2023-01-22

アサンジ迫害とバイデンの偽善

アイスクリーム製造会社「ベン&ジェリーズ」共同創業者、ベン・コーエン
(2023年1月18日)

バイデン米大統領は、報道の自由に関する自らの言辞に応えるべきときが来た。

2020年大統領選の候補者として、バイデン氏は報道の自由の重要性について力強い声明を発表し、こう書いた。

 

国境なき記者団によると、現在、世界で少なくとも360人がジャーナリズムの仕事を理由に投獄されている。私たちは皆、このジャーナリストたちと連帯する。トーマス・ジェファーソンが1786年に書いたように、「我々の自由は報道の自由にかかっている。報道の自由を制限すれば、それは必ず失われる」からだ。

バイデン氏が無視したことがある。投獄された人々の一人がウィキリークスの発行人ジュリアン・アサンジ氏であり、アサンジ氏がロンドンの最大警備の刑務所で独房に閉じ込められているのは、米政府が彼を見せしめにしたいからだという事実だ。

アサンジ氏はトランプ政権によって、ジャーナリストや人権団体から広く非難された、前例のない攻撃的な動きで起訴された。バイデン大統領とメリック・ガーランド司法長官は、約二年の間に正しいことを行い、この危険な起訴を取り下げることができたはずだ。

ところがバイデン政権は、報道の自由と偽情報について世界に説教を続けている。バイデン氏とその仲間たちは、権威主義的な政権が報道を検閲し、反対意見を取り締まり、真実の公表を犯罪としていることを正しく非難している。国境なき記者団は、イラン、中国、ミャンマーなどにおける報道の自由の侵害を非難している。しかし報道の自由の侵害はこのような体制に限ったことではないとも述べている。国境なき記者団は、フィリピンにおけるノーベル平和賞受賞者マリア・レッサ氏の迫害を非難し、16のジャーナリズム擁護団体の連合を率いて、英政府に対してアサンジを解放するよう求めている。

こうした事例は、不正行為を暴露し、不快な現実を国民に知らせ、政府のプロパガンダに反発することのできる、自由で独立した報道機関の重要性を明確に示している。言い換えれば、自由な報道は、米政府が私たちを欺いたときに、私たちが真実に近づけるよう守ってくれる。

私はジュリアン・アサンジ氏の知人であることを誇りに思っている。ロンドンのエクアドル大使館でアサンジ氏と会ったとき、私はその知性と思いやり、嘘と戦争プロパガンダの毒に対する解毒剤としての真実に対する信念に、最も感銘を受けた。アサンジ氏が言ったように、「戦争が嘘によって始められるのなら、平和は真実によって始められる」。

アサンジ氏は三年以上にわたって、「英国のグアンタナモ」と呼ばれる最高警備の刑務所に独房で拘束されている。その大半は、刑務所で新型コロナ感染症が発生し、生命が脅かされた期間である。この原稿を書いている今も、アサンジ氏ははコロナで24時間隔離されている。昨年、同氏は軽度の脳梗塞に見舞われた。国連特別報告者ニルス・メルツァー氏は、アサンジ氏の監禁状態が拷問にあたると判断している。

殺人犯のいる最大警備の刑務所に収監される前、アサンジ氏はエクアドル大使館に何年も監禁され、適切な医療を受けられないまま過ごしていた。その間、米政府は弁護士や面会者(私を含む)、家族、医師を監視した。アサンジ氏が逮捕された際には、書類やメモまで押収された。なぜか。アサンジ氏のウィキリークスでの活動は、政府に世界で恥をかかせるものだったからだ。

オバマ大統領は「ニューヨーク・タイムズ問題」を理由に、アサンジ氏の起訴を拒否した。もし真実の情報を公開したアサンジを起訴したら、ニューヨーク・タイムズ紙も起訴しなければならなくなるからだ。しかしバイデン氏は今回、真実を公表することは犯罪だというトランプ氏の主張を肯定した。アサンジ氏は1917年のスパイ活動法に基づいて起訴されている。この法律は、検察が内部告発者を標的に使用するのも大いに問題含みだが、出版者に対してはこれまで一度も成功したことがない。バイデン氏がアサンジ氏を起訴することで本当に言いたいことは、米政府は国民に嘘をつくし、犯罪行為を隠しもするし、あえて真実を追求しようとする人々を滅ぼすこともできるということだ。

司法省は、内部告発者チェルシー・マニング氏〔元米陸軍上等兵〕が漏らした、真実でニュース価値のある情報を受信し公開したことでアサンジ氏を起訴したが、不正行為を暴露された軍や政府の高官は誰一人として起訴していない。

21世紀版の使者殺し〔悪い知らせをもたらした使者を殺害する王の話〕である。

法律違反や嘘、不正隠しが発覚した政治家の評判を傷つけたことを除けば、アサンジ氏の報道で被害を受けた者はいない。英法廷手続きで証言した専門家によれば、アサンジ氏は、情報源と、機密情報の公開によって損害を受ける可能性のある人々の双方を保護するために、最大限の努力をした。政府は、ウィキリークスが暴露した不正行為を調査したり、法を犯した者や隠蔽した者を罰したりするのではなく、内部告発者とそれに協力するジャーナリストの攻撃に力を入れている。

なぜか。政府の不正行為を国民に知らせる誘惑に駆られかねない他の人々に、メッセージを送れるからだ。政府はお前の人生を破壊することができる、と。

トーマス・ジェファーソンは正しかったし、大統領候補時代のジョー・バイデン氏がジェファーソンの言葉を引用したのも正しかった。政府の責任を追及する自由な報道機関なくして、民主主義はありえない。国境なき記者団が米国の報道の自由について懸念するのは正しい。そのファクトシートは不吉な一行で始まっている。「かつて報道と言論の自由の模範とされた米国で、報道の自由に対する侵害が驚くべき速さで増加している」

ジュリアン・アサンジ氏の自由なくして、報道の自由はない。公益のために真実の情報を公開したアサンジ氏を政府が起訴できる限り、バイデン政権の人権、「フェイクニュース」、プロパガンダに関する物言いは偽善の極みである。

(次を全訳)
Killing the messenger: Joe Biden's disturbing hypocrisy on Julian Assange | Salon.com [LINK]

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