2023-01-31

今回の戦争は違う

元米陸軍大佐、ダグラス・マクレガー
(2023年1月26日)

ウクライナでロシアの存亡にかかわる軍事的脅威を突きつけることを決めるまで、米政府は軍事力の行使を、ベトナムからイラクに至る途上国の弱い相手との戦争で、米軍や米領土に存亡の危機をもたらさない、米国が負けても大丈夫な紛争に限定していた。今回のロシアとの代理戦争は、それとは異なる。
ロシアは米内外の期待に反し、内部崩壊もしなければ、西側諸国による政権交代の要求にも屈しなかった。米国はロシアの社会的な結束力、潜在的な軍事力、欧米の経済制裁に対する相対的な免疫力を過小評価していたのである。

その結果、米国の対ロシア代理戦争は失敗しつつある。オースティン米国防長官は1月20日、ドイツのラムシュタイン空軍基地で同盟国に対し、ウクライナ情勢について珍しく率直に語り、「我々には今、春までの間にチャンスがある」と述べ、「それは長い時間ではない」と認めている。

ゼレンスキー・ウクライナ大統領の顧問で、最近クビになった非公式の「広報官」アレクセイ・アレストビッチ氏は、より直接的だった。同氏は、ウクライナがロシアとの戦争に勝てるかどうか、そしてウクライナが戦争を生き残れるかどうかさえも疑問視している。ウクライナの損失は、少なくとも15万人(3万5000人の行方不明者と推定死亡者を含む)で、ウクライナ軍は壊滅的に弱体化し、脆弱な防衛態勢をとっているため、今後数週間のうちにロシア軍の攻撃の圧力で粉々になりそうである。

ウクライナの物資の損失も同様に深刻である。戦車や装甲歩兵戦闘車、大砲システム、防空施設、あらゆる口径の武器など、数千台が失われた。この中には、ジャベリンミサイルの7年分の生産量も含まれている。ロシアの砲兵システムは、ロケット弾、ミサイル、ドローン、硬質弾薬などあらゆる種類の弾丸を1日に6万発近く発射できるため、ウクライナ軍は毎日6000発の弾丸でロシアの攻撃に応えなければならず、大変な負担となっている。ウクライナに新しい防衛施設や弾薬を提供することは、米政府の仲間内を豊かにするかもしれないが、この状況を変えることはできない。

予想どおり、西側諸国が一丸となってウクライナの敗北を食い止められなかったことに、米政府のいら立ちは募るばかりである。実際、そのいら立ちは急速に自暴自棄になりつつある。

ブッシュ政権の元閣僚で、米国が中東とアフガニスタンで永久に紛争を続けることを熱心に支持しているマイケル・ルービン氏は、防衛ニュースサイト「1945」の記事で不満を爆発させた。「もし世界がロシアを単一国家として存続させ、プーチン主義を存続させるならば、北大西洋条約機構(NATO)に加盟するかどうかにかかわらず、ウクライナも独自の核抑止力を維持できるようにすべきだ」と主張している。表面上は無謀な提案だが、この発言は、ウクライナの敗北は避けられないというワシントン界隈の不安を正確に反映している。

NATOの加盟国は、ロシアを徹底して弱体化させるという米政府の聖戦の下で決して強く団結しているわけではない。ハンガリーとクロアチアの両政府は単に、欧州の大衆がロシアとの戦争に反対し、予見可能なウクライナの敗北を先送りしようとする米政府を支持していないことを認めているにすぎない。

ドイツでは、ウクライナ国民に同情はしても、ウクライナのためにロシアとの全面戦争を支持することはなかった。今ドイツ人は、ドイツ軍の壊滅的な状態にも不安を感じている。

NATO軍事委員会の元委員長であるハラルド・クヤート元ドイツ空軍大将(4つ星相当)は、数十年にわたりドイツの政治指導者が同国の武装解除を盛んに進め、ドイツから欧州における権威や信用を奪ったと指摘。米国によるドイツとロシアの衝突を許していると厳しく非難している。ドイツ政府やメディアはこの発言を抑え込んだが、ドイツの有権者に強く響いている。

ロシアとの代理戦争で勝利を得ようとするあまり、米国は歴史の現実を無視している。13世紀以降、ウクライナはリトアニア、ポーランド、スウェーデン、オーストリア、ロシアなど、大きく強力な国家権力に支配された地域であった。

第一次世界大戦後、ポーランドが共産主義ロシアを弱体化させるために考えたのが、ウクライナの独立国家を目指すという頓挫した計画であった。今日、ロシアは共産主義ではないし、1920年にトロツキー、レーニン、スターリンとその追随者が行ったようなポーランドの破壊を目指してはいない。

では、米国はロシアに対する代理戦争でどこに向かおうとしているのだろうか。この質問には答えが必要である。

1941年12月7日の日曜日、アベレル・ハリマン米大使は、ウィンストン・チャーチル英首相とともにチャーチル宅で夕食をとっていた。そのとき、BBCは日本軍が真珠湾の米国海軍基地を攻撃したというニュースを放送した。ハリマンは目に見えてショックを受けた。ハリマンはただ、「日本軍が真珠湾を攻撃した」という言葉を繰り返した。

ハリマンが驚く必要はなかった。ルーズベルト政権は1941年夏の石油禁輸を頂点とする一連の敵対的な政策決定によって、日本が太平洋の米軍を攻撃するよう、事実上あらゆる手段を講じていたのだ。

第二次世界大戦では、米国はタイミングと同盟国に恵まれていた。しかし今回は違う。米国とNATOの同盟国は、ロシアに対する本格的な戦争、ロシア連邦の荒廃と解体、ロシアとウクライナにおける何百万人もの生命の破壊を提唱している。

米政府は感情的である。思考せず、経験主義や真実にあからさまに敵対している。米国民も同盟国も、地域的にも世界的にも、ロシアと全面戦争をする用意はない。ようするに、もしロシアと米国の間で戦争が起こっても、米国人は驚くべきではないということだ。バイデン政権とワシントンの超党派の支持者は、それを実現するために可能な限りのことをしている。

(次を全訳)
This Time It’s Different - The American Conservative [LINK]

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