補助金が地域をダメにする
地方経済の衰退を食い止めようと、日本全国あちこちで「地域おこし」が盛んだ。たいてい役所の肝いりで、補助金がついてくる。「そんなことをやっているからダメなのよ」と本書の著者、ジェイン・ジェイコブズなら一喝することだろう。
ジェイコブズによれば、経済発展のカギを握るのは都市である。輸入品を工夫しながら模倣し、自前の製品に置き換えていく「輸入代替」は都市の機能であり、それが経済発展の原動力になる。東京における自転車産業の発展は、その優れた例である。
ポイントは、自前でやることだ。「いかなる経済も、自前でやるか、さもなければ発展しないかのどちらかである」とジェイコブズは断じる。だから軍需は一時の好景気は生んでも、長期の発展にはつながらない。基地や駐屯地にどれだけ多くの輸入品が運び込まれようと、そこで製品が自前でつくられるようにはならないからだ。
場合によっては軍需以上に始末に悪いのが、福祉を名目とする補助金である。一見、補助金はすばらしいもののように思える。貧しい人が消費財を買えるようになり、病院、学校、水道、電気設備などの建設・設備への注文も増える。しかしイノベーションも輸入代替も起こらないから、自立した経済発展にはつながらない。
補助金の原資は税金だから、都市が自前で稼いだ収入(稼得)を食い荒らし、都市と経済を衰退させる。「都市から搾り取られる補助金は根本的には発展に逆行する取引なのである」とジェイコブズは警鐘を鳴らす。
ジェイコブズは高く評価する日本について「時がたつにつれて、慢性的に未発展の地域に対する補助金をますます増や」すだろうと暗い予想をしている。原書の出版から35年たった今、その予想は見事に的中しつつある。
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