注目の投稿

「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2025-12-31

社会主義と経済的自由

この記事は、1958年にミーゼスがブエノスアイレスで行った講演に基づいたもので、自由市場経済(経済的自由)の本質と、それが失われた際の影響を鋭く説いています。主なポイントは以下の通りです。

1. 経済的自由の本質

ミーゼスにとって、「経済的自由」とは、個人が社会の中でどのように貢献し、生きていくかを「自ら選択できる」状態を指します。

  • 経済的自由は、言論の自由や信教の自由といった他の自由から切り離せるものではありません。

  • 市場がなく、政府がすべてを決定する社会では、たとえ憲法で保証されていても、あらゆる自由は「幻想」となります。例えば、政府が印刷機をすべて所有していれば、政府に批判的な意見を出版することは事実上不可能になります。

2. 消費者が「真のボス」である

市場経済において、企業家や資本家が支配者であるというのは「誤解」であるとミーゼスは指摘します。

  • 消費者の主権: 市場における真のボスは消費者です。消費者が買わなければ、どんな大企業もその地位を失います。

  • 雇用主が従業員に命令を下すのは、背後で消費者が雇用主に(購買行動を通じて)命令を下しているからです。市場とは、人々が互いに奉仕し合う協力のプロセスです。

3. 社会主義の不可能性(経済計算の欠如)

社会主義体制下では、個人の職業や住居は政府の命令(計画)によって決定されます。

  • 社会主義の根本的な問題は、市場価格が存在しないため、何を作るのが最も効率的かを判断する「経済計算」ができないことです。

  • ソ連の事例(当時の文脈)については、西側の市場価格を参考にしていたに過ぎず、純粋な社会主義モデルが成功した証明にはならないと批判しています。

4. 「間違える自由」こそが自由

自由とは、他人が見て「愚か」だと思うような選択をする権利も含みます。

  • 政府が「国民の健康のため」に飲酒や喫煙を規制し始めると、その論理は容易に「精神の健康のため」に悪い本や思想を規制することへ拡大します。

  • ミーゼスは、他人の生活様式を警察の力で変えさせるのではなく、言論や説得によって変えようとするのが自由な社会のあり方だと説いています。

5. 結論:自由か奴隷か

社会主義と市場経済の違いは、結局のところ「個人が自分の人生を選択できるか(自由)」か、「上司の命令に従うしかないか(奴隷)」かの違いに集約されます。

経済的自由を失うことは、人間としての尊厳と他のすべての市民的自由を失うことと同義である、というのがミーゼスの強いメッセージです。

(Geminiを利用)
Socialism vs. Economic Freedom | Mises Institute [LINK]

2025-12-30

賃金・失業・インフレ

この記事でミーゼスは、賃金、失業、インフレの相互関係をオーストリア学派の視点から分析し、現代の経済政策が抱える誤解を鋭く指摘しています。主な論点は以下の通りです。

1. 賃金を決定するのは消費者である

ミーゼスによれば、賃金の最終的な支払者は雇用主ではなく「消費者」です。雇用主は消費者の代理人に過ぎず、消費者が製品に対して支払う意志のある金額を超えて賃金を支払うことはできません。もし無理に高い賃金を支払えば、企業は破産してしまいます。

2. 賃金上昇の真の要因は「資本の蓄積」

賃金が上がる唯一の道は、労働者一人あたりの「投資資本量」を増やすことです。

  • より良い道具や機械(資本財)があれば、労働者の生産性が向上します。

  • 生産性が向上して初めて、実質的な賃金が上昇します。

  • 労働組合や法律が賃金を上げているという通説は「幻想」であり、資本蓄積を妨げる政策は逆に労働者を貧しくすると主張しています。

3. 失業の原因は「市場価格を超えた賃金設定」

自由な労働市場では、働きたい人が全員職を得られる「均衡賃金」に向かう傾向があります。

  • 失業が発生する理由: 労働組合の圧力や政府の介入によって、市場価格(生産性に見合った価格)よりも高い水準に賃金が据え置かれるためです。

  • 無理に引き上げられた賃金の下では、雇用主は全員を雇うことができず、結果として恒久的な失業が生じます。

4. インフレは失業を隠すための「姑息な手段」

政府は、賃金が高すぎて発生した失業を解消するために、信用拡大(インフレ政策)を行います。

  • 通貨供給量を増やして物価を上げることで、労働者の「実質賃金」をこっそり引き下げ、雇用を維持しようとします。

  • しかし、労働組合が物価上昇に合わせてさらなる賃上げを要求するため、際限のないインフレの連鎖(賃金・物価スパイラル)に陥ります。

5. 結論:インフレは解決策ではない

ミーゼスは、インフレは永続的な解決策にはならず、最終的には通貨制度の崩壊を招くと警告しています。

  • 購買力理論の否定: 「労働者の手元に金を増やせば景気が良くなる」という主張は、単に通貨価値を下げて物価を上げるだけのペテンであると断じています。

  • 真の繁栄には、インフレをやめ、健全な通貨制度に戻り、資本の蓄積を促進する(貯蓄と投資を奨励する)しかないと結論づけています。


まとめ:

ミーゼスは、「賃金の引き上げは資本投資による生産性向上によってのみ達成されるべきであり、労働組合や政府が人為的に賃金を吊り上げれば失業が生じ、その失業をインフレで解決しようとすれば経済破綻を招く」と警告しています。

(Geminiを利用)
Wages, Unemployment, and Inflation | Mises Institute [LINK]

2025-12-29

エラスムス、平和の訴え

14世紀から16世紀にかけての西ヨーロッパでは新しい文化創造の動き、ルネサンスが展開した。その基調は、人間の理性や感情を重視するヒューマニズム(人文主義)つまり人間中心主義といわれ、この立場に立つ知識人をヒューマニスト(人文主義者)と呼んだ。なかでも「人文主義者の王者」と称えられるのが、デジデリウス・エラスムスである。



エラスムスは1469年頃、オランダのロッテルダムに生まれた。若くして修道院に入ったが、のちパリ大学に学び、多くの古典時代の著作を校訂刊行したほか、史上初めてギリシア語原典による新約聖書を刊行して、宗教改革の道を開いた。教会と聖職者の腐敗・堕落に鋭い批判を浴びせたが、その一方で注目すべきは、一貫して戦争を批判し、平和を説いたことだ。

当時はペストの流行に加え、戦乱が多くの死者をもたらし、社会は危機的な様相を呈していた。こうした時代を背景に、エラスムスの平和思想はその著作全体に貫かれている。

その名を広めた『格言集』の増補新版では、「戦争は体験しない者にこそ快し」という格言を題材として、「戦争以上に残忍で、人に惨禍をもたらし、世にいぎたなくもはびこり、剣呑至極、極悪非道の営みは、つまりキリスト教徒はもとより、誰であれ人間には似つかわしくない行いは、ほかに何ひとつとして存在しない」(二宮敬訳)と激しく戦争を非難する。

この文章からうかがえるように、エラスムスは人間中心主義のヒューマニストだからといって、キリスト教を否定しているわけではない。むしろキリスト教の道徳を踏まえ、それに反する行為として戦争を批判するとともに、戦争を肯定する聖職者を糾弾しているのである。口に神の愛を唱えるキリスト教徒が、神の御名のもとに血を流すのを容認していることが、よほど腹に据えかねたようだ。

代表作とされる『痴愚神礼讃』でも、歯に衣着せぬ戦争批判が展開される。この時代の歴代カトリック教皇たち(アレクサンデル6世、ユリウス2世、レオ10世、クレメンス7世、パウルス3世)は、俗人君主と変わらず、聖務を放棄して教皇軍を動かし、教皇領の拡大を狙ったり、イタリアの覇権をめぐる諸国の戦争に加担したりして、戦争に明け暮れていた。

それを念頭にエラスムスは、「痴愚女神」に語らせるという形式で、新約聖書の「マタイによる福音書」には「わたしたちは何もかも捨ててあなた(イエス)に従って参りました」とあるにもかかわらず、教皇たちは土地、町、租税、賦課金、王国などを護るために「剣と火をもって戦い、多くのキリスト教徒の血を流させて」(沓掛良彦訳)いると批判する。さらに戦争とは「キリストの教えとはなんのかかわりもないことでありますのに、教皇方は、なにもかも放擲してひたすら戦争に邁進している始末です」とあらためて教皇たちを非難する。当時最強の有力者といえるカトリック教皇に対し、厳しい批判を展開したエラスムスの大胆さは目を見張らせる。

しかし何といっても、戦争と平和に関するエラスムスの考えを余す所なく展開した著作は、『平和の訴え』である。エラスムスはここでも「平和の神」の口を借りて、キリストの生涯や言葉が教えているのは「人間相互の平和と愛」以外にないと主張する。それにもかかわらず、最近だけでも「いったい、どの川が、どの海原が、人間の血で染められなかったといえるでしょう?」と問いかける。そのうえで、「キリスト教を奉じる君主たちが、どんな恥ずべき理由、どんな馬鹿げた理由によって、この世界を合戦に駆り立てているかを思うと、恥ずかしくて顔を赤らめずにはいられません」(箕輪三郎訳)と糾弾する。

エラスムスは戦争が起こる原因を分析し、①王位継承の争い②君主同士の私的な闘争③盲目的な愛国感情④暴君が自己の権力を保ち続けるため——と列挙する。さらに、戦争によってのみ繁栄する人々があることを指摘し、また神の名において戦争を企てる者があるとも指摘する。西洋美術史が専門で西洋の文学・精神史についての造詣も深い高階秀爾氏は「このエラスムスの分析は、多くの点で、今日にも十分通用するものがあると言えるだろう」とコメントしている。

著作の締めくくりで、「平和の神」は「私は訴えます」という言葉を繰り返して、君主、司祭、神学者、その他あらゆる人々に対し、戦争に反対し、平和をもたらすよう訴える。これはエラスムス自身の、切なる「平和の訴え」だといえる。

エラスムスは聖書研究やカトリック批判によって、マルティン・ルターによる宗教改革の開始に影響を与えた。「エラスムスの生んだ卵をルターがかえした」といわれる。しかし教皇による免罪符の販売を念頭に、善行による救いを完全に否定するルターに対し、エラスムスはその可能性はあると主張し、たもとを分つことになる。

1524年、西南ドイツの農民が、ルターの教えに触発されて大規模な反乱を起こした。ドイツ農民戦争と呼ばれる。最初ルターは農民に同情を示したが、反乱が激化すると態度を硬化させ、諸侯に鎮圧を求めた。およそ10万人の農民が処刑された。エラスムスは、「諸侯は残酷以外に救済策を知らない 」と抗議した。

戦争に対して寛容を説いたエラスムスの主張は、空しいものだったかもしれない。しかし、暴力に暴力で応じても解決策にはならないのは、今も昔も変わらない真実である。平和を取り戻すには結局のところ、エラスムスが信じたように、寛容によるしかない。

オランダの歴史家ホイジンガは、エラスムスを近代精神の先駆者と評し、「道徳的教育と一般的寛容が人間を更に幸福になしうるという理想を信ずる限り、人間がエラスムスに負うところは多いのである」(宮﨑信彦訳)と述べている。

エラスムスは党派の争いから距離を置いたために、カトリックからもルター派(プロテスタント)からも非難され、孤独を味わった。病にも苦しんだ。しかし一方で、自分が著作を通じて世界に及ぼした影響に満足を感じてもいた。晩年、「世界のあらゆるところから、毎日多くの人がわたくしに感謝を送ってくる」と書き残している。1536年、スイスのバーゼルで世を去ったエラスムスの最後の言葉は、「愛する神よ」というオランダ語の一句だったという。

<参考資料>

2025-12-28

木村貴の経済チャンネル(2025年下半期、更新中)

  1. 誰も知らないアメリカファースト 戦争への歯止めのはずが…(2025/07/01
  2. 財政危機は株投資のチャンス! インフラ整備、「官から民へ」加速(2025/07/03
  3. 元祖返り咲き、最後の正統派大統領 クリーブランド、小さな政府と平和貫く​(2025/07/05
  4. 中央銀行と政府のプロレス インフレを止められない本当の理由(2025/07/08
  5. ピラミッドと重税国家 古代エジプトの庶民の暮らしはどうだったのか?(2025/07/10
  6. 産業政策が産業をつぶす 高度成長の真実とは?(2025/07/12
  7. 大軍拡!米経済の自滅 借金・バラマキで失われるドルの価値(2025/07/15
  8. 温暖化の贈り物、縄文文化 寒冷化こそ人類の脅威!(2025/07/17
  9. 独禁法の黒歴史 背後に競合会社の「陰謀」も!(2025/07/19
  10. 米国を襲ったハイパーインフレ 独立戦争、戦費調達の悪しき前例(2025/07/22
  11. ポピュリズムは悪なのか? エリート層から恐れられる理由(2025/07/24
  12. フェニキア人、海の商人の栄光(2025/07/26
  13. 金本位制を捨てた世界の末路 第一次世界大戦の教訓(2025/07/29
  14. 弥生時代、戦争が始まった(2025/07/31
  15. 核兵器はなぜ悪か? リバタリアン理論で考える(2025/08/02
  16. 米中央銀行、誕生の秘密 なぜ「銀行」と名乗らないのか?(2025/08/05
  17. 卑弥呼の貿易立国(2025/08/07
  18. ペルシア帝国の叡智(2025/08/09
  19. ニクソン・ショックとは何だったのか? ドルが紙切れになった日(2025/08/12
  20. 渡来人が伝えた馬文化(2025/08/14
  21. パルテノン神殿の光と影(2025/08/16
  22. 蘇我氏の平和外交(2025/08/21
  23. ローマ帝国の小さな政府(2025/08/23
  24. 紙くずになった「軍票」 不換紙幣のリスク浮き彫りに(2025/08/26
  25. 「自由より安全」の落とし穴 「カラマーゾフの兄弟」が突きつける問い(2025/08/28
  26. 経済成長は闇市が育む 「愛の不時着」の北朝鮮と戦後日本の共通点(2025/08/30
  27. 株高の意味 経済の繁栄か? 衰退か?(2025/09/02
  28. 孔子の自由主義思想(2025/09/04
  29. 驕れる大国、経済戦争で自滅!(2025/09/09
  30. 孟子の戦争批判(2025/09/11
  31. 中央銀行と戦争、深い関係(2025/09/16
  32. 織田信長、マネーの原理に敗れたり(2025/09/18
  33. 豊臣秀吉の「大東亜戦争」(2025/09/20
  34. 日露戦争、「借金亡国」への道(2025/09/23
  35. 産業革命は地獄という嘘(2025/09/25
  36. 社会保障、保守政治家の大罪(2025/09/27
  37. 動画が電子書籍になりました!(2025/09/29
  38. 金が信頼される理由(2025/09/30
  39. 銀というグローバル通貨(2025/10/04
  40. デフレ政策が日本を救う!(2025/10/11
  41. アベノミクス再来なら日本沈没(2025/10/14
  42. 政治が戦争を止めるという嘘(2025/10/18
  43. ベネズエラ情勢緊迫 裏に石油利権?(2025/10/21
  44. 元祖アベノミクス、高橋是清を崇めるな(2025/10/23
  45. 金価格が大幅安 歴史的な下げ局面か、再上昇の始まりか(2025/10/27
  46. 大恐慌前夜、「株は暴落しない」と信じた教授の末路/日経平均は10万円まで行く?(2025/11/03
  47. 「脱ドル」で拡大、世界のゴールド需要/金や株を超える最強の「投資」とは?(2025/11/10
  48. 大恐慌を予言した男たち/経済危機で厳禁な行動10選!(2025/11/17
  49. 金銀価格を押し上げ、債務のブラックホール/堅実な米経営者は経済危機にこう備えている!(2025/11/24
  50. 「打ち出の小槌」は国を滅ぼす/人間関係は損得で割り切ればラク!(2025/12/01
  51. 今さら聞けない「金本位制」/危機下で必須、「目立たない」極意とは?(2025/12/08
  52. 政府はサンタだと信じる人たち/荘子に学ぶ自由な生き方(2025/12/15
  53. 元禄インフレを止めた男 今こそ新井白石に学べ/世の中を変えるには(2025/12/22
*ショート動画を除く。タイトルは変更する場合があります
YouTube

木村貴の経済の法則!(2025年)

  1. 「イカゲーム」が語る2025年経済のキモ 資本主義はゼロサムじゃない(2025/1/6*臨時解説
  2. 経済って何だろう? 自然に生まれる秩序の不思議(2025/1/10
  3. 個性は分業を生み、繁栄をもたらす アダム・スミスは何を見落としたか?(2025/1/17
  4. 超人ヒーローも取引で得をする 比較優位って何だろう?(2025/1/24
  5. 公共事業の見えないコストとは? トレードオフと機会費用で考える(2025/1/31
  6. お金を刷っても楽園はできない 希少性って何だろう?(2025/2/7
  7. ダイヤは水よりなぜ高い? 限界効用で考えよう(2025/2/14
  8. 幸せの指針、心のランキングとは? 満足度は「量」でなく「順序」に注目(2025/2/21
  9. 経済に「等価交換」は存在しない 価値が違うから、取引は生まれる(2025/2/28
  10. 金が再びお金になる日 価値保存の力、輝き増す(2025/3/7
  11. 政府が金を没収する日 大恐慌の米、「非常事態」口実に強行(2025/3/14
  12. フォートノックスに金はあるのか? 米金融最大のタブー、市場の波乱要因に(2025/3/21
  13. 米政府がデフォルトした日 黒歴史、なぜ「なかったこと」に?(2025/3/28
  14. トランプ関税、大恐慌の影 世界貿易、縮小のリスク(2025/4/4
  15. ドルの衰退、保護主義で加速 金の存在感、一段と(2025/4/11
  16. 財政破綻より怖いものとは? Nスペ「国債発行チーム」の正しい見方(2025/4/18
  17. 「双頭の怪物」スタグフレーション、日本が退治できない理由(2025/4/25
  18. 投資の神様、バフェット氏の「闇」 3つの残念な発言を読み解く(2025/5/9
  19. 一番怖い「マネー真理教」 インフレ頼みが経済を壊す(2025/5/16
  20. 金の力でドル復活? トランプ氏元顧問の大胆すぎる計画(2025/5/23
  21. 膨らむ政府、買われる金 日米、バラマキ政策止まらず(2025/5/30
  22. 誰も知らない「インフレ」の意味 マネー膨張が経済を壊す(2025/6/6
  23. GDPを信じるな 3つの欠点、経済の現実映さず(2025/6/13
  24. 国家が金を買う理由 本当は怖い?その狙いとは…(2025/6/20
  25. 誰も知らないアメリカファースト 戦争への歯止めのはずが…(2025/6/27
  26. 中央銀行と政府のプロレス インフレを止められない本当の理由(2025/7/4
  27. 大軍拡と米経済の自滅 借金・バラマキで失われるドルの価値(2025/7/11
  28. 米建国の苦い教訓、ハイパーインフレ 戦費調達の悪しき前例、今も色濃く(2025/7/18
  29. 金本位制を壊した野蛮な戦争 第一次世界大戦が変えたマネー、今も劣化続く(2025/7/25
  30. FRB誕生の秘密 なぜ中央銀行が「銀行」と名乗らないのか?(2025/8/1
  31. ニクソン・ショックとは何だったのか? ドルが紙切れになった日(2025/8/8
  32. 紙くずになった「軍票」 不換紙幣のリスク浮き彫りに(2025/8/22
  33. 株高の意味 経済の繁栄か? 衰退か?(2025/8/29
  34. 大国、経済戦争で自滅のリスク ナポレオンの失敗は語る(2025/9/5
  35. 中央銀行と戦争、深い関係 イングランド銀誕生の真相とは?(2025/9/12
  36. 日露戦争、夏目漱石が予言した「借金亡国」 国債頼みの政府膨張の末路とは?(2025/9/19
  37. 金が信頼される理由 中央銀行と不換紙幣に募る不信(2025/9/26
  38. 昭和恐慌、「金解禁」は正しかった 浜口雄幸・井上準之助のデフレ政策、国際競争力を回復(2025/10/3
  39. 高橋是清は英雄か? 元祖アベノミクス、金融緩和と財政出動に頼る危うさ(2025/10/17
  40. 金価格が大幅安 歴史的な下げ相場か、再上昇の始まりか 過去のケースと比較検証(2025/10/24
  41. 大恐慌前夜、「株は暴落しない」と信じた教授の末路 経済学者フィッシャーはなぜバブルを見抜けなかったのか?(2025/10/31
  42. 「脱ドル」で拡大、世界のゴールド需要 金価格の押し上げ要因に(2025/11/7
  43. 大恐慌を予言した経済学者たち 「オーストリア学派」はなぜ危機を察知できたのか?(2025/11/14
  44. 日米で拡大、債務のブラックホール 金銀価格を押し上げ(2025/11/21
  45. 「打ち出の小槌」は国を滅ぼす スペイン帝国とマネー膨張の教訓(2025/11/28
  46. 今さら聞けない「金本位制」 4つのメリット、政府肥大を止める切り札に(2025/12/5
  47. 政府はサンタだと信じる人たち 迫るツケの清算、長期金利2%接近の警告(2025/12/12
  48. 元禄インフレを止めた男 今こそ新井白石に学べ、マネー劣化に歯止め(2025/12/19
  49. 恐慌か、超インフレか 日本経済、迫られる究極の選択(2025/12/26

2025-12-27

私法社会という理念

この記事「The Idea of a Private Law Society: The Case of Karl Ludwig von Haller(私法社会という理念:カール・ルートヴィヒ・フォン・ハラーの事例)」について解説します。

ハンス=ヘルマン・ホッペ氏はこの記事で、19世紀のスイスの政治学者カール・ルートヴィヒ・フォン・ハラー(Karl Ludwig von Haller)を「忘れ去られた反国家主義の英雄」として再評価しています。ハラーは、現代の私たちが当然視している「国家」の概念を根底から覆す視点を持っていました。


1. 「社会契約」という虚構の否定

ハラーの主著『政治学の復興』において、彼はホッブズやルソーが唱えた「社会契約説」を真っ向から否定しました。「国民が合意して国家を作った」という物語は歴史的事実ではなく、国家を正当化するための「作り話」に過ぎないと考えたのです。

ハラーに言えば、人間関係の基本は「契約」ではなく、「事実としての力の差」と「私有財産」にあります。

2. 「私法社会(Patrimonial State)」の理念

ハラーが理想としたのは、国家を「公共の組織」としてではなく、「私的な財産関係の集積」として捉える社会です。

  • 君主は「地主」である: 王や君主は「国民の公僕」ではなく、広大な土地を持つ「筆頭地主(大所有者)」です。

  • 国民は「契約相手」である: 住民はその土地に住むために君主と契約を結んでいる「店借人」や「従業員」、「同盟者」に過ぎません。

  • 公共料金ではなくサービス料: 税金は「義務」ではなく、保護や土地利用に対する「対価(サービス料)」となります。

3. 現代国家との対比

ホッペ氏は、ハラーの視点を用いることで、現代の「公共国家」がいかに異常であるかを浮き彫りにしています。

比較項目現代の「公共」国家ハラーの「私法」社会
統治者の地位抽象的な「国家」の代理人(公僕)土地の具体的な所有者(地主)
法律の性質国家が一方的に作る「公法」合意に基づく「私法・契約」
税金拒否できない略奪(徴税)サービスや土地使用への対価
離脱の権利事実上困難(国籍離脱)契約終了による退去・移住
責任誰も責任を取らない「公共物」所有者が自身の財産価値を守る責任

4. なぜホッペはハラーを支持するのか

ホッペ氏がハラーを重視するのは、ハラーの「世襲国家・家産国家(パトリモニアル・ステート)」の概念が、現代のリバタリアンが目指す「無政府資本主義(私法社会)」に驚くほど近いからです。

国家を「神聖な公共物」というベールから剥ぎ取り、単なる「大きな私有地と、そこでの契約関係」として再定義することで、国家が持つ「法の独占権」を解体できると考えています。もし国家がただの地主であれば、他の地主との競争にさらされ、横暴な振る舞いはできなくなる(=国民が隣の土地へ逃げてしまうため)からです。


まとめ

この記事を通じて、ホッペ氏は「国家を『公共』のものと考えるのをやめ、すべてを『私的な契約』に戻せば、自由は回復される」というハラーの教訓を現代に投げかけています。

(Geminiを利用)
The Idea of a Private Law Society: The Case of Karl Ludwig von Haller | Mises Institute [LINK]

2025-12-26

私有財産権の倫理と経済学

この記事「The Ethics and Economics of Private Property(私有財産権の倫理と経済学)」は、ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)氏によるもので、彼の思想の根幹である「私有財産権」がいかにして倫理的に正当化され、経済的に不可欠であるかを論じています。

主要な論点は以下の通りです。


1. 財産権が必要な理由:希少性(Scarcity)

ホッペ氏は、もし資源が無限にある「エデンの園」のような世界であれば、財産権は不要だと説きます。しかし、現実世界では物や場所は希少(Scarcity)であり、同時に複数の人が同じものを使おうとすれば必ず衝突(Conflict)が起こります。

  • 財産権の目的は、衝突を避けるための「誰がその資源の正当な使用者か」というルールを定めることにあります。

2. 正当な取得ルール:先占(Original Appropriation)

どのようにして持ち主が決まるべきかについて、ホッペ氏は以下の「自然法」的なルールを提示します。

  • 自己所有権: 全ての人間は自分自身の身体の所有者である。

  • 先占(ホームステッディング): 誰の所有物でもなかった自然資源に、自らの労働を最初に投じた(加工した)人が、その資源の正当な所有者になる。

  • 合意による移転: 一度正当に取得された財産は、所有者の自発的な合意(契約)によってのみ他者へ移転できる。

3. 議論倫理学(Argumentation Ethics)による正当化

この記事(およびホッペ氏の代表的な功績)で最もユニークなのが、「議論倫理学」を用いた証明です。

  • 人が「何が正しいか」を議論する際、その人はすでに「自分の身体は自分のものであり、相手の身体は相手のものである」という前提を認めています。

  • もし誰かが「私有財産制は間違っている」と主張したとしても、その主張(議論)自体が「自分自身の身体や場所、言葉を所有している」という事実に基づいているため、自己矛盾(実演的矛盾)に陥ります。

  • したがって、私有財産権は否定不可能な倫理的基盤であると結論づけます。

4. 経済的効率:私有 vs 公有(社会主義)

ホッペ氏は倫理面だけでなく、経済的な観点からも私有財産制を擁護します。

所有形態経済的インセンティブ結果
私有財産将来の価値を維持・向上させる動機が働く。資本蓄積、長期的な投資、繁栄。
公有財産「今、使い切ったほうが得」という動機が働く。資源の枯渇、資本の食いつぶし、貧困。

5. 結論:国家は財産権の侵害主体である

ホッペ氏によれば、国家は「究極の仲裁者」を自称しながら、税金(略奪)や独占的な法解釈を通じて、他者の私有財産を組織的に侵害する存在です。真に倫理的で豊かな社会を実現するには、国家による干渉を排除し、純粋な私有財産制に基づく「私法社会」への回帰が必要であると結んでいます。


(Geminiを利用)
The Ethics and Economics of Private Property | Mises Institute [LINK]

2025-12-25

分権化と中立

この記事「Decentralized and Neutral(分権化と中立)」は、ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)氏によるものです。

この記事の主要な論点を要約します。


1. 中央集権化の危険性と「世界政府」への懸念

ホッペ氏は、国家を国民から略奪する「定住型強盗」と見なし、国家が領土を拡大し中央集権化を進めるのは、略奪(税金など)をより効率的に行い、国民が他国へ逃げ出すのを防ぐためであると説明します。最終的に「世界政府」が誕生すれば、人々はどこへも逃げることができなくなり、国家による搾取は過去に例を見ないレベルに達すると警告しています。

2. ヨーロッパの繁栄の源泉

かつてヨーロッパが経済、科学、文化で世界をリードできたのは、中世以来、数百から数千の独立した小さな統治体に分権化されていたからです。この「秩序ある無政府状態」において、国民は「足による投票(移住)」で搾取から逃げることができたため、統治者は国民を引き止めるために搾取を控えざるを得ませんでした。

3. 欧州連合(EU)への批判

  • 中央集権化の象徴: EUや欧州中央銀行(ECB)は、ヨーロッパを一つの超大国家にし、最終的には世界政府へと統合しようとするステップであると批判しています。

  • 偽りの自由貿易: EUが推進する「法の共通化」や「税制の調和」は、国家間の立地競争(減税競争など)を排除し、国家が国民をより確実に支配するための「カルテル」であると指摘しています。

  • 経済的失敗: 生産性の高い国(ドイツなど)が、低い国を支える構造は、生産性を罰し寄生を促すものであり、EUはいずれ崩壊すると予測しています。

4. 戦争と小国家の自衛戦略:「中立」

ウクライナ情勢に関連して、ホッペ氏は戦争と自衛について以下のように述べています。

  • 戦争の主体: 戦争を引き起こすのは「国民」ではなく、他人の財産で戦費を賄う「支配層(強盗集団)」です。特に、巨大な国家(アメリカやNATO)ほど拡張主義的で好戦的になります。

  • 中立の重要性: 小さな国家が大国の脅威から身を守るための唯一の処方箋は「中立」です。他国の内政に干渉せず、挑発も脅威も与えないことが重要です。

  • ウクライナ問題への視点: ウクライナの現政権がNATO加盟を望んだことは、ロシアに対する重大な「挑発」と見なされました。もしスイスのように「中立」を維持し、国内のロシア語圏地域の分離を認めていれば、現在の悲劇は避けられた可能性が高いと論じています。

結論

ホッペ氏は、自由と繁栄を取り戻す唯一の道は「過激な分権化」であると主張します。EUのような中央集権的な組織を解体し、数千もの「リヒテンシュタイン」や「スイスの州」のような小さな単位に分裂させ、それらが自由貿易と金本位制で結ばれ、互いに国民を惹きつけるために競い合う世界こそが理想であると結論づけています。

(Geminiを利用)
Decentralized and Neutral | Mises Institute [LINK]

2025-12-24

保守主義は支離滅裂

この記事「The Intellectual Incoherence of Conservatism(保守主義の知的支離滅裂さ)」は、ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)氏によるものです。

この記事の主要な論点を要約します。


1. 現代保守主義の変質

ホッペ氏は、現代(特に第一次世界大戦以降)の保守主義が、本来の「反平等主義・反国家主義」というルーツから、「文化的に保守的な国家主義者(右派社会民主主義者)」へと変質してしまったと指摘します。現代の保守主義者の多くは、家族の崩壊、多文化主義、社会の無秩序を憂いていますが、その解決策を国家(政府)に求めている点が矛盾していると批判します。

2. 知的な支離滅裂さ(矛盾)

記事の核心的な主張は、「伝統的な道徳や家族制度の回復を望みながら、それを破壊している原因である『福祉国家制度』を維持しようとすることの矛盾」です。

  • 福祉国家の影響: 社会保障、公共教育、失業手当などの redistributive(再分配)政策は、個人から責任を奪い、家族やコミュニティへの依存度を下げます。その結果、家族の絆は弱まり、近視眼的な行動や道徳的退廃が促進されます。

  • 矛盾の指摘: 保守主義者は文化的な衰退を嘆きますが、その衰退を引き起こしている「福祉国家というエンジン」を止めようとしません。原因を維持したまま結果だけを変えようとする姿勢が、知的・経済的に不可能(支離滅裂)であるとしています。

3. 三つの保守主義勢力への批判

  • ネオコン(新保守主義): 彼らは実際には文化に無関心で、グローバルな社会民主主義を推進するために保守的なレトリックを利用しているに過ぎない「国家主義者」であると断じます。

  • ブキャナン派(パレオコン): パトリック・ブキャナンのような勢力は、家族や国家を重視しますが、同時に経済的保護主義や社会保障の維持を訴えます。ホッペ氏はこれを「社会ナショナリズム(国家社会主義)」の一種と呼び、経済法則を無視した不可能な試みであると批判します。

  • キリスト教右派: 彼らもまた、教育の国家独占を終わらせるのではなく、国家の権力を自分たちが望む内容に置き換えようとしているだけであり、国家権力そのものを縮小させようとはしていません。

4. 解決策:真の保守はリバタリアンであるべき

ホッペ氏は、もし誰かが本当に「伝統的な家族、秩序、道徳」を回復したいと願うのであれば、その手段は国家権力の拡大ではなく、「徹底した国家の解体(ラジカル・リバタリアニズム)」でなければならないと結論づけています。

  • 国家による搾取(税金)や再分配をなくし、教育や社会保障を家族や民間市場の手に取り戻すことだけが、伝統的な社会秩序を再構築する唯一の道であると主張します。


結論

ホッペ氏によれば、「国家主義者でありながら保守主義者であることはできない」のです。現代の保守主義者が「小さな政府」と言いながら福祉や軍事予算を支持するのは、知的な欺瞞であり、真の伝統回復を目指すなら、国家に反対するリバタリアンにならざるを得ないというのが彼の見解です。

(Geminiを利用)
The Intellectual Incoherence of Conservatism | Mises Institute [LINK]

2025-12-23

中央集権・分権化・自衛

この記事「On Centralization, Decentralization, and Self-Defense(中央集権化、分権化、そして自衛について)」は、経済学者ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)氏によるものです。

この記事の主要な論点を日本語で要約します。


1. 国家の性質:「定住型強盗」

ホッペ氏は、国家を自発的な取引で成り立つ経済組織ではなく、暴力や脅迫(税金)によって運営される「定住型強盗(stationary bandits)」であると定義します。支配層は生産的な「宿主(国民)」から略奪して生きる寄生的な存在であり、常に略奪量を増やすために領土拡大と中央集権化を目指す性質を持っています。

2. 中央集権化の弊害と「ヨーロッパの奇跡」

  • 世界政府の危険性: 中央集権化が進み、最終的に「世界政府」が誕生すると、人々は略奪から逃れるための「移住(足による投票)」ができなくなります。その結果、搾取は際限なく強まり、文明は衰退します。

  • 分権化の利点: かつてのヨーロッパが繁栄した(ヨーロッパの奇跡)のは、数百もの小さな統治体に分裂していたからです。統治者は有能な国民が隣国へ逃げないよう、税を抑え、自由を認めざるを得ませんでした。これが経済・科学・文化の発展を促しました。

3. 「帝国主義のパラドックス」

相対的に「自由主義的」な国(例:かつてのイギリスやアメリカ)は、国民が生産的であるため、戦争に勝つための資源をより多く持ちます。その結果、国内で自由を重んじる政権ほど、皮肉にも対外的には帝国主義的になり、中央集権化を推し進めるリーダーとなってしまう現象を指摘しています。

4. 小さな単位や独立組織がいかに自衛するか

「小さな国や独立した地域は、大きな軍事大国にすぐ征服されてしまうのではないか?」という疑問に対し、ホッペ氏は以下の2つの指針を提示しています。

  • 指針①:挑発しない(Do not provoke)

    • 独立(分離独立)は、あくまで「相手国の政府(支配層)」からの離脱であり、その国の「国民」との敵対ではないことを強調すべきです。

    • 平和的かつ協調的な態度を保ち、相手の世論を味方につける(あるいは中立に保つ)ことが重要です。

  • 指針②:武装する(Be armed)

    • 武装した市民: 国家による中央集権的な軍隊ではなく、市民自身が武装し、ゲリラ戦やパルチザン戦の訓練を受けた「民兵」組織を持つことが強力な抑止力になります。

    • 社会的結束: 共通の言語や文化、相互の信頼(同質性)があるコミュニティは、侵略者に対して強い抵抗力を発揮します。

    • 非協力(市民的不服従): 征服された後も国民が徹底して非協力的であれば、支配を維持するコストが略奪の利益を上回り、侵略者は撤退せざるを得なくなります。

5. 結論

現在の世界的な中央集権化(グローバリズム)による経済停滞や混乱に対し、ホッペ氏は「数千のリヒテンシュタインやスイスの州」のような、極限まで分権化された社会こそが自由と繁栄を取り戻す唯一の道であると主張しています。

私有財産制に基づいた高度に分権化された社会(私法社会)では、攻撃すべき「中央司令部」が存在しないため、侵略者にとっては征服が極めて困難で割に合わないものになると結論づけています。

(Geminiを利用)
On Centralization, Decentralization, and Self-Defense | Mises Institute [LINK]

2025-12-22

キケロ、西洋文明の礎築く

古代ローマでは元老院や民会・法廷での弁論の必要から、ギリシャと同様、弁論術が発達した。独裁政権を樹立したカエサルの政敵で、共和政を擁護した文人政治家キケロ(紀元前106〜前43年)はローマ最大の雄弁家として知られる。カエサル死後はオクタウィアヌス(帝政ローマ初代皇帝アウグストゥス)を支持したが、失脚し、暗殺に斃れた。


地方の騎士の家柄に生まれ、ローマで学び、弁護士として頭角を現す。さらにアテネ、小アジア、ロードス島に遊学してストア派の哲学者ポセイドニオスらに師事し、弁論術、哲学を修め、ギリシャ語文献をラテン語に訳すなど修養を積んだ。ポセイドニオスの師パナイティオスからも影響を受けている。

経済学者で歴史家のマレー・ロスバードによれば、キケロはストア派の思想をギリシャからローマに伝えた偉大な伝達者である。キケロの明晰なラテン語を通じ、ストア派の自然法思想は2〜3世紀のローマの法学者たちに大きな影響を与え、その結果、ローマ法の大枠が形成され、西洋文明に広く浸透した。

キケロが伝えた思想のうち、とくに重要なのは、この自然法思想である。自然法とは、社会の秩序を維持し、人間の行動を規制する普遍的な法則を指す。時代や場所に関わらず、人間の理性に基づいて存在する不変の法とされる。その思想は対話篇「国家について」(岡道雄訳)の中で、ある執政官の言葉を借りて述べられている。

執政官は「真の法律とは正しい理性であり、自然と一致し、すべての人にあまねく及び、永久不変である」と宣言する。この法律を廃止することは正当ではなく、その一部を撤廃することは許されず、またそのすべてを撤回することはできない。また、この法は時代や場所に関わらず不変であり、「法律はローマとアテーナイにおいて互いに異なることも、現在と未来において互いに異なることもなく、唯一の永久不変の法律がすべての民族をすべての時代において拘束するだろう」と執政官は述べる。

さらに執政官は、この不変の法を定めた神に言及し、「万人がともに戴くただ一人の、いわば支配者であり指揮官である神が存在するであろう。すなわち彼が、この法の創始者、審理者、提案者である」と語る。そして「この神に従わない者はみずから自己から逃れ、人間の本性を拒否することにより、まさにそれゆえに、たとえ一般に刑罰とみなされているほかのものから逃れたとしても、最大の罰を受けることになろう」と厳しく警告する。

キケロは対話篇「法律について」(同)では、自身の発言として「最高の法(自然法)」と成文法を区別しなければならないと説き、自然法は「いかなる成文法よりも——およそ国家というものが成立するよりもはるか前の時代に生まれたものだ」と強調する。そのうえで、国を治めるには、すべてを成文法によって規定すべきではなく、法の根源を自然に求めなければならないと説く。もしもキケロが今の日本によみがえり、毎年多数の成文法を定めては人々の行動をこと細かく規制する様子を目にしたなら、呆然とするのではないだろうか。

キケロはギリシャ人から多くの思想を借用したが、独自の重要な思想もいくつか提唱した。ギリシャの哲学者たちは、社会と政府はほぼ同一のもので、ポリス(都市国家)において統合されると考えていた。これに対しキケロは、政府は管財人のようなものであり、社会に仕える道徳的義務を負うと宣言した。つまり社会は政府よりも大きく、独立した存在なのだ。

それを踏まえて、キケロは、政府が正当化されるのは私有財産を保護する役割のためだと主張した。著作「義務について」(泉井久之助)では、「国政にあたるひとが何よりも心しなくてはならないのは、市民がおのおの自分のものの所有権を確保し、私人の財産が公的な手段によって侵害されないようにすることだ」と述べている。

他方、政府が「一方から財産を取り上げて他方に与えるような非道」を厳しく批判する。たとえば、農地に関係する法案を用意して現在の所有者をその座から駆逐しようとしたり、貸金を借りた人間への贈与にさせようとしたりする者たちは「国家の基礎をあやうくする」という。これもキケロがよみがえり、政府が膨大な規制で財産権の行使を妨げている有り様を知ったなら、愕然とすることだろう。

政府が人々の財産を守るどころか理不尽に奪う行為は、政府の定めた法律では合法でも、最高の法である自然法には反する。そのことを言い表す有名なたとえに、キケロは「国家について」で触れている。アレクサンドロス大王が海賊をとらえ、いかなる邪悪さに駆られて海を脅かしているのかと尋ねたところ、海賊は少しもひるまず、「あなたが全世界を脅かしているのと同じ邪悪さによって」と答えたという。乱暴な権力者に対する鋭い批判だ。

キケロはローマの終わりのない戦争政策を、次のように非難した。「言いにくいことだが、我々ローマ人は、将軍や官吏が放縦な行いをしたために、外国で嫌われている。敵国に対して軍隊を派遣するのは、同盟国を守るためなのか、それともむしろ略奪の口実にするためなのか。我々が征服した国でいまだに豊かな国や、我々の将軍が征服しなかった豊かな国をひとつでも知っているか」。ローマと同じように国外で戦争を繰り広げ、横暴に振る舞う、現代の「帝国」の指導者は耳が痛いことだろう。

キケロの思想は、エラスムス、グロティウス、ジョン・ロック、モンテスキュー、ジェファーソンといった個人主義・自由主義の思想家たちに受け継がれていった。だが19世紀後半に帝政ドイツが大国として台頭すると、時代遅れとみなされるようになる。例えば、ノーベル賞を受賞したドイツの歴史家モムゼンはカエサルの熱烈な崇拝者であり、キケロの共和主義を嘲笑した。今なお、権力者の横暴を糾弾したキケロよりも、征服者カエサルにあこがれる人が多いようだ。

それでも、キケロは西洋文明の礎を築いた重要な人物である。歴史家ジム・パウエル氏は「キケロは人々にともに理性を働かせるよう促した。良識と平和を唱えた。近代世界に自由の最も基本的な考え方をもたらした。自由に発言することが死を意味した時代、専制政治を糾弾した。2000年以上もの間、自由の松明を輝かせ続けた」と称えている。

<参考資料>

2025-12-21

木村貴の経済チャンネル(2025年上半期)

  1. ドイツのハイパーインフレ 破滅した人、大儲けした人(2025/01/06
  2. 古代ローマ帝国はインフレで滅びた(2025/01/07
  3. フランス革命、インフレが招いた恐怖政治(2025/01/09
  4. イカゲームに学ぶ 資本主義は殺人ゲーム?(2025/01/14
  5. 平凡な市場経済、それは奇跡だ!(2025/01/16
  6. 預金封鎖の悲劇 紙くずになった日本国債(2025/01/18
  7. ジンバブエのハイパーインフレ 大盤振る舞いの末路(2025/01/21
  8. ベネズエラのハイパーインフレ 社会主義の大惨事(2025/01/23
  9. 個性は分業を生み、繁栄をもたらす 「国富論」はここがヘン!(2025/01/25
  10. ハイパーインフレ・サバイバル術 ジンバブエに学ぶ(2025/01/28
  11. 預金封鎖サバイバル術 終戦直後の日本に学ぶ(2025/01/30
  12. 比較優位の法則とは? 超人ヒーローも取引で得をする(2025/02/01
  13. 金(ゴールド)が買われる本当の理由(2025/02/04
  14. さらば不換紙幣? ドルの没落、金の復権(2025/02/06
  15. トレードオフと機会費用 公共事業の見えないコスト(2025/02/08
  16. 株価を上げる原動力は◯◯の量! (ヒント)企業業績ではない(2025/02/11
  17. ハイパーインフレで株価はどうなる?(2025/02/13
  18. お金を刷っても楽園はできない 希少性って何だろう?(2025/02/15
  19. お金って何だろう? 孤島から考える(2025/02/18
  20. お金に国家は必要ない! 中世社会の事実(2025/02/20
  21. ダイヤは水よりなぜ高い? 限界効用で考えよう(2025/02/22
  22. 金と銀、どうしてお金になった? ピノッキオが理解しなかったその理由(2025/02/25
  23. 金本位制って何? ドル没落で再び脚光、真のグローバルスタンダード(2025/02/27
  24. 幸せの道しるべ、それは心のランキング 満足度は「量」でなく「順序」に注目(2025/03/01
  25. 本当は怖い信用創造 経済を不安定に!(2025/03/04
  26. 金利がゆがむと経済がゆがむ のび太とジャイアンの取引とは?(2025/03/06
  27. 経済に「等価交換」は存在しない! 価値が違うから、取引は生まれる(2025/03/08
  28. マイナス金利の幻想とツケ 「モモ」の思想が招いた経済のひずみとは?(2025/03/11
  29. ハイパーインフレより怖いもの(2025/03/13
  30. 金が再びお金になる日 価値保存の力、輝き増す(2025/03/15
  31. まだ信じてる? デフレは悪という嘘(2025/03/18
  32. 「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ(2025/03/18
  33. ああ勘違い! デフレは不況のことじゃない(2025/03/20
  34. 政府が金を没収する日 大恐慌の米、「非常事態」口実に強行(2025/03/22
  35. フォートノックスに金はあるのか? 米金融最大のタブー、市場の波乱要因に(2025/03/25
  36. 超大物中銀総裁が愛した金本位制 グリーンスパン氏、金融政策のお手本にしていた!(2025/03/27
  37. インフレの本当の意味って? 物価上昇じゃない!(2025/03/29
  38. 米政府、デフォルトの黒歴史 なぜ「なかったこと」に?(2025/04/01
  39. インフレは税だ! 最悪の税だ!(2025/04/03
  40. 偽金づくり、親玉は国家! ルパン三世が嫌った卑怯な犯罪(2025/04/05
  41. 大恐慌の影、輝き増す金 世界経済、トランプ関税で視界不良(2025/04/08
  42. 本当は怖い ケインズ5つの迷言 資本家に安楽死を!(2025/04/10
  43. ケインズ対ハイエク どっちが正しい? 経済に必要なのは介入か自由か(2025/04/12
  44. ドルの衰退、保護主義で加速 金の存在感、一段と(2025/04/15
  45. 好景気・不景気はなぜ起こる? 「犯人」は中央銀行(2025/04/17
  46. 不景気はなぜ良いか? バブルを正常に戻す!(2025/04/19
  47. 金融危機はなぜ起こる? 銀行ビジネスモデルに潜むもろさ(2025/04/22
  48. 国債デフォルトという選択 早いほうが痛みは小さい?(2025/04/24
  49. 財政破綻より怖いもの Nスペ「国債発行チーム」の正しい見方とは?(2025/04/26
  50. 「双頭の怪物」スタグフレーション、日本が退治できない理由(2025/04/29
  51. 減税がバラマキになるとき 国債頼みはごまかし(2025/05/01
  52. 赤字国債を今すぐやめよう! 禁止なのに大量発行、財政規律失う(2025/05/03
  53. 戦争って経済にプラスなの? 復興に目を奪われるな!(2025/05/06
  54. 亡国の財政ファイナンス 競争力低下や通貨安もたらす(2025/05/08
  55. 国債頼み、偽りの減税 手取り増えてもインフレで無意味に(2025/05/10
  56. 投資の神様、バフェット氏の「闇」 3つの残念な発言を読み解く(2025/05/13
  57. 財政出動は経済にプラス? マイナス? 見えない損失に注意を(2025/05/15
  58. 大恐慌を避ける方法 経済対策で不況は長引く(2025/05/17
  59. ザイム真理教より怖いもの インフレ頼みが経済を壊す(2025/05/20
  60. 自由貿易は戦争をなくす 最初のノーベル平和賞はなぜ経済学者だったのか?(2025/05/22
  61. 無税社会は無法地帯? 公共サービスは民間でできる(2025/05/24
  62. 金の力でドル復活? トランプ氏元顧問の大胆すぎる計画(2025/05/27
  63. 税って「社会の会費」なの? 貧しい人はむしろ苦しく(2025/05/29
  64. 国債が招く悲惨な戦争 命を奪い、経済蝕む(2025/05/31
  65. 膨らむ政府、買われる金 日米、バラマキ政策止まらず(2025/06/03
  66. それでも未来が明るい理由 グローバル資本主義の「静かな革命」は続く(2025/06/05
  67. 誰も知らない「インフレ」の意味 マネー膨張が経済を壊す​(2025/06/11
  68. 文字は経済から生まれた 古代メソポタミア、謎の物体の正体(2025/06/14
  69. GDPを信じるな! 3つの欠点、経済の現実映さず(2025/06/17
  70. 誰も知らない 最高の米大統領とは? 平和・繁栄・自由でランキング(2025/06/19
  71. クリスマス休戦の奇跡 戦争を個人の力でやめるには?(2025/06/21
  72. 国家が金を買う理由 本当は怖い?その狙いとは…(2025/06/24
  73. ロックフェラーに学ぶ投資の極意 あのバフェット氏と共通点(2025/06/26
  74. 石器の輝き、列島経済の幕開け(2025/06/28
*タイトルは変更する場合があります
YouTube

2025-12-20

資本主義の失敗という神話

この記事は、1932年に経済学者ミーゼスによって執筆されたエッセイ「The Myth of the Failure of Capitalism(資本主義が失敗したという神話)」の要約です。

当時(大恐慌時代)の「資本主義は終わった、これからは計画経済(社会主義)の時代だ」という世論に対し、ミーゼスは「現在起きている危機は資本主義の失敗ではなく、政府の介入主義(中途半端な社会主義的政策)の失敗である」と真っ向から反論しています。


## 1. 経済理論と介入の矛盾

  • 市場の法則の発見: デイヴィッド・ヒュームやアダム・スミスが発見したのは、社会には物理法則と同じように、権力者でも変えることのできない「市場の内的整合性(法則)」があるということです。

  • 介入主義の不毛さ: 政府が価格や市場プロセスに介入しても、意図した結果は得られず、むしろ状況を悪化させます。自由主義(リベラリズム)は科学的根拠に基づき、私有財産こそが全員の富を築く唯一の方法であると主張してきました。

  • 警告の無視: 欧州諸国は過去数十年にわたり、自由主義の警告を無視して反資本主義的な政策(国有化、失業手当の拡大、高関税、重税、インフレ政策)を進めてきました。

## 2. 「不自由な経済」が生んだ腐敗

  • 経営者の変化: 「現代の経営者は自由主義を捨て、介入を求めている」という批判に対し、ミーゼスはそれは資本主義の本質が変わったからではなく、経営者が「介入主義のルール」に適応せざるを得なくなったからだと指摘します。

  • コネ社会への転落: 介入主義国家では、「良い製品を安く作る」ことよりも、「政治家と良好な関係を築く」「関税や補助金を引き出す」といった政治工作(コネ)が成功の鍵になります。

  • 責任の欠如: 大企業の経営者は、株主の利益(収益性)よりも政治的思惑を優先し、経営に失敗しても「大きすぎて潰せない(Too big to fail)」という論理で政府に救済を求めるようになります。

## 3. 結論:失敗したのは「介入主義」である

  • 真の危機の正体: 世界を苦しめている経済危機は、資本主義の欠陥によるものではなく、「反資本主義政策(介入主義)」が生み出した歪みの爆発です。

  • 残された資本主義: 社会が完全に崩壊せず、飢餓を免れているのは、依然として社会の片隅に残っている資本主義的な生産活動が価値を生み出し続けているからです。

  • 歴史の審判: ミーゼスは最後に、「失敗したのは自由主義(バスティア)ではなく、マルクスやシュモラー(介入主義者)である」と断言しています。


## 要約のポイント

この記事の核心は、「経済がうまくいかないのは自由が多すぎるからではなく、政府の介入によって市場の調節機能が破壊されたからだ」というリバタリアン経済学の根本的な視点にあります。


(Geminiを利用)
The Myth of the Failure of Capitalism | Mises Institute [LINK]

2025-12-19

インフレ・デフレの本当の意味

経済学者ミーゼスによるこの記事では、現代で一般的に使われている「インフレ・デフレ」の定義がいかに誤解を招き、政府の失政を隠蔽しているかを鋭く指摘しています。


## 1. 貨幣の量と「サービスの質」

  • 貨幣量に「不足」はない: 貨幣の価値はその「購買力」によって決まります。市場の働きにより、貨幣の供給量に合わせて購買力が調整されるため、経済全体で見れば貨幣の総量がいくらであっても、貨幣が果たすべき役割(交換手段)は常に十分に果たされます。

  • 貨幣増発は無駄: 貨幣の量を増やしても、社会全体の富が増えるわけではありません。むしろ、富が一部の人々から別の人々へ再分配されるだけです。

## 2. インフレ・デフレの真の定義

ミーゼスは、言葉の定義が政治的に書き換えられたことを批判しています。

  • 本来の意味: インフレ: 貨幣供給量の増大(原因)、デフレ: 貨幣供給量の減少(原因)

  • 現代の誤用: 現在では「物価の上昇(結果)」をインフレ、「物価の下落(結果)」をデフレと呼んでいますが、これは原因と結果を混同させる非常に有害な変化です。

## 3. 「中立的な貨幣」という幻想

  • 政府介入の不公平性: 購買力が完全に安定した「中立的な貨幣」は存在しません。政府が貨幣量を操作しようとすると、必ず特定のグループ(先に新しい貨幣を手にする政府や銀行など)が利益を得て、他のグループ(物価上昇の後に収入が増える庶民など)が損をします。

  • 市場の選択: 歴史的に、金(ゴールド)などの貴金属が貨幣として選ばれてきたのは、政府による恣意的な増発が難しいためです。

## 4. 定義を書き換える「悪影響」

ミーゼスは、インフレを単なる「物価上昇」と呼ぶことの危険性を2点挙げています。

  1. 批判の封じ込め: 政策に名前がなくなると、国民はその政策(貨幣増発)そのものを批判することが困難になります。

  2. 対症療法による悪化: 政府は物価上昇という「症状」を抑えるために価格統制などを行いますが、その穴埋めにさらに貨幣を増発し、結果として根本原因である「インフレ(貨幣増発)」を加速させてしまいます。


## まとめ:ミーゼスの警告

インフレとは「物価が上がること」ではなく、「政府が通貨を刷りすぎること」そのものを指します。この言葉の混乱を正さない限り、政府は通貨発行権を乱用して国民の富を密かに奪い続け、経済を破壊し続けるだろうと警告しています。


(Geminiを利用)
The Real Meaning of Inflation and Deflation | Mises Institute [LINK]

2025-12-18

気候変動パニックはなぜ失速したか

この記事は、かつて世界を席巻した「気候変動パニック」が近年なぜ急速に失速したのか、その背景と真の目的を批判的に分析しています。


## 1. 気候変動パニックの全盛期

  • 政治的武器としての活用: 10年前のパリ協定以降、気候変動は主要な政治課題となりました。特にトランプ氏らポピュリストの台頭に対し、エスタブリッシュメント層(既存の権力層)が団結するための「共通の敵」として利用されました。

  • 恐怖の煽り: メディアや政治家は国連の報告書を誇張し、「数世代で人類が絶滅する」といった恐怖を植え付けることで、政府が個人の生活を隅々まで統制する正当性を得ようとしました。

  • 莫大な資金投入: バイデン政権の「インフレ抑制法(IRA)」などを通じ、1兆ドル以上の資金がグリーン・プログラムに投じられ、環境重視の産業政策が確立されたかに見えました。

## 2. 突然の失速と現状

  • 政治・企業の変化: 2024年の選挙ではハリス氏のキャンペーンから気候変動の話題が消え、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)投資も撤退や名称変更が相次いでいます。

  • 市場の失敗: 政府が推進した電気自動車(EV)も、消費者の需要が伴わず、フォードなどの自動車メーカーは減産を余儀なくされています。

  • 権威の失墜: 権威ある学術誌『Nature』で、気候変動の影響を過大評価した論文が撤回されたり、ビル・ゲイツ氏が「気候変動は破滅的シナリオではない」という趣旨の現実的なメモを発表したりするなど、論調に変化が生じています。

## 3. なぜ「熱狂」は終わったのか?

筆者は、気候変動運動は草の根の活動ではなく、「権力者たちの利益」のためにトップダウンで作られたものだったと指摘しています。

  • 利権の構造: 予算を増やしたい官僚、注目を集めたいメディア、資金を得たい学者、そして競合を排除したい大企業が結託していました。

  • 「使い道」の終了: パンデミックによる政府不信、人々が恐怖に慣れてしまった「狼少年」効果、ガザ情勢への関心の移行、そして深刻な物価高騰(生活費危機)により、気候変動を口実にした権力拡大がもはや通用しなくなったためです。

## 結論

現在の沈静化は、人々の生活の質を向上させる「良い兆し」です。しかし、筆者は「これで終わったわけではない」と警鐘を鳴らしています。この運動の本質が「科学的な懸念」ではなく「権力の掌握と利権」にあることを理解しておかなければ、政治情勢が変わった際に、再び同様の「道徳的パニック」が引き起こされるだろうと述べています。


(Geminiを利用)
What Happened to Climate Change? | Mises Institute [LINK]

2025-12-17

ミレイ氏が中央銀行を廃止しない理由

オスカー・グラウ氏によるこの記事は、ハビエル・ミレイ大統領の「中央銀行(BCRA)廃止」という看板公約が、実際には実行されず、中央銀行と金融業界の利益を守る結果に終わったと厳しく批判しています。著者は、ミレイ政権の行動が、自由市場の原則や道徳的立場と矛盾していると指摘しています。

1. ペソの歴史的背景と中央銀行廃止の公約の矛盾

  • ペソへの不信: アルゼンチン・ペソは、長年のインフレと政治的不安定により、国民の信頼を完全に失っており、人々はドルで貯蓄・計算しています。ペソは「ハイパーインフレ通貨」として分類されるべきです。

  • ミレイの公約: ミレイ氏は、中央銀行は「人類史上最大の窃盗の一つ」であり、廃止すべきだと公約し、ドル化計画を示唆しました。

  • 公約の転換: 2024年12月までに、ミレイ氏は中央銀行廃止には「少なくとも4年」かかり、「通貨競争」が目標だと主張を修正。財務大臣は2025年10月にはドル化が「もはや選択肢ではない」と公言しました。

  • ドル化計画の矛盾: ミレイ氏の当初の計画(外国資本の助けを借りて流通ペソをドルに交換する)は、ペソに価値がないという彼自身の見解と矛盾しています。また、他者の犠牲の上にペソをドルに交換する道徳的・経済的必然性はないと論じています。

2. 失敗した「内生的ドル化」とマネーサプライの拡大

  • 「内生的ドル化」の破綻: ペソの「不足」により、ドルへの需要が増加し、徐々にドル化が進むという政権の理論は実現しませんでした。

  • インフレ的政策: ミレイ政権下でマネタリーベースは2025年7月までに約4倍に増加し、これはペソの「不足」とは真逆の事態です。これは、予算支出、公的債務、為替市場への介入など、政府活動の資金調達のために行われました。

  • 史上最大のドル購入: カプート財務大臣自身が、自政権がアルゼンチン史上最大のドル購入を行ったと認めました。これは、ペソを過小評価し、可能な限り安価なペソで多くのドルを獲得しようとする政権の意図を示しています。

  • BCRAの資産重視理論の誤り: ミレイ氏が重視するBCRAのバランスシートの健全化は、ペソの価値を決定するものではありません。ペソの価値の欠如の真の原因は、BCRAの資産の質ではなく、ペソに対する真の需要の欠如にあると指摘しています。

3. 銀行家を救済する行動

  • 「時限爆弾」の神話: ミレイ氏が就任時、BCRAは市中銀行に対する多額の債務(利息付き債券)を抱えていましたが、これは銀行が自行のペソを、リターンを得るために運用していたものです。この債務が「ハイパーインフレを引き起こす時限爆弾」だったという見方は根拠がないと否定しています。なぜなら、銀行側には、それらを一斉に現金化してペソを暴落させるインセンティブがなかったからです。

  • 銀行家の救済: ミレイ政権は、これらの利息付き債務を財務省が支払う長期債務に変換しました。これにより、BCRAのバランスシートは「整理」されましたが、これは「アルゼンチン経済のためではなく、銀行家のために事態を救った」行為であると結論付けています。

  • 金融セクターの復活: その他の金融統制的な措置(金利引き下げやペソの月次切り下げペースの義務化など)により、銀行セクターが再活性化し、「キャリー・トレード」が復活しました。

4. 真のBCRA閉鎖の可能性と結末

  • 閉鎖の影響: 中央銀行の真の閉鎖は、通貨発行の停止とすべての市場介入の終了を意味します。不信感のあるペソと既にドルで機能している経済のため、閉鎖は想像よりもはるかに外傷が少ないはずだと主張しています。

  • ペソへの信頼回復の可能性: BCRAを閉鎖し、通貨供給量の拡大が止まれば、人々はペソに再び信頼を取り戻し、ペソのハイパーインフレ的性質が逆転する可能性すらあると論じています。

  • 結論: 経済的、道徳的理由から、BCRAの閉鎖は常に最善の政策ですが、ミレイ氏と彼の側近にとって、BCRAは「極めて重要な資産」となってしまいました。彼の経済チームの主要ポストが、以前の政権と同じ銀行出身者で占められていることが、彼らが特権的な利益に奉仕している証拠だと結論付けています。

    (Geminiを利用)
    How Milei Saved Argentina’s Central Bank, by Oscar Grau - The Unz Review [LINK]