帝国主義を糾弾
登場人物の口を通して逆説的に語られる、当時の英国の帝国主義的な外交政策に対する仮借のない批判が見事。「よその国が……国内の派閥争いで揺れていたりするときは、侵略しても正当な行為と見なされる」とは、人道を口実とした現代の軍事介入にもあてはまる。正義を行いたいのなら、他人の懐から取った税金ではなく、自前のカネでやるべきである。
<抜粋とコメント>
"国家の税収は一年に五、六百万ポンドと最初に言っておきながら、後に支出の話になると、その二倍以上の額にふくらんだのは、おまえの記憶の誤りにちがいない"# 財政の説明に首をかしげる巨人国の王。そりゃそうだ。
"よその国が飢饉により衰弱したり、疫病により多くの人民が死に絶えたり、国内の派閥争いで揺れていたりするときは、侵略しても正当な行為と見なされる。"
# いわゆる人道的介入。馬の国で人間の戦争についてレクチャーするガリバー。
"よその国民が貧しく無知な場合は、その野蛮な生活から救い出して文明化してやるためなら、侵略して半分を殺し、残りの半分を奴隷としても許される。"
# いわゆる体制転換。
"わたしはけっして英国を非難するつもりはない。植民地経営の知識、配慮、正義において、英国は全世界の手本となるべき存在なのだから。"
# 自国の植民地支配は「良い支配」だったと主張する人々は、どこにでもいる。
"軍人はもっとも名誉ある職業と考えられている。…これまで何ひとつ自分に害を加えたことのない同種族の仲間を、できるだけ多く平然と殺すために雇われたヤフーなのだから。"
# 女子供の虐殺や市民の「誤爆」をいとわない軍高官に、この名誉を。
*寸評はアマゾンレビューにも投稿。
*抜粋とコメントはツイッターより転載。
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