2018年8月12日日曜日

寛容という困難

多くの人が寛容の大切さを説きます。しかし寛容ほど、口にするのはたやすくて、実行するのが難しい道徳もないのではないでしょうか。米グーグルが「女性差別」とされる文書を書いた男性社員を解雇した問題で、そんな思いを強くします。

英BBCが報じるように、解雇された男性社員のジェームズ・ダモア氏が文書で述べたのは、女性は男性に比べ、物よりも「人間に関心を持つ」ことが多く、「より協力的」で「より心配しがち」な傾向があるという見解です。

この見解は、根拠のない放言などではありません。むしろ脳科学などに基づく現代の科学では、標準的な知見です。進化心理学者で、著書『恋人選びの心』(長谷川眞理子訳)が邦訳されている米ニューメキシコ大学のジェフリー・ミラー准教授は、ダモア氏が「科学的根拠をほぼ正しく理解して」おり、「私たちが何を知っていて何を知らないのかについて、かなり適切に峻別している」と話しています。

それもそのはずで、ダモア氏はグーグル入社前、ハーバード大学で生物学を専攻していたと伝えられています。

一方、BBCの記事は、ダモア氏の見解を批判する文脈で、人の性別をもとにその人の性格を判断しようというのは「まるで手術に斧を使うようなもの」だという学者の発言を引用しています。

しかし、これは的外れです。ダモア氏は解雇の原因となった文書(BBCの記事からリンクが張ってあります)で、わざわざグラフまで付けて、次のように強調しています。「多くの場合、男女の違いは小さく、重なる部分が大きい。だから集団レベルの分布をもとに、個人について判断することはできない」

ダモア氏の見解が絶対正しいといいたいわけではありません。大事なのは、たとえ不快でも、異なる意見を頭から排除せず、耳を傾ける寛容の心を持つことです。それが社会に真の調和と多様性をもたらす第一歩であるはずです。(2017/08/12

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