2018-09-23

他山の石

「他山の石」という言葉があります。他人の間違った言動でも自分の反省の材料とすることができるというたとえです。しかし実際には、ただあざ笑い、ゆがんだ優越感に浸る人が少なくありません。

中国の地方政府が域内総生産を水増ししているとの疑念が深まっています。日経電子版では8月21日付の記事で、東北部、遼寧省の1~6月期の名目域内総生産が前年同期比マイナス20%に急減したと報じ、9月22日付の記事では域内総生産の水増しや改竄はかなり広がっているようだと分析します。

8月21日付の記事を共有したNewsPicks(ニューズピックス)のコメント欄を見ると、「所詮インチキな国」「社会主義、一党独裁の弊害」「中央集権的国家あるある」などと冷笑するコメントが並んでいます。

けれども、日本人に中国を笑う資格があるのでしょうか。

国内総生産(GDP)はもともと水増しされやすい統計です。8月16日付の投稿で書いたように、大規模な公共事業を行えば、たとえ生産の向上に役立たなくてもGDPにカウントされ、定義上、経済成長を押し上げるからです。

たしかに公共事業は数字の上でGDPを増やす効果があります。しかしそれは計算式がそうなっているからにすぎません。どのような公共事業を行うかは、国民の自由な選択でなく、政治判断で決まります。日本は「社会主義、一党独裁」でこそありませんが、「中央集権的」であることは中国と変わりません。

NewsPicksのコメントで鋭かったのは、経営コンサルタント、波頭亮氏のものです。中国の経済統計を「残念」と評したうえで、日本の不透明な特別会計も「決して自慢できたものではない」と指摘し、「他国の批判よりもわが国の改善の方がより重要」と強調しています。

特別会計は、財源も支出も正確には誰もわからない制度といわれます。なんという無責任でしょう。これでは中国を「インチキな国」とばかにする資格はありません。(2017/09/23

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