2022-05-31

自由貿易擁護論(最新版)

ケイトー研究所
(2022年5月19日)

自由貿易は長い間、米国で国民と超党派の政治的支持を得てきた。しかし最近、この政治的コンセンサスが崩れてきている。多国間貿易への関与は、国家安全保障や、グローバル化から取り残された人々・地域に対する懸念など、内向きなイデオロギーの優先事項に年々従属させられている。

自由貿易への新たな懐疑論は見当違いだ。自由貿易に対する経済的、政治的、道徳的な擁護論は、アダム・スミスが『国富論』を著した250年前と変わらず、今日でも強い説得力を持つ。

貿易は米国の消費者、生産者、労働者に測り知れない利益をもたらしてきた。米経済が高度な製造業や技能集約的なサービス業でその強みを発揮することを可能にし、革新をもたらし生活水準を向上させる「創造的破壊」を加速させる。

一般的な考え方とは異なり、輸入は米経済の足を引っ張るものでも、海外で商品やサービスを販売するために支払う代償でもない。実際、輸入の増加は経済成長率の上昇と一致している。

実際、新しい調査によると、米国の製造業とサービス業のうち、貿易を行っている企業はわずか6%であるものの、これらの企業は経済全体の雇用の半分を占め、2008年以降に創出された新規雇用では60%を占めた。

iPhone(アイフォン)はまさにグローバル製品だ。米カリフォルニア州クパチーノで設計され、米国を含む多数の国で製造された部品を搭載し、中国やベトナムなど低コストの組立国で組み立てられ、出荷される。

米国の公式な輸入統計では、中国で組み立てられたiPhoneは全額が中国産として扱われるが、実際にはiPhoneの製造コストと最終販売額の大部分を米国企業が稼いでいる。

貿易が米国の製造業と労働者をダメにしたというよくある主張は、ひどく誇張されている。米国の製造業は依然として世界のリーダーだし、製造業の雇用と経済シェアが減少する脱工業化現象は、中国を含むすべての工業国で起きている。

製造業が経済に占める割合の低下は、しばしば輸入のせいにされる。しかし、これは貿易黒字国や積極的な産業政策をとっている国を含め、ほとんどの先進国に共通する長期の傾向である。

製造業の雇用が国の雇用全体に占める割合が減少していることにも、同じことが言える。この傾向は、10年前に中国でさえも見られるようになった。

(次より抄訳)
The (Updated) Case for Free Trade | Cato Institute [LINK]

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