2020-12-31

仮想通貨の運命


代表的な暗号資産(仮想通貨)ビットコインが30日、過去最高値を更新した。アジア時間の取引で一時2万8600ドルに迫った。今年、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中、ビットコインは4倍近くに値上がりした。機関投資家の間にビットコインを投資対象に組み入れる動きが広がっており、これがさらなる価格上昇への期待感を強めているようだ。

当初は得体の知れない存在として一部の個人投資家しか売買していなかった仮想通貨が、主流の機関投資家や大手企業からも市民権を獲得し、投資対象に加えられていけば、相場を一段と押し上げる可能性はある。しかしそれは一方で、仮想通貨の魅力を失わせるきっかけになるかもしれない。

仮想通貨が個人を引きつけてきた魅力の一つは、プライバシーの確保にある。ビットコインの場合、取引内容はすべて公開されているものの、取引を行った個人や組織は明らかにしていない。このためプライバシーが危うくなることは基本的にないとされる。その利点を生かし、税を逃れる手段にもなっているといわれる。

けれども大手の金融機関や企業にとって大切なのは、プライバシーよりもコンプライアンス(法令遵守)だ。税逃れなんてとんでもない。税務当局から見た「透明性」を高めるために仮想通貨への規制が強化されても、経営体力があるから対応できる。

遠からず、仮想通貨はもはや日陰者でなくなり、お天道様の下、健全な資産として大手を振って歩けるようになるだろう。しかし、その結果、本来持っていた魅力は失われていく。プライバシーは税務当局に対して事実上ないも同然となる。将来、仮想通貨に対する資産課税が導入されれば、政府はボタン一つで税率を引き上げることもできるかもしれない。

仮想通貨がこれまで魅力的だったのは、政府の目の届きにくい異端の存在だったからだ。しかし多くの楽観論者は、同時に政府公認の主流の存在にもなりうると信じているようだ。経済学者タイラー・コーエンはブルームバーグへの寄稿で「それは至難の技だ」と警告している

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