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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2022-10-27

朝鮮戦争を始めたのは誰か?

ジャーナリスト、ジャスティン・レイモンド
(2013年7月29日)

朝鮮戦争の「終結」から60年目の今年、オバマ大統領は海外軍事介入が失敗した典型例を歴史のごみ箱から救い出そうとした。大統領は、朝鮮戦争の退役軍人らを前にして、こう宣言した。

「あの戦争は引き分けではなかった。韓国は勝利したのだ。今や五千万人の韓国人が自由と活気に満ちた民主主義の中で生活し、…北朝鮮における抑圧や貧困とは対照的だ。それは勝利であり、あなた方の遺産である」

これはおとぎ話だ。勝利でもなければ、引き分けでもない。米国民は休戦のずっと前から戦争に幻滅しており、トルーマン(米大統領)は国内で、日々不人気になっている紛争を終わらせるよう、かなりの圧力を受けていた。「民主主義」に関する馬鹿話に至っては、米国が何のために戦っていたにせよ、戦争が始まった1950年から戦争が停止した1953年まで、民主主義は米国の大義名分とは言いがたいものだった。

米国は、みずから教育・支援した韓国の独裁者、李承晩のために戦っていた。李承晩がその力を示したのは、左派の政敵に対する大規模な虐殺である。22年間、李承晩の言葉は法律であり、何千人もの政敵が殺され、何万人もの人々が投獄され、亡命させられた。朝鮮半島では自由主義が優位になったが、それは米政府の活動と今も続く軍事駐留にもかかわらず、そうなったのである。朝鮮半島の人々がついに李承晩に反抗し、1960年のいわゆる四月革命で追放された際、李承晩は群衆が青瓦台(大統領官邸)に押し寄せるなか、米中央情報局(CIA)のヘリコプターで安全な場所に運ばれた。

朝鮮戦争にまつわる神話は、オバマ大統領の演説に象徴されている。この演説は、実際の歴史をほとんど無視した、高揚した表現の寄せ集めだ。歴史が挟み込まれたとしても、非常に焦点がぼやかされる。「韓国は私たちに思い起こさせる」という文句が流行歌のリフレインのように繰り返されるが、匿名のスピーチライターが書いたこの大統領演説には、朝鮮戦争の起源を思い起こさせるものはどこにもない。なぜ、このようなことになったのか。

ネオコン(新保守主義)と冷戦リベラルによる定番の解説によれば、北朝鮮がソ連、中国と結託し、1950年6月25日に侵略戦争を始め、北朝鮮軍が係争中の国境を越えて押し寄せたという。この省略された歴史で省かれているのは、北朝鮮軍がその行動によって、李承晩自身の北侵計画に先回りしたという事実である。立教大学教授で歴史学者のマーク・カプリオ氏が次のように指摘する。

「1949年2月8日、韓国大統領(李承晩)はソウルでジョン・ムチオ(駐韓)大使、ケネス・ローヤル陸軍長官と会談した。ここで韓国大統領は、北と戦争を始める正当な理由として、次のようなことを挙げた。韓国軍は、最近日本軍や中国国民党と戦った15万〜20万人の韓国人を集めれば、簡単に10万人増やすことができる。また、韓国軍の士気は北朝鮮軍より高い。戦争になれば敵から大量の離反が予想される。最後に、国連が韓国を承認したことで、韓国が半島全体を支配することが正当化された(憲法に規定されている)。つまり、『待っていても何も得られない』というのが李承晩の結論だった。」

李承晩が攻撃を開始しなかった唯一の理由は、必要な武器・援助の提供に米国が乗り気でなかったことだ。戦争が起これば、それは米国の意向に基づくことになるし、米国の指導者は、戦争がすぐにでも起こると考える十分な理由があった。米政府の政策は、李承晩が南部を支配するのに十分な武器を供給し続けることであった。CIA長官ヒレンコッター提督が議会で行った秘密証言によって米国の戦争責任が証明されるという、ハワード・バフェット米下院議員の主張には証拠がある。

共和党の反介入主義者でネブラスカ出身のバフェットは、その重要証言の機密解除を死ぬまで要求したが、残念ながら無駄だった。しかし、次のようなことがわかっている。米政府は6月25日の大規模な戦闘開始のかなり前、主要閣僚宛の情報報告を通じ、北朝鮮の侵略が間近に迫っていることについて十分警告を受けていた。しかし米政府は外交面でもその他の面でも、北朝鮮を抑止する行動をとらなかった。

共産圏では、金日成(北朝鮮最高指導者)が「三日で勝利する」と言ったことに(ソ連の)スターリンが半信半疑で、朝鮮問題で意見が割れていた。ソ連の方針は「軍事援助はするが、介入はしない」であった。一方、中国の毛沢東は支援を申し出たが、これは米国が参戦し、北朝鮮に進攻するまで実現しなかった。

スターリンもトルーマン米大統領も、この紛争が勃発することをとくに望んでいなかったが、二人とも紛争は避けられないと考えていたかもしれない。その場合、敵が最初に発砲したと見せかけることができれば、プロパガンダ上、都合が良かった。

実際に誰が撃ったのかについては、シカゴ大学歴史学部のブルース・カミングス教授が『朝鮮戦争の起源』『朝鮮戦争論』の両書で決定的な答えを出している。朝鮮戦争が始まったのは米国の半島南部占領下であり、1950年の北朝鮮の攻撃よりずっと前に、米国の支援を借りて一連の攻撃を開始したのは李承晩だった。1945〜48年にかけて、米軍は李承晩に協力して何万人といわれる犠牲者を出した。反乱に対する鎮圧作戦は光州と済州島で多数の犠牲者を出し、6万人もの人々が米国の支援を受けた李承晩軍に殺害されたのである。

2022-10-26

米政策が招いた北朝鮮ミサイル実験

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2022年2月15日)

ここ数週間、北朝鮮は弾道ミサイルの能力向上を生々しく示している。1月には、1カ月で7回の発射実験を行い、新記録を樹立した。金正恩政権はその締めくくりとして旧正月に、米国領グアムに到達可能な中距離ミサイルの発射実験を行った。この「火星12」の発射は、米国内の目標に到達する能力を持つとみられる3発のミサイルを実験した2017年以来、北朝鮮として最長距離の発射となった。1月の他の少なくとも1回の発射では、低空飛行できわめて機動性の高い、極超音速ミサイルが使用された。

この新たな実験は米政府関係者を驚かせたようだが、バイデン政権が金正恩政権との関係正常化につながる新たな目立った取り組みを行わなかったことに対する、北朝鮮の反応は予想できた。1月下旬に韓国(文在寅政権)の(鄭義溶)外相が、朝鮮戦争の公式な終結を宣言する宣言文の草案に米韓が合意したと報告したことが、唯一の柔軟さの兆しだった。しかしそれも北朝鮮との交渉次第であり、その重要なステップは依然として不透明なままである。

現在の米朝関係の行き詰まりは、非常に歯がゆい。ホワイトハウスはトランプ大統領の任期中盤に柔軟な政策を示した後、手を引き、他の問題で有意義な交渉を行う前に核兵器計画の放棄に向けた措置を取るよう北朝鮮に要求するという、米政府の長年の外交戦略を再開した。バイデン氏の外交チームも同じ手法をとっている。

しかし、北朝鮮の核開発を「完全で検証可能・不可逆的」に終わらせるという米政府の要求は、20年以上もの間、不発に終わっている。北朝鮮の弾道ミサイル発射計画が年々大規模化し、高度化していることに関する同様の要求も、無益であることが証明されている。それどころか、米政府と「国際社会」がこれまで以上に厳しい経済制裁を要求しているにもかかわらず、北朝鮮は核兵器とミサイル発射システムをさらに製造し続けている。米国防情報局の2021年の報告書によれば、北朝鮮はすでに「核兵器の備蓄を保持している。外部の専門家は、北朝鮮が20~60個の核弾頭を製造するのに十分な量の核分裂性物質を生産していると見積もっている」。2021年のランド研究所の調査では、今の傾向からすると、その数は2027年までに151~242個に達すると結論づけている。さらに、北朝鮮はそれら核兵器を発射する多数の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)を自由に使用できるようになる。

ただし、北朝鮮が2017年9月以降、核兵器実験を実施していないことは、トランプ政権が首脳会談を含む米朝の直接対話に意欲を示した時期と重なるので、注意が必要である。また、北朝鮮は短距離ミサイルの実験さえも自主的にモラトリアム(一時停止)を採用した。短距離ミサイルの発射が再開されたのは、米政府との関係打開の見通しが立たなくなったことが明らかになったからである。核実験のモラトリアムもICBM発射のモラトリアムも当面は有効だが、この自制がいつまで続くかはますます不透明になってきた。

トランプ氏がかつて約束した北朝鮮とのオープンな関係は、同氏自身の外交チーム内での妨害と、議会民主党とその盟友である既成ニュースメディアによる冷笑するような党派的批判との犠牲になった。前者のおもな原因は、トランプ大統領が見当違いにも超タカ派のジョン・ボルトンを国家安全保障担当の大統領補佐官に任命したことである。後者では、トランプ氏は金正恩総書記の友人であり代弁者だと、民主党が絶えず中傷した。これらの要因が相まって、実のある交渉の可能性を命取りにも妨げている。その交渉が米朝の正常な関係につながり、世界でもとりわけ危険な発火点に緊張緩和をもたらすかもしれないのに。

ジョー・バイデン氏がホワイトハウスに入る前から、新しい外交政策チームが北朝鮮問題について斬新な考えを示す気配はほとんどなかった。北朝鮮を孤立させようとする無益なゾンビ政策への肩入れは、2022年1月のミサイル発射実験後、バイデン政権が新たな制裁を課したことで確かになった。米政府が軌道修正しなければ、北朝鮮がICBMと核兵器の両方の実験を再開するのは時間の問題である。

その結果を回避する唯一の方法は、トランプ氏が一時選んだ路線を再開し、北朝鮮との正常な関係を確立するハイレベルな交渉を追求することだ。それが意味するのは、制裁を解除し、北朝鮮と正式な外交関係を結び、朝鮮戦争を正式に終わらせる条約に調印する、その意志を持つことである。また、北朝鮮を核以前の時代に戻すという奇想天外な要求を放棄することも意味する。好むと好まざるとにかかわらず、北朝鮮は世界の核兵器保有国の一員であり、今後もそうあり続けるだろうし、高性能なミサイル発射システムを急速に完成させつつある。そのような能力を持つ国とは、少なくとも米国は対話することが不可欠である。北朝鮮を孤立させ、威圧しようとする戦略は、長い間、無益な活動であった。今やそれはきわめて危険なものとなっている。

(次を全訳)
North Korea's Missile Tests a Response to a Zombie US Policy - Antiwar.com Original [LINK]

2022-10-25

奴隷制は経済発展を妨げた

研究者、リプトン・マシューズ
(2022年10月18日)

「資本主義の新しい歴史(NHC)」は、不正確な点が多いにもかかわらず、広く称賛され続けている。批判的な論評によって信奉者たちの主張は打ち砕かれたが、多くの人々は、米国の経済発展の原動力として奴隷制と綿花の役割を誇張する、誤った思い込みに固執している。いくつかの産業は奴隷制を助長することに加担したが、その成功は決して奴隷による生産に依存していたわけではない。

むしろ、奴隷制は商業の発展を阻害するものだった。奴隷制に依存することで、物理的インフラや不動産開発への投資意欲が減退したのである。例えば、1830年代の運河ブームのピーク時には、北部の州では南部の州の5倍の距離の運河が建設された。奴隷は担保として徴収することができ、大きな富の源泉であったため、奴隷制は物理的資本形成を圧迫したのである。

さらに経済史家のギャビン・ライトは、奴隷は動産であるため、所有者は遠距離間でも借金をすることができ、自由州の慣習である地元の信用関係を構築する機会が制限されたと指摘している。奴隷制は、地域の信用ネットワークの形成を阻害し、南部の金融と起業の発展を妨げたのである。

さらに重要なことに、農園主が南部以外から労働力を確保できなかったことで、経済の活性化につながる新たな人的資本の吸収が妨げられた。労働力の自由な割り当てを認めていた北部の州とは異なり、南部は奴隷労働に依存していたため、移民を敬遠していたのである。また、農園主が高度な教育を受けた労働力を必要としないことから、南部は教育への投資が不足した。

農園主は自由白人を労働力として雇用することを好まなかったため、公教育への財政支出は決して優先されなかった。1860年当時、南部では学齢期の白人人口のわずか35%が就学していただけで、他の地域では72%だった(学期は70%長かった)のと対照的である。北部の州は、非エリートが活躍できるような包括制度を育て、より自由な環境を育んでいた。奴隷保有州は奴隷制がもたらす不平等により、経済成長を促す社会的・技術的な改善が遅れた。

「資本主義の新しい歴史」の主張とは逆に、奴隷制は経済的なハンデを示す場合が多い。ミシガン大学の研究者によると、米国の奴隷制地域は地価が低く、土地の集約利用も少なかった。奴隷制は開発に悪質な影響を及ぼし、奴隷制地域では、奴隷制に関わる土地価値の減少が、奴隷の富そのものの価値よりも大きかった。

奴隷制を産業発展の原動力とする以外に、「資本主義の新しい歴史」のもう一つの怪しげな戦術は、米国の発展における綿花の役割を誇張することである。南北戦争以前の綿花生産は国内総生産(GDP)の5%程度であり、主要な輸出品であったとはいえ、輸出がGDPの7%を超えることはなかった。米国には大きな国内市場があったため、十分な内需と域内貿易を生み出し、発展を促すことができたのである。

また驚くべきことに、綿花は米経済史で重要な位置を占めるが、米国にとって最も重要な作物ではなかった。米国の主要農産物はトウモロコシであり、1839年と1849年における南部の主要作物もトウモロコシだった。たしかに奴隷は綿花の生産に役立っていたが、綿花は奴隷がいなくとも育ったのである。南部で奴隷制が廃止された後、労働者階級の白人は南北戦争後に綿花畑を手に入れ、たやすく綿花生産に移行することができた。

また綿花は、米国内の産業中心地を結ぶ重要な結節点でもなかった。「資本主義の新しい歴史」は、綿花貿易の富が西部の農産物や北東部の製造品の需要を刺激したという経済学者ダグラス・ノースの主張を復活させたが、この主張には研究によって反論がなされている。南部は食料自給率が高く、北部の輸出品にとって重要な市場ではなかった。

さらに、トレバー・バーナードやジョルジオ・リエロは、米国の綿花が英国の産業革命の支点になったという主張を、やはり激しく論破している。「資本主義の新しい歴史」を唱えたスベン・ベッカート(ハーバード大学教授)にとって、奴隷制と綿花は切っても切り離せないものだ。しかし、米国の綿花は英国の産業主義の原動力にはならなかった。1793年にジョージア州で導入されたイーライ・ホイットニーの綿繰り機は有名だが、米南部が綿花の主要産地になったのは1810年代で、その地位はわずか一世代ほどしか保たれなかった。

加えて、奴隷制の比較研究によって、奴隷制が工業化と結びついており、暴力の行使によって綿花生産量が増加したという「資本主義の新しい歴史」の主張が誤りであることが証明されている。ヌノ・パルマらの2020年の論文によると、「奴隷制は経済成長や発展を促すどころか、ブラジルの工業化を妨げていた。また、農業生産性における奴隷制の役割について検討すると、米国と同様、暴力の行使では綿花大農園の生産性上昇を説明できない」という。

米国と同様、ブラジルでも奴隷制が工業化を阻害した。生産性の向上は、生物学的なイノベーションの結果であり、拷問で奴隷を脅して働かせたからではない。「資本主義の新しい歴史」は、政治活動としてはかなり成功しているものの、歴史として教えてはいけない。本当はプロパガンダなのだから。

(次を全訳)
Slavery Did Not Promote Capitalism: The New Economic History of Capitalism Is Simply Wrong | Mises Wire [LINK]

2022-10-24

中央銀行デジタル通貨は自由に反する

ケイトー研究所、ノーバート・ミシェル
(2022年7月18日)

元国際通貨基金(IMF)職員のエスワール・プラサド氏は最近のインタビューで、新著『お金の未来——デジタル革命が通貨と金融をどう変えるか』について語った。当然ながら、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が話題になった。

現在、コーネル大学の貿易政策・経済学教授であるプラサド氏は、CBDCが金融政策に与える影響について、率直な評価を下した。

CBDCは金融政策に新たな機会をもたらすと認識すべきです。もし私たちが皆、現金の代わりに CBDC の口座を持っていたら、理論上は CBDC の口座の残高を減らすだけでマイナス金利を実施することができるかもしれません。ヘリコプターでの資金投下を行うことも非常に容易になります。もしすべての人がCBDC口座を持っていれば、簡単に口座の残高を増やすことができます。

プラサド氏の「ヘリコプターマネー」はインタビュー記事のタイトルにもなっているが、CBDCのヘリコプターマネーの裏側に注目しなければならない。マイナス金利を実施するために、CBDCの口座残高を減らすという点だ。

言い換えれば、中央銀行は金融政策を行うために、人々の口座からお金を取り上げるのである。

もちろん、単なる脅しでこと足りる可能性もある。例えば、米連邦準備理事会(FRB)の考えでは需要が不足しており、人々はもっと消費すべきだという場合、お金を取り上げるという単なる脅しで、人々はお金を使うようになるかもしれない。しかし、それは本当の自由社会ではない。

根本的に、この金融政策の「すばらしい新世界」は、政府が「あなたのお金は、本当はあなたのお金ではない」と言っているに等しい。財産権は、「公共の利益」と「国民経済の管理」の必要とやらに従属させられている。

プラサド氏は、この根本的な問題をあまり議論していない。その代わりに、中央銀行のヘリコプター散布が中央銀行の独立性にどう影響するかに焦点を当てている。彼はこう警告している。

リスクはあります。なぜならヘリコプターマネーは一面において実質上、財政政策であり、もし中央銀行が財政政策の実施に関して政府の代理人とみなされ始めたら、中央銀行の独立性にリスクが生じ、最後はあまり良くないことになるかもしれません。

もちろん、中央銀行の独立性のリスクやヘリコプターマネーが財政政策であることについては、プラサド氏の言うとおりだ。しかし、中央銀行はすでに政府財政の代理人だ。例えば、FRBは米国債の市場を支えており、現在、国民が持つ連邦債残高の約27%を保有している(2020年5月の21%から上昇)。

財政政策と金融政策の融合は、CBDCやヘリコプターマネーに関係なく、懸念されることである。すべての中央銀行に固有の構造問題である。

しかし、この問題の本質を議論する経済学者はほとんどおらず、CBDCに関連してこの問題に取り組む中央銀行家はさらに少ない。決済システムの問題に対して、CBDCよりも民間による解決策を支持する中央銀行家は、もっとまれである。

CBDCの真実は、政府がその特権的地位を守り、人々のお金に対して、より強い支配力を行使しようとするものだ。

しかし、お金そのものは公共財ではない。お金の生産が政府によって日々侵食されているからといって、公共財になるわけではない。CBDCなるものが存在すること自体、民間市場で起こった決済の革新に負うところが大きい。

CBDCの真の危険は、もしお金が純粋に電子化され、政府によって直接提供されるなら、政府が人々に対してなしうる統制の程度に限界がなくなることだ。CBDCによって、すべての人の口座の入出金を連邦政府が完全に統制できるようになる。

政府の統制がここまでくると、経済的・政治的自由とは相容れない。

政府は民間のイノベーションと競争を支援することで、金融市場の利用を促し、金融サービスのイノベーションを確かにするべきだ。政府の独占と規制を減らし、個人向けCBDCの発行を見送るべきである。

(次より抄訳)
Central Bank Digital Currencies and Freedom Are Incompatible | Cato Institute [LINK]

2022-10-23

サッチャーの伝説

歴史家、ブルース・バートレット
(2011年7月5日)

米国の共和党は、英国のマーガレット・サッチャー元首相を尊敬してきた。1979年のサッチャーの当選は、共和党にとって大きな喜びであり、自分たちの考えが上向きであることの証左であり、1980年に世界的な保守化の流れの中でロナルド・レーガンが米大統領に選ばれることへの確信を高めた。

サッチャー氏は、1990年に首相・保守党党首の座を追われて以来、米国の右派の間でその名声は高まる一方である。特に今がそうだ。

サッチャー氏は英国政治史に燦然と輝く人物であり、賞賛に値するが、その政権時代に関する保守派の伝説は、事実と食い違っている。伝説では、サッチャー氏はレーガン以上に盛んに減税と福祉国家の縮小を推進したとされている。しかし、それは事実ではない。

この表が示すように、英国の国内総生産(GDP)に占める税金の割合は、サッチャー氏の最初の7年間にむしろ急増し、その後数年間は減少している。しかし、最後の7年間は、就任当時よりもかなり高くなっている。歳出も最初の7年間は増加し、その後は減少した。

サッチャー氏の税制を知る者にとっては、この数字は驚くべきものではない。就任早々、個人所得税の最高税率を83%から60%に引き下げたが、基本税率は33%から30%にしか下がらなかった。そして1980年には25%の軽減税率が廃止され、30%が最低税率となった。

さらに重要なことに、サッチャー氏は1979年の減税の代償として、付加価値税を8%から15%にほぼ倍増させた。サッチャー氏がとんでもない間違いを犯していると考えた者の中に、米経済学者アーサー・ラッファーがいた。1979年8月20日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙に寄稿したラッファーは、「片方の手で取り、もう片方の手で与える」とサッチャー氏を叱責している。

「サッチャー予算は、経済的影響の少ないところで税率を下げ、経済活動に直接影響を及ぼすところで税率を上げている」とラッファーは訴えた。

米作家ジョージ・ギルダーは、ベストセラー『富と貧困』の英国版(1982年)の序文で、減税も歳出削減もできなかったとしてサッチャー氏を強く批判している。「サッチャー政策の正味の効果は、事実上すべての納税者に対する大幅な増税であった」

サッチャー氏は、第二次世界大戦後に国有化された多くの産業や企業を民営化し、労働者階級の大部分が住んでいた英国の公営住宅の多くを売却したが、英国の福祉国家の規模を縮小することはほとんどしなかった。

とりわけサッチャー氏は、他の保守党員と同様、すべての英国人に国民健康保険を提供する国民医療制度(NHS)を強く支持した。

英財政研究所が英国の長期の歳出傾向を調べたところ、サッチャー氏は、戦後増加を続けてきた歳出をほぼ横ばいにした。これには多くの政治的努力を必要とした。保守党が議会を支配し、英国の首相は米国の大統領よりも憲法上の制約がはるかに少ないにもかかわらずである。しかしサッチャー時代の終わりに、福祉国家はまだ無傷だった。

フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニスト、マーティン・ウルフ氏はこう語った。「すべての偉大な政治家と同様、サッチャーはイデオローグ(理論家)ではなくプラグマティスト(実践者)であり、戦う相手を慎重に選んだ。福祉国家を正面から攻撃すれば、党が選挙で不利になるとわかっていた」

ウルフ氏によれば、サッチャー氏は減税よりも財政安定と赤字削減をはるかに重視しており、(政府の)債務不履行が「賢明だという考えは、彼女にとっては非常識だっただろう」という。

サッチャー氏はレーガンと同じく、国を保守的な方向に進めた。しかしサッチャー氏の財政における功績は、今日の共和党員の多くが考えているよりもはるかに控えめなものだった。

サッチャー氏から学ぶべきことは、強力なリーダーが議会を完全に支配していても、政府の規模を縮小することは非常に困難であり、そのためには何年もの苦闘が必要で、結局はあまり縮小しない、ということだろう。

(次より抄訳)
Bruce Bartlett: The Legend of Margaret Thatcher - The New York Times [LINK]

2022-10-22

レーガンの美化

経済史家、クリス・カルトン
(2018年9月15日)

保守派の間で、ロナルド・レーガン(元米大統領)は神格化されている。多くのリバタリアン(自由主義者)の間でさえ、レーガンは最も偉大な大統領の一人だとみなされている。

レーガンがロマンチックに語られる理由は、理解しがたい。しかしロナルド・レーガンは、保守とリバタリアンの問題に関する気の利いた言い回しでは最高なものがあり、おそらくそれが魅力の理由なのだろう。しかし大統領としてのレーガンの政策を見ると、保守派、そしてとくにリバタリアンが反対するものをすべて代弁しているように思える。言葉と政策を比べてみよう。

レーガンはある一般教書演説で、連邦政府の財政赤字を激しく非難した。そこで述べた警句が、「カネを使って金持ちにはなれない」というものだ。この言葉は、保守派やリバタリアンの間でよく引用されるフレーズの一つである。

民主党は偽善的にも、レーガン政権下で行われた大規模な歳出増を指摘するのが大好きだ。しかし、たとえそれが間違った理由からであったとしても、民主党のその観察は正しい。レーガンはカネを使って米国人を金持ちにしようとはしていなかったかもしれないが、たしかに支出はしていた。

1982〜1989年度(レーガンが予算に署名したとみられる年度)に、連邦政府の支出は60%以上増加し、1兆1790億ドルから1兆9040億ドルになった。

その言い訳としてよく言われるのが、冷戦の軍拡競争である。かりにこれを連邦赤字急増のもっともな理由として受け入れても(一方で前任大統領たちの同じ行為を非難するのは偽善だが)、軍事費の増加は全体の増加の一部を占めるにすぎない。

教育への支出は、教育省の廃止というレーガンの果たせなかった選挙公約にもかかわらず、68%も増えた。医療費は71%増だ。レーガンは政府補助金やその他無数の種類の国内支出も増やした。

ここでよくある言い訳は、軍事費大幅増の「必要性」を受け入れた(国防総省という財政のブラックホールに対し予算削減を提案しようものなら、共和党は選挙に負けるという破壊的な前例を作った)後に、それと引き換えに国内支出で妥協を強いたのは民主党の支配する議会だ、というものだ。

たとえそれがいくばくかは真実だとしても(たしかにそうだろうが)、それは保守の原則に多くの妥協を許し、レーガンの連邦赤字に関する偽善を広めることに言い訳をしているだけだ。その言い訳は、レーガン派がよく口にする、レーガンの軍事支出はソ連を崩壊させる戦略であって、社会主義の支出論理(政府機関、この場合は軍隊に金をつぎ込む)をそっくり真似たのだという称賛に触れもしない。それはほとんどジョージ・W・ブッシュ(元米大統領)の仰天するような発言、「自由市場の制度を守るために自由市場の主義を捨てた」の前触れにしか見えない。

しかし、レーガンは政府支出に関してどんな欠点があったにせよ、減税でそれを補ったはずだ、という反論がある。

この主張は、保守派によってさらに神話化されているようだ。保守派はレーガン時代の支出については言い訳をするが、レーガンの税制についてはまったくの誤りを信じがちである。

レーガンは就任1年目の(1981年)8月、経済回復税法に署名している。これはレーガンの遺産の中で、実際に支持できるものである。所得税の適正税率は0%だというロン・ポール(元米連邦下院議員)の意見には賛成だが、経済学者ミルトン・フリードマンの言葉を借りれば、いついかなる理由であれ減税を支持したい。この法案はそれを実現した。

保守派が忘れがちなのは、レーガンの他の税制法案である。その翌年、レーガンは「税制公平・財政責任法(TEFRA)」に署名した。この法律により、多くの税金が引き上げられ、またある種の控除も廃止された。ここで留意すべきは、保守派は「民主党支配の議会」のような言い訳はできないということである。この法案の増税は、上院がまだ共和党に支配されていたときに上院の修正で追加された。この事実は、レーガンが10年後に全米不動産協会で語った「1兆ドルの負債があるのは課税が足りないからではない。支出が多すぎるからだ」という別の有名な警句に真っ向から対立する。

まだ共和党が優勢だった1982年、レーガンはトラック業界とガソリンへの増税も行い、それはむしろ32万人の雇用を生む経済刺激策だと言った。この種の税と支出の政策は、ケインズ(介入主義を唱える経済学者)の作戦帳からそのまま出てきたものだが、保守派は偉大なオーストリア学派の経済学者を読んだレーガンの言葉を思い出したいのだ。「いつもむさぼるように読んでいるよ。——ミーゼスやハイエク、バスティアの経済論を読んだ」。読んだかもしれない。ミーゼス研究所には、『ヒューマン・アクション』(ミーゼスの主著)を送ってくれたマルギット・フォン・ミーゼス(ミーゼスの妻)宛のレーガン大統領の感謝状もある。だがレーガンがそれらの本を読んだとしても、無視したと思われる。

同様に、翌年の給与税(日本の社会保険料)引き上げも、レーガンに強制されたものではない。むしろレーガンが要求したのである。1984年の赤字削減法も可決したが、これも増税によって赤字を減らそうという矛盾した試みであった。

1981年の減税と並んで、保守派はレーガンの1986年の税制改革法案を高く評価しがちだ。よく称賛される法律で、個人所得の最高限界税率を50%から28%に引き下げた。しかしこの法案は減税というより、納税義務の再編成であった。個人所得税の引き下げに加え、多額の税額控除を廃止し(これ自体が事実上の増税)、退職金に関する制限を強化した。また代替ミニマム税(AMT。節税対策で導入された制度)の基準を拡大し、税負担の傘を広げて多くの中産階級の納税者に影響を与えた。

保守主義、そしてとくにリバタリアニズムが、多額の支出と課税に反対する思想だと主張する限り、レーガンはありえない英雄のように思われる。いわゆる「レーガン共和党」がこれらの問題について口にする言い訳は、根拠に乏しく誤った情報でしかない。レーガンはその言葉と行動を比較すると、他の政治家と何ら変わりはなく、明らかな偽善者に見える。

(次より抄訳)
Romanticizing Reagan | Mises Wire [LINK]

2022-10-21

古典的自由主義と帝国主義は水と油

ケイトー研究所シニアアナリスト、マリアン・テューピー
(2017年12月16日)

2017年8月はインド亜大陸が分割され、ヒンズー教徒主体のインドとイスラム教徒主体のパキスタンが誕生し、(インド・パキスタン戦争の)虐殺が始まってから70年の節目の年である。英国はこの記念すべき年に、多くの知的自責の念に駆られた。かつて植民地保有国だった頃には、これら古い植民地を手放すまいとしたにしても、である。

一般にリバタリアン(自由主義者)は、西洋の価値観を他国の人々に押し付けることには賛成しない。たとえ政治的・経済的自由が望ましく有益だとたまたま信じていても、である。昔からそうだった。アダム・スミスは熱心な反帝国主義者で、帝国は「金の無駄遣い」だと考えていたし、リチャード・コブデンは自由貿易と外交政策における不干渉主義を両立させるべきだと考えていた。

ニーアル・ファーガソンは2004年に出版した『大英帝国の歴史』でコブデンの言葉を引用し、「わが国の商業に関する限り、武力や暴力によって海外を維持することも、大きく傷つけることもできない」と述べている。「わが国の市場を訪れる外国の顧客は、英国の外交官の権力や影響力を恐れてここに連れて来られたわけでもなく、わが国の艦隊や軍隊に捕らえられたわけでもなく、わが国に対する愛情によって引き付けられたわけでもない...欧州の商人が、世界の他の国と同様に、英国の港に船を出し、英国の労働生産物を積み込むのは、もっぱら自己利益の要請によるものである」

なぜ、この一見古く見える歴史を蒸し返すのか。帝国主義を批判するのは、古典的自由主義者やリバタリアンだけではないからだ。共産主義者とその仲間は、ソビエトが東欧と中央アジアに築いた広大な帝国領域を無視する一方で、反帝国主義のバトンを受け取り、それを非常に効果的に使って、自由な市場経済を支持する者をネオ帝国主義者として叩くのである。実際、経済発展に関する文献の中で最大かつ最も悪質な神話の一つは、資本主義が植民地などで多数の人々を搾取する一方で、植民地保有国などで少数の人々だけを利するというものだ。

この神話の起源は、カール・マルクスにさかのぼる。マルクスは、資本主義のもとでは、競争が利益を押し下げ、その結果、労働者の搾取を強化する必要があると考えた。このドイツの経済学者の間違った理論(一人当たりの世界平均所得は過去200年間に10倍になった)は、ウラジーミル・レーニンが1916年に出版したパンフレット『帝国主義』の中で更新された。

レーニンの時代には、西側先進国の労働者は、マルクスが『資本論』(1867年)を書いたときよりも明らかに裕福になっていたので、更新が必要だったのである。ソビエト連邦の最初の独裁者レーニンは、新しい命題を考案した。搾取された植民地から富が西側諸国に流入したため、西側諸国の労働者の生活水準はマルクスの主張とは逆に向上し続けたという。レーニンの主張は第三世界の指導者たちに大きな影響を与え、彼らは資本主義を否定し、代わりにある種の社会主義を受け入れた。今日でも発展途上国の大部分は、西側諸国の大部分に比べて経済的な自由度が低いままである。

植民地主義とそれに対する発展途上国の反応は多くの不幸をもたらしたが、西洋はその帝国主義の過去から無傷では済んでいない。英国の作家ダグラス・マレーはその新著『西洋の自死』で、植民地時代の罪悪感がいかに西洋の自信を失わせ、西洋人をグローバルな富の分配の道徳(=正義)に対して不安な気持ちにさせるかを説いている。

しかし、経済学者ディアドラ・マクロスキーが『ブルジョアの品格』で示すように、「植民地の富の蓄積」によっては、数学的に言えば、1800年代初頭から西洋の生活水準が16倍になったことを説明できるわけがない。同様に、ノーベル経済学賞受賞者のアンガス・ディートンやメリーランド大学哲学教授のダン・モラーも、西洋の繁栄は西洋の帝国拡大より先に起こったことを示した(つまり、西洋帝国主義は西洋の繁栄の原因というよりは、西洋における財産増大の結果だった)。

全体として、帝国主義は悪い考えであり、そんなものはいらない。とはいえ、帝国主義は西欧の繁栄の根源も程度も説明しないし、説明できない。

(次を全訳)
Classical Liberalism Is Incompatible with Imperialism - HumanProgress [LINK]

インフレ税で人々を貧しくする政府

アナリスト、アンドレ・マルケス
(2022年8月15日)

供給ショック(財・サービスの供給を変化させ、その価格を変化させるような突発的な出来事)は経済の一部の価格を上昇させるが、財やサービスの価格全体を上昇させるわけではない。ある財の供給ショック(価格が上がる)があっても、通貨供給量が変わらなければ、経済における様々な財やサービスの需要と供給の新しい均衡が生まれる(通貨供給量は同じで、個人は予算配分を変えなければならないので、需要が少なくなる財の価格は下がる)。

これらの財の供給ショックが終われば、供給が増え、価格が下がる(再び需給均衡が変化する)。国のすべての(あるいはほとんどすべての)価格を同時に上昇させることができるのは、流通するお金が増えた場合だけである。お金の価値が下がり、財やサービスの支払いに必要な通貨単位が増えるからだ。

インフレーション(訳注・通貨供給量の増大。インフレの本来の意味)とそれに伴う物価の上昇は、偽装された税である。米政府は支出を増やし、財政赤字を増やした。そこで国債を増発し、そのほとんどがマネタリーベース(M0)の増加を通じ、連邦準備理事会(FRB)に買い取られた。そして政府は新しく作られたお金を使い、国に流通するお金の量(M1、M2)を増やした。これは物価を上昇させる傾向がある。

なお、政府は支出を増やす際、同じ規模の増税をしなかった。それでも政府支出増加のコストは、国民が支払う(政府が与えるものはどれも無料ではない。所得が低く、税金で最も苦しむ貧困層であってもだ)。税金によってではなく、通貨量の増大のために起こった物価上昇によってである。

また、政府の借り入れはそれ自体ではインフレを招かないことも覚えておこう。国債がすべて市場(投資家や金融機関)に吸収されるなら、中央銀行による新たなお金の創出はないからだ。

しかしこの場合でも、政府が借金をすると、生産的な投資(経済の生産性を上げ、物価を下げることができる)に使われるはずの資源を流用してしまうので、経済はダメージを受ける。さらに、政府が負債を抱えることは、利子コストを意味する。その利子(負債が大きくなるほど増加する傾向がある)を支払うために、政府はしばしば増税やさらなる借金をする。金利コストは、政府が経済から収奪する資源を増やすことになる。

物価上昇はすべての人、特に(資産の少ない)貧しい人々や中流階級を苦しめる。物価上昇のせいで、個人は予算削減を余儀なくされ、商品やサービスの購入量が減る。生活水準は下がる。せいぜい、以前より貯金を減らして予算を減らさないのが精一杯だ。

また物価上昇により、貧困層や下流中産階級は、より大きな影響を受ける。なぜなら、(所得に予算削減をしないだけの余裕がある)富裕層や上流中産階級が貯蓄や投資を減らすことになるからだ(もちろん彼ら自身はこの変化をほとんど感じていないが、国全体でみれば貯蓄や投資が大きく削減される)。経済への投資が減れば、生産性は上がらず(あるいは下がり)、中長期では物価が上昇しがちになる。

しかし富裕層や上流中産階級であっても、インフレーションによる物価上昇の影響を強く受けることがある。たとえば、小売業を想像してみよう。物価が上昇すれば、個人(とくに大多数を占める貧困層や中流以下の層)は特定の商品を買わなくなる(何しろ、そうしない余裕があるほど所得が高くないのだ)。

したがって、もし値上げをしても、インフレによって生産者や小売業者のコストが上がることも考慮すると、企業の利益は減少する(あるいは赤字になる)。数カ月前、米ディスカウントストア大手ターゲットが減益になったのもこのためである。大規模小売企業のオーナーや商品を生産する企業は利益が減り(あるいは損失が生じ)、これら企業の株式を購入する投資家や金融機関も損失を被る(株式の価値が下がり、企業は配当を減らすか無配にする傾向にあるため)。

したがって、政府が引き起こしたインフレによって、誰もが損をすることになる。しかし、最も被害を受けるのは貧困層と中流以下の人々である。

政府はいつも、貧しい人々や中流階級を助けると主張する。しかし政府のコスト(税金、負債、規制、インフレ)のほとんどを負担しているのは、まさにこの人たちなのである。結局のところ、中流階級以上の富裕層は、弁護士や会計士、税理士を頼り、税金を少なくするために資産を配分することができる(すべて合法的に)。

富裕層が節税するのは良いことだ(そうでなければ、経済への投資はさらに減り、物価はさらに上昇することになる)。金を大量に購入したり、インフレの程度の小さい通貨で値付けされた資産に投資したり、その他の資産防衛策に頼ったりすることもあるだろう。

最貧困層は実際には、政府にお金を払っている。貧しい人々や中流以下の人々が豊かになれないのは、ほとんどの場合、まさに政府のせいなのだ。貧困を永続させるのは政府である。貧困層を助けるふりをして、自分の存在を正当化している。結局のところ、政府によって生み出された通貨のインフレーションがなければ、経済の生産性が上がるにつれて物価は下がる傾向にあるから、生活水準は上がるだろう。

(次より抄訳)
Inflation Makes People Poorer (And It's the Government's Fault) | Mises Wire [LINK]

2022-10-20

ウクライナ・台湾に軍事支援をやめよ

リバタリアン研究所、パトリック・マクファーレン
(2022年10月13日)

米国民に関係することだが、ロシアの侵攻に対するウクライナの反応は、一言にまとめられる。「ゼレンスキーの要求」だ。

今日まで、米政府のエリートと政治家は喜んで公費を投じ、その過程で私腹を肥やしてきた。

この記事の執筆時点で、米国の対ウクライナ支援は約675億ドルに達する。ロシアの2021年の軍事予算全体よりも大きい。国務省によると、この支援には152億ドルの直接軍事援助が含まれている。現在では編集されているCBSの現場活動家へのインタビューによれば、この戦争支援の60~70%は前線に届かないが、それでも行われている。

米国の納税者は、ウクライナ軍に多くを支援しているだけでなく、ウクライナ政府も支援しているのだ。(新型コロナが流行した)2020年に「不要不急」とみなされた労働者階級の米国人、つまり自分の職場が閉鎖され、破綻させられるのを経験した人々は、いまや国内とウクライナの両方に社会保険料を払わされているようなものだ。

米国の納税者の払う税金はすでにロシアの2021年軍事予算に匹敵するが、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はさらに要求するばかりだ。10月4日の電話会談で、バイデン米大統領はゼレンスキー大統領に対する新たな6億2500万ドルの支援について確認した。その内容は、特に高機動ロケット砲システム(HIMARS)4基、155ミリ榴弾砲16基、155ミリ砲弾7万5000発、精密誘導155ミリ砲弾500発、105ミリ榴弾砲16基、120ミリ迫撃砲3万発、耐地雷・伏撃防護車両(MRAP)マックス・プロ200台の追加である。

この新たな恩恵にもかかわらず、同じ電話の中でゼレンスキー氏はバイデン氏に対し、ロシアの飛行機を撃墜する防空システムをウクライナに提供するよう促した。当然ながら、米政府のエリートは兵器システムを提供し、ゼレンスキー氏の要求に従って出荷を早めた。

新型コロナに対する米政府の対応と同様、ウクライナに対する無制限の支援は広く支持されており、こうなるのも当然だ。にもかかわらず共和党員の中には、横暴な支出に果敢に反対する者がいる。注目すべき反対派はランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)、ジョシュ・ホーリー上院議員(ミシシッピ州)、トーマス・マッシー下院議員(ケンタッキー州)、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州)、マット・ゲッツ下院議員(フロリダ州)である。

テイラー・グリーン、ゲッツ、ホーリー各議員のような共和党員は、果てしない戦争、国内社会の衰退、国際的評判の失墜など、帝国がもたらす代償を理解している。米露の戦争は、米国人がこれまで経験したことのないようなものになることを理解している。ロシアとの戦争への非難を「弱いジョー・バイデン」への批判でごまかしているものの、この紛争を誘発し、「最後のウクライナ人まで」紛争を長引かせようとしているのは西側諸国だと理解している。この紛争は、たとえ代理戦争であったとしても、戦争で疲弊した労働者階級の米国人は望まないし、代償を払えないと知っている。

したがって彼ら共和党議員は、ウクライナ紛争を利用して米国民から搾取している同じ政府エリートが、台湾の蔡英文総統を次のゼレンスキーとして育てていることに気づかなければならない。

米国の台湾への軍事援助は、伝統的に武器売却という形で行われてきたが、それも間もなく変わるかもしれない。ボブ・メネンデス(民主党)、リンゼー・グラム両上院議員(共和党)は、米中関係を根本から見直す台湾政策法案を提出した。

簡単にいえば、台湾政策法案とは台湾に65億ドルの軍事支援を行い、「主要な非北大西洋条約機構(NATO)同盟国」としての利益を与え、台湾政府への武器売却を迅速化し、中国の侵略があった場合には制裁を義務付けるというものである。台湾向けに最大20億ドルの融資も許可する。

9月14日、同法案は上院外交委員会を通過した。同法案の支持者は現在、同法案を単独で成立させるのではなく、817億ドルの2023年国防権限法(NDAA)に「大部分」を組み入れることを求めている。

さいわい10月10日には、対中制裁を適用し、台湾を「主要な非NATO同盟国」とする外交的文言が、NDAA版の台湾政策法から削除されたことが明らかになった。しかしこの新たなNDAA版台湾政策法案は、当初提案された65億ドルの直接軍事援助をほぼ倍増させ、総額100億ドルにする。

修正NDAAの最終採決は、11月の中間選挙後に行われる予定だ。

台湾政策法を提出したメネンデス、グラム両上院議員はともに、ウクライナとゼレンスキー大統領の熱烈な支持者である。

(テイラー・グリーン、ゲッツ、ホーリーら)上記の共和党議員は正しく、ウクライナ支援に反対した。同じ理由で、台湾の蔡英文総統を、支援を当然と考え、恩知らずなゼレンスキー氏のような、米国の「給付」対象に加えることに反対すべきである。ランド・ポール議員のように、あらゆる形の台湾政策法案に反対すべきだ。

(次より抄訳)
Nothing But Welfare Queens: American Aid to Zelensky and Tsai Ing-wen | The Libertarian Institute [LINK]

史上最悪の経済予測とその教訓

経済学者、ウォルター・ブロック
(2022年10月14日)

経済学者は、自分にユーモアのセンスがあると示すために、経済事象の将来の成り行きを予測する。もしそれが正確にできれば、経済学者は皆、大金持ちになっているはずだ。しかし実際にはなっていない。快適ではあるが、すばらしく金持ちではない(陰鬱な科学=経済学=を楽しんではいる)。

なぜ未来を予測できないのか。なぜなら世界は複雑であり、何百万ものことが同時に起こっているからだ。例えば、もし他に何も変化がなく、政府が通貨供給量を増やせば、必ず物価が上昇することはわかっている。しかし、それが経済における唯一の変化だという「他のすべてが一定」の仮定は、実際には起こらない。人々は万一の場合に備えて買い控えをするかもしれない。そうであれば、同じ量の商品・サービスの購入に向かうお金が増えることで物価上昇を誘発する傾向は、いくらか緩和されるだろう。

どの程度緩和されるか。それは買い控えがどの程度進むかによるが、その点について、未来を見通す水晶玉はない。米連邦準備理事会(FRB)や中央銀行が通貨の流通量を増やすかどうかもわからない。インフレが今後どうなるかは、FRB当局者の出方しだいだが、それについてもまったくわからない。おそらく彼ら自身も知らないのだろう。さいわい経済法則は存在するが、未来を見せてはくれない。

別の例を考えてみよう。経済法則によれば、最低賃金の水準が上がれば、他に何も変化がない限り、低技能労働者の失業率は上昇する。しかし、物事は永遠に変化し続ける。最低賃金が上昇するにつれて、非熟練労働者の生産性を向上させる技術革新が起こる可能性は十分にある。その場合、その力が十分強力で、法律で義務付けられた最低賃金水準の上昇が緩やかであれば、最低賃金の上昇によって失業する労働者は一人もいないかもしれない。

ここで私は、オーストリア学派経済学の見解を述べていることを告白しておかなければならない。主流の経済学者は同意しないだろう。ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン(オーストリア学派ではない)によれば、「仮説の妥当性を検証する唯一の方法は、予測と経験の比較である」という。つまり、ある主張が真実であれば、それは正確な予測につながるはずだというのである。

しかし経済学の歴史は、誤った予測の歴史である。

ポール・クルーグマンもノーベル経済学賞受賞者である。クルーグマンの1998年の予測は「インターネットの成長は急激に鈍化するだろう」というものだった。おやおや。

これだけではない。

アーヴィング・フィッシャーは株式市場の好況を予測した。しかしフィッシャーの過ちは、1929年の大暴落の直前にそれを実行したことだった。

1968年、『人口が爆発する!』の著者ポール・エーリックが、今後数年間に大量の飢餓が発生すると予測した。しかし、肥満の方がはるかに大きな問題であることがわかった。

1987年、ラビ・バトラはその著書で1990年の世界恐慌を予言した。しかし、そうはならなかった。

オーストリア学派が経済予測を断固拒否するのは、人間の力が限られているためだと思う。経済の現実を説明し、そのかなりの部分を理解することはできるが、「他のすべてが一定」でない限り、少なくとも経済学者の立場では予測することはできない。

知的な謙虚さには大きな価値がある。

私は、いつの日か主流の経済学者がこの点に関し、自分たちのやり方の誤りを理解するようになると予測しているのだろうか。そうなればいい。しかしオーストリア学派経済学者として、予測はやめておこう。

(次を全訳)
What the Worst Economic Predictions in History Can Teach Us about Economics - Foundation for Economic Education [LINK]

2022-10-19

トラス英首相はイングランド銀行の犠牲

エコノミスト兼ファンドマネジャー、ダニエル・ラカール
(2022年10月18日)

奇妙な時代に生まれたものだ。世界経済問題の解決策として大規模な赤字財政支出と通貨供給を猛烈に擁護したのと同じ人々が、今度は英国の債券・通貨市場の混乱を赤字拡大予算のせいにしているのだから。

英国市場混乱の原因をすぐさまリズ・トラス英首相の予算のせいにした専門家と呼ばれる人々の中に、2週間前から円の暴落が続き、日銀が介入を余儀なくされていることついて、何も言わない人がいることに驚く。

なぜ多くの人がトラス首相の「ミニ予算」が価格変動の原因だと考えたのだろうか。ユーロ、円、ノルウェークローネ、ほとんどの新興国通貨が今年に入ってから米ドルに対し、英ポンドと同等かそれ以上の下落に見舞われているのにである。債券市場はどうだろうか。今年は世界中の債券にとって1931年以来最悪の年であり、先進国や新興国の国債・社債の価格暴落は、英国と驚くほど似ている。

財政赤字は問題ではなく、主権国家は好きなようにお金を使い、通貨を印刷できる(「拡張政策」と呼ばれる)と言うのと同じ経済学者が、支出を増やし、減税する英国のケインズ主義予算は経済を破壊する可能性があると言う。しかしこの経済学者は、日本が減税もせず、支出と借金という見当違いの財政政策を維持したまま、大規模な円買い介入をしなければならなかったことを忘れている。

英国の年金基金が国債を売っているのは、英国や他国の予算が信用できないからではない。中央銀行が債券を絶えず買い戻すことで価格を上昇させることができると信じ、人為的な金融緩和で生じた債券バブルに一心不乱に飛び込み、買い入れたマイナス金利の国債を売っているのだ。

英国の年金基金の積立不足は、ミニ予算による問題でもなく、英国だけの問題でもない。非常識な通貨供給によってごまかされた、2019〜20年から存在する巨大な問題だ。米国の州年金基金の世界的な未積立債務は、リーズン財団によると2021年にすでに7830億ドルで、2022年には1兆3000億ドルに増加した。公的年金の積立率は2021年で85%に過ぎず、2022年には75%を割り込んでいる。

マイナス金利と通貨大量供給の時代に何が起こったのか。年金基金は債務連動型運用(LDI)戦略を用いていた。ほとんどのLDI戦略は、インフレと金利のリスクをヘッジするためにデリバティブ(金融派生商品)を使用していた。インフレが始まり、金利が上昇するとどうなるのだろうか。「金利が上昇するにつれ、LDIポートフォリオで保有されていたデリバティブの想定元本が減少した。その結果、追加担保差し入れ義務が拡大した。金利上昇のスピードは、一部の年金が担保請求に応じるために運用資産を清算しなければならないことを意味する」と、投資協会の9月最新リポートと「年金と投資」紙のブライアン・クローチェ氏は述べている。

LDI戦略の総資産は、2021年までの10年間でほぼ4倍の1.6兆ポンド(1.8兆ドル)に膨れ上がっている。英年金規制当局(TPR)とロイター通信によると、英国の確定給付型年金のほぼ3分の2がLDIファンドを利用している。トラス首相やクワシ・クワーテング前財務相にこの狂気の責任はない。イングランド銀行のマイナス実質金利政策と大量の流動性注入が原因だ。クワーテング氏とトラス氏が非難されるべきは、主流のケインズ派経済学者ほぼすべてが擁護する財政支出と金融緩和によるバブルの宴が、いつまでも続くと信じたことだ。

この数年、英国や先進国の政府は、お金が安くて豊富だったため、財政の不均衡に注意を払わなかった。赤字は急拡大し、支出は抑制されず、問題はイングランド銀行のように、国債の正味発行額の100%以上を購入した中央銀行のバランスシートの中に隠されていた。何年にもわたってお金を印刷し、債務を過去最高水準まで増やした後、止まらない高インフレが発生した。今、中央銀行は金利を引き上げ、通貨供給量の増加を抑える必要がある。ちょうど債券ファンドがマイナスの名目・実質利回りで有害な債券を積み上げているときだ…。そして金利引き上げは、追加担保のコストが上昇し、損失が耐えがたいものになることを意味する。

英国の年金基金は、追加担保の増大に伴い、保有する流動資産を処分する必要がある。何年にもわたる通貨の大量発行とマネタイゼーション(財政赤字の穴埋め)の後にインフレが到来し、世界中の投資ファンド、特にユーロ圏、英国、日本では、名目および実質の巨額損失で運用資産が崩壊するのを目の当たりにしている。追加担保が発生すると、多くの基金が最も流動性の高い資産、英国では英国債、他の国ではそれぞれの国債を売却しなければならなくなる。

トラス氏やクワーテング氏は、過去数年の狂気やリシ・スナク元財務相による超ケインズ主義的な予算に責任はない。トラス氏やクワーテング氏が非難されるべきは、ケインズ主義の狂った赤字政策という薬をもう一回服用しても害はないと信じていたことだ。

クワーテング氏の更迭は、現代貨幣理論(MMT)の信奉者らによって、問題はばかげた減税であって、長年にわたる通貨増発や赤字拡大ではないと正当化するために、犠牲にされたにすぎない。

英国や日本で起こったことは、ユーロ圏でもすぐに起こりそうだ。ユーロ圏では、数年にわたる金融緩和と無謀な刺激策で、120億ユーロ以上のマイナス金利の債券が積み上がっている。

トラス首相には、20年にわたる狂った金融政策と無責任な財政政策の責任はない。彼女が非難されるべきは、不必要な経費を削ることなく、支出を増やす予算である。

皮肉なことに、とんでもない赤字や借金を擁護する人々は、それが政府の規模を拡大することで生じるのであれば、問題ないと感じる。悪いのは減税というわけだ。

ミニ予算に関する政治分析には驚かされる。英議会では誰も支出を削減する必要を感じていないようだが、それらの経費は積み重なり、年単位になる。つまり、景気変動に変化があると、税収が変動するため財政不均衡が大きくなり、それに伴って通貨の増刷が必要になる。増税すれば、景気不景気にかかわらず、毎年決まって歳入が増えるという前提は、官僚でなければ正当化できないだろう。

(次を全訳)
The Bank of England Made Liz Truss a Scapegoat | Mises Wire [LINK]

経済を破壊し、ノーベル賞をもらう

元米連邦下院議員、ロン・ポール
(2022年10月17日)

バーナンキ元米連邦準備理事会(FRB)議長は、銀行の破綻に政府がどう対応すべきかについての著作で、2022年ノーベル経済学賞を受賞した。銀行が破綻した際の政府の対応策に関する助言でバーナンキ氏を称えるのは、放火犯に火災安全賞を与えるようなものだ。

バーナンキ氏が議長になったのは、前任のアラン・グリーンスパン氏がハイテクバブル崩壊と9・11テロをきっかけに作り上げた、住宅バブルが破裂したときだった。住宅市場が崩壊すると、バーナンキ氏は議会やブッシュ政権と協力し、大手銀行やウォール街の企業を救済した。

メルトダウン(バブル崩壊)後の数年間、バーナンキ氏率いるFRBは、経済を「刺激」しようとした。大規模な資金創出、ゼロに近い金利、国債など金融資産の購入で市場に流動性を注入する「量的緩和」によってである。

メルトダウン後のFRBの政策は、せいぜい低調な成長をもたらしただけで、次の不況への土台を築くことになった。次の暴落が間近に迫っていることを示す兆候は2019年9月に現れた。FRBは銀行同士がオーバーナイト(翌日物)融資を行う際に利用するレポ市場に一日数十億ドルを投入し始め、その市場の金利がFRBの目標金利を上回らないようにしたのである。その結果、FRBは金利をゼロにし、量的緩和を大幅に拡大させる口実を得た。

FRBの行動は、米経済を苦しめる物価上昇の主犯格である。FRBは金利を上げることで物価上昇に対応しているが、金利は自由市場の場合よりもはるかに低いままである。この比較的小さな利上げでさえ、脆弱な経済を不況に追い込むのに役立ったという事実は、負債に基づく経済体系の不安定さを示している。

バーナンキ氏と議会はメルトダウンへの対応として、メルトダウンに続く不況を進行させるべきだった。FRB が通貨供給量を増やし、金利を引き下げたときに生じる市場の歪みに経済が適応するには、この方法しかない。

この「何もせず、ただ立っている」というやり方が米国民に長期の経済的苦痛を与えるのではないかと心配する人は、1920年の経済恐慌を考えてみるとよいだろう。この恐慌では、FRBは経済を「刺激」しようとすることを控え、議会は実際に支出を削減した。その結果、不況はすぐに収束した。悲しいかな、1920年の教訓は、主流の経済史家にはほとんど無視されている。

金融サービス委員会の公聴会で私の質問に対し、当時のバーナンキFRB議長は、金(きん)を貨幣とは考えていないと認めた。もちろん、金や貴金属が貨幣であるのは、個人が通貨を選択する自由があったときに、それを選択してきたからである。その理由の一つは、貴金属が安定した計算単位に適しているからだ。これに対し、政府の支配者たちは不換紙幣を好んできた。中央銀行によってその価値がつねに操作されるため、誠実な計算単位として機能することは決してないからだ。これは、権力欲の強い政治家の意向で行われることが多い。

不換紙幣制度の下では、物やサービスの真の価値を知ることができない。だから繁栄をもたらす健全な経済をつくるには、FRBを監査し、廃止しなければならない。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Destroy the Economy, Win a Nobel Prize [LINK]

2022-10-18

ネオコンと「目覚めた」左翼が結託し、第3次世界大戦へ

ベンチャーキャピタリスト、デビッド・サックス
(2022年10月4日)

起業家イーロン・マスクが和平を提案し、ツイッターでまたぞろ炎上した。10月17日、マスクはウクライナの戦争を終わらせる和平交渉を提案したが、ウクライナに関するあらゆる言説を取り締まろうと結成されたツイッターの群衆から、親プーチン(露大統領)の操り人形と非難を浴びた。

この話で重要なのは、ツイッターの集団が、米国の対ウクライナ政策を形成するために、国内の政治問題に関する議論を封じるのと同じ、不寛容なキャンセル(排斥)戦術を使っていることだ。そのやり口は、反対意見を悪魔化し、反対者を中傷し、平和への道や紛争緩和さえもイデオロギー上容認できないとして閉め出すことである。

ウクライナの味方につくツイッター暴徒がユニークなのは、かつて互いに宿敵だった二つの勢力、左派のウォーク(社会正義に目覚めた者)と右派のネオコン(新保守主義者)を結びつけている点だ。この両勢力は忌まわしいイデオロギー的、人格的特徴を共有しており、政治運動に対する「切捨御免」のやり口も似ていることがわかった。これは新手の政治的結婚である。


ネオコンがトランプ(前大統領)をめぐって共和党から離脱し、国内政策に関する保守的な意見をすべて捨てて以来、左派は介入主義の外交政策に新たな愛着を抱くようになった。それが「民主主義」に貢献し、「独裁」に反対する限りは、である。独裁という言葉は日増しに融通無碍になって、今やウォークもネオコンも、プーチンばかりかハンガリーのビクトル・オルバン、イタリアのジョルジア・メロニ、米国のドナルド・トランプといった民主的に選ばれた指導者を定義するのに使っている。

オバマ(元大統領)がネオコンの外交政策と決別すると約束したから投票したにもかかわらず、左派は今やネオコンとともに、ウクライナにおけるオバマの節度ある外交政策に反対している。

この変化は迷走しているようだが、純粋な戦術レベルでは一定の意味がある。ネオコンはツイッターができる前から、排斥の手法を発明していた。相手の主張が不誠実で、考慮する価値がないと傲慢に断じ、自分の大義に疑問を呈する者に異端者、裏切り者とレッテルを貼る。

(ネオコンのコラムニスト)デビッド・フラムは、イラク戦争に反対する少数の右派の識者を「愛国心なき保守主義者」と決めつけ、ネオコンの排斥戦術の基準を打ち立てた。今や、北大西洋条約機構(NATO)の拡大が現在のウクライナ危機の一因となった可能性を示唆する者、ロシアに課せられた制裁が機能しておらず、裏目に出た欧州はまもなく寒さで震え上がるだろうと指摘する者、米国は核武装したロシアとの世界大戦の回避を優先しなければならないとする者は、プーチンの手先として非難される。

このように議論を歪めることで、妄想や矛盾した考えがまかり通る。こうして、プーチンは目的達成のために無差別殺人を行う狂人だが、核兵器の使用については何らかの形で間違いなくハッタリである、という議論が成り立つ。戦争に負けているからこそのハッタリのはずだが、プーチンをウクライナで止めなければ、欧州の他の地域まで征服してしまうだろう、という。プーチンはリベラルな改革派を皆殺しにするか投獄し、強硬な極右と結託しているので、政権は崩壊しなければならない。しかし、政権が崩壊すれば、なぜかリベラルな改革派に取って代わられるのだ。

これはナンセンスであり、まともに議論すれば、この考え方の中にある妄想をいくつか暴くことができるだろう。しかし、そのような議論をすることは許されない。

このウォーク・ネオコン同盟に議論の条件設定を許している限り、ウクライナ紛争を拡大させ、さらに危険な激化へと導く一方通行の展開を見続けることになる。

米国が少なくとも交渉に参加しない限り、この紛争の平和的解決はありえない。米国はその努力を導かなければならない。ところが実際は、ウクライナの最大限の要求に応じ、プーチンが西側に対し批判を口にすると、ロシアへの制裁を強化している。ドイツのような重要な国が万が一、交渉のテーブルに就こうと考える場合に備え、誰かがノルドストリーム・パイプラインを爆破した。

地域紛争が第一次世界大戦に発展したのは、すべての当事者が目一杯の要求をし、他者がハッタリをかけていると思い込んだからである。メディア、ソーシャルメディア、外交政策のエリートが結集し、代替案に関する議論を排除しようとウォーク流の排斥戦術を用いれば、同じ轍を踏む恐れがある。今、私たちは紛争激化の道を進んでおり、その先にあるのは第三次世界大戦である。

(次より抄訳)
The Neocons and the Woke Left Are Joining Hands and Leading Us to Woke War III | Opinion [LINK]

ノーベル経済学賞を廃止せよ

経済教育財団(FEE)ライティングフェロー、ピーター・ヤコブセン
(2022年10月11日)

1974年、オーストリアの経済学者ハイエクが「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」(通称「ノーベル経済学賞」)を受賞した。

ハイエクの受賞とそれに続く受賞スピーチは、多くの点で注目されたが、最も重要な洞察は、スピーチの冒頭にあったかもしれない。

「もし私がノーベル経済学賞を創設するかどうか相談されたなら、断固として反対するよう勧めたはずだ」とハイエクは言った。

ハイエクはこの賞に反対する理由を二つ挙げている。第一に、この賞が「科学的流行の揺らぎ」を助長することに懸念を示した。もっとも、ハイエク自身の考えがいかに流行っていないかを考えれば、この問題はさほど深刻ではないはずだとジョークを交えて述べている。

ハイエクの反対理由は、主に二つ目の理由によるものだった。

「ノーベル賞は、経済学において人が持つべきでない権威を個人に与えるものだ」とハイエクは述べている。

私は大学院で経済学を専攻していたとき、ジョージ・メイソン大学の経済学と哲学の教授であるピーター・ベトケ博士のもとで学ぶ機会に恵まれた。ベトケの教師としての価値は、無限に続くと思われる格言のリストにある。私のお気に入りは、「経済学者は黒板を見る時間を減らし、窓の外を眺める時間を増やすべきだ」というものだ。

言い換えれば、経済学者は文明と行動の研究者である。人は経済法則や事実が自分の住む世界でどのように観察されうるかに関心がある。

一方、形式的な経済学の多くは、黒板に書かれた抽象的で論理的整合性のある方程式の集合であり、エレガントではあるが、普通の人々が直面する知識や誘因の問題を無視している。

このような知識や誘因の問題、現実の人々、現実の制度を除外すると、黒板に書いた方程式を現実の世界に誤って適用してしまいがちになる。

例えば、黒板の方程式は、金融市場の暴落を防ぐには、預金者や投資家の信頼を高めるために、銀行に資金を注入する必要があると示したとしよう。いくつかの方程式を使って最適な救済額を計算すれば、金融危機は回避される。

経済を黒板の上にきれいにまとめられると信じる専門家は、現実の経済をいじくり回し、黒板に書かれたことと一致させたくなるのだ。

しかし、現実の世界はそうではない。窓の外を見れば、金融機関が救済を期待することで、よりリスクの高い行動を取るように仕向けられていることがわかる。金融機関の中には、救済を口実に、競争を排除するような規制を求めるところもあるかもしれない。

黒板の外には、複雑な問題が山積している。

ベトケ博士は二人の共著者との論文で、「高僧の地位を拒否し、卑しい哲学者の地位を受け入れて初めて、経済学者は傲慢による破滅から経済学を救うチャンスを手にする」と述べている。

経済学者が本領を発揮するのは、窓の外を眺め、文明を研究するときである。これは複雑な方程式や政府の政策に関わる地位よりも、華やかさに欠けるかもしれない。しかし、地位を得ても魂を失ったら、この職業に何の利益をもたらすのだろうか。

ハイエクが気づいていたように、ノーベル賞の華やかさは、経済学者が高僧であるという考えを強めかねない。それなら最善の道は、ノーベル経済学賞を廃止し、代わりに経済学者が皆、外に存在する現実の世界を見ることのできる、窓のあるオフィスに入るようにすることだ。

(次より抄訳)
Abolish the Economics Nobel Prize - Foundation for Economic Education [LINK]

2022-10-17

核の脅しをやめさせ、恒久平和を築くには

反戦団体「コードピンク」共同設立者、メディア・ベンジャミン
アメリカ進歩民主同盟、マーシー・ウィノグラッド
(2022年10月14日)

バイデン大統領が民主党の献金者に率直に語ったところによれば、核兵器による「ハルマゲドン(終末戦争)」のリスクは、ソ連がフロリダから90マイル離れたキューバに核ミサイルを設置した1962年のキューバ危機以来、最も高くなっている。ロシアのプーチン大統領がウクライナで短距離核兵器を使用すると暗に脅したことについて、バイデン大統領は、このような「直接の脅威」が発せられたのはキューバ危機以来のことだと付け加えた。

そんなことはない。

米国には核による脅しの歴史がある。

朝鮮戦争中のI950年、トルーマン大統領は、北朝鮮にいる中国軍に対する核兵器の発射を「前向きに検討中」だと述べた。

1953年、アイゼンハワー大統領(後に軍産複合体を非難)は、中国が朝鮮戦争の休戦交渉を拒否した場合、核兵器の発射を命令すると脅した。

ベトナム戦争中の1969年、ニクソン大統領は北ベトナムに降伏を迫ろうと、B52核爆撃機の厳戒態勢を密かに命じた。ニクソンは「狂人理論」を信奉していた。核兵器を使うほど狂っていると敵に思わせれば、敵は屈服するという理論だ。しかしこの理論は効果がなく、推定200万人のベトナム人が死亡し、6万人近い米兵が遺体袋に入れられた後、1973年に米軍はベトナムから逃げ出した。

2007年、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、イランが核開発を追求するならば、「あらゆる選択肢を検討する」と述べている。

2017年、ドナルド・トランプ大統領は、北朝鮮のミサイル実験をきっかけに、同国に「炎と怒り...世界がかつて見たことのないようなもの」を浴びせると威嚇した。

2020年、米国は通常兵器と核兵器を搭載できるB-52機を黒海とバルト海に配備し、ロシアの軍事基地と港湾への攻撃を模擬した飛行を行っている。

不愉快な事実だが、核兵器が存在する限り、私たちはその発射を命令できる少数の人物の人質なのだ。

キューバ危機の記念日に出すべき答えは、核兵器を増やすことではなく、ブッシュやトランプが放棄した軍備管理条約に立ち返り、核兵器禁止条約に署名して地球上から核兵器を廃絶することである。

核兵器による脅迫の舞台は、ずっと以前に設定されていた。第二次世界大戦末期の1945年、トルーマン大統領は広島とその三日後の長崎に原爆を投下し、炎の爆発と死の灰の雨の中で推定20万人の人々に放射線を照射し、絶滅させた。

核兵器による脅しの舞台が整ったのは2002年、ジョージ・W・ブッシュ大統領が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約を破棄したときだ。この条約では、飛来するミサイルを破壊するために米露が配備できるミサイルシステムの数に上限を定めた。米露が認識していたように、防衛的なミサイルシステムは、それに打ち勝つ新兵器の開発によって軍拡競争を激化させる可能性がある。もし防衛の効果が確かなら、報復を恐れず先制攻撃に出る気にさせるかもしれない。

核による恐喝の舞台が整ったのは2019年、ドナルド・トランプ前大統領が米露の中距離核戦力(INF)全廃条約を破ったときだ。これ以前に、両超大国は約3000基の短距離・中距離ミサイルを破壊していた。

つい最近も、米議会は核不拡散条約(NPT)の下での公約に反して、1兆ドル規模の核「近代化」プログラムへの資金提供の継続を決議した。この数十年にわたる核再軍備の一環として、米国は中西部の即時発射態勢にある400基のミニットマン大陸間弾道ミサイル(ICBM)を、600基の新しい核ミサイルに置き換える予定である。地下のサイロに深く埋められるこれらの新しいミサイルは、米国が日本に落としたものの20倍以上の威力を持つ核弾頭を搭載する。

明確な脅しから暗黙の脅しまで、米国は長年にわたって核の恐喝に頼ってきた。

ジョン・F・ケネディ大統領は、キューバ・ミサイル危機を武器ではなく外交で解決した。ソ連がキューバからミサイルを撤去する代わりに、米国はトルコに設置された核兵器を撤去すると申し出たのである。

バイデン大統領は、ポーランドとルーマニアから対弾道ミサイルを撤去することを申し出ることで、ケネディの志を継ぐことができるだろう。ウクライナの中立支持を申し出ることもできる。これらは現状打開の選択肢だ。

キューバ・ミサイル危機の記念日に出すべき答えは、ウクライナにさらに武器を送りつけて核戦争の危険を冒すのではなく、即時停戦を支持し、外交による解決を追求することで、核戦争の瀬戸際から人々を連れ戻すことである。

(次より抄訳)
Opinion | What Must Be Done to End Nuclear Extortion and Build Lasting Peace | Medea Benjamin [LINK]

スマートフォンの奇跡

ケイトー研究所シニアアナリスト、マリアン・テューピー
(2018年10月19日)

スマートフォンは中毒性があり、誰でも旧来の携帯電話に切り替えていいし、携帯なしで済ませてもいい。とはいえ、スマホが私たちの生活にもたらした良い変化を思い出してみよう。

1987年のオリバー・ストーン監督の映画『ウォール街』では、俳優マイケル・ダグラス演じる大富豪の投資家ゴードン・ゲッコーが、ビーチを歩きながら朝日を眺め、モトローラ社のダイナタック8000X携帯電話で話している。「これが見られたらな」と、ニューヨークにいる若い弟子のバド・フォックスに言う。「光が昇ってくるぞ。こんな瞬間の海の美しさをとらえた絵は見たことがない」。1983年に発売されたダイナタックは、世界初の携帯電話機だった。重さ2ポンド、充電に10時間、通話時間30分。1984年当時、この携帯電話の価格は3995ドルだった。2018年の米ドル換算で1万277ドルだ。

1990年の時点では、携帯電話は非常に高価で、米国人の2%しか買うことができなかった。2017年には米国内だけで2億2500万台になった。世界の利用者数は2016年の21億人から2019年には約25億人に増加すると予測されている。時とともに、携帯電話はより小さく、より安価になった。また、よりパワフルで便利なものになった。今日、南アフリカにいるナイジェリア人の炭鉱労働者は、スマホアプリを使ってラゴスにいる母親にお金を送ることができる。コンゴの漁師は、悪天候の接近を知らせてもらえる。マサイ族の牛飼いは、ナイロビで牛乳の値段を知ることができる。数千年かけて蓄積された人類の知識が、スマホを通じて簡単に、瞬時に利用できる。

脱物質化(国内総生産=GDP=あたりの財・エネルギーの消費量が減少する過程)について考えてみよう。スマホは、これまで電話、カメラ、ラジオ、テレビ、目覚まし時計、新聞、写真アルバム、ボイスレコーダー、地図、コンパスなど、無数の異なる機器が必要だった機能を統合している。スマホが登場したからといって、他のデバイスがすべてなくなるわけではない。しかし、それらを使うことは少なくなってきている。

エネルギーや物資の節約につながる可能性は計り知れない。ある調査によると、スマホは物質の使用を300分の1に減らすことができる。電力は100分の1に、待機電力は30分の1に削減できる。また、天然資源の採掘や加工、製造、輸送、製品配送など、建築物の建設に関連するすべての過程で消費されるエネルギーを示す内包エネルギー使用量も、20分の1に減らすことができるという。

つまり脱物質化とは、世界人口の増加と資源の確保との間に生じる矛盾を懸念する人々にとって、歓迎すべきニュースなのだ。将来の資源の確保については意見が分かれるところだが、脱物質化によって、物質的な快適さを享受しながら、同時に地球の良き管理者にもなれるのだ。特に貧しい国の人々にとっては、環境問題が深刻化する中で、物質的な豊かさを体験する機会を得ることが重要である。

スマホは人類に多くの恩恵をもたらしてくれた。賢く使うか、不用意に使うかは、人間次第である。もちろん、それはすべての技術に共通することだ。

(次より抄訳)
The Miracle that Is the Smartphone - HumanProgress [LINK]

2022-10-16

自由貿易に挑むアフリカ

「アフリカの貿易と繁栄のためのイニシアチブ」ディレクター、アレクサンダー・ハモンド
(2021年4月5日)

2021年1月1日、待望のアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が発効した。この協定がアフリカ大陸にもたらす経済的利益もさることながら、自由貿易と自由化に対するアフリカの新たな支持は、数十年にわたってアフリカ政治を苦しめてきた社会主義イデオロギーに対する明確な拒否反応である。

現在、アフリカ連合(AU)加盟55カ国のうち、地域経済の強豪であるナイジェリア、南アフリカ、エジプト(合わせて大陸経済の3分の1を占める)を含む36カ国が自由貿易地域を批准している。さらに18カ国が貿易協定に署名して支持を表明しており、間もなく正式加盟する見込みである。「アフリカの隠者王国」と呼ばれるエリトリアが唯一支持を渋るほど、アフリカの自由貿易への意欲は強い。

エリトリアはいずれ考え直すかもしれない。向こう5年から10年の間に、アフリカ自由貿易圏は加盟国間で取引される商品の関税の90%を廃止することを保証する。13年以内には、全関税の97%が撤廃されるだろう。世界銀行の予測では、2035年までにこの膨大な自由化の努力によってアフリカの国内総生産が4500億ドル増加し、熟練労働者と非熟練労働者の賃金が10%上昇し、1日1.90ドル未満で暮らす極貧から3000万人以上が脱却する。同じ試算によれば、2035年までに、1日1.90ドルから5.50ドルで暮らす中程度の貧困から6800万人以上の人々を抜け出させる。世銀は、「初期の貧困率が最も高い国」が「最大の改善」を示すことになるとしている。

アフリカ自由貿易圏がもたらすと思われる経済的利益はみごとである。このような急速な成長は、結局のところ、大陸の大部分を貧困に陥れてきた経済ナショナリズムとたもとを分かった結果である。

アフリカと社会主義との混乱した関係は、1950年代後半から1960年代初頭にかけて、多数の新たな独立国家が資本主義モデルを拒否したことに始まる。新しい指導者の多くは、資本主義と植民地主義を同義語とみなしていた。1963年、タンザニアの初代大統領ニエレレは、「植民地主義がアフリカにもたらした資本主義の考え方を否定するのであれば、それに付随する資本主義の手法も否定しなければならない」と述べている。

1957年、ガーナはアフリカで初めて独立を果たした。その指導者エンクルマは、自称「マルクス社会主義者」であり、「社会主義的変革のみがガーナ経済の植民地的構造を根絶する」と提言した。やがてエンクルマは、他のアフリカ諸国も独立によって、「国家による経済の完全所有」を追求するよう促した。

多くのアフリカの指導者がガーナの例にならった。ギニアのセク・トゥーレは、「アフリカの服を着たマルクス主義」を追求し、政府が承認しないすべての商業活動を禁止した。タンザニアでは新憲法で「社会主義国家」と定め、「富の蓄積を防ぐ」と誓った。セネガルの初代大統領サンゴールは、独立後のセネガルは「マルクスとエンゲルスによって導かれる」と述べた。

アフリカの知識人たちが社会主義に熱中した結果、アフリカ大陸の経済の多くが中央計画によって混乱させられてしまった。何十年もの間、価格や賃金の統制、私有財産の収用、非効率的な国有企業といった、経済を衰弱させる政策がいたるところで行われてきた。

アフリカ自由貿易圏が調印された2018年当時、アフリカ連合(AU)の議長国だったルワンダのカガメ大統領は、自らを熱心な自由貿易主義者で、自由貿易国シンガポールの初代首相リー・クアンユーの思想的弟子であると述べている。同様に、同連合の現議長である南アフリカのラマポーザ大統領は、自由貿易が「アフリカの経済的潜在力を解き放つ」と宣言している。

アフリカ諸国が自由貿易を受け入れ始めれば、今後数年で、数億人とは言わないまでも、数千万人のアフリカ人が貧困から抜け出すと期待できるだろう。

(次より抄訳)
Africa Tries Free Trade - HumanProgress [LINK]

バイデン政権の狂った国家安全保障戦略

ジャーナリスト、ジョーダン・シャクテル
(2022年10月13日)

米バイデン政権は10月12日に同政権として初めて、「国家安全保障戦略」文書を発表したが、それは以前のあらゆる同文書から急激に錯乱したものとなっている。国家安全保障戦略はかつて、国家に対する実際の脅威のリストをまとめる真面目な文書として理解されていた。今やまるで、超政治的な左翼陰謀論者が資金調達するためのメールのようだ。

脅威の評価とされる項目のほとんどは、国家安全保障とはまったく関係がない。一方、国家安全保障に関連する項目には、優先順位が付けられ、政治的に扱われる案件がある。

オバマ政権でさえ、今回のバイデン政権ほどには、政治案件を盛んに書き入れはしなかった。

簡単な単語検索で、ホワイトハウスの優先順位を知ることができる。

ロシアが首位である。想像できる限り最もヒステリックな言い方で、71回も言及されている。チーム・バイデンによれば、プーチンは戦争犯罪者であり、その軍隊はウォロディミル・ゼレンスキー(ウクライナ大統領)に大虐殺を見せつける以外のいかなる理由もなくウクライナに進駐したのである。ウクライナといえば、文書にはウクライナについて33回書かれている。

一方、中国は14回しか言及されておらず、中国共産党は友好的な競争相手、まるでチェスの相手方の単なるプレーヤーのように例えられている。

プーチン以外では、この政権の「国家安全保障」のナンバーワンは「気候変動」であり、文書で63回言及されている。信頼できるエネルギー資源から遠ざかる、エネルギー「移行」の重要性についても、11回言及されている。

さて、左翼新自由主義政権による脅威の評価は、「多様性」(diversity、16回言及)、「公平」(equity、14回)、「包摂」(inclusion、24回)、すなわち意識高い系の人々が言うところの「DEI」を抜きにしては成り立たないだろう。

文書では、米国は「気候変動、国際保健、食糧安全保障などの問題において、米国人だけでなく、世界中の人々の生活を向上させるために有意義な進歩を遂げている」と結論づける。

国家安全保障戦略は、1986年のゴールドウォーター・ニコルズ法の成立に伴い、レーガン政権以来、行政府が定期的に作成している。この文書は、政権の国家安全保障上の主要な優先事項と、ホワイトハウスがそれらにどのように対処するつもりかを議会と国民に知らせることを目的としている。

今回の国家安全保障戦略で明らかになったように、今のホワイトハウスの最優先事項とは、何でもかんでもロシアのせいにすること、気候変動デマを広めること、米軍の肥大した官僚機構と予算を通じ、世界中で(ゆがんだ反差別主義の)覚醒計画を進めることにある。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Biden Admin reveals its new National Security Strategy: climate change, diversity, equity and inclusion [LINK]

2022-10-15

経済の自由が女性を強くする

ケイトー研究所アナリスト、チェルシー・フォレット
(2017年10月10日)

フェミスト作家ラフィア・ザカリアは、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、女性の地位向上に対する国際援助業界の間違った、恩着せがましい態度に注意を喚起している。

ザカリアは、欧米の開発専門家とその組織が抱える問題を雄弁に語っている。とくに、ヒーローである人道主義者が世界の最貧困層の女性に施しを与えるという物語に沿った、トップダウンのやり方は、ひどく恩着せがましいものだという。「非西洋の女性は、救助を待つ無言で受け身の主体へと還元される」とザカリアは書いている。

途上国開発の専門家は、貧困の緩和にはほとんど無力である。貧しい女性に鶏を与えるような、自己満足でしかない計画は、長期の経済的利益にはつながらない。

ニューヨーク大学のウィリアム・イースタリーは、開発に対するトップダウンの「技術官僚」的な取り組みが、しばしば貧しい国の開発専門家や独裁者を豊かにするためだけに役立つことを、詳しく記録している。

実際、援助によって貧困から抜け出した国は一つもなく、場合によっては国際開発の妨げにさえなっている。ハイチは1万を超える援助NGO(非政府組織)を抱える国として有名だが、慈善の洪水は逆に地元の産業を傷つけ、貧困を悪化させる、依存の連鎖を招いた。

貧困はとくに女性を弱くする。経済学の研究によると、貧困が減少するにつれて男女間の不平等は縮小し、開発によって女性の状態は男性よりも改善されることが示唆されている。つまり、女性の社会的な地位向上は経済的な能力向上と密接に関係しており、繁栄の恩恵を最も多く得る立場にあるのは女性なのだ。

女性の経済的影響力が高まることで、社会変革に向けたロビー活動が可能になり、そこから政治的・法的な変革が生まれる。経済学者ミルトン・フリードマンは「経済的自由は...…政治的自由の達成に向けた不可欠な手段」だと述べている。女性が配偶者の許可なしに有給で働くことが法律上許されていない国もある。法の下における男女平等は、国の経済が自由になるにつれて改善される。

経済発展は達成可能である。この一世代のうちに極度の貧困が半減し、とくにアジアでは心強い進展があったことを、圧倒的な量のデータが示している。

経済的進歩は、援助ではなく、民間企業によってもたらされた。中国とインドの経済成長は、一人当たりの援助がはるかに少ないにもかかわらず、サハラ以南のアフリカを大きく上回っている。その経済成長は、経済の自由化政策と一致している。貧しい国の人々は、救助を待っている受け身の犠牲者ではない。主体性を持ち、自由があればどこでも貧困から脱却している。

とくに女性にとってはそうだ。バングラデシュでは貧困が劇的に減少し、女性の生活にも前向きな変化が見られた。政府やNGOが十年かかっても実現できなかった、女性労働力の創造には、市場の力と、輸出志向の衣料品産業の出現が必要だった。

工業化によって女性の教育水準が上がり、児童婚の割合も減った。パルダ(女性の隔離)という社会的規範を和らげ、女性に対する裁判制度の対応力を向上させた。「女性にとって、衣料品はとても良いものです」と、ある工場労働者は語った。彼女は自分の稼ぎのおかげで、身体を虐待する夫から逃れることができた。「 今、私は自分には権利があり、生きていけると実感しています」と彼女は続けた。貧困からの脱出と平等な権利の達成は、しばしば相伴う。

「女性の地位向上という概念は、開発業界の救世主になろうとする人々の手から急いで救い出す必要がある」とザカリアは寄稿を締めくくっている。その点には同意できる。

政治的自由が不可欠であることにも同意するが、経済的自由の重要性を無視してはならない。発展途上国の苦悩する女性たちは、経済の自由さえ与えられれば、自分たちを救い出すことができる。

(次より抄訳)
With Economic Freedom Comes Female Empowerment - HumanProgress [LINK]

米国を核戦争の瀬戸際に追いやるゼレンスキー

アメリカン・コンサーバティブ
(2022年10月7日)

ウォロディミル・ゼレンスキー(ウクライナ大統領)がなぜこのようなことをするのか、私は理解している。彼の国はロシアに対して命がけで戦っている。米国と欧州を引き込み、ウクライナの防衛に最大限の力を発揮させることが彼の最善の利益なのだ。

しかし、それは我々の最善の利益にはならない。とりわけ、ハルマゲドン(終末戦争)に向かって突進しているかもしれないときには。

(ネオコンのコラムニスト)デビッド・ブルックスによれば、ウクライナが戦争で善戦している背景には、自由主義とナショナリズムの思想があるという。

もちろんゼレンスキーは、すべてのウクライナ人と同じように、ナショナリズムのために戦っている。しかし、自由主義のために戦っているというのは、本当だろうか。

ゼレンスキーは11の政党を禁止した。これが自由主義だろうか。

戦争勃発の前年の2021年、ゼレンスキーは親ロシアのメディアを禁止した。これが自由主義だろうか。

ゼレンスキーはロシア語の学校教育を制限する法律を可決した。ウクライナへの帰属意識を強化するためだ。ゼレンスキーは他の言語での教育も制限している。ウクライナ西部に住むハンガリー人は、子供を自分たちの言語で教育するには限られた権利しかないといわれる。これが自由主義だろうか。

ゼレンスキーは、ウクライナのネオナチ「アゾフ大隊」や、第二次世界大戦時のウクライナの民族主義者でファシスト、反ユダヤ主義者でナチスの協力者だったステパン・バンデラの崇拝者と和解し、勢力を拡大している。これは今の状況では理解できる。ドイツ軍がフランスに侵攻した時、王党派と共産主義者はナチスの侵略者を追い出すために共通の大義名分を得た。(英元首相)チャーチルは「もしヒトラーが地獄に攻め込んだら、私は議会で少なくとも悪魔のことを悪くは言わないだろう」と述べた。国家の存亡をかけた戦争では、そのようなことをせざるをえない。とはいえ、ゼレンスキーやウクライナ人が自由主義のために戦っていると言うには慎重であるべきではないだろうか。バンデラやアゾフ大隊の支持者に関してもそうだろう。

やはり開戦前の2021年、パンドラ文書の公開によって、ゼレンスキーは汚職撲滅を掲げて選挙戦を展開したにもかかわらず、じつは自分の取り巻きと同様、海外の銀行口座に財産を隠し持っていたことが明らかになった。旧ソ連圏で生活すると、政治はどこもかしこも腐敗していることがよくわかる。残念なことだが、それがこの地域の現実なのだ。ゼレンスキーも他の人と変わらない。それでも彼を自由主義者として祭り上げるのか。

ゼレンスキーは、同性婚の合法化を検討すると述べている。欧米の支持者が同性婚の権利を認めようとする大きな動きに呼応してのことだ。西側のリベラル派をなだめるためのプロパガンダであることはほぼ間違いない。2013年の世論調査では、ウクライナ人の79%が同性婚に反対していた。この数字は、過去十年間でそれほど低下していないはずだ。ゼレンスキーが内心どう思っていようと、同性婚がすぐに実現することはないだろう。ウクライナ人は欧米のリベラル派ではないのだから。

ウクライナの粘り強さは、ナショナリズムがいかに強力であるかを示している。自由主義は関係ない。南東部マリウポリを守るアゾフ大隊は、信じられないほどの勇気をもって戦った。彼らはファシストでもある。どちらも事実だ。

ゼレンスキーは自分の国を愛している。それは称賛に値することだ。しかし国を愛する私たち米国人は、そのウクライナの愛国者に、核戦争の瀬戸際まで連れて行かれてはならない。

(次より抄訳)
Zelensky Taking US To The Nuclear Brink - The American Conservative [LINK]

オカシオコルテス議員に罵声、「核戦争を始めるために投票」

RT
(2022年10月14日)

米民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス(AOC)下院議員が講演する集会に抗議者が乱入し、同議員がロシアと対立するウクライナへの軍事支援を支持することで、米国をロシアや中国との核戦争に追い込んでいると非難した。

オカシオコルテスが罵声を浴びたのは、10月12日にニューヨーク市ブロンクス区で有権者と交流するために行われた、質疑応答の最中。

聴衆の男性がニューヨーク出身の極左下院議員であるオカシオコルテスの話をさえぎり、核戦争が起きれば、あなたが話していることはどれも問題にならないと叫んだ。

「あなたはロシアや中国との核戦争を始めるために投票している。なぜ米国市民の命をもてあそぶのか? なぜ我々の命をもてあそぶのか?」。男性はこう叫んだ。

抗議した男性はまた、オカシオコルテスが「進歩的な社会主義者」を自称しながら、戦闘を激化させるだけのウクライナに対する米国の死の支援策に一貫して賛成票を投じるのはどうしたことかと疑問を呈した。「あなたは臆病者だ!」と男性は宣告した。

これは別の男性に支持された。その男性によれば、自分は左翼でオカシオコルテスの元ファンだが、議会での行動で彼女に幻滅したという。「信じていたのに、あなたは自分が戦おうとした相手と同じになってしまった。それがあなたの正体だ。あなたは体制側だ」と二人目の男性は主張した。

この男性は、今週初めに民主党を辞めた別の著名な女性政治家トゥルシー・ギャバードの後を追うようオカシオコルテスに促し、民主党は「戦争屋のエリート集団に完全に牛耳られ」ていると述べた。

「あなたは何もしていない! トゥルシー・ギャバードは根性を見せたが、あなたは臆病をさらした」。男性はオカシオコルテスに言った。

「あなたが今立ち上がって、民主党を糾弾しないかぎり、みんなが核戦争に巻き込まれたらあなたのせいだ。そうするのか? イエスかノーか?」。男性は叫んだ。

オカシオコルテスはその質問に答えたが、ソーシャルメディアにアップロードされた集会の映像では、その言葉ははっきりしなかった。

(次より抄訳)
Alexandria Ocasio-Cortez heckled for ‘voting to start nuclear war’ — RT World News [LINK]

タッカー・カールソン、支援要求のゼレンスキーに「消えろ!」

RT
(2022年10月14日)

ウクライナの「クリスマスに欲しい物リスト」と呼ばれる米国からの追加支援要求は、議会で拒否されるべきだ。保守系人気テレビ司会者のタッカー・カールソンは、ゼレンスキー大統領が自国政府の存続のため新たに数百億ドルの要求をしたことに対し、怒りをぶつけながらそう述べた。



フォックスニュースの10月13日の番組で、この人気コメンテーターはウクライナ大統領を「欧州で最も腐敗した国のセレブ御用達の独裁者」だと切り捨てた。

「何だと? Tシャツを着た高慢な外国人が『重要な経済ニーズ』のために金を要求しているのか? こっちにも重要な経済ニーズがあるんだよ。お前は誰だ、荒らしか? 消えろ!」。カールソンはこう応え、ウクライナの大統領が米国の国庫に請求権を持つかどうか、米国の指導者に問いかけた。

12日にゼレンスキーは、ロシアの空爆による被害から国を再建し、赤字の政府を存続させる必要があるとして、国際通貨基金(IMF)と世界銀行に550億ドルの支援を要請した。米政府は以前、ウクライナ政府の借り入れを促すため、債務保証を延長している。

フォックスニュースのこのコーナーは、米議会の左派議員団、とくにニューヨーク州の民主党代表アレクサンドリア・オカシオコルテス(AOC)を批判することに重点を置いていた。カールソンは、下院の民主党議員全員が、ウクライナに武器を送るため数十億ドルを支出するよう繰り返し投票したと指摘し、スクワッド(小隊)と呼ばれる左派議員団の信用を疑わせたと主張した。

オカシオコルテスら自称進歩派は、紛争に資金を提供するのでなく、「米議会がかかっている催眠の魔法を解き」、ゼレンスキーの「クリスマスリスト」に署名するのを阻止するために働くべきだったとカールソンは指摘。オカシオコルテスは自称するような人物ではなく、むしろ「隠れネオコンの工作員」だとも付け加えた。

(次より抄訳)
Tucker Carlson tells Zelensky to ‘go away’ after aid demands — RT World News [LINK]

キューバ危機、真の教訓

ジャーナリスト、 スティーブン・キンザー
(2022年10月12日)

人類が最後に核兵器による自滅に瀕してから六十年になる。1962年、キューバ危機として歴史に知られたその遭遇をかろうじて生き延びた。それ以来、核の黙示録が今日ほど近づいたことはない。

キューバ危機最大の教訓は、核の危機を打開するうえで、現存する唯一の指針を与えてくれる。

米国の政治家や戦略思想家は一世代にわたり、その教訓を誤解していた。それを責めるのは酷かもしれない。政府が何年も真実を隠蔽してきたからだ。米国人は、ミサイル危機がある教訓を与えたと聞かされていた。しかし後になって、それはまったく逆のことを教えていることがわかった。

ミサイル危機は1962年10月に世界の注目を集めた。ケネディ米大統領は、ソ連の核ミサイルをキューバで発見したと発表し、「ワシントンを攻撃することができる」と述べた。ケネディはソ連の指導者フルシチョフに撤去を要求した。これが人類史上最も重要な、遠距離交渉のきっかけとなった。

ケネディの軍事顧問は全員、キューバへの大規模な爆撃を命令するよう促した。カーティス・ルメイ将軍は「この作戦はかなり単純で、数分で完了できるだろう」と断言した。「何の問題もない 」

ケネディは違った。キューバを制圧するには爆撃だけでなく、本格的な侵攻が必要であり、ソ連が壊滅的な力でそれに応じるかもしれないと懸念していた。1962年10月22日の国民への演説は、微妙なバランスを保っていた。ソ連がキューバからミサイルを撤去するよう繰り返し要求する一方で、米国は「忍耐と抑制」をもって行動し、「早計に、不必要に核戦争の危険を冒し、勝利の果実でさえ口の中で灰になる」事態を避けなければならないと述べた。

フルシチョフも配下の将軍たちから同等の圧力を受けていた。ケネディが何を言おうと、何をしようと、ソ連のミサイルはキューバから動かさないと主張するように求められた。

10月16日にケネディがミサイル施設の航空写真を見せられたことから始まった十三日間の緊迫の間、ケネディとフルシチョフは十通の手紙を交わした。両者とも妥協の必要性を強調した。「大統領、我々もあなた方も、戦争という結び目のあるロープの端を今引っ張るべきではありません。なぜなら、双方が引っ張れば引っ張るほど、結び目はきつくなるからです」とフルシチョフは書いている。ケネディは「問題の迅速な解決を求めるという、あなたの意思表示を歓迎する」と返信した。

双方が妥協に前向きだったため、取引は成立した。しかし、その一部しか発表されなかった。公式には、ソ連はミサイルの撤去と引き換えに、米国がキューバを侵略しないと約束したにすぎない。米国は完全な勝利と見まがうほどの歓喜に包まれた。いじめっ子は強大な力の脅威に直面すると引き下がると、世界に示したと信じていた。国務長官ディーン・ラスクは、結果を要約して「にらみ合っていたら、相手が目をぱちくりしたのさ」と述べ、この誤った教訓を広めようとしたのである。

慎重に隠された真実は、十年以上にわたって明らかにされることはなかった。ケネディはフルシチョフと密約を交わしていたのである。ソ連がキューバからミサイルを撤去する代わりに、トルコから米国の核ミサイルを撤去すると約束したのだ。つまり、危機はラスクが提案したような武力による脅しではなく、正反対の外交による妥協で終結したのである。これこそ、ウクライナで再び核危機が発生した際、米露両政府が耳を傾けなければならない緊急のメッセージである。

ケネディとフルシチョフは、核戦争に発展しかねない危機から脱する、互いに面目を保つ方法を提示した。それは巧みな解決策だったが、カギは秘密を守ることだった。ケネディは、ミサイル交換を行ったことを公にするわけにはいかないと主張した。フルシチョフは、それを秘密にしておくことに同意した。しかし、今日のようにメディアが入り乱れる時代では、そんなことは不可能だろう。

それでもバイデン大統領は、キューバ危機の教訓の根本を理解しているのが明らかである。すなわち、核のチキンゲームでは威張ったり脅したりではなく、話し合いと取引をすべきだということだ。「私たちは、プーチンの出口を見つけようとしている」と今月、バイデンはつぶやいた。「プーチンはどこに出口を見出すだろう」

運が良ければ、米露首脳は、フルシチョフが六十年前、ケネディに宛てた手紙で述べた原則に従って行動するだろう。「人は情熱に身を任せてはいけない。それを抑制することが必要だ」

(次より抄訳)
The most important lesson of the Cuban Missile Crisis - The Boston Globe [LINK]

2022-10-14

偽りの金本位制

経済学者、ジョセフ・サレルノ
(2021年5月28日)

歴史上、貨幣の自由を体現したのが金本位制である。金本位制が最も栄えた時代は、偶然にも19世紀である。古典的自由主義が君臨し、かつてないほどの物質的進歩と国家間の平和的関係の世紀であった。しかし金本位制に代表される貨幣の自由は、古典的自由主義時代の他の多くの自由とともに、第一次世界大戦によって悲惨な結末を迎えることになった。

金本位制下の政府や商業銀行は、長期では通貨供給量に対して大きな影響力を持たなかった。19世紀に起こった大規模なインフレは、戦時中に起こったものだけである。戦争にかかる膨大な費用を国民に隠すために、増税ではなく、紙幣を印刷することでその費用を賄ったのである。

第一次世界大戦が勃発すると、数週間のうちに、すべての交戦国が金本位制から離脱した。言うまでもなく、戦争が終わる頃には、これらの国々の不換紙幣は、程度の差こそあれ、インフレに見舞われていた。特に、1923年に頂点に達したドイツのハイパーインフレは最悪であった。1920年代には、自国通貨を正常化し、国民の信頼を回復するために、各国とも金本位制を復活させる。

しかし1920年代の金本位制は、古典的な金本位制とは根本的に違っていた。例えば英中央銀行のイングランド銀行は、ポンドを高価でかさばる金塊と交換するだけだった。金塊は主に国際貿易の支払いに使われた。

米ドルは建前上、正真正銘の金貨と交換可能だったが、銀行はもはや金貨ではなく、米連邦準備銀行(中央銀行)が発行する銀行券(紙幣)で準備金を保有していた。すべての金準備は、法律により連邦準備銀行の手に集中され、銀行は小切手の現金化、当座預金や普通預金の引き出しの支払いに連邦準備銀行券を使うことが奨励された。このため1920 年代に金貨はほとんど一般に流通せず、各国民は中央銀行の借用書(紙幣)をドル、フラン、ポンドなどの究極の実体として見るようになった。

19世紀には金本位制が非常にうまく機能していたことを、多少不本意ではあるが、多くの人が認めている。しかし同時に、金本位制は1920年代から1930年代にかけて突然崩壊し、この崩壊が世界恐慌を引き起こしたと主張される。通貨の自由は、1930年代の悲劇的な出来事のせいで永久に信用されない。金本位制は、その前の時代の利点がどうであれ、現代経済の厳しさとストレスに耐えられないことが証明された、古風で時代遅れの通貨制度とみなされている。

1914年の古典的自由主義時代の終焉によって、政府の中央銀行から、本物の金本位制の「黄金の手錠」が外された。もしこの「黄金の手錠」が1920年代にまだあったなら、中央銀行はそもそも通貨供給を膨らませないように厳しく制約され、世界恐慌に至る景気変動は起こらなかっただろう。

そもそも金本位制は、中央銀行がない方がはるかによく機能する。なぜなら、中央銀行は政治の産物で、本質的にインフレ傾向であり、小口預金商業銀行のインフレ傾向を抑制するよりも、むしろ促進しがちだからだ。

金本位制に対する批判は、一から十まで勘違いである。本物の金本位制は1920年代には破綻しなかった。なぜなら1914年以降、政府の政策によってすでに破壊されていたからである。

1920年代に世界恐慌の種をまいた通貨制度は、中央銀行によって操作され、インフレを引き起こす、偽りの金本位制であった。

米国の通貨供給量は、適切に定義すれば、1921 年から1928 年にかけて年率 7%で増加し、古典的金本位制の下ではなかった通貨膨張率を示した。1920年代には連邦準備銀行が、一部のマネタリストが描くような通貨供給量の減少要因として機能するどころか、管理下にある銀行準備金を年率18%も増加させた。

(次より抄訳)
How Governments Killed the Gold Standard | Mises Institute [LINK]

アレックス・ジョーンズと危険な名誉毀損罪

ミーゼス研究所編集主任、ライアン・マクメイケン
(2022年10月13日)

名誉毀損法の不条理がまた明らかになった。ラジオ番組の司会者アレックス・ジョーンズは9億6500万ドル(約1416億円)の支払いを命じられた。2012年、米コネチカット州ニュータウンで起きたサンディーフック小学校銃撃事件について、ジョーンズの主張を好ましく思わない人々に対してである。

この銃撃事件の後、ジョーンズは繰り返し、事件は演出されたもので、両親とされる人たちは「クライシスアクター」だと思うと述べた(その後、銃撃は本当だったと思うと述べている)。ジョーンズの聴取者には、銃撃は起こらなかったというジョーンズの主張に同意する人もおり、このことが、殺害された子供たちの親の何人かに嫌がらせをするという聴取者の決断につながったとされる。

実質上、ジョーンズが有罪になったのは、犠牲者の両親に対し無慈悲で無礼なことを言うよう、他の人々をそそのかしたとされたからだ。この嫌がらせには、犠牲者の墓への冒涜も含まれるとされる。

ジョーンズが数億ドルの支払いを命じられたのは、他人(ジョーンズの命令で行動したわけではない)が、自分で犯罪を犯したとされるからだ。だとすれば、この事件でジョーンズが「被害者」とされる人々に実際どのような損害を与えたのか、理解しがたい。もちろん、親に嫌がらせをしたのであれば、それは実際に嫌がらせをした人が責任を負うべき罪だ。本当の罪人は、嫌がらせ行為を行った人たちである。ところがジョーンズは、陪審員と原告が不快に思うようなことを言っただけで、有罪になってしまったようだ。

自由な社会では、私人が、他の人々が自由に無視できるようなことを言っても、法律で罰せられることはない。しかし言論の自由を尊重しない社会では、言葉を発しただけで何億ドルもの罰金を科すことができるらしい(特定の人物に向けた実際の暴力の脅しは危険だが、ここでの議論はそのことではないし、ジョーンズに対する非難とも別だ)。

ジョーンズが、知りもしない第三者の行為のために何らかの形で有罪になるという考えは、そもそも名誉毀損法のねじれた論理から導かれるものだ。名誉毀損は法律問題として罰しなければならないという考えは、人には自由意志がなく、自分の行動には責任がないという考えに基づく。

たとえば、見ず知らずの人が、あなたの隣人は小児性愛者だと言ったとしても、私にはその告発を頭から信じる理由はない。しかし、これは名誉毀損の論理が想定していることだ。もしAさんがBさんについて嫌なことを言ったら、人々はその告発を拒否したり無視したりする自由はないと仮定することになっている。むしろ、人々は言われたことをすべて信じるロボットだと仮定しなければならないのである。 アレックス・ジョーンズが唱える理論を誰もが信じなければならない理由はない。

Aさんの告発を無視する自由がある以上、CさんがAさんの意見を理由にBさんに何らかの危害を加えた場合、Aさんに責任があると考えるのはとりわけ不合理だ。

現実には、人には選択肢があり、他人の言う嫌なことをいちいち信じる必要はない。誰かが誰かについてひどいことを言ったからといって、人々が何か特定のやり方で行動するよう強制されるわけでもない。

人は自分の行動に責任があるという考えは、アレックス・ジョーンズに対する裁判ではまったく通用しなかったようだ。ジョーンズに対する判決は、嫌われる意見を言う一般人を絶えず脅かすことになる。

政府の公式見解に反対する人は誰でも、人種差別主義者、国内テロリスト、あるいはそれ以上のレッテルを貼られる時代にあって、これはじつに危険な展開である。政府は批判者を黙らせるために名誉毀損法を使ってきたし、金持ちも同じように名誉毀損訴訟の脅しを長い間使ってきた。

ジョーンズの事件が注目されているのは、ジョーンズに相当な額の法的防御を行う手段があるからでもある。しかし、それほど経済的余裕のない、嫌われる意見を言う人々は、もっと不利になり、もっと簡単に、もっと早く脅されて沈黙してしまうだろう。

(リバタリアンの経済学者・法哲学者)マレー・ロスバードは名誉毀損法に反対し、権力者が無力な者を黙らせる手段であることを次のように認識していた。

(名誉毀損訴訟を認める)現在のシステムは貧乏な人々を別の意味でも差別している。つまり、多額の金のかかる名誉毀損訴訟を起こされる恐れから、彼らは裕福な人々に関する、真実だが名誉毀損的な知識を配布する可能性が低いからである。

すべての答えは、人々が自分で結論を出し、自分の行動に責任を持つことがはっきりと期待される、完全な言論の自由である。ロスバードが指摘するように、言論の自由が制限されない社会では「誰もが虚偽の作り話が合法的だと知っているから、読んだり聴いたりする公衆の側にはるかに大きな懐疑心があり、現在よりはるかに多くの証明を求め、中傷的な話を信じる度合いもずっと少なくなるだろう」。

(次を全訳)
The Alex Jones Verdict Shows the Danger of Defamation Laws | Mises Institute [LINK]

(参考文献)
ロスバード(森村進他訳)『自由の倫理学』勁草書房

知識人と社会主義

経済学者、フリードリヒ・ハイエク
(1949年)

すべての民主主義国、とりわけ米国では、知識人が政治に及ぼす影響はごくわずかだという強い信念に支配されている。たしかに、知識人がその時々の問題に関して独特の意見を意思決定に及ぼす力、大衆と意見が異なる問題について投票行動を左右する度合いについては、そうだろう。しかし、より長い目で見れば、民主主義諸国で、知識人が今日ほど大きな影響力を行使したことはない。この力は世論を形成することによって行使される。

最近の歴史に照らすと、他人の思想を受け売りする専門家たちのこの決定的な力が、いまなお一般に認識されていないのは、いささか不思議なことである。過去百年間の西側世界における政治の動向が、最も明確な証拠となる。いつ、どこであれ、社会主義が初めから労働者階級の運動であったことはない。社会主義は決して、労働者階級の利益が必然的に要求する、明白な悪に対する明白な救済策ではない。社会主義は理論家の構築物であり、長い間、知識人だけが精通していたある種の傾向をもった抽象的観念をもとに生まれたものである。そして知識人による長期にわたる説得の結果、労働者階級は社会主義を自らの綱領として採用するようになったのである。

社会主義に向かった国はどこでも、社会主義が政治に決定的な影響を及ぼすようになるよりもかなり前に、社会主義の理想が活動的な知識人たちの思考を支配した時期があった。ドイツではこの段階は十九世紀末に訪れ、英国とフランスでは第一次世界大戦のころだった。一見したところ、米国は第二次世界大戦後、この段階に達したように見える。計画的指令経済体制の考えが、かつてドイツや英国の知識人の間でもてはやされたように、米国の知識人の間でも強く支持されている。経験上、いったんこの段階に到達すれば、現在、知識人に支持されている考えがその後に政治を支配する力となるのは時間の問題である。

科学者や学者の評判でさえも知識人階級によって作られ、実際の業績の真価とはほとんど関係のない事柄について知識人が抱く見解にどれほど左右されているか、門外漢の人々はおそらく気づいていないだろう。そしてここで議論している問題にとってとくに重要なのは、どの学者も、知識人が「進歩的」と見なす政治的見解をもっているという理由だけで、偉大な科学者として不当に大衆の評価を得た人物の例を、自分の専門分野から挙げることができるということだ。これに対し、保守的な学者に政治的な理由で科学者として不当に高い偽りの評価が与えられた例を、私はこれまで一度も見たことがない。

知識人が科学者の評判をつくりだすことがとくに重要となるのは、専門家の研究結果が他の専門家に利用されることによって決まるのではなく、大衆の政治判断によって決まるような研究分野である。社会主義や保護主義といった学説の発展に対し経済学者がとってきた態度ほど、それをよく示すものはない。

社会主義(あるいは保護主義)に好意的な経済学者が、同業者から認められていた時代はおそらくなかっただろう。これほど高い割合で社会主義(あるいは保護主義)に反対している研究者集団は他にないとさえ言えるだろう。近年、社会主義的な社会改革への関心から経済学を職業に選んだ人が少なくないことを考えれば、この点はいっそう興味深い。ところが、知識人が取り上げ広めるのは、専門家の間で主流となっている見解ではなく、少数派の見解、それもその専門家としての地位がやや疑わしい人々の見解なのである。

(次より抄訳)
Why Intellectuals Fall for Socialism | Mises Wire [LINK]

(参考)
『社会主義と戦争』(ハイエク全集 第2期)尾近裕幸訳、春秋社

仕事のあり方は進化する

ケイトー研究所シニアアナリスト、マリアン・テューピー
(2019年1月28日)

産業革命以前は、世界人口の8〜9割が農業に従事していた。19世紀に入ると、西欧と北米の人々は一斉に製造業に従事するようになった。しかし、工場での仕事は決して歓迎されるものではなかった。マルクスら哲学者は工場の仕事を批判し、チャップリンらコメディアンは笑い、ウィリアム・ブレイクら詩人は嘆いた。

マルクスは、細分化され反復的な動作を果てしなく続けることで製品を生み出す工場生産は、労働者に十分な心理的満足を与えないと考えていた。チャップリンは、1936年の映画『モダン・タイムス』で、魂と肉体を破壊する組立式生産方式を陽気な喜劇の寸劇に仕立てた。

しかし実際には、多くの人々は、農村での農作業から都市での工場労働へと、高い賃金と自立した文化的刺激を求めて、進んで移動していった。この傾向は今日まで続いている。例えば、1991年から2017年の間に、農業雇用は世界の労働人口の43%から27%に減少した。ブータンやジンバブエなどの非常に貧しい国だけが、農業が労働者の50%以上を雇用し続けている。

米国では、20世紀半ばまで製造業の雇用が増え続けていた。例えば、1950年には、製造業は全労働者の約35%を雇用していた。しかし、その50年後、製造業は全労働者のわずか15%しか占めていない。逆に、サービス業に従事する労働者の割合は、1960年の約18%から2000年には約80%に増加した。同様の傾向は、英国、ドイツ、日本など、他の先進国でも観察することができる。

最近数十年間に工業化を受け入れた国々では、製造業の雇用が増加した。例えば、1991年から2017年の間に、工業雇用はバングラデシュで12%から19%に、中国で19%から24%に、インドで15%から25%に、ベトナムで9%から23%に増加した。歴史を振り返ると、これら人口が多く、急速に工業化が進む国々が豊かになるにつれて、サービス部門が経済発展においてますます重要な役割を果たすようになると予想される。

農業から製造業、そしてサービス業へ。こうした雇用の流れは心配なことだろうか。そうではない。サービス業とは、情報、投資、技術・科学、医療・社会福祉、芸術・娯楽・レクリエーションなどの仕事を指す。これらの仕事のほとんどは、農業や製造業よりも肉体的な負担が少なく、知的な刺激に富み、賃金も高い。

危険も少ない。2014年に世界の農業における従業員10万人当たりの死亡率は、高所得国の7.8人から東南アジア・西太平洋地域の27.5人に及んでいる。製造業では、高所得国の3.8人からアフリカの21.1人までの範囲だった。サービス業では、高所得国の1.5人からアフリカの17.7人までの範囲だった。

職場の進化はまだ終わっていない。完全機械化された農場を目前にして、先進国の農業雇用はゼロに向かいつつある。同様に、ロボットや人工知能の台頭により、豊かな国々では数千万人の製造業やサービス業の労働者が置き去りにされる可能性がある。

豊かな国々では出生率が低下しているため、大量失業の発生は避けられそうだ。また、先進国は人的資本が豊富で開放的であるため、予想外のイノベーションが起こり、離職者を吸収する可能性が高い。

一部の貧しい国々では、雇用情勢はそれほど楽観的とはいえない。特にアフリカでは、22世紀に入っても人口が増え続けることが予想されている。また、経済的自由の欠如、特に労働市場の硬直化により、アフリカ諸国は自動化という課題に対応するのに不向きな状況にある。

有意義な雇用の見通しが立たない何百万人ものアフリカの若者は、硬化した政府に変革を迫るのだろうか、それとも大陸から移住することを選ぶのだろうか。時がたてばわかるだろう。

(次より抄訳)
The Ever-Changing Nature of Work - HumanProgress [LINK]

コロナワクチン、感染予防のテストせず〜ファイザー社幹部認める

エポック・タイムズ(大紀元時報)
(2022年10月12日)

米製薬大手ファイザー社の幹部は10月10日、自身も他の同社幹部も、昨年市場に出す前に、同社の新型コロナワクチンが感染を止めるかどうか知らなかったと語った。

欧州議会のロブ・ルース議員は、審議の中でこう質問した。

「ファイザー社のコロナワクチンが市場に出る前に、ウイルスの感染を止めるかどうか試験されたのですか」

ファイザー社の海外先進国市場部門長ジャニン・スモールは、これに対して次のように述べた。
「いいえ。…ご承知のように、市場で何が起こっているのかを知るためには、科学のスピードに合わせなければならないのです」

オランダ選出のルース議員は同日、ツイッターの動画で、スモール部門長の答えを受けて、世界中の何百万人もの人々が製薬会社や政府に騙されたと主張した。

「世界中の何百万人もの人々が、『他人のために打つ』という神話によって、ワクチン接種を強制されたと感じています」とルース議員は述べた。「今、これは安っぽい嘘であることが判明しました」とし、「暴露されるべきです」とつけ加えた。

(次より抄訳)
Pfizer Exec Admits COVID Vaccine Was Not Tested for Preventing Transmission • Children's Health Defense [LINK]

2022-10-13

パイプライン破壊の犯人

元国連大量破壊兵器査察官、スコット・リッター
(2022年10月12日)

状況証拠は、直接証拠と同様に、犯罪の要素、特定の行為の存在または完了、および被告人の意図または精神状態を証明するために使用されることがある。一般に、検察官が有罪判決を得るためには、被告人が特定の行為を行ったこと、および特定の意図をもって行動したことを、合理的な疑いを超えて証明する必要があるといわれる。

2月7日に記者会見したバイデン米大統領は、「もしロシアが侵攻してきたら、つまり戦車や軍隊が再びウクライナの国境を越えてきたら、ノルドストリーム2(パイプライン)はもう存在しない。我々はそれを終わらせるだろう」と宣言した。

ある記者が、ドイツがこの事業を管理しているのに、どうしてバイデンにそんなことができるのかと質問すると、バイデンはこう言い返した。「約束するよ。我々はそれを実行できるだろう」

これほど簡潔な意思表示、正真正銘の事前の自白を聞いた検事はいない。ジョー・バイデンの言葉をそのまま信じるべきだ。

10月3日、ブリンケン米国務長官は記者団からノルドストリーム・パイプライン攻撃についてコメントを求められ、この攻撃は「ロシアのエネルギー依存をきっぱり断ち切り、ウラジーミル・プーチン(露大統領)から、帝国計画推進の手段となるエネルギーの武器化を奪う絶好のチャンスだ」と一部回答している。

さらにブリンケンは、米国はパイプライン攻撃が欧州に及ぼす「影響」を緩和するために努力すると宣言し、米国の供給業者が法外な利幅で米国産液化天然ガス(LNG)を提供することを暗示した。これもまた「チャンス」である。

検察は犯罪の動機を探る際、「誰が得をするか」という意味のラテン語であるcui bono(クイ・ボーノ)をよく使う。犯罪を行う者は、その犯罪から利益を得る可能性が高いと想定されるからだ。

米軍は6月上旬、BALTOPS(バルト海作戦)2022として知られる北大西洋条約機構(NATO)の大規模演習を支援するため、無人水中車両(UUV)の最新技術である、地雷探知技術を作戦シナリオで試した。

米海軍によると、「UUVの航行、チーム編成、音響通信の改善、重要な環境データの収集、地雷探知用の自動目標認識アルゴリズムの改善」に焦点を当て、「新しい地雷探知UUV技術」を評価することができたという。

米海軍が使用しているUUVの一つに「シーフォックス」がある。

9月、デンマークのボーンホルム島沖で、破壊工作で被害を受けたノルドストリーム1、2のパイプラインの真上を、UUV「シーフォックス」を搭載した米海軍の特殊ヘリコプター(MH-60R)が飛行しているのが確認された。

合理的疑いを超えて有罪を証明するために存在する責任は、「提示された証拠が被告の有罪を証明するという道徳的な確信に完全に満足し、十分納得していること」である。 ノルドストリーム1および2の攻撃の問題では、米国に責任を負わせることに関し、この責任は満たされている。

バイデン大統領は事前に犯行をほぼ自白し、ブリンケン国務長官はこの攻撃によって生まれた「とてつもないチャンス」を自慢げに語った。米海軍は2022年6月、パイプラインの横で以前(2015年)発見されたのと同じ武器(シーフォックス)を使って盛んに犯行のリハーサルを行っただけでなく、この武器を使うために必要な手段そのもの(ヘリコプター)を、攻撃当日に攻撃場所で使用したのである。

問題は、ロシア以外では、誰も米国を告発していないことだ。ジャーナリストは「不確実性」を理由に証拠から逃げている。欧州は、最も重要な「同盟国」が重要なエネルギーインフラに対し戦争行為を行い、何百万人もの欧州人を寒さと飢えと失業の苦しみに陥れ、一方でLNGの販売から「棚ぼた」どころではない利幅を欧州から得ているという現実に目を覚ますことを恐れ、沈黙を守っている。

ノルドストリーム1と2のパイプラインを攻撃したのが誰であるかは、考える人なら誰でも疑う余地はないだろう。状況証拠は圧倒的であり、米国のどの裁判所でも有罪判決を勝ち取ることが十分に可能だ。

しかし、少なくとも現時点では、誰も裁判を起こそうとしない。

欧州に対するこの無法な攻撃を無視した米国のジャーナリズムを恥じるべきだ。

攻撃した者を公に名指しする勇気のない欧州を恥じるべきだ。

しかし、何よりもジョー・バイデン政権を恥じるべきだ。バイデンは米国を、米国自身が長年追い詰め、殺害してきた人々、すなわち単なる国際テロリスト、テロ支援国家と同じ水準にまで引き下げたのだ。

(次より抄訳)
SCOTT RITTER: Pipelines v. USA – Consortium News [LINK]

サックス教授、正義のアウトローに

ジャーナリスト、ロン・ウンズ
(2022年10月10日)

ほんの数カ月前まで、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授ほど、エリート主流派の最上位に位置する米国の学者はいなかったと思う。

国際的な学者としてこれほど輝かしい、権威ある履歴書を作るのは難しいだろう。だから2020年に新型コロナ感染症を調査するために設立された、英医学誌ランセットのコロナ委員会の委員長に選ばれたのは、自然なことだった。

サックス教授は米国科学アカデミーの会員であり、権威ある米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載される特権があった。そこで同年5月に共著者とともに、コロナウイルスのきわめて疑わしい特徴を記録し、さらなる調査を呼びかける重要な論文を発表したのである。これは画期的なことで、主要な学術誌に掲載された最初で唯一の論文となり、コロナウイルス人工生成説のきわめて強力な証拠を示したのである。

コロナをめぐって政治体制と公然と対立したサックスは、すぐに他の重要な問題についても同じことをし始めた。今年7月から8月にかけて、ロシアと中国に対する無謀な政策を非難するコラムをいくつか発表した。対ロシアではすでにウクライナで血生臭い危険な戦争を引き起こし、対中国では台湾で同じことをすると定期的に脅しているという。

ブルームバーグTVはサックスを招き、ウクライナ戦争への懸念について語らせた。司会者が仰天したことに、サックスは「米国がロシアの(ノルドストリーム)パイプラインを破壊したのだろう」と言い切り、一流ジャーナリストも同じことを内々に言っていたが、その重要な事実は新聞に載らなかったと明かしたのである。

サックスの率直な発言のおかげでインタビューは短くなり、ニューヨーク・ポスト紙の言葉を借りれば、サックスは「放送から引きずり降ろされた」。しかし、この番組はユーチューブで少なくとも数十万回視聴され、サックスのノードストリーム発言の短いクリップはすぐにツイッターで大々的に拡散され、一つのツイートで400万回以上、他の数個でさらに100万回再生されている。

10月9日、左派系オルタナティブメディアのグレーゾーンは、ウクライナ戦争、コロナ起源論争をテーマに、サックス教授との対談を二つの優れた動画で公開した。これらは一日足らずですでに10万回以上再生されている。

最初の動画は「ウクライナ代理戦争をやめるか、世界最終戦争に直面するか」と題され、サックスの重要な指摘が視聴者を驚かせた。サックスが強調したように、米国はすでにウクライナで、核武装したロシアと事実上、戦争状態にある。ロシア国境でロシア軍と戦い、殺害する部隊に資金、軍事機器、指揮統制施設をすべて提供し、そのうえ人数のわからない戦闘参加者を供給しているのだから。これは冷戦時代にはほとんど想像もできなかったような非常に危険な状況であり、米国が最近行ったロシアのノルドストリーム・パイプラインの破壊は、この宣言されていないが、紛れもない現実の紛争の新たな兆候だったにすぎない。

米国の指導者たちは、ウクライナ政府の独立した決定ということで自分の責任を隠そうとするかもしれないが、頭隠して尻隠さずだ。ウクライナの政治指導者は、米政府によって完全に資金提供され、支配されている傀儡政権にすぎない。そうでないふりをするのは、騙されやすい国民を騙すための単なるプロパガンダでしかない。

二番目のやや短い動画は、コロナの起源に焦点を当て、サックスがコロナ委員会の運営中に明らかになった重要な事実を発表する最高の機会を提供した。サックスはその数日前、物理学者スティーブ・シューのポッドキャストでも、同じテーマでインタビューを受けていた。この数年間に100万人以上の米国人の命を奪い、世界中の何十億人もの人々の生活を混乱させたウイルスの流行の真の起源を理解したいと思う人には、この二つのインタビューを強くお勧めしたい。

(次より抄訳)
Jeffrey Sachs as Righteous Rogue Elephant, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

私が民主党を離党する理由

元米連邦下院議員・元米大統領候補、トゥルシー・ギャバード
(2022年10月11日)

私はもはや、今日の民主党にとどまることはできません。民主党は、偽りの反差別意識に駆られた戦争屋のエリート集団に完全に牛耳られ、あらゆる問題を人種差別に結びつけて反白人主義を煽ることで国民を分断し、憲法に謳われた国民の天賦の自由を損なわせようと盛んに活動しています。信仰を抱く人々を敵視し、警察を悪者扱いし、法を守る米国人を犠牲にして犯罪者を保護し、国境開放を信じ、政敵を追い詰めるために国家安全保障を利用し、そして何よりも、私たちを核戦争に近づけています。



以下、私が民主党を離党する、おもな理由を簡単に説明します。今後数週間のうちに、それぞれを深く掘り下げていくつもりです。

戦争推進派の民主党は、国民を核戦争の瀬戸際に追いやりました。軍産複合体の支配下にある戦争屋が率いており、戦争のコストや、誰がその代償を払うのかについて知りませんし、気にもしていません。バイデン大統領と民主党のエリートは、国民を核戦争の崖っぷちに追い込み、第三次世界大戦を始めることで私たちが知っているこの世界を破壊する危険を冒しています。これは、私たちが直面する最も切迫した存亡の危機です。私が2020年の大統領選に出馬したのは、これが米国の向かう先だとわかっていたからです。すべての兆候が当時ありました。私は選挙期間中、毎日この問題を提起し、全国的な討論の場でもそうしました。しかし、政治家やメディアはそれを無視しました。当時も今も、彼らは気にしていないのです。明らかに私は選挙に勝てませんでしたし、危機を防ぐに必要なことをする力もありません。バイデン大統領と議会にはあります。しかし彼らは無責任にも、核兵器によるホロコーストの惨禍から米国と国民、世界の安全を守るためにその力を使うことを拒否しています。私たちの愛する人たち、子供たち、世界を守るために、私は米国民に、一緒にこの卑怯な政治家たちに立ち向かおうと呼びかけます。これは最後のチャンスかもしれません。

今日の民主党は、憲法で保護されている言論の自由という権利を信じていません。思想の多様性と表現の自由を育むことは、繁栄する民主主義の基盤です。民主党の指導者たちはそれに同意していません。狂信的な思想に導かれ、民主主義を脅かしています。自由を、すなわち言論、思想、宗教の自由を信じないからです。気に入らない言論に「偽情報」「ヘイトスピーチ」「暴力的言論」とレッテルを貼って検閲しようとします。営利目的の企業メディアや大手テクノロジー企業と手を組み、政敵や、政府の権威に挑んでその危うさを暴こうとする人々を中傷し、黙らせようとします。バイデン政権は、国民が読み、聞き、話してもいい情報を管理するために、自身の「真理省」を立ち上げようとさえしました。彼らのイデオロギーは、尊敬と愛(アロハ)ではなく、憎しみと分裂のものであり、伝統的な「自由主義(リベラリズム)」とは正反対のものです。伝統的な自由主義とは、人の基本的な善意と個人の自律を認め、市民の自由と、人民の人民による人民のための政府を支持するものです。自由と対立する政党に、どうして私たちの民主主義を託すことができるでしょうか。できはしません。

今日の民主党は、国民の市民的自由を損なう「ビッグブラザー」です。憲法修正第4条は、「不合理な捜索及び逮捕・押収から、その身体・家屋・書類及び所有物の安全を保障される権利」を保障しています。民主党のエリート幹部には、国民の市民的自由を侵害する愛国者法の違憲条項を取り除く機会が何度もありました。私は議会で、愛国者法を廃止し、国民の市民的自由、とくに憲法修正第4条の保障する自由を損なうために使われる、危険な外国情報監視法(FISA)に対処する法案を提出しました。毎回、民主党は国民の自由よりも安全保障国家を選んでいます。Venmo(ベンモ)で600ドル以上送金しただけで国税庁に銀行口座をのぞかれたり、犯罪に問われてもいない、遵法精神のある米国人から財産を押収する民事没収(法執行機関が有罪判決の必要なく資産を没収できる)という腐敗した制度を支持したり、クレジットカード会社に銃器・弾薬関連の購入をすべて記録させたりと、今日の民主党は、ビッグブラザーの国民生活に対する権力と支配を強めています。

だから今日私は、常識を備え独立心のある民主党の仲間に、一緒に民主党を去るよう呼びかけます。いわゆる覚醒した民主党の活動家たちがこの国にもたらそうとしている方向に、もはや我慢ならないのであれば、ぜひ一緒に行動してください。

(次より抄訳)
Tulsi Gabbard: Why I'm Leaving the Democratic Party - LRC Blog LewRockwell.com [LINK]

2022-10-12

アサンジの妻、夫の宿敵をノックアウト

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2022年10月6日)

内部告発サイト「ウィキリークス」創設者ジュリアン・アサンジの妻、ステラ・アサンジはテレビ番組で、夫を迫害する者の一人をみごとにノックアウトした。見終わった後、一服したい気分だ。

英ジャーナリスト、ピアス・モーガンの番組に出演したステラ・アサンジは、夫の迫害が世界で報道の自由に及ぼす脅威と、投獄が夫に与えた深い苦痛を説明した。迫害されたジャーナリストの家族が基本的人権を訴えることに対し、どうバランスを取ろうとしたのか、奇妙にもモーガンはジョン・ボルトン(元米国連大使)を招いた。ボルトンはアサンジが米国の逮捕状で投獄された際、トランプ米大統領(当時)の国家安全保障顧問だった人物である。まるで性犯罪被害者を出演させる番組で、バランスを取るため(少女斡旋の罪に問われた)ギレーヌ・マックスウェルを招いたようなものだ。

モーガンがコーナーを紹介し、ステラ・アサンジが夫の窮状を説明した後、ボルトンは、真実を語ったジャーナリストの迫害が、なぜ実際には善で正しいのか説明する場を与えられた。ボルトンは、ジュリアン・アサンジはジャーナリストではなく、米国の戦争犯罪を暴いたことで世界中の人々を危険にさらしたという、中傷屋のお決まりの論法を踏襲。スパイ活動法違反で有罪となった場合にジュリアン・アサンジが受ける恐れのある禁固175年の判決は不適切であり、「彼がしたことからすれば少なくとも176年の刑を受ける」よう願っていると付け加えた。

ステラは、血に飢えたボルトンに面と向かって、戦争犯罪人と呼ぶことで応えた。

「もちろん、ボルトン大使はジュリアンの思想上の宿敵のようなものです」とステラ・アサンジは冷静に答えた。「ボルトン大使はブッシュ、トランプ政権時代、国際法制度を弱体化させ、米国が国際刑事裁判所の管轄下に入らないようにしました。もしボルトン氏が国際刑事裁判所の管轄下にあれば実際、訴追されるかもしれません。ボルトン氏はイラク戦争の主要な応援団の一人でしたし、ジュリアンはリークによって(イラク戦争の)事実を暴露しました。だから、ボルトン氏はここで利益相反を抱えることになります」

「そんな馬鹿な!」。ボルトンは、この非難にひきつった笑いで答えた。「私にも言い分がある。話しましょうよ。アサンジの奥さんが恐れているのは、米国に連行され、アサンジが裁判にかけられることだと思うのです。アサンジが無実なら、少なくとも有罪でないという合理的な疑いを示すことができれば、釈放されるでしょう。奥さんは何を心配しているのでしょう?」

モーガンが、その心配は公正な裁判が受けられるかどうかだろうと口を挟むと、ボルトンは、ステラ自身に、夫が米国で公正な裁判を受けられるとは思えないと言わせろと要求した。

「ジュリアン・アサンジが米国で公正な裁判を受けられないと、彼女に言わせればいいのです」とボルトンは答えた。

「夫は公正な裁判を受けられません。なぜならスパイ活動法で起訴され、公益に基づく弁護ができないからです」とステラ・アサンジは答えた。「まさにスパイ活動法の下では、『公益のためにこの情報を公開した』と言うことができないのです。この法律で出版人が起訴されたのは初めてのことで、米国の憲法学者たちは過去五十年間、このようなことが起こりうると警告してきました。ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは、この起訴は憲法修正第1条(報道の自由)の核心を直撃すると言っています」

ボルトンは根拠もなく、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストは間違っていて、アサンジ事件に対する両紙の立場は「危険」だと答え、アサンジは 「安全な情報に侵入するハッカー」だとたわ言をがなり立てた。

「米国でさえもそんな主張はしていません」と、ステラ・アサンジはまったく正しく答えた。

これが見たかった。この本物の戦争犯罪人が主流のニュース局に何度も招かれ、アメリカ帝国の日々関わる紛争で軍事侵略の拡大に支持を鼓舞し、しかもその正体を暴かれることがないのは、じつに腹立たしい。誰かが主流のテレビで堂々と、この男が戦争犯罪人で、責任を追及されたり、犯罪を暴露されたりしたがっていないと口にするとは、この怪物が長年活動するのを見てきた者にとって、溜飲の下がる思いだ。

(次より抄訳)
Watch Stella Assange Slap The Mustache Off John Bolton's War Criminal Face [LINK]

すべてを機密解除せよ!

麗澤大学准教授、ジェイソン・モーガン
(2022年9月19日)

「カネの動きを追え」。これは国家に不信感を持つ人々の間でよく使われる合言葉だ。政治家や政府機関が本当に何をしようとしているのかを知りたければ、政府関係者の主張に耳を傾けるのをやめ、誰が政府関係者にカネを払って発言させているのかに注目するというのが、健全な常識だ。

しかし、カネを追うには限界がある。一つには、カネはしばしば回りまわって有権者のポケットに入るからである。有権者は汚職を嫌うが、自分が利益を得る場合は別なのだ。

もう一つの限界は、国家がカネの供給を支配していることだ。自由主義者(リバタリアン)にとって、カネの動きを追うことは、少なくとも国家の規模を縮小することにつながるはずだし、私もできれば国家を完全になくしたい。しかし、国家は通貨偽造を独占している。

だから、いくらカネを追いかけても、国家権力の二つの心臓のどちらかにたどり着くことはない。ただひたすらカネの後を追い続け、国家権力の腐敗のもう一つの原動力にたどり着くことはできない。

今こそ、自由主義者が国家権力のもう一つの心臓である「情報」に焦点を移す好機だ。米連邦政府と、連邦政府が平気で法律を破ることを可能にするためだけに存在する「法執行」機関は、少なくともカネと同じくらい、情報に依存している。

8月上旬、トランプ前大統領のフロリダ州の私邸に連邦捜査局(FBI)が踏み込んだのは、現金ではなく、書類を探すためだった。トランプは大統領としてその書類の機密指定を解除する権限があり、規則に従い解除したと主張している。しかしFBI内部の情報筋によれば、FBIがその書類を欲しがった本当の理由は、機密文書だからではなく、FBIがトランプに行った「クロスファイア・ハリケーン作戦」(ロシア疑惑捜査)の秘密が明らかになるからだという。

カネを盗むことは、政府の日常業務だ。政治家が税金で市民からカネを盗み、賄賂やリベートでまた盗むという日常業務に対し、FBIは家宅捜索をしない。家宅捜索をするのは、誰かがFBIにとって危険な情報を持っているときだ。自由を奪う国家の真の活力源は、カネではなく情報なのだ。

したがって、次期大統領が就任初日にしなければならないことは明らかである。機密をすべて解除するのだ。すべての連邦文書の機密を例外なく解除し、すべての省庁の資料を米国民に開放するのである。機密扱いを解除することで、国家による情報の独占を終わらせることができる。事実上、国家を終わらせることになる。ここがポイントだ。次の大統領は、最後の大統領になる覚悟をしなければならない。

私たちは、人間の自由と国家の専制のどちらを選ぶかという瀬戸際に立たされている。どちらかが倒れなければならないが、私は国家の専制に倒れてもらいたい。国家を終わらせる唯一の平和な方法は、国家が国民を恐怖に陥れ、服従させるための糧となる、あらゆる機密を解除することだ。

「しかし機密指定をすべて解除すると、海外での政府活動が危うくなる!」と国家擁護派は叫ぶだろう。望むところだ。「軍事任務が危うくなる!」。それも望むところだ。中央情報局(CIA)、軍、FBIといった組織は、単に政府が米国民を専制支配することを可能にするだけである。「しかし機密解除は中国、ロシア、イラン、その他外国勢力を助けるだけだ!」。 最近確認したところでは、私の財産を盗み、同胞の米国人をテロリストに仕立てるためにナチスまがいの秘密警察を送り込んだのは、米政府だった。だから今、イラン、中国、ロシアのことを特段心配していない。

専制政治はカネを求める。つまり、米国人から盗んだカネを政治家やその取り巻き、支援者のポケットに入れる。しかしカネ以上に必要なのは、情報、秘密、大量のデータ、そのデータを見る特権である。「機密取扱資格」は、国家関係者が地位・階級を示すため身にまとう、衣服や王冠など装飾品の現代版だ。しかし私の機密取扱資格は、米国に生まれながらにして持つ権利である。国家と国民の関係を正す唯一の方法は、情報を本来あるべき場所に戻すことだ。

国家はカネを支配している。しかし情報を独占することはないし、できない。国家に情報の独占をやめさせれば、国家は終わる。

すべてを機密解除させよう。あとは成り行きに任せて。

(次より抄訳)
Declassify Everything! | Mises Wire [LINK]

ワクチン未接種者はスーパーヒーロー

米カトリック系「レムナント新聞」
(2022年10月8日)

フランスのクリスチャン・ブランション将軍は、実験的なコロナ「ワクチン」の接種を拒んだ市民を称える力強い書簡を発表し、欧州中に波紋を広げている。数年にわたる圧力キャンペーン、差別政策、社会からの排除、収入減、脅迫、他人の死の責任押しつけにもかかわらず、将軍は「未接種者」の強さ、勇気、リーダーシップに感謝した。(以下引用)

たとえ私が完全に接種を受けていたとしても、配偶者、両親、子供、友人、同僚、医師などからの最大の圧力に立ち向かった未接種の人たちを称賛する。

このような人格、勇気、批判能力を持った人たちは、間違いなく人間の最良の部分を体現している。

この人たちは年齢、学歴、国籍、意見を問わず、どこにでもいる。

特別な存在であり、光の軍隊がその隊列に望む兵士たちである。

すべての子供が持ちたいと望む親であり、すべての親が持ちたいと夢見る子供である。

社会の平均を超えた存在であり、あらゆる文化を築き、地平線を征服してきた民族の真髄である。

そばにいて、普通に見えるが、スーパーヒーローなのだ。

この人たちは、他の人ができないことをした。侮辱、差別、社会排除の暴風雨に耐える木であった。

この人たちがそうしたのは、自分が孤独だと思い、孤独と信じたからだった。

家族のクリスマスの食卓から外されたこの人たちは、これほど残酷なものを見たことがなかった。仕事を失い、進路を失い、お金を失った。しかし、気にしなかった。はかりしれない差別、非難、裏切り、屈辱を受けながら、それでも続けてきた。

このような配役が行われたのは、人類史上初めてのことだ。この地球という舞台で抵抗者は誰なのか、もうおわかりだろう。

それは女性の、男性の、老いた、若い、豊かな、貧しい、あらゆる人種・宗教の、ワクチン未接種者である。見えない方舟に選ばれた者、すべてが壊れたとき、崩れ去ったときに、唯一抵抗することができた人たちである。

あなたたちは想像を絶するテストに合格したのだ。そのテストには最もタフな海兵隊員や特殊部隊員、グリーンベレー、 宇宙飛行士、天才の多くも合格できなかっただろう。

あなたたちは史上最も偉大な人物で構成されている。平凡な人の中に生まれ、暗闇で輝く英雄だ。

(次を全訳)
The Remnant Newspaper - French General says Unvaccinated are "Superheroes" [LINK]

2022-10-11

ノーベル経済学賞、銀行救済にお墨付き

経済学者、マーク・ソーントン
(2022年10月11日)

ベン・バーナンキが、ダグラス・ダイヤモンド、フィリップ・ディビッグとともに、ノーベル経済学賞を受賞した。この三人は、経済の修正局面で、一般には長期にわたる貨幣注入の後、銀行を救済する必要性について幅広く執筆している。バーナンキは2007~09年に直近の銀行救済策を推し進めた際、米連邦準備理事会(FRB)議長だった。

バーナンキの研究は大恐慌に集中し、1930年代には株式市場の崩壊と米経済の深刻な調整に対し、銀行を救済する必要があったと主張している。ダイヤモンドとディビッグも、銀行の破綻が米経済に与える影響について執筆している。三人とも、銀行は短期で換金できる預金を受け入れる一方、長期の融資を行うため、取り付け騒ぎにもろいという考えに関心を抱いている。

バーナンキらの研究は、経済理論から見ると非常に疑わしいものであり、歴史や社会科学の観点から導き出されたものである。説明しようとしている状況全般、制度の役割、政府の介入の基本を軽視している。例えば、バーナンキの研究は、「状況」(経済危機)がそもそもなぜ起こったのか、政府は当初から何をしたのか、政府・連銀が介入を強め続ける以外に、今後どのように防ぐことができるのか、説明していない。

バーナンキらの研究は、銀行を救済する口実にすぎない。特権的な金融エリートの一員であれば、住宅バブルとそれに続く金融危機は、掛け値なしの僥倖だった。住宅と株式のバブルで大儲けし、バブル崩壊時には、ゼロ金利での借り入れ、資本注入、量的緩和、超過準備への利払いなど、銀行はいくつかの救済と特別優遇を受けたのである。

もちろん最も重要なのは、FRBの責任者であり、経済危機の際にFRBが銀行を救済するやり方について手本を示し、論文を書いた人物がいたことだ。他の人々がどんなにひどい目に遭っても、バーナンキに頼れば、他の人々がどんな犠牲を払おうと、銀行を救済することができるのだ。

大恐慌は米国史の中できわめて重要な出来事であり、経済理論や経済政策の面でも重要だ。バーナンキの著作は、政府の救済政策を金融政策から銀行救済へと方向転換させたという点で、きわめて重要である。

ミルトン・フリードマンの記念碑的著作は、FRBが1930年代初頭に通貨供給量の激減を許したのは、経済への資金注入を十分に行わなかったからだと論じている。これに対し(オーストリア学派の)ジョセフ・サレルノによれば、FRBは通貨供給量を増やし続けようと積極的に動いたものの、失敗したのである。バーナンキの研究によれば、1930年代初頭に銀行が多数破綻し、銀行経営への良くない見通し(および多くの銀行の破綻)のせいで、通貨供給量を増やしたいというFRBの願望をうまく実現できなかったという。こうして銀行は「制度上、重要」になった。

経済思想の主要学派にはそれぞれ大恐慌の物語があり、フリードマンとバーナンキはマネタリストを代表する。

オーストリア学派には独自のマクロ経済学的な研究方法があり、それは大恐慌の場合に鮮明だ。ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは恐慌が起こる前にその到来を察知し、原因について記した。当時、アーヴィング・フィッシャーは米国を代表する経済学者だったが、ミーゼスは、FRBが貨幣価値の安定を管理するというフィッシャーの考えが恐慌の原因だと示したのである。

バーナンキらは救済政策を推奨・支持する点では頼りになるが、オーストリア学派はより良い完全な理解を求め、銀行救済がそもそも有効かどうかに疑問を投げかける。大恐慌の原因は、1920年代のFRBのインフレ金融政策にある。1930年代に政府の役割を拡大したフーバー、ルーズベルト両大統領のニューディール政策は、恐慌の影響を防ぎも軽くもせず、恐慌を大恐慌にしてしまったのである。

バーナンキ、ダイヤモンド、ディビッグが固執し、銀行家なら誰でも説明できる根本の問題に対処するには、政府の規制、統制、救済の巨大な寄せ集めではなく、中央銀行なしで運営される通貨と銀行から成る、健全な金融体制があればいいのだ。

(次より抄訳)
Ben Bernanke's Nobel Prize: The Committee Rewards an Arsonist for Claiming to Fight the Fire He Started | Mises Wire [LINK]

今こそバイデンに言おう、「核戦争をやめろ!」

元米連邦下院議員、ロン・ポール
(2022年10月10日)

ニューヨーク・タイムズは先週、ロシアの著名な哲学者(アレクサンドル・ドゥーギン)の娘ダリア・ドゥギナが8月に殺害された事件について、米国の情報機関が責任はウクライナ政府にあると信じているという、ショッキングな記事を掲載した。

ウクライナは戦争好きなロシアの侵略に対し、共通の価値観のために力強く立ち上がる西側民主主義のモデルであるという、既成の物語が損なわれるのは間違いない。ウクライナ政府は、ロシア国内の罪のない一般市民に対しアルカイダのような攻撃を行ったのだから。ドゥギナの殺害はまさに、「政治目標の追求のため、とくに民間人に対し暴力を行使したり、暴力を使うと脅したりすること」という、テロの教科書的な定義そのものだ。

ちょうど一カ月後、ノルドストリームのパイプラインが爆破され、ドイツが主要なエネルギー供給国(ロシア)と仲直りして経済を救う方法を見つける可能性は、少なくとも短期では終わったように思われた。ポーランドの有力政治家は、米国がこの仕事をやってくれたことに感謝している。

そして週末には、ロシア本土とクリミアを結ぶ橋が爆撃され、少なくとも六人の民間人が死亡し、橋の一部が水没した。交通は攻撃の数時間後に復旧したが、ロシアのプーチン大統領はウクライナの諜報機関に責任があるとした。ウクライナが米国という主人に頼っているのは周知の事実だから、橋を狙うことを可能にする情報は米国が提供したと想定できる。

ここにパターンがある。ますます大胆な攻撃がロシアに対して行われ、米政府は米国の指紋を隠すためにほとんど何もしていない。なぜか。

バイデン米政権はウクライナの件で核戦争に近づいているようで、バイデン大統領自身もそれを知っているようである。先週バイデンは、プーチンが「戦術核兵器や生物・化学兵器を使用する可能性について話すとき、冗談を言っているのではない」と語った。「キューバ・ミサイル危機以来初めて、事態がこのまま推移すれば核兵器が使用されるという脅しを直接受けている」と述べた。

そこで疑問なのは、もしバイデンが、ロシアとの代理戦争によって核兵器による人類全滅という想像を絶する事態に近づいていると知っているなら、なぜバイデン政権は越えてはならない一線を次々と越えていくのか、ということだ。バイデンの「専門家」たちは、プーチンはハッタリをかましているだけで、ドゥギナ暗殺、ノルドストリーム破壊工作、クリミア橋攻撃に対し何もしないと考えているようである。

しかし、もしそれが間違っていたらどうなるだろう。

通常、外交政策は費用対効果で考えるべきものだ。ある政策の採用が、米国にリスク以上の利益をもたらすかどうか。ウクライナの件では、プラス面は何もない。米国の安全と繁栄がロシアの政権交代によって受ける利益は、核戦争が勃発した場合の苦しみよりも大きいだろうか。

そう難しい判断ではないだろう。答えはノーだ。

では、何が起こっているのだろうか。なぜ米政権は、議会の共和党議員大半の支持を得て、何百億ドルもの軍事援助を送り続け、米国とまったく関係のない紛争をめぐって核戦争へと向かわせるのだろうか。

この戦争への米国の参加を終わらせるべき時が、昨日来たのだ。何百万人もの米国人が街頭で平和的に抗議し、自分たちの代表がこの狂気の沙汰を止めるよう要求することが必要なら、それを実行に移せばいいのだ。明日では遅すぎるかもしれない。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : It’s Time To Tell Biden We Say ‘NO!’ To Nuclear War! [LINK]

2022-10-10

欧州の寒い冬、高い燃料価格

環球時報記者、ヤン・シェン
同、リウ・カイユ
(2022年10月9日)

欧州諸国は厳しい冬を迎える準備をしている。専門家によれば、ロシア・ウクライナ危機の深刻化やノルドストリーム・パイプラインの爆発事故で、エネルギー危機の悪化が予想される。米国はエネルギー価格の高騰を利用して欧州経済を弱体化させ、製造業を欧州大陸から追い出そうとしている。欧州連合(EU)の首脳たちは欧米関係の将来について慎重に検討する必要があり、EUは連帯と独立した政策決定を維持してこそ、欧州大陸の持続可能な平和と発展を確保することができるという。

中国のアナリストによれば、一部のEU諸国、とくに経済主要国が米国から極端に高い価格でエネルギーを購入するのは、地政学的な危機によって強いられた状況である。市場原理に従った通常のビジネス取引ではなく、持続不可能だ。将来、EU諸国は米国と過度に緊密につながるより、エネルギー依存を他国に分散する努力を払うだろうという。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は10月6日、欧州諸国はアジア経済圏と協力し、米国とノルウェーがガスの価格販売を引き下げ、強い友好関係を示すよう求めるべきだと述べた。マクロンは同日パリで開かれた企業家会議で、ロシアを制裁する国々は「自由の戦士」として団結しているものの、化石燃料の生産や消費をめぐっては分裂しているという。

「偉大な友情の精神で、我々は米国やノルウェーの友人に言うだろう。あなたはすばらしい、私たちにエネルギーとガスを供給してくれている。しかし、あまり長く続けられないのは、あなたの産業に4倍の販売価格を支払うことだ」。マクロンは言った。「それは必ずしも友情を意味しない」

フランスは、とくに主要七カ国(G7)にこの問題を提起するつもりだという。マクロン大統領は、今は本当のガス市場が存在しないと述べ、主要国はこれを「理にかなった」価格帯に戻すよう努力すべきだと付け加えた。

中国人民大学国際問題研究所の王義偉所長が10月9日、環球時報(グローバル・タイムズ)に語ったところによれば、エネルギー価格の高騰は間違いなく西側諸国を分裂させるだろう。なぜなら、米国のエネルギー企業が「戦争を利用して金持ちに」なろうとしているのはきわめて明白であり、価格高騰は製造業のコストを上げ、EU経済に直接打撃を与えるからだ。

「今後ウクライナ危機の悪化に伴い、製造業が欧州を脱出してアジアや米国に移っていき、欧州経済は空洞化する。今は政府の補助金で庶民の日常生活に大きな変化はないが、長期では多額の借金と国力の低下が、欧州大陸の人々の生活に影響を及ぼすだろう」。王はこう指摘した。

今のところ、EUがこの危機を止めるためにできることはあまりない。EUのエリートたちも、ロシア・ウクライナ危機を利用し、経済で最大の競争相手であるEUを弱体化させる米国の戦略をはっきり理解している、とアナリストは指摘する。EUは内部分裂のせいで、一丸となり強力で強固なパワーとして危機に対処することができないという。

エネルギー危機は現在、ますます多くのEU主要国に影響を及ぼしている。イタリアではこの冬、セントラルヒーティングが制限される。ウクライナ危機に端を発した欧州のガス供給不足に対処する最新の国となる。報道によると、政府の新しい法令により、イタリアの建物ではセントラルヒーティングを使用できない期間が15日間延長されることになった。

ロイター通信の報道によると、(エネルギー危機対策の)提案にはガス価格に上限を設けることが含まれており、EU諸国の大多数が支持しているが、デンマーク、ドイツ、オランダは、経済に必要なガスの購入が困難になるうえ、消費を抑える意欲が失われると懸念し、反対しているという。

スペインのテレサ・リベラ・エネルギー相はロイターの取材に対し、ガス上限規制の反対派は、欧州が「災害」に直面していることを受け入れる必要があると述べた。

中国国際問題研究所欧州研究部の崔鴻健部長が10月9日、環球時報に述べたところによると、EUはすでに危機の代償を払っている。なぜなら、厳しい地政学的問題を前に、独自に問題を解決する能力がなく、米国に頼らざるをえないからだ。EUは経済上の損失を払うべき代償とみるかもしれないという。

「しかしEUはその代償をできるだけ抑えたい。EU主要国はロシアを信用していないが、米国も信用していない。トランプ大統領の退任後はとくにそうだ。EUは米国が欧州との関係を現実的に処理することに気づいているし、米国は覇権が低下しているから、ますます信頼できなくなりつつある。このため、EUはアフリカや中東にエネルギー供給元を分散しようとしている」。崔はこう指摘する。

アナリストによれば、欧州市場の需要と中国の生産能力を考慮すると、欧州と中国は新エネルギー分野で協力の可能性が大きい。だがEUは加盟国によってそうした協力を模索する動機は異なるし、対中関係を扱う姿勢も異なる。EUは他の覇権国の影響を受けず、独立した政策決定と連帯を保つことが重要である。

(次より抄訳)
EU complains high energy bills, to endure cold winter - Global Times [LINK]

広島・長崎・ウクライナ

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年10月4日)

多くの人が気づき始めているように、考えたくもないことだが、米国とロシアは核戦争に危険なほど近づいている。ロシアのプーチン大統領は、「持てるすべての力と手段」を使ってロシアの領土を防衛すると公言した。バイデン米大統領は、ロシアが核兵器の使用に頼れば「破滅的な結果」を招くと反論している。

プーチンが正しく指摘するように、戦時の核兵器使用の前例をつくったのは米国政府である。それはもちろん、第二次世界大戦で米国が日本の広島と長崎に投下した原爆である。

この両都市を核爆弾で攻撃する正当性について、米政府関係者が挙げている理由を確認してみよう。

米政府高官とそれを支持する主要報道機関の多くは、米政府が広島・長崎を核攻撃したのは正当であり、なぜなら戦争を短くできたからだと長い間主張してきた。その過程で、もし日本への侵攻が必要になっていたら命を落としていただろう何千人もの米国人兵士を、原爆投下が救ったという。

しかし、これは広島・長崎への原爆投下に対する法的・道徳的な弁明としては無効である。結局のところ、戦時中に兵士が民間人を標的にするのは戦争犯罪なのである。米国はまさに、この両都市への原爆投下でそれを行った。例えば、ウィリアム・カリー中尉がベトナム(戦争中のソンミ村虐殺事件)で無実の市民を殺したことと、米当局者が広島・長崎の住民にしたことの間には何の違いもない。

兵士が戦争で死ぬ。それが戦争の本質だ。侵略で死ぬ兵士を救う方法として、女性や子ども、高齢者、その他の民間人を標的にすることは、まったく違法である。

重要なのは、今日に至るまで米政府高官とその信奉者である主要メディアが、広島・長崎への原爆投下を、戦争を短くし、その過程で米兵の命を救ったという、この特別な弁明に基づいて弁護し続けていることである。

そう考えると、バイデンはどうして、もしロシアがウクライナとの戦争で核兵器を使用したら「破滅的な結果」をもたらすと、ロシアを脅すことができるのだろうか。もしロシアが戦争を短縮するために核兵器を使用し、それによってロシア兵の命を救うと言ったらどうか。言い換えれば、米国が日本での核兵器使用に対して使った(そして今も使い続けている)のとまったく同じ弁明を、ロシアが戦時中の核兵器使用に対して使ったらどうか。バイデンは何と言うのだろう。米国は使ってよいが、ロシアはダメだとでも言うのだろうか。

実際、ロシアが米国と異なり、核兵器の使用を罪のない民間人ではなく、敵軍に限定したらどうだろうか。そのときバイデンは何と言うのか。米国には罪のない民間人を含む誰に対しても核兵器を使用する権限があるが、ロシアには敵軍に対して核兵器を使用する正当な権限がないと言うのだろうか。

第二次世界大戦でトルーマン大統領が犯した戦争犯罪が、約七十五年後に米国を苦しめることになろうとは、誰が想像しただろう。今さら何の役にも立たないかもしれないが、現時点でバイデンができる最善のことは、広島・長崎への原爆投下が事実上、戦争犯罪であったことを率直に認め、真摯で悔恨に満ちた謝罪をすることだろう。

冷戦時代の老いた恐竜である北大西洋条約機構(NATO)を利用してロシアのウクライナ侵攻を誘発した米国防総省は、たとえ誤算や事故であっても、米露を核戦争に危険なほど近づけた責任を負っている。広島・長崎における米国の戦争犯罪を謝罪することに加え、バイデン大統領が現時点でできる最善のことは、ウクライナへの武器その他の支援をただちに中止し、NATOから脱退し、海外に駐留する米軍兵士を全員帰還させて兵役を解き、東・西欧をはじめすべての海外基地を放棄することだろう。

言い換えれば、米政府は世界に構うなということだ。米国と世界を核兵器によるホロコーストの危険にさらすなど、すでに十分な損害を与えているのだから。

(次を全訳)
Hiroshima, Nagasaki, and Ukraine – The Future of Freedom Foundation [LINK]