死と破壊をもたらした。戦争が終わるまでに、ロシアは2000万人以上の人々を失った。また工業力も含め、国全体が壊滅的な打撃を受けた。

ソ連軍はナチス軍をドイツに押し戻すために、やむをえず東欧諸国に侵攻し、占領した。ドイツが降伏するまでに、ソ連は東欧諸国とドイツの東半分を占領していた。

戦争が終わった後も、ソ連は自国の国境に戻ることを拒否し、東欧と東ドイツの占領・支配を続けることにこだわった。ソ連の行動は法的には正当化できないが、現実的には理解できるものだった。ソ連はドイツに再び侵略されることを望んでいなかった。そのための緩衝材として東欧に目をつけたのだ。またドイツの分割は、ドイツの侵略に対するさらなる保険になると考えていた。

米国はこのソ連の決断を冷戦の正当化に利用した。ソ連の東欧・東ドイツに対する強硬な行動は、共産主義者が西欧や米国を含む世界の征服に執念を燃やしていることを証明するものだ、と。だからソ連の攻撃から西欧を守るために、NATOをつくったというわけだ。

しかし、その根拠はまったくのでたらめだった。ソ連が西欧に対して新たな世界大戦を始める合理的な可能性はまったくなかったし、とくにそれは、ほぼ間違いなく米国との戦争を意味するものだった。第二次世界大戦の終結時、ソ連は壊滅的な打撃を受け、米国はまだその産業力を保っていた。しかも米国は核兵器を持っており、人口密集地に対して核兵器を使用する意思も示していた。

米国内には、米国の政府体制を安全保障国家に転換させようとする人々がいた。そのためには米国民を死ぬほど怖がらせる必要があった。「神なき共産主義」とソ連がその役目を果たした。赤軍が自分たちを捕まえに来るのだと米国人に思い込ませたのだ。連邦政府を国家安全保障に転換しなければ、赤軍は米国の征服に成功するだろうというのである。やがて共産主義者が連邦政府と米国の公立学校を牛耳るようになるだろうというわけだ。


日本軍の真珠湾攻撃以前、ほとんどが参戦に反対していた第二次世界大戦によって大規模な死と破壊に襲われ、いまだに衝撃を受けていた米国人は、受け身になって米当局者の判断に委ねた。ケネディ上院議員(後の大統領)をはじめ、ほとんどの人が冷戦の戦士、反共産主義者の十字軍になった。

米国では、共産主義を信奉する人々を徹底的に追い詰めた。殺しはしないが、破壊するためにあらゆる手を尽くした。マッカーシーの公聴会では、過去に共産主義とのつながりがあった米国人を洗い出し、解雇し、破滅させるためにあらゆる手を尽くした。さらに連邦捜査局(FBI)とCIAは、米国共産党や、米政府の対キューバ政策、とくにキューバ国民を死と貧困の標的とする残忍な経済封鎖に反対する全国組織「公正キューバ委員会」などへの潜入と破壊に全力を尽くしたのである。

その過程で米国人のほとんどは、自由の基本原則を忘れてしまった。自由な社会では、人々は、他人がどんなに危険で有害だと考えても、どんな政治経済思想でも信じ、それを主張する当然の、神から与えられた権利がある。自由な社会では、そのような権利の行使を妨害するのではなく、保護することが政府の役割である。

米国の共産主義者たちは、その自覚はなかったかもしれないが、じつは幸運な人たちであった。国防総省とCIAは、外国の共産主義者に対して全然異なる対応をとったからだ。連邦政府が安全保障国家に転換したことで、軍とCIAの幹部は、共産主義を信じたり主張したりする外国人を実際に殺害する権限を振るうようになった。そこで登場したのが暗殺の権限である。CIAと国防総省は、外国の共産主義者を暗殺する権力を振るうようになった。

(次より抄訳)
Let’s End the Cold War Racket – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2022-10-29

チャンスの国、アメリカ

研究者、リプトン・マシューズ
(2022年10月26日)

危険を冒してまで入国しようとする移民の波ほど、米国への需要を物語るものはない。読者は毎日、米国の崩壊が迫っているという暗い話を聞かされている。しかし、このような警鐘を鳴らす風潮には、米国人の複雑な体験が隠されている。米国は世界各国から市民を集めることに長けている。それは、個人の成果を支援するために資源や制度を動員する優れた能力を持っているからだ。

移民が米国に魅力を感じるのは、米国では権力者であっても不正をすれば訴追されるという認識と現実があるからである。市民は制度の公平性を信じることで、その成功を実力によるものとし、目標達成のために努力する傾向がある。米国の市民文化は権力の中枢における汚職や非効率に容赦がなく、健全な市民文化は良い統治をもたらす。

しかし、多くの国では汚職が社会規範として浸透しており、不祥事を起こした役人が処罰されることはほとんどない。ジャマイカの例では、汚職疑惑は「九日間の不思議」に例えられる。数日間わめいた後、人々はそのような事件を忘れてしまうのが普通だからだ。移民たちは、米国はより公平な社会であるため、移住することで人生のチャンスが増えると強く感じている。

しかし社会によっては、縁故採用や顧客主義が、有能な個人を犠牲にして家族や友人を優遇し、社会的な地位上昇の機会を阻害し続けている。このような勢力が中南米などの社会に与える打撃を評価する人は、ほとんどいない。有能な人材が報われないことで、生産性の高い従業員の意欲を失わせ、最も有能な人材が重要な役割を果たせなくなるため、ビジネスを行うコストを増加させる。

フアン・フェリペ・リアーノは最近の論文で、コロンビアを「官僚縁故主義」 の典型例として紹介している。それによると、コロンビアの公務員の38%は親戚が行政機関におり、18%は家族ぐるみで公務員とつながっており、11%は同じ機関に所属する家族と一緒に働いている。コネのある人は給料も高く、高官とコネがあると、適性が見過ごされる恐れがある。

こうした雇用方針が公共財の提供に破滅をもたらすのは明らかだろう。官僚は公的資源を管理する責任があるが、そのために選ばれた人が不適格であれば、公共財の供給は劣悪なものとなる。移民は母国でそうした不都合な方針が慣行となっていることを承知しているので、公職を維持するのに高い水準を求められる米国に移住するきっかけになる。

また、移民は米国企業が業績と能力を重視していることも知っている。汚職というと公共部門の問題というイメージがあるが、民間部門の活力も同様に低下させる。ジャマイカで働くことを拒否した人々が、米国に移住して二、三の仕事を見つけ、並外れた成果を上げることは、見る者を長年困惑させてきた。

ケネス・カーターは1997年に出版した『なぜ労働者は働かないのか』でこの謎を解き明かしている。

カーターはジャマイカの従業員を調査し、ジャマイカで昇進につながるのは、同僚のゴシップを上司に聞かせること、上司のエゴを満たすことだという考えが広まっていることを発見した。カーターの調査によると、管理職は生産性を阻害する有害な環境を作り出していた。報酬と生産性が相関しないため、従業員にとっては、自己改善の機会が限られていることを考えると、優秀であることよりも生産性を抑えることの方が安上がりだったのである。

米国には、自分の努力が評価される環境を求めて人が集まってくる。移民は、自国できちんとした報酬を得られるのであれば、米国への移住をためらうだろう。さらに、米国は知能指数で1位を獲得しており、才能を開花させるのに世界で最も適した場所である。ベンチャーキャピタルの大手はほとんど米国にあり、現在でも最先端の大学がいくつかある。

さらに驚くべきことに、米国は再分配においてトップであり、「米国は国民所得のうち下位50%に最も多く再分配している国として際立っている」という調査結果がある。米国はもはや機会の国ではないという不満があるにもかかわらず、経済分析では、「過去に比べて現在、機会の平等が高まっているが、それは機会がそれほど平等でなかったことがおもな理由である」との見解が示されている。

メディアは米国批判に明け暮れているが、じつは米国は今でも多くの面で立派な国である。移民はアメリカンドリームとその永続を信じるからこそ、危険に遭遇しながらも果敢にその地を目指すのである。

(次を全訳)
To Many, America Still Is a Place of Opportunity (Unless Progressives Destroy That, Too) | Mises Wire [LINK]

米国防総省が招いた核の危機

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年10月27日)

十分承知しているが、ウクライナに関しては、ロシアの侵攻だけに焦点を合わせ、米国防総省(ペンタゴン)がこの危機を作り出した事実に触れてはいけないことになっている。世界を破滅させかねないロシアとの核戦争に危険なほど近づいた、この危機である。

それでも、この危機における国防総省の役割は、何度も何度も強調されなければならない。ちょうどキューバ・ミサイル危機を引き起こした国防総省の役割もまた、何度も何度も強調されなければならないように。

そう、私が強調しているのは、ロシアとの核戦争寸前まで近づいた、これら二つの危機を引き起こした国防総省の役割である。

冷戦時代の終わり、北大西洋条約機構(NATO)が存在し続ける理由はまったくなくなっていた。ソ連(ロシア)の攻撃から欧州を守るというNATOの使命は果たされた。冷戦は終わったはずだった。

ただ問題は、国防総省と中央情報局(CIA)にとっては、冷戦が終わっていなかったということだ。もし連中に思い通りのことができたなら、冷戦騒ぎは永遠に続いたことだろう。結局のところ、連邦政府機構の中で予算と権力を拡大させ続けるために、冷戦以上の理由があるだろうか。

だからNATOを存続させたのだ。中東に介入してテロとの戦いに発展させる一方で、NATOを利用してロシアを刺激し、冷戦の再来を狙ったのである。冷戦時代の恐竜を解体する代わりに、ワルシャワ条約機構の旧メンバーを吸収するためにNATOを利用した。それによって国防総省とCIAは、ロシアの猛烈な反対にもかかわらず、核ミサイルと軍事力をロシアの国境に容赦なく近づけることができるようになった。

しまいに国防総省とCIAは、ウクライナをNATOに吸収すると脅した。ロシアがおよそ25年前から、そうなったらウクライナに侵攻して阻止すると宣言していることを知りながらである。連中の計画は成功した。ロシアがウクライナに侵攻すると、国防総省とCIAの忠実な手下どもは、侵攻だけに注目し、侵攻を誘発したNATOの陰謀には目を向けなかった。

キューバ・ミサイル危機の時も同じだった。ソ連がキューバに核ミサイルを設置したのは、CIAと国防総省によるキューバへの再度の侵攻を抑止するためだった。忘れてならないのは、CIAはすでにピッグス湾事件でキューバに侵攻し、惨敗していたことだ。その後、国防総省はケネディ大統領に全面的な軍事侵攻を行うよう絶えず働きかけていた。国防総省の偽旗作戦は「ノースウッズ作戦」(テロリストに見せかけた攻撃を米国内で起こし、米国民の対キューバ感情を悪化させる作戦)として知られているが、ケネディ大統領はこれを即座に拒否し、その功績を不朽のものにした。

国防総省とCIAがキューバを侵略する法的な正当性はあったのだろうか。何もない。キューバに共産主義政権があることは、決して侵略を正当化するものではなかった(さらに言えば、キューバのフィデル・カストロ議長に対する度重なる暗殺未遂も正当化できない)。キューバが米国を攻撃したことはなかったし、攻撃すると脅したことさえなかったことを忘れてはならない。共産主義キューバと米国との長い関係においては、つねに米政府が侵略者であった。キューバで政権交代を起こす手段として、冷戦時代の古い経済封鎖をやめず、キューバ国民を死と貧困の標的にし続けていることも含めてである。

キューバとソ連が十分承知していたように、CIAと国防総省はカストロ政権をそれ以前のような別の親米独裁政権に取って代えるため、再びキューバを侵略しようと固く決意していた。だからこそ、核ミサイルをキューバに設置したのだ。米国の再度の不法侵攻を阻止するために。

米国の国家安全保障体制の忠実な侍者たちは、なぜこれらすべてを理解できないのか。なぜなら、彼らにとって国防総省、CIA、国家安全保障局(NSA)は三位一体の神だからだ。誰が神を疑ったり批判したりするだろう。

しかし、もし米国民が国を正しい道、つまり自由、平和、繁栄、世界の人々との調和への道に戻そうとするなら、この偽りの神に疑問を呈するだけでなく、この神とその邪悪な組織を歴史のゴミ箱に投げ入れ、小さな政府の共和国というアメリカ建国時の政治制度を取り戻さなければならない。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Pentagon Brought on Both Nuclear Crises [LINK]

2022-10-28

音楽の豊かさ

経済学者、ゲイル・プーリー
(2022年9月9日) 

1877年、トーマス・エジソンが蓄音機レコードの原型を開発した。最初の再生可能なレコードは、2枚の錫箔の間に紙を挟んでプレスしたものだった。

1949年3月15日、RCAビクターが45回転のレコードを初めて発売した。このレコードは、人気の78回転レコードより小さく、曲数も少なく、色も違っていた。ローリング・ストーン誌によると、「50年代のティーンエイジャーは、持ち運びができ、値段も安いこのレコードを好んだ。当時のある広告によると、レコードの値段は1枚65セントだった。ロックの初期大ヒット曲のひとつ、ビル・ヘイリーとコメッツの『ロック・アラウンド・ザ・クロック』は、1955年に300万枚のシングルを売り上げた」。

1955年の未熟練労働者の時給は97セント程度だった。時間でみた1曲の値段は40分の労働にあたる。

アップルは2003年4月28日、iTunes Storeを立ち上げ、曲を99セントで販売した。このとき、未熟練労働者の賃金は時給9.25ドルにまで上昇していた。1曲の時間価格は84%下がり、6.42分の労働時間となった。2003年のリスナーは、1955年の1曲の値段で6曲を手に入れた。

アップルミュージックは2015年6月30日に発売された。現在、学生は月額5.99ドルで9000万曲を聴くことができる。未熟練労働者の時給は14.53ドル程度なので、時間価格は25分程度の労働時間である。ユーザーはストリーミングだけでなく、アルバムや楽曲をデバイスにダウンロードしてオフラインで再生することもできる。一般的な楽曲が3〜4分だとすると、1カ月で1万2342曲再生することができる。1曲あたりの時間価格は、約8分の1秒の作業時間だ。

1955年に私たちの祖父母が1曲買うお金を稼ぐのに要した時間に対して、現在の私たちは1万9750曲を手に入れることができる。1955年以来、個人の音楽の豊かさは年率約15.9%で、4.5年ごとに2倍に増えている。

私たちが今日享受しているあらゆる製品は、人間が発見し、自由な市場で他の人々と共有する、何十億、何百億もの小さな知識の集大成だ。歌を作り、それを世界と共有する。私たちは自分自身を高め、互いの人生をより良いものにすることができる。

私たちはまだ問題を抱えているだろうか。もちろんだ。つねに課題に直面することだろう。しかし、私たちがこの二百年間に成し遂げたことを見てほしい。これは人々が自由に互いの問題を解決し合うとき、何が起こるかを示している。

(次を全訳)
Musical Abundance - HumanProgress [LINK]

朝鮮戦争の真相

シカゴ大学歴史学教授、ブルース・カミングス
(BBCヒストリー・マガジンによるインタビュー、2020年6月25日)

1950年に始まった朝鮮戦争は、厳密にはまだ終わっていない。米国は北朝鮮を空から攻撃し、近代的な建物をほとんど残さず、数え切れないほどの民間人を殺害した。ブルース・カミングス教授によれば、この戦争が残した血の負債が、その後の北朝鮮の行動を理解するうえできわめて重要である。

——朝鮮戦争の起源は。

戦争の始まりは1930年代にまでさかのぼる。北朝鮮の建国者である金日成は、日本軍に対してゲリラ闘争を開始した。日本軍は1931年9月に中国東北三省に侵攻し、1932年3月1日に満州国という傀儡国家を建国した。その翌月、1932年4月に始まった戦闘が、北朝鮮の軍隊の始まりである。

金日成とその仲間は、冬にはマイナス40度にまで冷え込む、人を寄せ付けない土地でその後10年間戦い続けた。この戦いには様々なゲリラ集団が参加し、金日成の集団は中国共産党に指揮されていたとする情報もある。実は、ゲリラのほとんどは朝鮮人であり、いわゆる中国共産党も朝鮮人が多数派であった。朝鮮人指揮官は自分たちのやりたいようにやり、中国の序列には属さない。これらゲリラは日本軍を苦しめ、勝ち目のない戦争に引きずり込んだ。

1939年、数万人の日本軍を巻き込んだ戦闘で事態は収拾に向かった。1941年になると、ゲリラは著しく消耗し、中露国境付近のハバロフスク近郊の訓練所に引き揚げ、真珠湾攻撃で米国が対日参戦するという避けがたい結末を待つことになった。

この歴史の意義は二つある。一つは、1945年に生き残った約200人のゲリラが平壌に帰還し、国家を支配するエリート集団となったことから、北朝鮮の建国神話を構成していることである。この集団は現在も権力を握っているが、75年間の排他的支配を経てかなり大きくなっている。

もう一つ、1930年代のきわめて重要な事実は、日本軍が朝鮮人将校を雇ってゲリラを追撃したことだ。例えば、金日成の追跡を任された日本軍の大佐、金錫源である。1949年の夏から秋にかけて、金錫源は38度線の司令官を務め、大将になった。このように、1930年代に正反対の道を選んだ朝鮮人同士の争いが、内戦の可能性を高めていた。

また、1945年8月の日本統治崩壊後、一般の朝鮮人が自発的に政治委員会を立ち上げて地方行政を行うようになったことも、朝鮮戦争勃発の要因の一つである。北を占領していたソ連軍はこれらの委員会を支援し、これらの政治団体はやがて北朝鮮の政権の基礎となり、現在に至っている。1945年9月8日、米軍が到着し、3年間の軍事政権を樹立した。米国は、韓国のある地域では委員会と協力したが、他の地域では委員会を弾圧しようとし、指導者を牢屋に閉じ込めた。このため、1946年秋に大規模な反乱が起こった。反乱後の調査により、憎むべき日本の植民地警察の朝鮮人隊員を、米国が韓国全土で使っていたことが判明した。

1948年までにほとんどの委員会が地下に潜ったが、委員会は済州島で統治を継続した。1948年4月3日、朝鮮半島の分断計画に反対して島で起きた蜂起は、その後2年間にわたり、国家警察、軍隊、北朝鮮から追放された右翼青年団のメンバーによって、島民の10%、約3万人が徹底的に殺戮されることとなった。鎮圧部隊は、日本軍に所属していた朝鮮人将校の指揮下にあった。

この紛争は、韓国の独裁政権下で数十年間埋もれていたが、近年、来るべき内戦を予見させる一種の試金石とみなされるようになった。北朝鮮の指導者、そしてそれを支持する南の人々が、この虐殺を許すとは考えられなかった。

——その後どうなったか。

1949年の夏から秋にかけての国境沿いの戦いは、来るべき戦争の直接のきっかけとなるものであった。1945年8月、米国の作戦立案者は、米ソそれぞれの領域を示す適切な線として38度線を選択した。同盟国にもソ連にも、そして一人の朝鮮人にも、誰にも相談しなかったのだ。米国は設立まもない韓国軍を指揮統制し、それは1949年6月30日まで続いた。500人の軍事顧問団を残し、最後の米軍が撤退するまでである。

国境沿いの戦闘は、その1カ月前の1949年5月に始まっていた。米軍司令官によると、この戦いは南側が起こしたもので、1949年の国境戦の半分以上は南側が起こしたという。1949年8月初旬、戦争が起こりそうになったが、米ソ両国の大使が介入し、暴走を抑えた。1949年12月、南部の国境を越えた最後の攻撃があり、その後半年間、平行線は静まった。

1949年当時、北側はまだ戦う準備ができていなかった。というのも、北側の数万人の優秀な軍隊は、中国の内戦で共産党側の兵士としてまだ戦っていたからである。しかし、その後数カ月で彼らは北朝鮮に戻り、1950年6月、金日成の侵攻軍の先鋒となった。米国大使の言葉を借りれば、「幸いなことに、戦争は明白だった」のである。

——朝鮮戦争はどのように始まったのか。

朝鮮戦争の始まりは簡単に説明できる。1950年7月から8月にかけて、北朝鮮軍が半島をなだれ込んできた。米国のトルーマン大統領が大量の軍隊を送り込んだにもかかわらずである。最終的に、米海兵隊第一旅団が南東部の戦線を確保することができ、これが釜山境界線として知られるようになった。その結果、ダグラス・マッカーサー元帥の指揮の下、仁川港への大規模な上陸が可能になった。

米国の指導者たちは2週間以内に、「巻き返し」作戦で北朝鮮に侵攻することを決定した。米軍は中国との国境にある鴨緑江まで行ったが、中国軍と北朝鮮軍による大規模な作戦で後退させられた。1951年1月1日には、ソウルは再び中国と北朝鮮の軍隊に占領された。しかし、5月までにソウルは奪還され、現在の非武装地帯(DMZ)に沿って戦闘はほぼ安定化した。その後2年間、塹壕戦と休戦交渉が続き、1953年7月27日に休戦協定が結ばれた。

戦争中、米国は北朝鮮を空から攻撃し、近代的な建物をほとんど残さず、数え切れないほどの民間人を殺害した。ウィンストン・チャーチルですら苦言を呈したほど大量のナパームを投下し、それ以後の北朝鮮の行動を理解するうえで欠かせない血の負債を残した。

——死者や犠牲者の数は。

米軍は3万3686人が戦死し、英国とオーストラリアもそれぞれ1000人以上、339人の兵士が亡くなり、大きな犠牲を払った。しかし、朝鮮人と中国人の犠牲者ははるかに多い。中国人は100万人弱、韓国人はほぼ同数、北朝鮮人はおそらく200万人が犠牲になった。

——朝鮮戦争の意義は何だったのか。

この戦争が韓国人にとってどのような意味を持つものであったかを語るのは難しい。何も解決しなかったし、民族の分裂は痛ましくも永続することになった。韓国は米国と、北朝鮮は中国と、戦争に伴う外国との同盟関係が重要だったのかもしれない。

米国は世界のあらゆる場所で共産主義を封じ込める使命を負ったため、国防費は4倍に膨れ上がり、国内では安全保障国家が何百もの海外常設軍事基地を管理し、米国史上初めて平時から大規模な常備軍が存在するようになった。また、アレン・ダレス長官(弟ジョン・フォスター・ダレスはアイゼンハワー政権の国務長官)の下で、巨大な資金力を持ち、大きな図体の中央情報局(CIA)が権力の中枢となった。

また、朝鮮戦争は日米両国の経済を大きく発展させ、戦争物資の調達により「日本のマーシャル・プラン」と呼ばれることもあった。もし戦争が他の場所で起こっていたら、このようなことはなかっただろう。しかし戦争は朝鮮半島で起こり、米国人の精神に大きな影響を及ぼした。

(次より抄訳)
The Korean War Explained | HistoryExtra [LINK]

プロパガンダと恐怖戦術

ジャーナリスト、カート・ニモ
(2022年10月24日)

ニュースを無批判に読めば、プーチン(露大統領)がウクライナを核攻撃するつもりだと考える人は多いだろう。もちろん、プーチンはウクライナで核兵器を使うとは言っていない。自国が存亡の危機に直面した場合のみで、間違いなく米政府の方針と同じである。

企業の戦争プロパガンダメディアによって流された嘘とヒステリーは、欧米の何百万人もの人々を怯えさせる結果となった。恐怖のキャンペーンは、ニューヨークに対して核攻撃が行われることをほのめかすまでに至った。ニューヨーク市危機管理局は、核攻撃に対して何をすべきかをニューヨーカーに指示する、まったくおかしな公共広告を公開し、その一翼を担った。屋内に入れ、屋内にとどまれ、メディアの情報をチェックせよ、とビデオは指示する。

核爆発の際に「その場に身を隠す」ことは、無価値にも等しいという事実が語られていない。このビデオは、核兵器が一発、ニューヨークを標的にすることを想定している。くだらない恐怖煽りはこれだけではない。ロシアはその存在が脅かされた場合、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」(SS-18「サタン」の後継)を使うだろう。この新ミサイルは6000マイルを移動することができ、16個の独立した標的核弾頭を搭載する。フランスと同じ面積を破壊する能力がある。

言うまでもなく、マンハッタンからクイーンズ、そしてそれ以外の地域に「避難」している人たちは、その場で死んでしまうだろう。控えめに見積もっても、400万人が死亡し、さらに500万人が負傷するだろう。この核兵器が2発、米国の東海岸を狙った場合、1000万人以上が死亡することになる。

世間を騒がせているインチキな主張は、フォーリン・ポリシー誌(洗脳プログラム「モッキンバード作戦」の制作会社グラハム・ホールディングスが所有)が言うように、プーチンが「世界を吹き飛ばす」だろうというものである。(攻撃の責任を敵になすりつける)偽旗作戦の結果でない限り、そのようなことは起こらないだろう。

偽旗の可能性は明白であるように思われる。「ロシアの(ショイグ)国防相は10月23日、ウクライナが放射性物質を含む『挑発』を準備していると主張した。ロシアが南部でウクライナの前進を食い止めようと苦闘し、緊張が高まるなか、この厳しい主張をウクライナとイギリスの当局者は強く否定した」と同日、フリープレス・ジャーナルは報じている。

ロシア国防省によると、ショイグ氏は「『汚い爆弾』に関わるウクライナの挑発行為の可能性」について懸念を表明した。核爆発のような壊滅的な威力はないものの、広範囲を放射能汚染にさらす恐れがある。

政治的な駆け引きのために嘘をついたり説明を省略したりすることは、最近始まったことではない。米国で最も尊敬されている大統領の一人であるジョン・F・ケネディは、いわゆるキューバ・ミサイル危機の際、メディアに対して誠実な態度を示さなかった。ブログサイト「デイリー・ビースト」(ニューズウィーク誌と同じ親会社)にグレッグ・ミッチェルが寄稿している。

ケネディはキューバのソ連ミサイルへの対応で広く賞賛を浴びたが、その過程で、ホワイトハウスが危機の発生中にいかにマスコミを操作し、あるいは嘘をついたかについてマスコミの間に広く憤慨を呼び起こした。ホワイトハウスのピエール・サリンジャー報道官から、危機の間は自己検閲をし、報道を差し控えるための12項目の正式な「ガイドライン」を受け入れるよう繰り返し要請され、記者たちはしぶしぶ従ったのであった。 たしかに、危機が去れば、政権は少し行き過ぎたと認めるかもしれない(大統領の健康状態や旅行に関する嘘さえも)。少なくとも、危機が生んだ秘密保持の要求をすぐやめるかもしれない。

国防総省の広報担当アーサー・シルベスターは、キューバ危機の間、「(自分の擁護した)情報統制が第二次世界大戦当時よりも厳しかったと認め、猛烈な批判を招いた」という。「そしてシルベスターは、政府の報道『管理』を良く言う際、バイアスのかかった言葉を使った(あやうく口を滑らせかけたが、ケネディ自身、「ニュース管理」という言葉を使い、その習慣を好んだ)」。

「すべての記者は主義信条を問わず、今や政府の宣伝マンかと悲鳴を上げた」

今日、企業メディアの部屋では、国家が作り出したフェイクニュースに対して「悲鳴」は上がっていない。

大多数の「ジャーナリスト」は、自分のキャリアや生活が突然行き詰まらないように、国家が垂れ流す嘘や誤報を文句も言わずにただ書き連ねるだけである。

国家とその所有者によって無知とみなされた米国民(たしかに多くはそうだが)には、安全保障国家を批判や憤りから守るため、大小の嘘を絶えず食わせなければならない。

ケネディはメディアを嫌い、キューバのミサイル危機とされる事態に関して、ソ連がカリブ海の島から全ミサイルを撤去したかどうか中央情報局(CIA)に確認させようとした。

その裏で、ケネディは報道陣をいら立たせ続けていた。撤去したとされるミサイルの一部をソ連が隠しているという、キューバ難民の主張が報道された。ホワイトハウスで国家安全保障の補佐官たちと会議をしたケネディは、それがマスコミに出れば、米国民は「本当だと思うに違いない」し、そうなればソ連との緊張が再び高まり、「もしかしたら戦争になるかもしれない」とまで不満を口にした。そのようなマスコミ報道は、ケネディ政権を「無能か嘘つき」と思わせるものだ。ケネディはマコーンCIA長官に、ミサイルの撤去を確認し、報道を否定するよう頼んだ。

ケネディは、メディアが米国民に伝える内容を管理する「新しい仕組み」を求めていた。「しかし側近らは、ホワイトハウスが報道は間違いだと反論し、否定し始めるのは得策ではないと主張した」。ケネディは結局、メディアに対し報道記事の裏付けとなる証拠を国に提出させるという要求を撤回した。

デイリー・ビースト(ニューズウィーク)は安全保障国家(1950年代、CIAのモッキンバード作戦=メディア操作作戦=で始まった)に取り込まれた大小の嘘つきプロパガンダメディアの構成分子だから、当然ながら、上記の引用記事は当時のトランプ大統領への厳しい批判で終わっている。

ケネディは要求を撤回した。かりに当時、ケネディが自分のツイッターを持っていたとしても、現在のホワイトハウスの住人と違って、報道機関を「米国民の敵だ」とか、「報道機関が書きたいことを書けるのは正直言ってうんざりだ」と告発したとは想像もつかないだろう。

もはや企業メディアと国家の間に敵対関係はない。ここ数年続いている現在の取り組みは、あらゆる手段を使ってオルタナティブ(代替)メディアを根絶やしにすることだ。情報空間は消毒され、国家の行動に有利な嘘や誤報を広めるために安全な場所にされなければならない。それがどんなに狂気じみ、殺意に満ちていてもだ。

上記の公共広告は、プロパガンダと恐怖戦術の典型例である。どんなに不合理で現実と食い違っていても、国家とそのメディアによって採用される。プーチンがニューヨークと東海岸の大部分を核攻撃するという印象しか残さない。恐怖は便利な道具だ。国民に感情的で不合理な反応をもたらし、海外での違法で不道徳な戦争や、国内での警察国家の行動拡大に向けた合意を形成できる。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Fake News, Fake Putin Nuclear Threat [LINK]

2022-10-27

政治にまみれた「正義」

ロン・ポール研究所常務理事、ダニエル・マカダムズ
(2022年10月24日)

(ソ連の独裁者)スターリンの一の子分は「どんな人物かわかれば、ぴったりの罪をつくってやる」と有名な言葉を残している。その意味は、ソ連の司法は法の支配ではなく、政治だったということだ。まず誰が政治上の理由で罰せられるかを決め、しかる後に、その人物が問われる犯罪を国が用意する。

この政治にまみれた「正義」の暗黒時代が戻ってきた。最近、トランプ陣営の元顧問スティーブ・バノン氏が、連邦議会占拠事件の経緯を調べる下院特別委員会(1月6日委員会)への出頭拒否をめぐり議会侮辱罪で懲役4月の実刑判決を受けたのだ。

米議会からの召喚状を無視したバノン氏の処罰が、どうして政治裁判なのか。なぜならバノン氏以前にも、エリック・ホルダー氏(元司法長官)、ジャネット・リノ氏(同)、ロイス・ラーナー氏(元内国歳入庁部長)といった民主党の名士を含む多くの人々が議会侮辱罪で起訴されたが、実刑判決を受けることはなかったからだ。

バノン氏の判決は、米国民に政治的なメッセージを伝える。トランプ氏を支持すれば犯罪者であり、スティーブ・バノンの隣の独房に入ることになるかもしれないということだ。

これが危険だということを理解するのに、トランプ氏を支持する必要はない。誰もが政治裁判を恐れているはずだ。これは両刃の剣であり、共和党が議会を占拠した場合、この前例に従わないという保証はない。

政敵を刑務所送りにするなど、先進国とは思えない。反アメリカ的だ。しかし、現に米国で起きている。

1月6日委員会の目的は、不法侵入してペロシ下院議長の神聖な机に足を乗せたという「罪」に対する正義を求めることではなく、ドナルド・トランプを二度と大統領選に出馬させないようにすることにある。そのために何百人もの人々が犯罪でもないのに不当に逮捕され、ひどい状態で拘束されている。大事の前の小事といういうわけだ。

議会侮辱罪といえば、そもそも本当の侮辱は、1月6日委員会の存在だ。この委員会は最初から党派的な裁判ショーであり、たった二人の「共和党」メンバーは共和党員によって選ばれたのではなく、ペロシ下院議長によって選ばれたのである。委員会の目的は、議事堂に乱入した少数の乱暴なデモ参加者が、どういうわけか(フランス革命の)バスティーユ襲撃に相当するという嘘の物語をテコ入れすることにある。

米政権は他分野でも物語の操作に関与している。先週メディアは、テスラとスペースXを率いるイーロン・マスク氏が、ツイッター買収をめぐり一転二転していること、ロシアとウクライナの和平案(ロシアへの核攻撃は含まない)を提案していることについて、「国家安全保障審査」を受けることになったと報じた。

マスク氏はまた、自分が責任者になったあかつきには、ツイッターを自由な言論の場に戻すと繰り返し誓ったことで、キャンセルカルチャー(排斥主義)左翼から非難を浴びている。元ニューヨーク・タイムズ記者のアレックス・ベレンソン氏をはじめ、多くのケースで見られるように、ツイッターはバイデン政権と密接に連携し、新型コロナやウクライナ、その他多くの事柄について、「通説」にあえて挑戦するあらゆる利用者を黙らせ、利用を禁止してきた。

司法と正義が政治に絡むと、自由は消え去ってしまう。これがバイデン政権に始まったことだと思うほどうぶではないが、癌のように広がっているのは間違いなさそうだ。自由の共和国アメリカを滅ぼさないためには、政治にまみれた正義を否定しなければならない。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Political ‘Justice’ in America [LINK]