2016年11月11日金曜日

ソミン『民主主義と政治的無知』


政治教育はいらない

メディアはしばしば、国民が政治に無知だと嘆く。たしかに政治的無知は、国民自身の身を危うくしかねない。しかし本書が述べるとおり、政治的無知にはそれなりの合理的理由がある。知識を無理強いするより、すぐれた解決策がある。

大部分の人々にとって、政治的無知は合理的でありうると著者はいう。「政治について最小限の時間と努力を費やすことは利益よりも費用の方が大きい」(p.64)からだ。個人として有権者が選挙結果に影響を及ぼす確率は、ほとんど無である。

だから通念に反し、投票率の上昇は必ずしも望ましくないと著者は指摘する(p.198)。政治的無知が広がる中で投票率を上げれば、投票者の平均的な知識レベルを引き下げ、政治的無知がもたらす危険を悪化させるかもしれないからである。

教育を通じた政治的知識の向上が叫ばれるが、期待はできない。学習から得られる利益が十分大きくないからだ。国民が無知なおかげで当選した政治家にも、人々の知識レベルを向上させるようなカリキュラム改革を行う気はないだろう(p.176-177)。

より賢明な解決策は、自分が望む州や地域に移住する「足による投票」である。移住のコストはかかるものの、投票箱による投票よりも情報獲得の意欲がわくし、判断に必要な情報量も少なくて済む。

「足による投票」の促進には、政府機能を州や地方の政府に分権化することや、もっと多くの争点を始めから政府の外で決定することが鍵となる(p.199)。

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