2023-01-26

いわれなきイラク侵略

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2023年1月23日)

土曜日(1月21日)の米ワシントン・ポスト紙の社説は、ロシアのウクライナ侵攻に言及し、ウクライナの「闘いは欧州にとっての試金石でもあり、西洋システムが拠って立つ最も基本的な原則、いわれのない侵略戦争を許さないことに対する攻撃だ」と強調している。
続きとなる今日(1月23日)の社説でポスト紙は、ウクライナに対し「侵略戦争」を行ったとして、プーチン露大統領とその「子分」を裁く国際法廷を要求している。ポスト紙はニュルンベルク裁判を引用する。「侵略戦争を始めることは……国際犯罪であるだけでなく、他の戦争犯罪とは異なり、それ自体が全体の悪の蓄積を含んでいるという点で、最高の国際犯罪である」

当惑するのは、なぜポスト紙がジョージ・W・ブッシュ大統領とその「子分」たちのいわれのないイラク侵略を非難しないのか、さらに、なぜポスト紙がブッシュ氏とその「子分」たちのニュルンベルク式法廷を要求しないのか、ということである。結局のところ、この種の戦争犯罪に時効はないのである。ロシア、ドイツ、その他の国々だけが、いわれのない侵略戦争で非難され、裁判にかけられるのだろうか。なぜ米国の高官がニュルンベルクの原則から免除されなければならないのだろうか。

イラクが米国を攻撃したことがないのは、議論の余地のない事実である。この紛争は最初から米国が侵略者であった。ブッシュとその子分たちは、父親のジョージ・H・W・ブッシュ大統領がペルシャ湾戦争でサダム・フセイン大統領を政権から追放しなかったことに憤慨していた。そして父ブッシュの重大な間違いを正そうとした。

ブッシュ氏とその子分は、いわれのないイラク侵攻を正当化するために、サダムが大量破壊兵器を保有しているという嘘をでっちあげた。結局、大量破壊兵器が発見されなかったことでその嘘が明らかになったが、ブッシュ氏はその「間違い」を謝罪することも、ただちにイラクからの米軍撤退を命じることもなかったのは紛れもない事実だ。それどころか、ブッシュ氏は軍隊をイラクに残し、自分とその子分が権力を握った新政権に反対する者は誰でも殺すように命じたのである。

ブッシュ氏の大量破壊兵器に関する主張が嘘でなかったとしても、ある国民国家が大量破壊兵器を保有しているという事実は、その国民国家に対する侵略戦争を法的にも道徳的にも正当化するものではない。さらに、大量破壊兵器に関する決議を執行する権限を持つのは、米政府ではなく国連のみであり、国連がイラクへの侵攻と侵略戦争を認めないことを選択したのは明白である。

父ブッシュが湾岸戦争で政権交代を実現できなかったことに憤慨したのは、息子ブッシュだけではない。1990年代、ビル・クリントン大統領は在任中、史上最も残忍な制裁措置の一つを実施し、イラク国民に対して戦争を仕掛けた。その結果、何十万人もの罪のないイラクの子供たちが命を落とすことになった。

実際、1996年にクリントン政権の国連大使だったマデリン・オルブライト氏は、制裁による50万人のイラクの子供たちの死は「それだけの価値がある」と断言した。その「価値」とは、イラクの独裁者サダム・フセインを追放し、米国が承認した別の独裁者に取って代わらせるという体制転換のことであった。

イラクの子供たちが死ぬことで、サダムは良心の呵責にさいなまれ、政権を手放すだろうというものだった。この手段を選ばぬ計画はうまくいかなかった。サダムは権力の座にとどまり、制裁はさらに5年間、罪のないイラクの子供たちを殺し続け、ブッシュ息子が大統領に選ばれた後もそれが続いた。

なぜクリントン氏、ジョージ・W・ブッシュ氏、その子分たちは、イラクの子供たちをいわれのない形で殺害することに加担したとして、刑事告発されるべきではないのか。なぜ「侵略戦争」は爆弾、弾丸、ミサイル、兵士、戦車、ドローン、飛行機だけに適用され、故意に、意図的に、無実の人々を殺す経済制裁には適用されないのか。

このすべてにおける一つの皮肉は、米当局が「新しいヒトラー」と呼んでいたサダム・フセインが、イランに対していわれのない侵略戦争を行っていた1980年代には、米当局の協力者であり同盟者であったということである。米当局は、サダムの軍隊がイラン人を殺害しているという事実が気に入っていたので、サダムの侵略戦争を支持していたのだ。その理由は、1953年の米中央情報局(CIA)のイランに対する政権交代作戦でイランの国王に据えた残忍な独裁者〔パーレビ国王〕をイラン国民が追放したことを、まだ許していなかったからである。

今日、ロシアは少なくとも、ウクライナに軍事基地、戦車、兵士、ミサイルを配置するために北大西洋条約機構(NATO)を利用する米国の脅威を、ウクライナへの「いわれのない」侵略の理由として挙げることができる。米国が自らのいわれのないイラク侵攻を正当化するために指摘できるのは、存在しない大量破壊兵器に関する自らの嘘だけである。

結論として、きわめて重要な点を繰り返すことを許してほしい。イラクを攻撃したのは米国である。この紛争を通じて、米国は侵略者であり、イラクは防衛側であった。

なぜワシントン・ポスト紙はこの根本的に重要な点を認識し、認めないのだろうか。なぜニュルンベルク原則を米国ではなく、ロシアに適用するのだろうか。

(次を全訳)
What About the Unprovoked U.S. Aggression Against Iraq? – The Future of Freedom Foundation [LINK]

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