朝鮮戦争の「終結」から60年目の今年、オバマ大統領は海外軍事介入が失敗した典型例を歴史のごみ箱から救い出そうとした。大統領は、朝鮮戦争の退役軍人らを前にして、こう宣言した。
.@JustinRaimondo: Who Really Started the Korean War? https://t.co/MLsLbVLTjH
— Antiwar.com (@Antiwarcom) April 19, 2017
「あの戦争は引き分けではなかった。韓国は勝利したのだ。今や五千万人の韓国人が自由と活気に満ちた民主主義の中で生活し、…北朝鮮における抑圧や貧困とは対照的だ。それは勝利であり、あなた方の遺産である」
これはおとぎ話だ。勝利でもなければ、引き分けでもない。米国民は休戦のずっと前から戦争に幻滅しており、トルーマン(米大統領)は国内で、日々不人気になっている紛争を終わらせるよう、かなりの圧力を受けていた。「民主主義」に関する馬鹿話に至っては、米国が何のために戦っていたにせよ、戦争が始まった1950年から戦争が停止した1953年まで、民主主義は米国の大義名分とは言いがたいものだった。
米国は、みずから教育・支援した韓国の独裁者、李承晩のために戦っていた。李承晩がその力を示したのは、左派の政敵に対する大規模な虐殺である。22年間、李承晩の言葉は法律であり、何千人もの政敵が殺され、何万人もの人々が投獄され、亡命させられた。朝鮮半島では自由主義が優位になったが、それは米政府の活動と今も続く軍事駐留にもかかわらず、そうなったのである。朝鮮半島の人々がついに李承晩に反抗し、1960年のいわゆる四月革命で追放された際、李承晩は群衆が青瓦台(大統領官邸)に押し寄せるなか、米中央情報局(CIA)のヘリコプターで安全な場所に運ばれた。
朝鮮戦争にまつわる神話は、オバマ大統領の演説に象徴されている。この演説は、実際の歴史をほとんど無視した、高揚した表現の寄せ集めだ。歴史が挟み込まれたとしても、非常に焦点がぼやかされる。「韓国は私たちに思い起こさせる」という文句が流行歌のリフレインのように繰り返されるが、匿名のスピーチライターが書いたこの大統領演説には、朝鮮戦争の起源を思い起こさせるものはどこにもない。なぜ、このようなことになったのか。
ネオコン(新保守主義)と冷戦リベラルによる定番の解説によれば、北朝鮮がソ連、中国と結託し、1950年6月25日に侵略戦争を始め、北朝鮮軍が係争中の国境を越えて押し寄せたという。この省略された歴史で省かれているのは、北朝鮮軍がその行動によって、李承晩自身の北侵計画に先回りしたという事実である。立教大学教授で歴史学者のマーク・カプリオ氏が次のように指摘する。
「1949年2月8日、韓国大統領(李承晩)はソウルでジョン・ムチオ(駐韓)大使、ケネス・ローヤル陸軍長官と会談した。ここで韓国大統領は、北と戦争を始める正当な理由として、次のようなことを挙げた。韓国軍は、最近日本軍や中国国民党と戦った15万〜20万人の韓国人を集めれば、簡単に10万人増やすことができる。また、韓国軍の士気は北朝鮮軍より高い。戦争になれば敵から大量の離反が予想される。最後に、国連が韓国を承認したことで、韓国が半島全体を支配することが正当化された(憲法に規定されている)。つまり、『待っていても何も得られない』というのが李承晩の結論だった。」
李承晩が攻撃を開始しなかった唯一の理由は、必要な武器・援助の提供に米国が乗り気でなかったことだ。戦争が起これば、それは米国の意向に基づくことになるし、米国の指導者は、戦争がすぐにでも起こると考える十分な理由があった。米政府の政策は、李承晩が南部を支配するのに十分な武器を供給し続けることであった。CIA長官ヒレンコッター提督が議会で行った秘密証言によって米国の戦争責任が証明されるという、ハワード・バフェット米下院議員の主張には証拠がある。
共和党の反介入主義者でネブラスカ出身のバフェットは、その重要証言の機密解除を死ぬまで要求したが、残念ながら無駄だった。しかし、次のようなことがわかっている。米政府は6月25日の大規模な戦闘開始のかなり前、主要閣僚宛の情報報告を通じ、北朝鮮の侵略が間近に迫っていることについて十分警告を受けていた。しかし米政府は外交面でもその他の面でも、北朝鮮を抑止する行動をとらなかった。
共産圏では、金日成(北朝鮮最高指導者)が「三日で勝利する」と言ったことに(ソ連の)スターリンが半信半疑で、朝鮮問題で意見が割れていた。ソ連の方針は「軍事援助はするが、介入はしない」であった。一方、中国の毛沢東は支援を申し出たが、これは米国が参戦し、北朝鮮に進攻するまで実現しなかった。
スターリンもトルーマン米大統領も、この紛争が勃発することをとくに望んでいなかったが、二人とも紛争は避けられないと考えていたかもしれない。その場合、敵が最初に発砲したと見せかけることができれば、プロパガンダ上、都合が良かった。